DMGP2nd 準決勝:尖迅 vs. トップライフ
《不敗のダイハード・リュウセイ》 を手に入れた8人のうち、5人までもが何かしらのループコンボを内蔵したデッキを使用するという結果となったDMGP-2nd。
今のデュエマの環境において、ループコンボだけが支配的なデッキではないと思うが、しかし、予選8回戦を闘いぬき、なおかつ、決勝ラウンドが6回戦もあるという長丁場、かつ多人数が参加する大会においてかなり有利な選択であることは間違いないだろう。
長丁場、かつ多人数な大会でループコンボを内蔵したデッキが有利な理由はふたつある。
まずひとつめは、シールドを殴るリスクを取らなくてよいことだ。
デュエマに、殴られたシールドが手札になり、なおかつシールド・トリガーというルールがある以上、相手のシールドを殴るという行為には常に枚数かマナで、もしくは両方でアドバンテージをとられるというリスクが伴う。
長期戦になればなるほどそのリスクは積み重なることになるので、長期戦でそのリスクをとらないですむというのは、それだけで勝ち抜く上でのアドバンテージになり得るということだ。
次に、ループコンボは通常のデュエマのやり取りと別軸の勝ち方なので、正しい対処法を知らない場合、そのまま負けてしまうということだ。
大人数が参加する大会であれば、ループへの正しい対処法を知らないプレイヤーと当たる可能性も高くなるので、デッキ相性以上の成績を期待することができてしまう。
元々相性が悪くて勝てないと切り捨てているならいざしらず、存在を考慮に全く入れていないデッキであれば勝つことはほぼ不可能であるし、すごく極端な例をあげれば、コンボデッキ相手に強いと言われる 《解体人形ジェニー》 のような手札破壊ですら、選択肢を間違えてしまえば有効打とならないのだ。
グランプリのような形式の大会でループを使用することは戦略上有効であるのは事実であるしわかりやすい。そんなわけで、ループを持ち込むプレイヤーの絶対数は増え、上位にループを内蔵したデッキが増えていくわけだ。
追記するなら、上級者になるほどリスクのある行動を嫌う傾向があるので、ますますループが上位に増える。
そんな中でも、相手の速度にあわせてループとビートを切り替えられる、所謂コンボビートと言われるデッキタイプは、理論上は最強のデッキと言っていいだろう。相手のデッキの有利なタイミングにあわせて、こちらの勝負のタイミングを切り替えられるのだから、うまく組み上げることができれば、理論上はほとんどのデッキ相手に有利になる。
その域にもっとも近いデッキのひとつが、今回、尖迅が持ち込んだサソリスループだ。
《龍覇 サソリス》 と 《邪帝斧 ボアロアックス》 の持つ展開力に、 《S級原始 サンマッド》 の爆発力を組み合わせたサソリスビート。
≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の持つ1回の召喚が複数のクリーチャーを出せるという能力によって潜在的にもたらされるループ性能。それが 《S級原始 サンマッド》 のマナに送り込む能力が自分のクリーチャーにも使えることで進化元ごとマナや手札に移動させられることで顕在化した新たなるボアロループ。
《邪帝斧 ボアロアックス》 と 《S級原始 サンマッド》 という共通点があることで可能となったこのデッキ。サソリスの面での展開力と、ボアロループのコンボに同時に対処することは難しく、いざとなれば 《S級原始 サンマッド》による除去や急戦も可能ということで、とれる選択だけを見れば最強に限りなく近いコンセプトのデッキだ。
じゃんけんで先攻は尖迅。
1ターン目の 《トレジャー・マップ》 で長考の末に《掘師の銀》を手札に入れる。対するトップライフは《偽りの王 モーツァルト》をマナチャージする。尖迅は、2ターン目に 《霞み妖精ジャスミン》 をプレイし、マナ加速する。
ここでトップライフは2ターン目も《偽りの王 ヴィルヘルム》をマナチャージと展開ができない。
尖迅は 《天真妖精オチャッピィ》 でマナを加速し、《次元流の豪力》と 《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》 、さらに 《龍覇 マリニャン》 が並ぶというトップレベルのマナゾーンを作り出す。そう、このサソリスデッキはマナゾーンを活用するデッキだけに、どのようなマナゾーンが形成されているかがゲームの勝敗に直結するのだ。
一方でトップライフは、続くターンにプレイした《メンデルスゾーン》を2枚ともはずしてしまい、手札を1枚使ってただ、墓地を増やすだけという結果になってしまう。
続くターン。尖迅はデッキ名にもなっているキーカード 《龍覇 サソリス》 を召喚し、 《邪帝斧 ボアロアックス》 を装備させるとともに、その装備時の能力で《次元流の豪力》をマナゾーンからバトルゾーンに呼び出し、さらに 《勝利のリュウセイ・カイザー》 を超次元ゾーンから。これで、合計マナコストは前のターンに召喚していた 《天真妖精オチャッピィ》 とあわせて、3+6+5+7で20を超え、 《邪帝斧 ボアロアックス》 は ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ へと龍解。
先ほどマナ加速に失敗しているトップライフは、《フェアリーの火の子祭》をプレイしてマナを増やすのみにとどまる。
