全国大会2018:メタゲームブレイクダウン~殿堂構築~
予選3回戦の2ブロックを終えて、舞台は殿堂レギュレーションへ。
新殿堂施行から2週目、全国から集まった猛者たちのデッキ選択を見ていこう。
■ジョラゴンジョーカーズ:14
(無色タッチ赤9、緑5)
■赤青覇道:9
■チェンジザドンジャングル:5
■5色オボロティガウォック:3
■黒単デスザーク:2
■その他(使用者1名)
青単ムートピア
赤単革命チェンジ
赤黒墓地ソース
5色ビッグマナ
赤白轟轟轟
白単サッヴァーク
黒緑ドルマゲドン
最多数となったのは殿堂の影響を受けなかった『ジョーカーズ』。そのうち約2/3が殿堂前とほぼ同じ構築である『無色タッチ赤ジョーカーズ』を使用している。
次いで下馬評では『ジョーカーズ』と双璧を為す環境トップである『赤青覇道』、そしてそれに相性の良い『チェンジザドンジャングル』、『オボロティガウォック』といった防御力に優れるデッキが並ぶ。
一方で殿堂の影響を大きく受けず、危険な立ち位置にいると予想されていた『青単ムートピア』や『赤白轟轟轟』はあまり使用者が伸びなかった。
そこから3回戦を行い、決勝トーナメントに進出したデッキタイプはこちら。
■ジョラゴンジョーカーズ:5
(無色タッチ赤4、緑1)
■チェンジザドンジャングル:2
■赤青覇道:1
見渡す限り『ジョーカーズ』の海。
『無色ジョーカーズ』と同じ数いた『赤青覇道』は1人のみとなってしまい、それを狩るはずだった『チェンジザドンジャングル』使いは厳しい戦いを強いられる格好となった。
この結果を踏まえて、数が多かったデッキタイプ、そして今後注目されるであろうデッキタイプについて、全国プレイヤーの意見を交えながら考察していこう。
このアーキタイプを長く愛用し、見事ベスト8に入ったZweiLanceにその特徴を聞いてみた。
ZweiLance「『ジョーカーズ』は極端な不利対面がなく、有象無象に強いのが特徴です。
特にコントロール使い多いと予想される今年の全国では、より一層輝くと思いました」
おそらく彼と同じ理由で使用したプレイヤーが大多数を占めるだろう。
前環境から活躍するこのアーキタイプには、このような特徴がある。
・《ジョジョジョ・ジョーカーズ》と《ガヨウ神》がもたらす安定感
・《ポクチンちん》《》による柔軟な対応力
・相手によって《アイアン・マンハッタン》ビートと《燃えるデット・ソード》ループという強力なフィニッシュ手段を使い分けることが可能
・もう片方の環境トップである『赤青覇道』には微不利だが、その代わりTier2以降のデッキにはほとんど五分~有利
安定性、柔軟性、フィニッシュ力、メタ上の立ち位置。すべてが高水準で揃った『ジョーカーズ』を全国の猛者が見逃すはずもなく、多くのプレイヤーに選択される結果に。
特に《燃えるデット・ソード》ループの存在によって「自分より遅いコントロールデッキほぼ全てに大幅な有利」というのは、相手が何を使ってくるかわからない全国大会ならではの強みだろう。
無色型の構築に関しては、ほぼ全員が「強いジョーカーズ4枚×9、《燃えるデット・ソード》、《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》、自由枠×2枚」という前環境からのテンプレートを崩すことなく使用。唯一、ZweiLanceが《アイアン・マンハッタン》を1枚削っていた程度。
自由枠には前環境で多く見られた《ワイルド・シールド・クライマックス》が多かったものの、個々人で個性が見られる。
とりわけ取り上げるべきは、やはり2位・3位に入賞した「モブ一族」が使用した《シャダンQ》だろう。3位のシュウに話を聞いてみた。
シュウ「《シャダンQ》は攻防両方の面で活躍して、なおかつ腐りにくいカードとして採用しました。
まずは速攻に対する防御面。速攻系に対しては《バイナラドア》で時間を稼いだ際に使用し、そのまま《ジョット・ガン・ジョラゴン》の軽減要員になることができ、カウンターの要求値が下がります。本来『ジョーカーズ』がケアできないシールド0の状況をケアできるのも偉いですね。
