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全国大会2018 北海道エリア予選 決勝戦:北のあーさん(北海道) vs. いろはす。(北海道)

 2年前、北海道の地でとある一つの伝説が誕生した。

 「クリップアート」ことCAによる、2年連続の北海道のエリア予選突破……だが華々しい英雄譚の裏には、語られなかった敗者たちの歴史がある。

 その伝説が誕生した瞬間に、対戦相手として立ち会った男がいた。

 それが、北のあーさんだ。

北のあーさん「お久しぶりです」

 その挨拶を聞いて、2か月前のGP7thでのことを思い出した。

 予選8回戦のフィーチャーマッチ……そこで北のあーさんは、オポネント次第で決勝進出が危うくなりかねない敗北を喫した直後にもかかわらず。対戦相手だけでなくカバレージライターだった私に対しても、「もし128位に残れてたら、またよろしくお願いします」と爽やかに一礼してフィーチャーエリアを去っていった。

 その淡泊な姿を見て最初は、負けて悔しくないのだろうかとも思った。だが違った。去り際に駆け寄った友人に対して北のあーさんは、楯への殴り方を間違えた、ミスをしたから負けても仕方がない、と述べていた。すべてを尽くして負けたのなら、あとはただ悔しがることしかできない。だがミスがあって負けたのなら、それはあくまでも自分の力量不足であり、悔しがるより先にやるべきことがあると言わんばかりに……そうしてデュエル・マスターズというゲームに対して、どこまでも真摯に向き合っていた姿が印象的だった。

北のあーさん「2回目の決勝なんだよなぁ……」

 この2年の間に、北のあーさんはプレイヤーとしての頭角をめきめきと現していった。交流範囲が広がり、それと同時に、見える世界も広がっていった。2年前はそこに立てたというだけで嬉しかったエリア予選の決勝戦。だが今ではその一歩先にこそ、求めるものがあることを知っている。

 会場には、元北海道勢のZweiLanceの姿もあった。プロプレイヤーとしてのキャリアをスタートさせたという業界騒然の発表があったばかりだというのに、旧知の友人たちを応援するために仙台から駆けつけていた。そのZweiLance自身は、南東北のエリア予選を突破して日本一決定戦の出場権を一足先に獲得している。

 2年前には届かなかった場所で、強敵(とも)が待っている。努力が足りないとは思わない。『白零サッヴァーク』という、最高の相棒も選択した。ならばあとはミスなく、そして後悔の無いように戦うのみだ。


 対戦相手であるいろはす。は対照的に、今年5月にデュエマに復帰したばかりだという。

 キャリアはあるもののエリア予選に出場するのは3年ぶりで、ブランクは否めない。だがそれにもかかわらず、細部までチューンを凝らした『赤青覇道』でここまで勝ち上がってきた。決勝トーナメントではtakiわたなべ、そして前年度覇者のまりんかと、強豪揃いの『赤青覇道』3連戦に全て勝利していることからして、その実力とデッキの熟練度合いに疑いを挟む余地はないだろう。

 『白零サッヴァーク』 対 『赤青覇道』。マッチアップは奇しくも2週間前、甲信越予選の決勝戦と同じ構図となった。甲信越では、『赤青覇道』が『サッヴァーク』を乗り越えている。《煌メク聖戦 絶十》を極力出させず、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を連打して勝つプラン……だが、その種は既に割れている。北のあーさんとて、それくらいは予習済みだろう。はたしていろはす。は、さらに上を行くプランを用意できるのか。


 そして、対戦の始まりを告げるアナウンスが流れる。

 「「お願いします」」

 勝ちたい。その思いだけを抱えた二人の声は自然と重なり、日本一決定戦の権利をかけた決勝戦が始まった。
先攻:北のあーさん

北のあーさん「ちょっとゆっくり考えます」

 そう言いつつもそれほど時間をかけずに《集結ノ正裁Z》をチャージした北のあーさんは、続けて《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》チャージから《憤怒スル破面ノ裁キ》→続くターンにも《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》チャージから《剣参ノ裁キ》《煌世主 サッヴァーク†》を回収と、これ以上ないほどに順調なスタートを見せる。

 対していろはす。は《“乱振”舞神 G・W・D》《》《ドンドン吸い込むナウ》とチャージすると、1ターン遅れで《異端流し オニカマス》を召喚してプレッシャーをかけにいく。

 しかしなおも北のあーさんは3枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》チャージからの《集結ノ正裁Z》で、《煌メク聖戦 絶十》《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を回収。先手4ターン目にして《煌メク聖戦 絶十》を抱えつつ、表向きの楯3枚で《煌世主 サッヴァーク†》をも構えているという鉄壁の守りを作ることに成功する。

 ならばといろはす。も2体目の《異端流し オニカマス》を出すのだが、この状況ではさすがに殴れずターンを返すほかない。

北のあーさん「ハンドが3枚?」

いろはす。「3枚です」

 一方、優勢を自覚した北のあーさんのプレイスピードはさらに加速する。《煌世主 サッヴァーク†》をチャージしつつの《集結ノ正裁Z》でどんどんと手札を拡充していく。
いろはす。「ハンドはすみません何枚ですか?」

北のあーさん「えーと、6枚です」

いろはす。「はい、ありがとうございます」

 なんとか仕掛けたいいろはす。だが手札が芳しくないのか、《“必駆”蛮触礼亞》をチャージするのみでターン終了を宣言。5マナにまで到達したにもかかわらず、マナを使わないままだ。