一方、 ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の建築に成功している尖迅は、このターンも一気に展開をすすめる。まずは 《天真妖精オチャッピィ》 を 《S級原始 サンマッド》 へと進化させると、 ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の能力で 《龍覇 マリニャン》 をマナゾーンから呼び出し、 《神秘の集う遺跡 エウル=ブッカ》 をバトルゾーンに。そして、保留されていた 《S級原始 サンマッド》 の能力は、 《S級原始 サンマッド》 自身へと使用して、マナを加速しつつ ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の能力で再利用できるようにする。
さらに、 《トレジャー・マップ》 を使用すると、 《霞み妖精ジャスミン》を手に入れ即召喚、マナを増やしつつ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫で 《雪精 ジャーベル》 を呼び出し、その能力で 《天真妖精オチャッピィ》 を手に入れる。
これによって、次のターンにむけての盤面構築だけでなく、トップライフが《超戦龍覇 モルトNEXT》 と 《闘将銀河城 ハートバーン》 で一気にシールドをつめにきたとしても、 《天真妖精オチャッピィ》 と≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫のコンボでマナゾーンから 《掘師の銀》 を呼び出せるという防御態勢まで整えてしまう。
結局、返しのターンに効果的なアクションの無いトップライフは、 《フェアリーの火の子祭》 を使用するのみでターンを終える。
尖迅のターン開始時に 《神秘の集う遺跡 エウル=ブッカ》 が龍解し、≪遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ≫ となりコスト軽減が加速することでコンボ開始の準備が完全に整う。
まずは、 《天真妖精オチャッピィ》 を召喚すると 《S級原始 サンマッド》を 《雪精 ジャーベル》 を進化元にして呼び出し、ふたたび自身の能力でマナゾーンに送り込むことで 《雪精 ジャーベル》 も巻き込んでマナゾーンに送り込むことに成功し、 ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ で再利用可能とする。
そして、そうやって再利用可能になった 《雪精 ジャーベル》 を2枚目の 《天真妖精オチャッピィ》 の召喚によってバトルゾーンに引っ張りだし、さらに《雪精 ジャーベル》 を手に入れて、これを召喚する。
《雪精 ジャーベル》 がバトルゾーンにでた時の能力で 《S級原始 サンマッド》 を 《雪精 ジャーベル》 自身を進化元にしつつマナゾーンに戻し、 《雪精 ジャーベル》 の能力で手に入れたクリーチャーを召喚して 《雪精 ジャーベル》 をバトルゾーンに出しつつまたもクリーチャーを探すという動きを繰り返し、山札を掘り下げていく。
そして、マナゾーンに 《獣王の手甲》 が置かれ、手札に 《雪精 ジャーベル》 の能力で 《アラゴト・ムスビ》 が手札に入ったところで、パーツはほぼ揃ったため、マナゾーンから 《ダンディ・ナスオ》 を呼び出してマナゾーンに 《曲芸メイド・リン・ララバイ》 を置く。
《アラゴト・ムスビ》 のマーシャルタッチによってさらに簡単に掘り進められるようになった 《S級原始 サンマッド》 と 《雪精 ジャーベル》 のコンボは、程なくして2枚目の 《S級原始 サンマッド》 を見つけ出し、完璧なループを完成させるのだった。
尖迅 1-0 トップライフ
お手本のようなループが決まったGame 1。
そんな尖迅に対するトップライフが使用するのは、火自然モルトネクスト、以下モルネクだ。
サソリスループが、多彩な戦略を持ち、多くのデッキに対応できるデッキであるとすれば、モルネクは、一点集中によって多くのデッキを蹴散らすことに特化したデッキといえる。
《超戦龍覇 モルトNEXT》 と 《闘将銀河城 ハートバーン》 による、コンボと呼ぶのもおこがましい1枚コンボは、7マナと1枚のカードでシールド5枚の状態からのダイレクトアタックを可能としている。 《超戦龍覇 モルトNEXT》は、1枚のカードが1ターンで出せる最大火力の限界値のカードと言っていいだろう。
つまりは、モルネクを使う上でもっとも大事なことは、いかに早く 《超戦龍覇 モルトNEXT》 を叩きつけるかと、トリガーを引かないか、の2点だ。
そして、実は尖迅のループ型のサソリスに取って、これは数少ない弱点を攻められる形でもあるのだ。
40枚のデッキに多くのコンセプトを投入する以上、それこそ 《S級原始 サンマッド》 のように複数の役割を持ったカードを入れたとしても完全な万能はありえない。そして、尖迅のデッキの場合、防御力にそのしわ寄せがきているのだ。
尖迅のデッキには、防御的なトリガーがまったく入っておらず、防御は1枚の《光牙忍ハヤブサマル》 と、あとは ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ 環境下での《天真妖精オチャッピィ》 のSバックからの 《掘師の銀》 くらいしか備えていないのだ。