守りが固い相手に対しても《シャダンQ》は強く、軽減要員として使いまわすことでループ始動条件である《ジョット・ガン・ジョラゴン》2枚立ての要求値を下げることができます。
他の候補カードであった《ワイルド・シールド・クライマックス》、《戦慄のプレリュード》にありがちなデメリットも少なかったため、《シャダンQ》の採用に至りました。」
この枠は環境次第で他にも様々な選択肢が考えられる。1度自分で考えてみるのも面白いかもしれない。
その一方で、双極編第3弾で登場した『緑ジョーカーズ』を持ち込むプレイヤーも5人。優勝したギラサキもこの形だ。
ギラサキのデッキを手掛けたdottoは、無色型との違いをこう語っている。
dotto「緑型にする利点は《タイク・タイソンズ》と《ソーナンデス》に集約されていると考えています。
《タイク・タイソンズ》の投入により2コストが8枚になったことで、無色型よりも2コスト初動が安定して行えます。対面によっては除去に弱い《ヤッタレマン》よりこちらを優先することもあります。
《ソーナンデス》は書いてあること全てが強く、Jチェンジによる《ジョット・ガン・ジョラゴン》早出し、マッハファイターによる一部踏み倒しメタへの耐性、マナ回収による動きの柔軟性。どこをとっても非常に強いカードです」
今までテンプレートが確立されておらず、あまり使用者がいなかった『緑ジョーカーズ』。
ギラサキの優勝をきっかけに、これから競技シーンで目にする機会も多くなるだろう。
ゆうせいなど旧殿堂で『赤青バスター』などのビートダウンを好んでいたプレイヤーは、そのままこのデッキに乗り換えた印象だ。
『赤青バスター』を愛用していたランディーもその1人。使用理由をこう語る。
ランディー「『ジョーカーズ』が多いと読み、それに有利を取れている+デッキパワーが高い『赤青覇道』を選択しました。
3ターン《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の上ブレで多少の不利対面なら捲れますし、《Dの牢閣 メメント守神宮》が入ってない地雷にも優位に立てます」
2ブロック環境の《“龍装”チュリス》《蒼き団長 ドギラゴン剣》と例えられることもある《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》のコンボが旧環境終盤に環境入りし、殿堂の影響を受けずそのまま環境トップへ。
ここ1ヶ月でリストが洗練化され、《》を多投するテンプレートが確立。踏み倒しメタを避けながらビートダウンに移行できるなど、多角的な攻め方ができる特徴を持つ。
《異端流し オニカマス》や≪マグナム・ルピア/クリムゾン・チャージャー≫、《奇天烈 シャッフ》といった軽量メタカードを多く積めるのも魅力だろう。特に小型で刻むゲーム展開が多いこのデッキにおいて、《異端流し オニカマス》は選ばれないアタッカーとして非常に優秀だ。
また、このデッキを使用したプレイヤーの半数に共通する特徴がある。それは全国大会で初めて世に出た《海底鬼面城》の採用である。
東北を代表するデッキビルダー、あー/中村発案のこのカードが何をもたらしたのか……唯一『赤青覇道』でベスト8に入ったいわなに話を聞いてみた。
いわな「《海底鬼面城》には2つの強さがあります。それは『手札を増やせること』と、『手札を減らせること』です。
1つ目の強さはご想像の通り、手札消費が激しい《“必駆”蛮触礼亞》を用いたプランと相性が良いということですね。《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の追加ターンにも2ドローできるため、追撃の打点も用意しやすくなりました。
先攻1ターン目に《海底鬼面城》を貼ると、2ターン目《異端流し オニカマス》→3ターン目《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》《“轟轟轟”ブランド》という、本来後攻でしかできない最強パターンを先攻でも行うことができます。
