デュエル・マスターズ

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最強位決定戦 決勝戦:◆ドラ焼き vs. けっしー

ライター:秋山 大空
撮影者:後長 京介

 無冠の帝王と言う言葉がある。

 非常に高い実力を持っているが、それに見合ったビッグタイトルを得られていない人を指す言葉だ。
 見ている側としてはカッコよく聞こえる言葉かもしれない。素晴らしい実力を持っているんだろうな、と思うかもしれない。
 しかし、競技者としては実力の証明であると同時に、払拭したい称号でもある。

 今回決勝の席に着いた◆ドラ焼きは、その称号が頭を過るプレイヤーだった。

 2019年度DMPランキング1位となり、参戦権を得た全国大会2019にて4位。デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day1にて5位。
 更にデュエチューブで公開されているUDB(アルティメット・デュエマ・バトル)でもDMマシーンの異名と共にアルティメイターとして活躍している。

 どれも輝かしい実績だが、頂点を目指す者にとっては、惜しくも優勝に届かなかった悔しい記憶。

 その◆ドラ焼きのバックボーンを知っているけっしーは言う。

「◆ドラ焼きさんと自分じゃ、背負ってる物が違いすぎますから」

 確かに、「より知られている」と言う意味では違うかもしれない。

 だが彼もまた、2022年下期DMPランキング17位と言う確かな実績を持って本大会に参戦した強者であり、大型大会の優勝と言う栄冠を手にしたい者の一人なのだ。

 知られているからなんだと言うのだ。デュエル・マスターズのビッグタイトルはあまりにも狭き門で、実力があっても届かない選手は沢山いる。

 その選手たちの中で今、自分は栄冠に手が届く位置にいる。あと一歩踏み出せたら、あと一試合勝てたら。

「勝ちたい」

 この気持ちに比べれば、バックボーンは些事でしかない。

 結局、「勝ちたい」は誰だって同じなのだ。

Game 1

先攻:ドラ焼き  予選順位が上位の◆ドラ焼きが先攻となるが、『火単我我我ガイアール・ブランド』にとって先攻とは大きなアドバンテージだ。
 今まで勝ち続けてきた予選が、決勝戦での力となる。

 ◆ドラ焼きは2ターン目の《カンゴク入道》でスタート。

 対するけっしーは、2ターン連続で《テック団の波壊Go!》をマナチャージしてターン終了。

 マナ加速カードを多めに採用し、3ターン目の《キユリのASMラジオ》に重きを置いたけっしーの『サガループ』だが、ここに来て厳しい滑り出し。
 当然ながら対『火単我我我ガイアール・ブランド』において、この遅れは決定的な差となり得る。

 ◆ドラ焼きは少し考えるが、このチャンスを逃す気はさらさらない。

 《クミタテ・チュリス》を召喚し、《我我我ガイアール・ブランド》に進化。

 《カンゴク入道》でシールドをブレイク、《我我我ガイアール・ブランド》でWブレイク、効果を処理し《カンゴク入道》《クミタテ・チュリス》でブレイク&ブレイク。

けっしー「いやー…無理っすね…」

◆ドラ焼き 1-0 けっしー

「さっきずっと対我我我想定で一人回ししてたんですけど、キツいですね」

 次に勝利したとしても、最後にもう一度先攻の◆ドラ焼きに勝たなくてはならない。
 その未来がけっしーに重くのしかかる。

 だが、今までのデュエル・マスターズ テキストカバレージの歴史から見て言えば、大型大会の決勝は何が起こるかわからない。

 緊張、疲れ、トップデックにシールドトリガー…

 本当に、何が起こるかわからないのだ。

Game 2

先攻:けっしー

 けっしーは、最初に《生命と大地と轟破の決断》をチャージし、2ターン目の《悪魔妖精ベラドンナ》でマナ加速。

 一方《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を召喚し、1ターン目に召喚していた《凶戦士ブレイズ・クロー》に手をかけ、深く息を吐く◆ドラ焼き。

 表情は変わっていないように見えるが、《凶戦士ブレイズ・クロー》を持つ手が、手札を持つ手が震えている。

 緊張。

 歴戦のプレイヤーと言えど、この二文字からは逃げられない。

 一本先取し、勝利は目の前。そんな中でのシールドブレイクの瞬間となるとなおさらだ。

 《凶戦士ブレイズ・クロー》がシールドをブレイク。トリガー無し。

 《若き大長老 アプル》を召喚し、《凶戦士ブレイズ・クロー》への殴り返しを見据えるけっしーだが、◆ドラ焼きと《凶戦士ブレイズ・クロー》にそれを気にして止まっている時間はない。