つまり、 《超戦龍覇 モルトNEXT》 が出されてしまえば、 《光牙忍ハヤブサマル》 を持っていない限り、負けは確定しているようなものなのだ。
これは ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ への龍解がコンボの絶対条件のため速度が早いわけではないボアロループにとってはかなり厳しい条件であると言える。
さらに、トップライフのデッキは、 《フェアリー・ギフト》 まで投入された速度特化型なのである。Game1では、《メンデルスゾーン》が2枚外れてしまうという状況だったため速度的にまったく間に合わない状態ではあったが、最速、3ターン目 《超戦龍覇 モルトNEXT》 もありえる構築なのだ。
したがって、尖迅側はトップライフの 《メンデルスゾーン》 でのマナ加速と手札に 《光牙忍ハヤブサマル》 があるかいなか次第では早々に殴りに行かなければならないのだが、そうなると今度は別の問題が浮上する。
トップライフのモルネクは、同型やレッドゾーンとの殴り合いを制するべく、合計7枚の革命ゼロトリガーが入ったいわゆるカウンター型の構築なのだ。
長期戦に置いて、もっともリスクの少ない構築として尖迅が選択したサソリスループ。その数少ない「取ったリスク」をついてくるのがトップライフのモルネクだと言ってもいいだろう。
トップライフは、会場に最後に残った「殴り切るデッキ」としての矜持をかけて、2戦目に臨む。
先手のトップライフは2ターン連続で火単のカードをマナチャージ。マナ加速には自然マナが必要なので、つまりはマナ加速をできていない状態ということだ。しかし、対する尖迅も、2ターン目までアクションが無い。
結果、このゲームのファーストアクションは3ターン目に尖迅がプレイした《トレジャー・マップ》 。これで持ってきた 《ダンディ・ナスオ》 で《掘師の銀》をマナゾーンに置く。墓地に送り込んだのは《曲芸メイド・リン・ララバイ》。
トップライフは 《フェアリー・ギフト》 をチャージして《メンデルスゾーン》をプレイするが、今回もマナ加速は1枚。対して尖迅は 《天真妖精オチャッピィ》 でさらにマナ加速しつつ、盤面を作っていく。だが、これを一掃するのが返しでトップライフが呼び出した 《メガ・マグマ・ドラゴン》 。
尖迅は 《雪精 ジャーベル》 をプレイすると 《雪精 ジャーベル》 を手に入れ、続くターンの展開に備える。
だが、そんな未来の展望は、トップライフの代名詞、 《超戦龍覇 モルトNEXT》 からの 《闘将銀河城 ハートバーン》 が吹き飛ばしたのだった。
尖迅 1-1 トップライフ
長いループが続いたGame 1にくらべると、あまりにもあっけなく終わったように見えるGame 2。だが、このふたつのデッキの特性を考えると、むしろこれが本来の相性であると言ってもいいだろう。
そもそも、尖迅はニコ生のインタビューでも言っていたが、殴るリスクをかなり嫌うプレイヤーであり、彼がサソリスループを使用している最大の理由は「殴ることもできるループ」だからではなく「対応力が高くマナ加速がある環境最速レベルのループ」だからだろう。
そして、その代償として負ったリスクである「一撃突破への億弱さ」を攻められる形となっているわけだ。
こうして見ると、プレイ以前の大会に持ち込む前、デッキを構築している段階で、デュエマはなにかしらのリスクを負うゲームであるという見方もできそうだ。
では、トップライフのデッキが負っているリスクとは何か?
シールド・トリガーに止められてしまう、というのは、実はリスクのようでそうでもない。あくまでも 《超戦龍覇 モルトNEXT》 と 《闘将銀河城 ハートバーン》 の一撃必殺がトリガーを引いたら止まるというだけで、相手のデッキにトリガーがあるなら他の選択肢をとって攻めることだってモルネクには可能なのだ。
むしろ、構築上の最大のリスクは、そのデッキ構造のいびつさにある。
最速の 《超戦龍覇 モルトNEXT》 のために限界まで 《メンデルスゾーン》と 《フェアリー・ギフト》 を投入し、全力のカウンターの為に7枚の革命ゼロトリガーを投入していることで、デッキの中に《メンデルスゾーン》でマナ加速できないカードが14枚、 《ボルシャック・ドギラゴン》 でめくれても革命ゼロトリガーが成功しないカードが18枚も入っているのだ。
ここまで、2回プレイした《メンデルスゾーン》で合計1枚しかマナ加速できていないのも決して偶然ではない。有り体に言えば、トップライフの構築は、運による上振れと下振れの差が激しい構築なのだ。
運が下振れた時に何も出来ないリスクと引き換えに手に入れたのは、最強の剣と最強の盾。
この最強の剣への対処手段を実質持たない尖迅は、トップライフの運が下振れることを祈るしかない。
先手の尖迅が 《獣王の手甲》 、トップライフが《偽りの王 ヴィルヘルム》というスタート。尖迅は2ターン目に 《侵革目 パラスラプト》 で 《天真妖精オチャッピィ》 を手札に入れる。
トップライフは、2ターン目に《メンデルスゾーン》をプレイすることに成功するが、返しで尖迅も 《天真妖精オチャッピィ》 で 《トレジャー・マップ》 を墓地からマナゾーンに戻す。
トップライフは《フェアリーの火の子祭》をプレイする。
続くターンに尖迅は 《次元流の豪力》 で 《勝利のリュウセイ・カイザー》を呼び出す。したがって、次のターンにトップライフが使用できるマナは5マナ。
ここでトップライフが使用したのは 《フェアリー・ギフト》 !