しかし手札枚数が増えると《“轟轟轟”ブランド》が使いにくいのではないか……。そうお考えかもしれませんが、このカードは3ターン目、4ターン目に別のカードと一緒にプレイすることで、1マナで手札を1枚減らせるカードとしても運用が可能です。後攻のときは基本的にこの使い方。
これが2つ目の強さで、使い方次第でむしろ《“轟轟轟”ブランド》を生かすこともできます。
総合的に見て『赤青覇道』とかなり相性が良いと感じました。」
元々自由枠が多いこのデッキタイプ。
《海底鬼面城》型だけでなく、今後新たな基盤が生み出される日が来るかもしれない。
殿堂で《時の法皇 ミラダンテⅫ》を失ったことで形を変え、新たな相棒として《ドンジャングルS7》を携えて環境入りを果たした。
ユーリ「一定数以上いることが予想される『赤青覇道』に安定して勝てる上に他のデッキにも広く有利がついているため、『チェンジザドンジャングル』を使いました」
基本的には旧環境の『チェンジザダンテ』と同じく、《Dの牢閣 メメント守神宮》基盤による高い防御力、≪ジャミング・チャフ≫を絡めた高いフィニッシュ力が魅力。多くのプレイヤーは《時の法皇 ミラダンテⅫ》も続投だ。
リストの傾向は大きく2つに別れており、3位となったRunoのリストは《超次元エナジー・ホール》の採用など、『チェンジザダンテ』の名残を残したものだ。
一方、ユーリや北のあーさんのリストは《ドンジャングルS7》のバリューを高める方向でアプローチしており、《神秘の宝箱》で《ドンジャングルS7》の弾を持ってきて、対面に合わせて《ニコル・ボーラス》などの強力カードを投げつけることができる。
そして『チェンジザダンテ』が多くのプレイヤーに親しまれた理由…… 構築自由度の高さは『チェンジザドンジャングル』になっても健在。
chaserの《》、北のあーさんの《フォース・アゲイン》など、個々人の個性を出しやすい構築が多く見られた。
しかし、『ジョーカーズ』に基本的に不利であることから全国大会での立ち位置はあまり良いものではなかった。
特にRunoは4位と大健闘したが、決勝トーナメントの対面は全て『ジョーカーズ』。胃に穴が開いてもおかしくないほどの地獄を味わったことだろう。
そして、今回の環境を完璧に読み切ったデッキ選択として、ここに紹介しようと思う。
前環境の終盤に突如出現したこのデッキ。特徴をまとめると、
「先攻4ターン目に高確率でコンボが始まって、受けトリガーを封殺しながら超過剰打点を作って倒す」
という《ベイB ジャック》プレミアム殿堂以降では最強クラスの高速コンボデッキ。
中核カードである《セイレーン・コンチェルト》が殿堂を回避し、全DMPが涙を流したことが最近のことのように思える。
しかし、このデッキはその下馬評に反して新殿堂環境序盤では鳴りを潜めていた。その最たる原因は環境に蔓延り始める呪文メタカードの存在だ。
流行の兆しを見せる《拷問ロスト・マインド》はクリティカルに刺さり、《奇石 タスリク》《正義の煌き オーリリア》を擁する『赤白轟轟轟』などには全くと言っていいほど勝てない。
その強さが仇となり、環境での風当たりはあまりに強い。しばらくは。
だがしかし、このデッキは全国大会の環境にかなりマッチしていたデッキだった。
その最大の理由は、今大会最多の『ジョーカーズ』に対し大幅な有利を取っているからだ。
そして、唯一使用したのはメタ読みの鋭さと環境の大穴デッキを見抜く力に定評があるしゃくれ副店長。
このデッキの使用に至った理由、気にならないわけがないだろう。
しゃくれ副店長「環境デッキを洗い出した際に、不利が少ないデッキは『ジョーカーズ』『赤白轟轟轟』、そして今回使用した『青単ムートピア』の3種だと考えました。
全国に出場するであろう強いプレイヤーはこの3つに辿り着くと予想し、さらにこの中で最も多いのは『ジョーカーズ』だと予想。