 《凶戦士ブレイズ・クロー》《カンゴク入道》を追加し、シールドをブレイク。

 しかし、ブレイクしたシールドには《テック団の波壊Go!》

 ◆ドラ焼きのバトルゾーンにある4体が全て手札に戻され、攻撃の手が止まる。

 《テック団の波壊Go!》が早期にトリガーしたおかげで、残りシールドは3枚。

 少し余裕を持てる状態で《キユリのASMラジオ》をプレイするが、けっしーの表情は険しいままだ。

けっしー「いやー…」

 場に出したのは《霞み妖精ジャスミン》1枚。効果を使用し、ターンを終える。

 圧倒的な速度を誇る『火単我我我ガイアール・ブランド』だが、素のスピードアタッカーはそこまで多くない。

 空のバトルゾーンから3枚のシールドを割りダイレクトアタックを決めるには、《“罰怒“ブランド》《我我我ガイアール・ブランド》が必要だ。

 それらのカードがない今取れる手段は、けっしーのサガループを防ぎながら打点を並べることのみ。

 ◆ドラ焼きは《コッコ・武・ルピア》《若き大長老 アプル》を破壊し、《凶戦士ブレイズ・クロー》を召喚。

 《若き大長老 アプル》を破壊。次のターン攻撃しなければならない《凶戦士ブレイズ・クロー》を守るための選択。

 この選択によって、けっしーは勝利へのルートが明確になった。

 マナの《生命と大地と轟破の決断》《絶望神サガ》《Disジルコン》が登場。  まず《Disジルコン》の効果で墓地を1枚追加し、《絶望神サガ》効果で《絶望神サガ》を捨てループ開始。  墓地に11枚のクリーチャーと《禁断竜王 Vol-Val-8》があることを確認した後、《超神星DOOM・ドラゲリオン》が走り出す。

◆ドラ焼き 1-1 けっしー

 《コッコ・武・ルピア》《若き大長老 アプル》を破壊しなければ、けっしーはあのターンにループに入れなかったかもしれない。
 破壊していなくても、《霞み妖精ジャスミン》《悪魔妖精ベラドンナ》でマナ加速することでループに入れたかもしれない。
 その時のマナ加速で多色カードがタップインし、《生命と大地と轟破の決断》を撃てなかったかもしれない。

 今となっては別の選択をした結果はわからないが、これだけは確かだ。

 デュエル・マスターズは選択の連続だ。

 無限に等しい可能性は、数多の選択によって束ねられ、結果と言う形で出力されていく。

 こと勝負において、出力される結果は主に二つ。

 勝ったか、負けたかだ。

Game 3

先攻:ドラ焼き

 再び◆ドラ焼きの先攻。

 1ターン目に《クミタテ・チュリス》、2ターン目には《カンゴク入道》と、3ターンキルも可能なスタート。

 けっしーも、2ターン目に《悪魔妖精ベラドンナ》でのマナ加速からスタートし◆ドラ焼きに食らいつく。

 3ターン目だが試合は大詰め。二人の緊張も極限まで高まる中、◆ドラ焼きは震える手で《クミタテ・チュリス》を出し、即《我我我ガイアール・ブランド》に進化。

 《クミタテ・チュリス》で攻撃。《カンゴク入道》で攻撃。《我我我ガイアール・ブランド》で攻撃。

けっしー「お願いしまーす…!」

 盾に祈り、トリガーチェック。

「…ちょっと待ってくださいね」

 そう言いながらけっしーは一呼吸置く。

 何もなければそのままシールドを手札に加えるだけ。つまり、何かがあったということ。

 その何かとは… 《テック団の波壊Go!》

 コスト5以下のカードが手札に戻され、《我我我ガイアール・ブランド》は自身の効果で墓地へ送られる。

 返ってきたターン、けっしーがプレイしたのは《キユリのASMラジオ》

けっしー「お願いしまーす…!」

 山札の上から5枚。この5枚によっては、このターン中にループが決まるかもしれない。

 祈りを込めて5枚のカードを確認するが、場に出たのは《天災 デドダム》2体。

 次のターンが来るか不安が残るものの、4マナしかない現状においては、次のターンにでもループに入るための準備を整えられるだけでも良好と言えるだろう。

 1体目の効果処理、続けて2体目の効果処理。

「いやーこれは…!どうしたらいいんや…」

「すみませんもうちょっと時間かけさせてください」

 考えるけっしー。

 《キユリのASMラジオ》で山札の下へ送られた1枚目の《超神星DOOM・ドラゲリオン》
 そして今、《天災 デドダム》の効果で見えているのは最後の《超神星DOOM・ドラゲリオン》