そして 《超戦龍覇 モルトNEXT》 。もってくるのは当然の 《闘将銀河城 ハートバーン》 。
ここで尖迅はほぼ唯一の防御手段である 《光牙忍ハヤブサマル》 を持っていたため、ギリギリ生き延びることに成功したが、シールドはゼロとなり、返しのターンのアクションがかなり限定されてしまう。
まずは 《龍覇 サソリス》 で 《邪帝斧 ボアロアックス》 を持ってくると、その能力で 《掘師の銀》 をバトルゾーンに出す。この 《掘師の銀》 に対してトップライフは ≪超戦覇龍 ガイNEXT≫を 《闘将銀河城 ハートバーン》 へと龍回避させることで処理する。
マナゾーンに 《掘師の銀》 が戻ってきたことで、1マナうまれたので、これで《トレジャー・マップ》をプレイすると、 《S級原始 サンマッド》 を手札に加える。
ここで、尖迅は長考。
当然、ここはアタックするしかない。少なくとも、 《天真妖精オチャッピィ》をアタックして 《S級原始 サンマッド》 へと侵略し 《超戦龍覇 モルトNEXT》 をマナゾーンに送り込まなければならない。これは 《超戦龍覇 モルトNEXT》 へとアタックを宣言して、そのままマナゾーンに送り込めばアタックはキャンセルされるので、相手のシールドをブレイクするリスクを持たずに相手の攻め手を処理できる。
だが、トップライフのバトルゾーンには 《闘将銀河城 ハートバーン》 が残っているのだ。すべてのドラゴンがスピード・アタッカーになってしまうこの状況で、尖迅のシールドはゼロ。トップライフがトップデックでトップドラゴンをすれば、それでゲームは終わりなのだ。
相手に次のターンを与えるリスクを取るか、このターンにゲームを終わらせるべく、相手のシールドをブレイクするリスクを取るか。リスクのない勝利を求めてループデッキを選択したのに、リスクヘッジの選択を求められることとなった尖迅。
結果、尖迅の 《天真妖精オチャッピィ》 のアタック先は、トップライフのシールド。トップライフの《超戦龍覇 モルトNEXT》は、ダイレクトアタックこそ失敗したものの、尖迅をリスクのある戦いのフィールドに引きずり出すことに成功したのだ。
《天真妖精オチャッピィ》 がアタックして、 《S級原始 サンマッド》 へと侵略し、 《超戦龍覇 モルトNEXT》 をマナゾーンに送り込みつつ、トリプル・ブレイク。そして 《勝利のリュウセイ・カイザー》 がダブルブレイクで、トップライフのシールドをゼロとする。
そして、最後の殴り手である 《次元流の豪力》 のダイレクトアタックへは、革命ゼロトリガーの使用が宣言される。使用されるのは……3枚の 《ボルシャック・ドギラゴン》 と、 《革命の鉄拳》 。尖迅は思わず頭を抱える。これでほとんどカウンターアタックされることが確実になってしまったのだ。
尖迅にできることは、祈ることだけ。
まずは、1体目の 《ボルシャック・ドギラゴン》 が解決。めくられた山札のトップは 《革命の鉄拳》 。したがって、この 《ボルシャック・ドギラゴン》はバトルゾーンに出ることはできない。トップライフは、山札のトップをリフレッシュするために 《革命の鉄拳》 の使用を宣言し、《偽りの王 モーツァルト》をめくって《次元流の豪力》を除去、このターンのダイレクトアタックを防ぐ。
そして、残る2体の 《ボルシャック・ドギラゴン》 のチェック。この 《ボルシャック・ドギラゴン》 がバトルゾーンにでれば、トップライフの勝利は確定だ。……だが、ふたたびめくれたトップは 《革命の鉄拳》 。したがって、どちらの 《ボルシャック・ドギラゴン》 もバトルゾーンに出ることはできない。
とはいえ、トップライフはシールド5枚分手札が増えている上に、すでにマナも7マナがオープンだ。 《闘将銀河城 ハートバーン》 の能力のバックアップの元、続くターンにダイレクトアタックが決まることは明らかだった。
はずなのだが。
トップライフは長考すると、なんと、《フェアリーの火の子祭》を2回プレイするだけでターンを返してしまったのだ。
リスクを背負った賭けに負けたかと思われた尖迅だったが、なかったはずのターンがふたたび帰ってきたのだ。
アタックできるクリーチャーは 《龍覇 サソリス》 《勝利のリュウセイ・カイザー》 《S級原始 サンマッド》 の3体。
一方、トップライフの手札にある革命ゼロトリガーは、さきほどバトルゾーンに出損って手札に戻った3体の 《ボルシャック・ドギラゴン》 と、トップでめくれてそのまま手札に入った 《革命の鉄拳》 の4枚だ。
尖迅は 《龍覇 サソリス》 でアタック。そして、これに対してトップライフは先ほどの4枚の革命ゼロトリガーすべての使用を宣言する。
まず、 《ボルシャック・ドギラゴン》 で 《次元龍覇 グレンモルト「覇」》がめくられ、バトルゾーンにでることに成功。この時点で、このターンを凌げば、トップライフの勝利はほぼ確実となる。
つづく2体目の 《ボルシャック・ドギラゴン》 は、 《革命の鉄拳》 をめくってしまい、着地に失敗。前のターンと同じように、山札の上をリフレッシュするべく 《革命の鉄拳》 を解決しようとするトップライフだったのだが……ここでめくれた4枚のカードがすべて呪文。すなわち、相手のクリーチャーを除去することができない。
最後の 《ボルシャック・ドギラゴン》 は 《メガ・マナロック・ドラゴン》をめくり見事着地に成功、結果、2体の 《ボルシャック・ドギラゴン》 が着地したので、 《龍覇 サソリス》 と 《S級原始 サンマッド》 がバトルで破壊される。
尖迅のバトルゾーンに残ったのは 《勝利のリュウセイ・カイザー》 。
トップライフの手札に残ったのは1枚の 《ボルシャック・ドギラゴン》 。