ただ、自分も『ジョーカーズ』を使ってしまうと、どうしてもミラーマッチの5割勝負が発生してしまいます。それを嫌って別の選択…… 特に不利が少なく、『ジョーカーズ』に有利を取れる『赤白轟轟轟』と『青単ムートピア』の2択に絞りました。
そこから先手後手で勝率がブレる『赤白轟轟轟』を諦め、同型が減少傾向かつ『ジョーカーズ』に対し圧倒的な勝率を叩き出せる『青単ムートピア』を選択しました。」
結果メタ読みが完璧に的中。上位は『ジョーカーズ』の海となり、まさに『青単ムートピア』の独壇場。
……のはずだったが、残念ながら2ブロックで振るわずしゃくれ副店長が上位に顔を出すことはなかった。
もし彼が上位卓にいたら……このトーナメントの結果もまた違ったものになっていたかもしれない。
全国大会以降は、上位を占めた『ジョーカーズ』に対するメタデッキ筆頭として競技シーンに現れることも多くなるだろう。
かつて起きた上位がムートピアまみれ……所謂「オールブルー」はすぐそこかもしれない。
全国プレイヤーの選択は、間違いなく環境を定義する。
2018年度の終わり、そして2019年度の始まりは上位を埋め尽くした『ジョーカーズ』の天下となった。
今後は『ジョーカーズ』に強い『青単ムートピア』『赤白轟轟轟』の流行は容易に予想できるが……、そこからさらに動き回るのがメタゲーム。
環境に対する答えは常に目まぐるしく変わる。今日の正解デッキは明日の不正解デッキなんて珍しい話じゃない。
それを正しく見据えるために研鑽を重ねる。それこそが、競技デュエル・マスターズの本質的な部分だ。
全国大会が終わってすぐ「超天篇」開始、そして「GRゾーン」の追加でさらなる盛り上がりを見せるデュエル・マスターズ。
2019年度のデュエル・マスターズは始まったばかり。あなたも答えのない海へ飛び込んでみてはどうか。
新殿堂施行から2週目、全国から集まった猛者たちのデッキ選択を見ていこう。
■ジョラゴンジョーカーズ:14
(無色タッチ赤9、緑5)
■赤青覇道:9
■チェンジザドンジャングル:5
■5色オボロティガウォック:3
■黒単デスザーク:2
■その他(使用者1名)
青単ムートピア
赤単革命チェンジ
赤黒墓地ソース
5色ビッグマナ
赤白轟轟轟
白単サッヴァーク
黒緑ドルマゲドン
最多数となったのは殿堂の影響を受けなかった『ジョーカーズ』。そのうち約2/3が殿堂前とほぼ同じ構築である『無色タッチ赤ジョーカーズ』を使用している。
次いで下馬評では『ジョーカーズ』と双璧を為す環境トップである『赤青覇道』、そしてそれに相性の良い『チェンジザドンジャングル』、『オボロティガウォック』といった防御力に優れるデッキが並ぶ。
一方で殿堂の影響を大きく受けず、危険な立ち位置にいると予想されていた『青単ムートピア』や『赤白轟轟轟』はあまり使用者が伸びなかった。
そこから3回戦を行い、決勝トーナメントに進出したデッキタイプはこちら。
■ジョラゴンジョーカーズ:5
(無色タッチ赤4、緑1)
■チェンジザドンジャングル:2
■赤青覇道:1
見渡す限り『ジョーカーズ』の海。
『無色ジョーカーズ』と同じ数いた『赤青覇道』は1人のみとなってしまい、それを狩るはずだった『チェンジザドンジャングル』使いは厳しい戦いを強いられる格好となった。
この結果を踏まえて、数が多かったデッキタイプ、そして今後注目されるであろうデッキタイプについて、全国プレイヤーの意見を交えながら考察していこう。
ジョラゴンジョーカーズ
使用者、本戦進出者ともに最多数となったデッキタイプは『ジョラゴンジョーカーズ』。このアーキタイプを長く愛用し、見事ベスト8に入ったZweiLanceにその特徴を聞いてみた。
ZweiLance「『ジョーカーズ』は極端な不利対面がなく、有象無象に強いのが特徴です。
特にコントロール使い多いと予想される今年の全国では、より一層輝くと思いました」
おそらく彼と同じ理由で使用したプレイヤーが大多数を占めるだろう。