 これを手札以外のゾーンに送ってしまうと、山札の下の《超神星DOOM・ドラゲリオン》にアクセスするしかなくなってしまう。

 本当に手札に加えなくていいのだろうか?けっしーのデッキに《水上第九院 シャコガイル》は入っていない。《禁断竜王 Vol-Val-8》でエクストラターンを取る関係上、山札の下から2枚目の《超神星DOOM・ドラゲリオン》にアクセスすると山札切れになる。
 《キユリのASMラジオ》で山札の下にカードを送れば問題ないが、手札の《絶望神サガ》を出すマナは残るだろうか?  慎重に確認し、山札の下の《超神星DOOM・ドラゲリオン》に辿り着くルートを決めたけっしーは、力強く《超神星DOOM・ドラゲリオン》をマナへ置き、更に《絶望神サガ》を墓地へ。更に《悪魔妖精ベラドンナ》を召喚。

けっしー「ハンデスで」

 捨てさせたカードは《クミタテ・チュリス》

 トリガーも踏ませた。ループの準備も万全。1枚のハンデスとは言え、出来る限りの妨害はした。
 シールドは残り1枚。あとはターンが返ってくることを祈るだけ。

 一方◆ドラ焼きとって、手札にある《グレイト“S-駆”》が捨てさせられなかったことは幸運だった。
 相手のシールドは残り1枚。あとはあのシールドを乗り越えるられることを祈るだけ。

 バトルゾーンは空。手札のスピードアタッカーは《グレイト“S-駆”》のみ。

 あと一点、あと一点足りたら。あと一歩踏み込めたら!

 ◆ドラ焼きのドロー。  静かな会場に、◆ドラ焼きの絞り出すような声が響く。 「お前…か…」

「お前か…!」 けっしー「マジか!それ入ってたんすか…!」

 調整の最後に、悩んだ末抜かないでおいたと言う最後の一枠、《"逆悪襲"ブランド》

 大会の最後に、彼が◆ドラ焼きの背中を押した。 ◆ドラ焼き 2-1 けっしー

Winner:◆ドラ焼き

けっしー「最後のシールド、G・ストライクでも良かったんですけどね…」

《グレイト“S-駆”》落とせんかった自分の負けか…」


 実は、念願の栄冠を手にしたのは◆ドラ焼きだけではない。

 同じく、長い時を経て大型大会での優勝を掴み取った者がいる。

 その名は、《凶戦士ブレイズ・クロー》  デュエル・マスターズ第1弾からずっと闘い続けた彼がテキストカバレージページの中で優勝したのは、2ブロック構築で開催された全国大会2018 エリア代表決定戦 ジャッジ大会の『火単ビートジョッキー』のみ。

 優勝と言えど、エリア代表決定戦は日本一決定戦への道の途中。
そしてオリジナルやアドバンスのような、1弾からのカードが使えるフォーマットでの大型大会での優勝は未だカバレージでの記録が存在しない。

 同期の《ゴースト・タッチ》《クリスタル・メモリー》はツインパクトに役目を譲り、一足先に優勝を掴んだ《怒りの影ブラック・フェザー》も『JO退化』と共に姿を消した。

 登場から21年もの間、速攻の代表的カードとして活躍しながらもビッグタイトルを勝ち取る機会が少なかった《凶戦士ブレイズ・クロー》

 ◆ドラ焼きは彼と共に闘い、彼と共に初の大型大会優勝を手にしたのだ。

 試合の最中は、バックボーンなど些細な事だ。

 しかし試合が終わった後、勝利を手にした後なら、バックボーンは喜びの素となり、プレイヤーを次へ向かわせる原動力となる。

 今ここに、◆ドラ焼きとデュエル・マスターズの歴史に新たな1ページが刻まれた。

※撮影時のみマスクを外しています。 おめでとう!初代最強位決定戦覇者 ◆ドラ焼き!

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