もう、ここまできたら、リスクでもプレイでもない。ただの運だけのゲームだ。
ただし、その運だけのゲームに参加する資格があるのは、適切なプレイをして、リスクを背負ったプレイヤーだけだ。
トップライフがめくった山札の上は 《メンデルスゾーン》 。
尖迅 2-1 トップライフ
Winner:尖迅
自分のデッキ構築が潜在的に持っているリスクが最大限に発揮されてしまい、ここで敗北となってしまったトップライフ。
だが、誰よりもリスクを取りたくなかった尖迅を、リスクを抱えた殴り合いのフィールドに引きずり出し、トップ勝負にまで持ち込んだのも 《フェアリー・ギフト》 までも投入したトップライフのデッキ構築だ。
最後は、山札の上をめくるだけの運のゲームだった。
だが、そのランダムな山札の上がめくられるのを誰もが待ち、興奮できたのは、このふたりがこの瞬間に戦っていたゲームだったからに他ならない。
今のデュエマの環境において、ループコンボだけが支配的なデッキではないと思うが、しかし、予選8回戦を闘いぬき、なおかつ、決勝ラウンドが6回戦もあるという長丁場、かつ多人数が参加する大会においてかなり有利な選択であることは間違いないだろう。
長丁場、かつ多人数な大会でループコンボを内蔵したデッキが有利な理由はふたつある。
まずひとつめは、シールドを殴るリスクを取らなくてよいことだ。
デュエマに、殴られたシールドが手札になり、なおかつシールド・トリガーというルールがある以上、相手のシールドを殴るという行為には常に枚数かマナで、もしくは両方でアドバンテージをとられるというリスクが伴う。
長期戦になればなるほどそのリスクは積み重なることになるので、長期戦でそのリスクをとらないですむというのは、それだけで勝ち抜く上でのアドバンテージになり得るということだ。
次に、ループコンボは通常のデュエマのやり取りと別軸の勝ち方なので、正しい対処法を知らない場合、そのまま負けてしまうということだ。
大人数が参加する大会であれば、ループへの正しい対処法を知らないプレイヤーと当たる可能性も高くなるので、デッキ相性以上の成績を期待することができてしまう。
元々相性が悪くて勝てないと切り捨てているならいざしらず、存在を考慮に全く入れていないデッキであれば勝つことはほぼ不可能であるし、すごく極端な例をあげれば、コンボデッキ相手に強いと言われる 《解体人形ジェニー》 のような手札破壊ですら、選択肢を間違えてしまえば有効打とならないのだ。
グランプリのような形式の大会でループを使用することは戦略上有効であるのは事実であるしわかりやすい。そんなわけで、ループを持ち込むプレイヤーの絶対数は増え、上位にループを内蔵したデッキが増えていくわけだ。
追記するなら、上級者になるほどリスクのある行動を嫌う傾向があるので、ますますループが上位に増える。
そんな中でも、相手の速度にあわせてループとビートを切り替えられる、所謂コンボビートと言われるデッキタイプは、理論上は最強のデッキと言っていいだろう。相手のデッキの有利なタイミングにあわせて、こちらの勝負のタイミングを切り替えられるのだから、うまく組み上げることができれば、理論上はほとんどのデッキ相手に有利になる。
その域にもっとも近いデッキのひとつが、今回、尖迅が持ち込んだサソリスループだ。
《龍覇 サソリス》 と 《邪帝斧 ボアロアックス》 の持つ展開力に、 《S級原始 サンマッド》 の爆発力を組み合わせたサソリスビート。
≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の持つ1回の召喚が複数のクリーチャーを出せるという能力によって潜在的にもたらされるループ性能。それが 《S級原始 サンマッド》 のマナに送り込む能力が自分のクリーチャーにも使えることで進化元ごとマナや手札に移動させられることで顕在化した新たなるボアロループ。
《邪帝斧 ボアロアックス》 と 《S級原始 サンマッド》 という共通点があることで可能となったこのデッキ。サソリスの面での展開力と、ボアロループのコンボに同時に対処することは難しく、いざとなれば 《S級原始 サンマッド》による除去や急戦も可能ということで、とれる選択だけを見れば最強に限りなく近いコンセプトのデッキだ。
Game 1
じゃんけんで先攻は尖迅。
1ターン目の 《トレジャー・マップ》 で長考の末に《掘師の銀》を手札に入れる。対するトップライフは《偽りの王 モーツァルト》をマナチャージする。尖迅は、2ターン目に 《霞み妖精ジャスミン》 をプレイし、マナ加速する。
ここでトップライフは2ターン目も《偽りの王 ヴィルヘルム》をマナチャージと展開ができない。
尖迅は 《天真妖精オチャッピィ》 でマナを加速し、《次元流の豪力》と 《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》 、さらに 《龍覇 マリニャン》 が並ぶというトップレベルのマナゾーンを作り出す。そう、このサソリスデッキはマナゾーンを活用するデッキだけに、どのようなマナゾーンが形成されているかがゲームの勝敗に直結するのだ。
一方でトップライフは、続くターンにプレイした《メンデルスゾーン》を2枚ともはずしてしまい、手札を1枚使ってただ、墓地を増やすだけという結果になってしまう。
続くターン。尖迅はデッキ名にもなっているキーカード 《龍覇 サソリス》 を召喚し、 《邪帝斧 ボアロアックス》 を装備させるとともに、その装備時の能力で《次元流の豪力》をマナゾーンからバトルゾーンに呼び出し、さらに 《勝利のリュウセイ・カイザー》 を超次元ゾーンから。これで、合計マナコストは前のターンに召喚していた 《天真妖精オチャッピィ》 とあわせて、3+6+5+7で20を超え、 《邪帝斧 ボアロアックス》 は ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ へと龍解。