前環境から活躍するこのアーキタイプには、このような特徴がある。
・《ジョジョジョ・ジョーカーズ》と《ガヨウ神》がもたらす安定感
・《ポクチンちん》《》による柔軟な対応力
・相手によって《アイアン・マンハッタン》ビートと《燃えるデット・ソード》ループという強力なフィニッシュ手段を使い分けることが可能
・もう片方の環境トップである『赤青覇道』には微不利だが、その代わりTier2以降のデッキにはほとんど五分~有利
安定性、柔軟性、フィニッシュ力、メタ上の立ち位置。すべてが高水準で揃った『ジョーカーズ』を全国の猛者が見逃すはずもなく、多くのプレイヤーに選択される結果に。
特に《燃えるデット・ソード》ループの存在によって「自分より遅いコントロールデッキほぼ全てに大幅な有利」というのは、相手が何を使ってくるかわからない全国大会ならではの強みだろう。
無色型の構築に関しては、ほぼ全員が「強いジョーカーズ4枚×9、《燃えるデット・ソード》、《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》、自由枠×2枚」という前環境からのテンプレートを崩すことなく使用。唯一、ZweiLanceが《アイアン・マンハッタン》を1枚削っていた程度。
自由枠には前環境で多く見られた《ワイルド・シールド・クライマックス》が多かったものの、個々人で個性が見られる。
とりわけ取り上げるべきは、やはり2位・3位に入賞した「モブ一族」が使用した《シャダンQ》だろう。3位のシュウに話を聞いてみた。
シュウ「《シャダンQ》は攻防両方の面で活躍して、なおかつ腐りにくいカードとして採用しました。
まずは速攻に対する防御面。速攻系に対しては《バイナラドア》で時間を稼いだ際に使用し、そのまま《ジョット・ガン・ジョラゴン》の軽減要員になることができ、カウンターの要求値が下がります。本来『ジョーカーズ』がケアできないシールド0の状況をケアできるのも偉いですね。
守りが固い相手に対しても《シャダンQ》は強く、軽減要員として使いまわすことでループ始動条件である《ジョット・ガン・ジョラゴン》2枚立ての要求値を下げることができます。
他の候補カードであった《ワイルド・シールド・クライマックス》、《戦慄のプレリュード》にありがちなデメリットも少なかったため、《シャダンQ》の採用に至りました。」
この枠は環境次第で他にも様々な選択肢が考えられる。1度自分で考えてみるのも面白いかもしれない。
その一方で、双極編第3弾で登場した『緑ジョーカーズ』を持ち込むプレイヤーも5人。優勝したギラサキもこの形だ。
ギラサキのデッキを手掛けたdottoは、無色型との違いをこう語っている。
dotto「緑型にする利点は《タイク・タイソンズ》と《ソーナンデス》に集約されていると考えています。
《タイク・タイソンズ》の投入により2コストが8枚になったことで、無色型よりも2コスト初動が安定して行えます。対面によっては除去に弱い《ヤッタレマン》よりこちらを優先することもあります。
《ソーナンデス》は書いてあること全てが強く、Jチェンジによる《ジョット・ガン・ジョラゴン》早出し、マッハファイターによる一部踏み倒しメタへの耐性、マナ回収による動きの柔軟性。どこをとっても非常に強いカードです」
ギラサキの優勝をきっかけに、これから競技シーンで目にする機会も多くなるだろう。
赤青覇道
『ジョーカーズ』と並んで環境最大手と見込まれていた『赤青覇道』が全体で2番手。ゆうせいなど旧殿堂で『赤青バスター』などのビートダウンを好んでいたプレイヤーは、そのままこのデッキに乗り換えた印象だ。
『赤青バスター』を愛用していたランディーもその1人。使用理由をこう語る。
ランディー「『ジョーカーズ』が多いと読み、それに有利を取れている+デッキパワーが高い『赤青覇道』を選択しました。
3ターン《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の上ブレで多少の不利対面なら捲れますし、《Dの牢閣 メメント守神宮》が入ってない地雷にも優位に立てます」