 対して、この状況を見て即座に異様と感じ取ったか、「《“必駆”蛮触礼亞》……」と小さく呟いた北のあーさんは、いろはす。の手札を予想する。少なくとも《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》は持っていないだろう。この状況で突っ込めなかったとすれば、足りないのは何か。作れる打点は何点か。

 そのまま先攻6ターン目。有り余る選択肢から未来を掴み取るためだろうか、北のあーさんの右手が何かを数えるように中空を彷徨う。

 そして。
 今しかない。《煌メク聖戦 絶十》をチャージした北のあーさんは、意を決した様子で《転生ノ正裁Z》を唱える。回収するのは、表向きのカードが3枚重なった4枚セットのシールド。だが鉄壁の守りを自ら捨てるからには、当然仕掛ける準備は整っている。

 《集結ノ正裁Z》《煌メク聖戦 絶十》を「サバキZ」で宣言すると、次に使う光のカードのコストが9軽くなる。そこまでするほどコストが重いカードは、このデッキには一種類しか搭載されていない。

 すなわち、《煌世主 サッヴァーク†》
 こうなると追い詰められた格好なのはいろはす。もしこのまま《煌世主 サッヴァーク†》がアクティブになるのを許せば、ドラゴン・T・ブレイカーでシールドの総数を一気に回復されてしまう。《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を「B・A・D」で出せる8マナも遠く、攻めきれるとすればこのターンしかない。そのはずだ。

 それなのに。

 ここでいろはす。のアクションは、1ターン遅れの≪トリプル・ブレイン≫で。

 望外にも無事ターンが返ってきた北のあーさんは、ミスのないよう慎重にアクションを確認しつつも、慣れた様子で次々と宣言をしていく。《転生ノ正裁Z》から「サバキZ」で2枚目の《煌メク聖戦 絶十》。コスト12軽減から《剣参ノ裁キ》《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を回収。さらに6軽減から《煌龍 サッヴァーク》。ダメ押しに2マナで《》。すべてのマナをきっちり使いきる。

 さらに《煌世主 サッヴァーク†》のアタック時に、「アタック・チャンス」で《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を宣言。

北のあーさん「上3枚で」

 いろはす。がめくったS・トリガーは《ゼンメツー・スクラッパー》。だが《煌世主 サッヴァーク†》は止まらない。脇には《煌龍 サッヴァーク》に守られた《煌メク聖戦 絶十》も控えている。

 止まるとしたら、《終末の時計 ザ・クロック》しかない。

 再びの攻撃で残る2枚のシールドが割れ、そしていろはす。は、シールドから青いカードを公開する。
 ……《エマージェンシー・タイフーン》《終末の時計 ザ・クロック》ではない!

 その意味を、北のあーさんは正しく理解していた。歓喜の表情を浮かべ、呪文が解決すると間髪入れずに《煌メク聖戦 絶十》でのダイレクトアタックを宣言する。すなわち。

いろはす。「……何もないです」

 その瞬間。

 北の大地に“2年越しのリベンジ”という、新たな伝説が生まれたのだった。

Winner: 北のあーさん


いろはす。「全然《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》引かなくて……≪トリプル・ブレイン≫でようやく引けたところでした」

北のあーさん「ですよね、《煌世主 サッヴァーク†》の返しでも来なかったから『あれ?』ってなりました。にしても、いやー勝てるとは……」

いろはす。「僕も復帰してここまで行けるとは思ってませんでした……」

 最後は不運に見舞われたものの、いろはす。の『赤青覇道』も主に同型戦を見越した様々な工夫が凝らされており、完成度という点では決して北のあーさんにひけをとらないデッキだった。

 《“乱振”舞神 G・W・D》を減らし、《》を4枚フル搭載したこと。《ゼンメツー・スクラッパー》を3枚に増やしたこと。

いろはす。「あとは、とにかくレートを上げたことですかね(笑)」

 その手には、《異端流し オニカマス》《終末の時計 ザ・クロック》のCSプロモが光っていた。『赤青覇道』というデッキに費やした時間の長さと、込められた愛着の大きさが伝わってきた。

 ……それでも、勝敗を分けたものがあるとすれば。

 『白零サッヴァーク』と『赤青轟轟轟』の直接対面での相性差。難しいデッキをきっちり使いこなせるよう練習した努力。2年前届かなかった場所に今度こそたどり着くという北のあーさんが積み上げた思い。それと。

北のあーさん「GPのときにも話した『マラかっち』の人たち……今日も参加していたセキボンさん、takiさん、種爆弾さんといった人たちが所属する……が、今回もデッキを調整してくれて……Skypeで毎日何時間もかけて調整してくれた、間違いなくそれのおかげです」

 オンラインで全国の情報を共有しながら日々調整する、仲間たちとのつながり。きっとそのかけがえのない絆こそが、北のあーさんをこれまで至れなかった高みへと導いた。

 だから。

北のあーさん「何よりも、◆ドラえもんさんがいつも頑張ってくれて……いくら感謝してもし足りないくらいです」

 2年越しの思いを胸に。

 強力なライバルが待つ日本一決定戦へと、北のあーさんは仲間たちとともに。

 また新たな伝説を、紡ぎに行くのだ。


北海道エリアチャンピオンは北のあーさんおめでとう!
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