先ほどマナ加速に失敗しているトップライフは、《フェアリーの火の子祭》をプレイしてマナを増やすのみにとどまる。
一方、 ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の建築に成功している尖迅は、このターンも一気に展開をすすめる。まずは 《天真妖精オチャッピィ》 を 《S級原始 サンマッド》 へと進化させると、 ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の能力で 《龍覇 マリニャン》 をマナゾーンから呼び出し、 《神秘の集う遺跡 エウル=ブッカ》 をバトルゾーンに。そして、保留されていた 《S級原始 サンマッド》 の能力は、 《S級原始 サンマッド》 自身へと使用して、マナを加速しつつ ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ の能力で再利用できるようにする。
さらに、 《トレジャー・マップ》 を使用すると、 《霞み妖精ジャスミン》を手に入れ即召喚、マナを増やしつつ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫で 《雪精 ジャーベル》 を呼び出し、その能力で 《天真妖精オチャッピィ》 を手に入れる。
これによって、次のターンにむけての盤面構築だけでなく、トップライフが《超戦龍覇 モルトNEXT》 と 《闘将銀河城 ハートバーン》 で一気にシールドをつめにきたとしても、 《天真妖精オチャッピィ》 と≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫のコンボでマナゾーンから 《掘師の銀》 を呼び出せるという防御態勢まで整えてしまう。
結局、返しのターンに効果的なアクションの無いトップライフは、 《フェアリーの火の子祭》 を使用するのみでターンを終える。
尖迅のターン開始時に 《神秘の集う遺跡 エウル=ブッカ》 が龍解し、≪遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ≫ となりコスト軽減が加速することでコンボ開始の準備が完全に整う。
まずは、 《天真妖精オチャッピィ》 を召喚すると 《S級原始 サンマッド》を 《雪精 ジャーベル》 を進化元にして呼び出し、ふたたび自身の能力でマナゾーンに送り込むことで 《雪精 ジャーベル》 も巻き込んでマナゾーンに送り込むことに成功し、 ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ で再利用可能とする。
そして、そうやって再利用可能になった 《雪精 ジャーベル》 を2枚目の 《天真妖精オチャッピィ》 の召喚によってバトルゾーンに引っ張りだし、さらに《雪精 ジャーベル》 を手に入れて、これを召喚する。
《雪精 ジャーベル》 がバトルゾーンにでた時の能力で 《S級原始 サンマッド》 を 《雪精 ジャーベル》 自身を進化元にしつつマナゾーンに戻し、 《雪精 ジャーベル》 の能力で手に入れたクリーチャーを召喚して 《雪精 ジャーベル》 をバトルゾーンに出しつつまたもクリーチャーを探すという動きを繰り返し、山札を掘り下げていく。
そして、マナゾーンに 《獣王の手甲》 が置かれ、手札に 《雪精 ジャーベル》 の能力で 《アラゴト・ムスビ》 が手札に入ったところで、パーツはほぼ揃ったため、マナゾーンから 《ダンディ・ナスオ》 を呼び出してマナゾーンに 《曲芸メイド・リン・ララバイ》 を置く。
《アラゴト・ムスビ》 のマーシャルタッチによってさらに簡単に掘り進められるようになった 《S級原始 サンマッド》 と 《雪精 ジャーベル》 のコンボは、程なくして2枚目の 《S級原始 サンマッド》 を見つけ出し、完璧なループを完成させるのだった。
尖迅 1-0 トップライフ
お手本のようなループが決まったGame 1。
そんな尖迅に対するトップライフが使用するのは、火自然モルトネクスト、以下モルネクだ。
サソリスループが、多彩な戦略を持ち、多くのデッキに対応できるデッキであるとすれば、モルネクは、一点集中によって多くのデッキを蹴散らすことに特化したデッキといえる。
《超戦龍覇 モルトNEXT》 と 《闘将銀河城 ハートバーン》 による、コンボと呼ぶのもおこがましい1枚コンボは、7マナと1枚のカードでシールド5枚の状態からのダイレクトアタックを可能としている。 《超戦龍覇 モルトNEXT》は、1枚のカードが1ターンで出せる最大火力の限界値のカードと言っていいだろう。
つまりは、モルネクを使う上でもっとも大事なことは、いかに早く 《超戦龍覇 モルトNEXT》 を叩きつけるかと、トリガーを引かないか、の2点だ。
そして、実は尖迅のループ型のサソリスに取って、これは数少ない弱点を攻められる形でもあるのだ。
40枚のデッキに多くのコンセプトを投入する以上、それこそ 《S級原始 サンマッド》 のように複数の役割を持ったカードを入れたとしても完全な万能はありえない。そして、尖迅のデッキの場合、防御力にそのしわ寄せがきているのだ。