2ブロック環境の《“龍装”チュリス》《蒼き団長 ドギラゴン剣》と例えられることもある《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》のコンボが旧環境終盤に環境入りし、殿堂の影響を受けずそのまま環境トップへ。
ここ1ヶ月でリストが洗練化され、《》を多投するテンプレートが確立。踏み倒しメタを避けながらビートダウンに移行できるなど、多角的な攻め方ができる特徴を持つ。
《異端流し オニカマス》や≪マグナム・ルピア/クリムゾン・チャージャー≫、《奇天烈 シャッフ》といった軽量メタカードを多く積めるのも魅力だろう。特に小型で刻むゲーム展開が多いこのデッキにおいて、《異端流し オニカマス》は選ばれないアタッカーとして非常に優秀だ。
また、このデッキを使用したプレイヤーの半数に共通する特徴がある。それは全国大会で初めて世に出た《海底鬼面城》の採用である。
東北を代表するデッキビルダー、あー/中村発案のこのカードが何をもたらしたのか……唯一『赤青覇道』でベスト8に入ったいわなに話を聞いてみた。
いわな「《海底鬼面城》には2つの強さがあります。それは『手札を増やせること』と、『手札を減らせること』です。
1つ目の強さはご想像の通り、手札消費が激しい《“必駆”蛮触礼亞》を用いたプランと相性が良いということですね。《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の追加ターンにも2ドローできるため、追撃の打点も用意しやすくなりました。
先攻1ターン目に《海底鬼面城》を貼ると、2ターン目《異端流し オニカマス》→3ターン目《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》《“轟轟轟”ブランド》という、本来後攻でしかできない最強パターンを先攻でも行うことができます。
しかし手札枚数が増えると《“轟轟轟”ブランド》が使いにくいのではないか……。そうお考えかもしれませんが、このカードは3ターン目、4ターン目に別のカードと一緒にプレイすることで、1マナで手札を1枚減らせるカードとしても運用が可能です。後攻のときは基本的にこの使い方。
これが2つ目の強さで、使い方次第でむしろ《“轟轟轟”ブランド》を生かすこともできます。
総合的に見て『赤青覇道』とかなり相性が良いと感じました。」
元々自由枠が多いこのデッキタイプ。
《海底鬼面城》型だけでなく、今後新たな基盤が生み出される日が来るかもしれない。
チェンジザドンジャングル
高い防御力を誇りつつも自分から仕掛ける動きも強力、旧環境で多くのプレイヤーから支持を集めた『チェンジザダンテ』。一部のトッププレイヤーは《》リリースから環境終盤まで使い続けたほどだ。殿堂で《時の法皇 ミラダンテⅫ》を失ったことで形を変え、新たな相棒として《ドンジャングルS7》を携えて環境入りを果たした。
基本的には旧環境の『チェンジザダンテ』と同じく、《Dの牢閣 メメント守神宮》基盤による高い防御力、≪ジャミング・チャフ≫を絡めた高いフィニッシュ力が魅力。多くのプレイヤーは《時の法皇 ミラダンテⅫ》も続投だ。
リストの傾向は大きく2つに別れており、3位となったRunoのリストは《超次元エナジー・ホール》の採用など、『チェンジザダンテ』の名残を残したものだ。
一方、ユーリや北のあーさんのリストは《ドンジャングルS7》のバリューを高める方向でアプローチしており、《神秘の宝箱》で《ドンジャングルS7》の弾を持ってきて、対面に合わせて《ニコル・ボーラス》などの強力カードを投げつけることができる。
そして『チェンジザダンテ』が多くのプレイヤーに親しまれた理由…… 構築自由度の高さは『チェンジザドンジャングル』になっても健在。
chaserの《》、北のあーさんの《フォース・アゲイン》など、個々人の個性を出しやすい構築が多く見られた。
しかし、『ジョーカーズ』に基本的に不利であることから全国大会での立ち位置はあまり良いものではなかった。
特にRunoは4位と大健闘したが、決勝トーナメントの対面は全て『ジョーカーズ』。胃に穴が開いてもおかしくないほどの地獄を味わったことだろう。
青単ムートピア
使用者は1人だったが、新殿堂の影響を受けなかった代表的なデッキとして。そして、今回の環境を完璧に読み切ったデッキ選択として、ここに紹介しようと思う。
前環境の終盤に突如出現したこのデッキ。特徴をまとめると、
「先攻4ターン目に高確率でコンボが始まって、受けトリガーを封殺しながら超過剰打点を作って倒す」
という《ベイB ジャック》プレミアム殿堂以降では最強クラスの高速コンボデッキ。
中核カードである《セイレーン・コンチェルト》が殿堂を回避し、全DMPが涙を流したことが最近のことのように思える。
しかし、このデッキはその下馬評に反して新殿堂環境序盤では鳴りを潜めていた。その最たる原因は環境に蔓延り始める呪文メタカードの存在だ。
流行の兆しを見せる《拷問ロスト・マインド》はクリティカルに刺さり、《奇石 タスリク》《正義の煌き オーリリア》を擁する『赤白轟轟轟』などには全くと言っていいほど勝てない。
その強さが仇となり、環境での風当たりはあまりに強い。しばらくは。
だがしかし、このデッキは全国大会の環境にかなりマッチしていたデッキだった。
その最大の理由は、今大会最多の『ジョーカーズ』に対し大幅な有利を取っているからだ。
そして、唯一使用したのはメタ読みの鋭さと環境の大穴デッキを見抜く力に定評があるしゃくれ副店長。
このデッキの使用に至った理由、気にならないわけがないだろう。
しゃくれ副店長「環境デッキを洗い出した際に、不利が少ないデッキは『ジョーカーズ』『赤白轟轟轟』、そして今回使用した『青単ムートピア』の3種だと考えました。
全国に出場するであろう強いプレイヤーはこの3つに辿り着くと予想し、さらにこの中で最も多いのは『ジョーカーズ』だと予想。
ただ、自分も『ジョーカーズ』を使ってしまうと、どうしてもミラーマッチの5割勝負が発生してしまいます。それを嫌って別の選択…… 特に不利が少なく、『ジョーカーズ』に有利を取れる『赤白轟轟轟』と『青単ムートピア』の2択に絞りました。
そこから先手後手で勝率がブレる『赤白轟轟轟』を諦め、同型が減少傾向かつ『ジョーカーズ』に対し圧倒的な勝率を叩き出せる『青単ムートピア』を選択しました。」
結果メタ読みが完璧に的中。上位は『ジョーカーズ』の海となり、まさに『青単ムートピア』の独壇場。
……のはずだったが、残念ながら2ブロックで振るわずしゃくれ副店長が上位に顔を出すことはなかった。
もし彼が上位卓にいたら……このトーナメントの結果もまた違ったものになっていたかもしれない。
全国大会以降は、上位を占めた『ジョーカーズ』に対するメタデッキ筆頭として競技シーンに現れることも多くなるだろう。
かつて起きた上位がムートピアまみれ……所謂「オールブルー」はすぐそこかもしれない。
総括
全国プレイヤーの選択は、間違いなく環境を定義する。
2018年度の終わり、そして2019年度の始まりは上位を埋め尽くした『ジョーカーズ』の天下となった。
今後は『ジョーカーズ』に強い『青単ムートピア』『赤白轟轟轟』の流行は容易に予想できるが……、そこからさらに動き回るのがメタゲーム。
環境に対する答えは常に目まぐるしく変わる。今日の正解デッキは明日の不正解デッキなんて珍しい話じゃない。
それを正しく見据えるために研鑽を重ねる。それこそが、競技デュエル・マスターズの本質的な部分だ。
全国大会が終わってすぐ「超天篇」開始、そして「GRゾーン」の追加でさらなる盛り上がりを見せるデュエル・マスターズ。
2019年度のデュエル・マスターズは始まったばかり。あなたも答えのない海へ飛び込んでみてはどうか。
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