尖迅のデッキには、防御的なトリガーがまったく入っておらず、防御は1枚の《光牙忍ハヤブサマル》 と、あとは ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ 環境下での《天真妖精オチャッピィ》 のSバックからの 《掘師の銀》 くらいしか備えていないのだ。
つまり、 《超戦龍覇 モルトNEXT》 が出されてしまえば、 《光牙忍ハヤブサマル》 を持っていない限り、負けは確定しているようなものなのだ。
これは ≪邪帝遺跡 ボアロパゴス≫ への龍解がコンボの絶対条件のため速度が早いわけではないボアロループにとってはかなり厳しい条件であると言える。
さらに、トップライフのデッキは、 《フェアリー・ギフト》 まで投入された速度特化型なのである。Game1では、《メンデルスゾーン》が2枚外れてしまうという状況だったため速度的にまったく間に合わない状態ではあったが、最速、3ターン目 《超戦龍覇 モルトNEXT》 もありえる構築なのだ。
したがって、尖迅側はトップライフの 《メンデルスゾーン》 でのマナ加速と手札に 《光牙忍ハヤブサマル》 があるかいなか次第では早々に殴りに行かなければならないのだが、そうなると今度は別の問題が浮上する。
トップライフのモルネクは、同型やレッドゾーンとの殴り合いを制するべく、合計7枚の革命ゼロトリガーが入ったいわゆるカウンター型の構築なのだ。
長期戦に置いて、もっともリスクの少ない構築として尖迅が選択したサソリスループ。その数少ない「取ったリスク」をついてくるのがトップライフのモルネクだと言ってもいいだろう。
トップライフは、会場に最後に残った「殴り切るデッキ」としての矜持をかけて、2戦目に臨む。
Game 2
先手のトップライフは2ターン連続で火単のカードをマナチャージ。マナ加速には自然マナが必要なので、つまりはマナ加速をできていない状態ということだ。しかし、対する尖迅も、2ターン目までアクションが無い。
結果、このゲームのファーストアクションは3ターン目に尖迅がプレイした《トレジャー・マップ》 。これで持ってきた 《ダンディ・ナスオ》 で《掘師の銀》をマナゾーンに置く。墓地に送り込んだのは《曲芸メイド・リン・ララバイ》。
トップライフは 《フェアリー・ギフト》 をチャージして《メンデルスゾーン》をプレイするが、今回もマナ加速は1枚。対して尖迅は 《天真妖精オチャッピィ》 でさらにマナ加速しつつ、盤面を作っていく。だが、これを一掃するのが返しでトップライフが呼び出した 《メガ・マグマ・ドラゴン》 。
尖迅は 《雪精 ジャーベル》 をプレイすると 《雪精 ジャーベル》 を手に入れ、続くターンの展開に備える。
だが、そんな未来の展望は、トップライフの代名詞、 《超戦龍覇 モルトNEXT》 からの 《闘将銀河城 ハートバーン》 が吹き飛ばしたのだった。
尖迅 1-1 トップライフ
長いループが続いたGame 1にくらべると、あまりにもあっけなく終わったように見えるGame 2。だが、このふたつのデッキの特性を考えると、むしろこれが本来の相性であると言ってもいいだろう。
そもそも、尖迅はニコ生のインタビューでも言っていたが、殴るリスクをかなり嫌うプレイヤーであり、彼がサソリスループを使用している最大の理由は「殴ることもできるループ」だからではなく「対応力が高くマナ加速がある環境最速レベルのループ」だからだろう。
そして、その代償として負ったリスクである「一撃突破への億弱さ」を攻められる形となっているわけだ。
こうして見ると、プレイ以前の大会に持ち込む前、デッキを構築している段階で、デュエマはなにかしらのリスクを負うゲームであるという見方もできそうだ。
では、トップライフのデッキが負っているリスクとは何か?
シールド・トリガーに止められてしまう、というのは、実はリスクのようでそうでもない。あくまでも 《超戦龍覇 モルトNEXT》 と 《闘将銀河城 ハートバーン》 の一撃必殺がトリガーを引いたら止まるというだけで、相手のデッキにトリガーがあるなら他の選択肢をとって攻めることだってモルネクには可能なのだ。
むしろ、構築上の最大のリスクは、そのデッキ構造のいびつさにある。
最速の 《超戦龍覇 モルトNEXT》 のために限界まで 《メンデルスゾーン》と 《フェアリー・ギフト》 を投入し、全力のカウンターの為に7枚の革命ゼロトリガーを投入していることで、デッキの中に《メンデルスゾーン》でマナ加速できないカードが14枚、 《ボルシャック・ドギラゴン》 でめくれても革命ゼロトリガーが成功しないカードが18枚も入っているのだ。
ここまで、2回プレイした《メンデルスゾーン》で合計1枚しかマナ加速できていないのも決して偶然ではない。有り体に言えば、トップライフの構築は、運による上振れと下振れの差が激しい構築なのだ。
運が下振れた時に何も出来ないリスクと引き換えに手に入れたのは、最強の剣と最強の盾。
この最強の剣への対処手段を実質持たない尖迅は、トップライフの運が下振れることを祈るしかない。
Game 3
先手の尖迅が 《獣王の手甲》 、トップライフが《偽りの王 ヴィルヘルム》というスタート。尖迅は2ターン目に 《侵革目 パラスラプト》 で 《天真妖精オチャッピィ》 を手札に入れる。
トップライフは、2ターン目に《メンデルスゾーン》をプレイすることに成功するが、返しで尖迅も 《天真妖精オチャッピィ》 で 《トレジャー・マップ》 を墓地からマナゾーンに戻す。
トップライフは《フェアリーの火の子祭》をプレイする。
続くターンに尖迅は 《次元流の豪力》 で 《勝利のリュウセイ・カイザー》を呼び出す。したがって、次のターンにトップライフが使用できるマナは5マナ。
ここでトップライフが使用したのは 《フェアリー・ギフト》 !
そして 《超戦龍覇 モルトNEXT》 。もってくるのは当然の 《闘将銀河城 ハートバーン》 。
ここで尖迅はほぼ唯一の防御手段である 《光牙忍ハヤブサマル》 を持っていたため、ギリギリ生き延びることに成功したが、シールドはゼロとなり、返しのターンのアクションがかなり限定されてしまう。
まずは 《龍覇 サソリス》 で 《邪帝斧 ボアロアックス》 を持ってくると、その能力で 《掘師の銀》 をバトルゾーンに出す。この 《掘師の銀》 に対してトップライフは ≪超戦覇龍 ガイNEXT≫を 《闘将銀河城 ハートバーン》 へと龍回避させることで処理する。
マナゾーンに 《掘師の銀》 が戻ってきたことで、1マナうまれたので、これで《トレジャー・マップ》をプレイすると、 《S級原始 サンマッド》 を手札に加える。
ここで、尖迅は長考。
当然、ここはアタックするしかない。少なくとも、 《天真妖精オチャッピィ》をアタックして 《S級原始 サンマッド》 へと侵略し 《超戦龍覇 モルトNEXT》 をマナゾーンに送り込まなければならない。これは 《超戦龍覇 モルトNEXT》 へとアタックを宣言して、そのままマナゾーンに送り込めばアタックはキャンセルされるので、相手のシールドをブレイクするリスクを持たずに相手の攻め手を処理できる。
だが、トップライフのバトルゾーンには 《闘将銀河城 ハートバーン》 が残っているのだ。すべてのドラゴンがスピード・アタッカーになってしまうこの状況で、尖迅のシールドはゼロ。トップライフがトップデックでトップドラゴンをすれば、それでゲームは終わりなのだ。
相手に次のターンを与えるリスクを取るか、このターンにゲームを終わらせるべく、相手のシールドをブレイクするリスクを取るか。リスクのない勝利を求めてループデッキを選択したのに、リスクヘッジの選択を求められることとなった尖迅。
結果、尖迅の 《天真妖精オチャッピィ》 のアタック先は、トップライフのシールド。トップライフの《超戦龍覇 モルトNEXT》は、ダイレクトアタックこそ失敗したものの、尖迅をリスクのある戦いのフィールドに引きずり出すことに成功したのだ。
《天真妖精オチャッピィ》 がアタックして、 《S級原始 サンマッド》 へと侵略し、 《超戦龍覇 モルトNEXT》 をマナゾーンに送り込みつつ、トリプル・ブレイク。そして 《勝利のリュウセイ・カイザー》 がダブルブレイクで、トップライフのシールドをゼロとする。
そして、最後の殴り手である 《次元流の豪力》 のダイレクトアタックへは、革命ゼロトリガーの使用が宣言される。使用されるのは……3枚の 《ボルシャック・ドギラゴン》 と、 《革命の鉄拳》 。尖迅は思わず頭を抱える。これでほとんどカウンターアタックされることが確実になってしまったのだ。
尖迅にできることは、祈ることだけ。
まずは、1体目の 《ボルシャック・ドギラゴン》 が解決。めくられた山札のトップは 《革命の鉄拳》 。したがって、この 《ボルシャック・ドギラゴン》はバトルゾーンに出ることはできない。トップライフは、山札のトップをリフレッシュするために 《革命の鉄拳》 の使用を宣言し、《偽りの王 モーツァルト》をめくって《次元流の豪力》を除去、このターンのダイレクトアタックを防ぐ。
そして、残る2体の 《ボルシャック・ドギラゴン》 のチェック。この 《ボルシャック・ドギラゴン》 がバトルゾーンにでれば、トップライフの勝利は確定だ。……だが、ふたたびめくれたトップは 《革命の鉄拳》 。したがって、どちらの 《ボルシャック・ドギラゴン》 もバトルゾーンに出ることはできない。
とはいえ、トップライフはシールド5枚分手札が増えている上に、すでにマナも7マナがオープンだ。 《闘将銀河城 ハートバーン》 の能力のバックアップの元、続くターンにダイレクトアタックが決まることは明らかだった。
はずなのだが。
トップライフは長考すると、なんと、《フェアリーの火の子祭》を2回プレイするだけでターンを返してしまったのだ。
リスクを背負った賭けに負けたかと思われた尖迅だったが、なかったはずのターンがふたたび帰ってきたのだ。
アタックできるクリーチャーは 《龍覇 サソリス》 《勝利のリュウセイ・カイザー》 《S級原始 サンマッド》 の3体。
一方、トップライフの手札にある革命ゼロトリガーは、さきほどバトルゾーンに出損って手札に戻った3体の 《ボルシャック・ドギラゴン》 と、トップでめくれてそのまま手札に入った 《革命の鉄拳》 の4枚だ。
尖迅は 《龍覇 サソリス》 でアタック。そして、これに対してトップライフは先ほどの4枚の革命ゼロトリガーすべての使用を宣言する。
まず、 《ボルシャック・ドギラゴン》 で 《次元龍覇 グレンモルト「覇」》がめくられ、バトルゾーンにでることに成功。この時点で、このターンを凌げば、トップライフの勝利はほぼ確実となる。
つづく2体目の 《ボルシャック・ドギラゴン》 は、 《革命の鉄拳》 をめくってしまい、着地に失敗。前のターンと同じように、山札の上をリフレッシュするべく 《革命の鉄拳》 を解決しようとするトップライフだったのだが……ここでめくれた4枚のカードがすべて呪文。すなわち、相手のクリーチャーを除去することができない。
最後の 《ボルシャック・ドギラゴン》 は 《メガ・マナロック・ドラゴン》をめくり見事着地に成功、結果、2体の 《ボルシャック・ドギラゴン》 が着地したので、 《龍覇 サソリス》 と 《S級原始 サンマッド》 がバトルで破壊される。
尖迅のバトルゾーンに残ったのは 《勝利のリュウセイ・カイザー》 。
トップライフの手札に残ったのは1枚の 《ボルシャック・ドギラゴン》 。
もう、ここまできたら、リスクでもプレイでもない。ただの運だけのゲームだ。
ただし、その運だけのゲームに参加する資格があるのは、適切なプレイをして、リスクを背負ったプレイヤーだけだ。
トップライフがめくった山札の上は 《メンデルスゾーン》 。
尖迅 2-1 トップライフ
Winner:尖迅
自分のデッキ構築が潜在的に持っているリスクが最大限に発揮されてしまい、ここで敗北となってしまったトップライフ。
だが、誰よりもリスクを取りたくなかった尖迅を、リスクを抱えた殴り合いのフィールドに引きずり出し、トップ勝負にまで持ち込んだのも 《フェアリー・ギフト》 までも投入したトップライフのデッキ構築だ。
最後は、山札の上をめくるだけの運のゲームだった。
だが、そのランダムな山札の上がめくられるのを誰もが待ち、興奮できたのは、このふたりがこの瞬間に戦っていたゲームだったからに他ならない。
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