山形超CSⅢ 決勝戦:ミノミー vs. ヤルカ!ポケカ!
ミノミーと『青魔導具』の今夏の旅路は、いよいよその終着地に辿り着こうとしている。
舞台に選ばれたのは、山形だった。
超CSⅢ決勝戦。この地この場所に、ミノミーの名前がある。
2019年の夏、「もっとも強かったプレイヤーは誰か?」と尋ねれば、間違いなく彼の名前が挙がるだろう。
それ故に夏の集大成とも言えるこの場所に彼が辿り着いたのは、或いは必然なのかもしれない。
関東で、遠征先で、ミノミーは勝利を重ねた。CS優勝回数は7月以降だけで実に4回。
その全てが『青魔導具』によるものだ。もはや怪物的な強さである。
付いた渾名は、誰が呼んだか“兄貴”。
かつては彼の実力を疑問視する声もあったが、それはいつしか称賛に変わっていった。積み重ねた14,000にも達するDMPポイントが、雑音をシャットアウトしてみせた。
さて、超CSⅢの最後の試合がいよいよ始まる。
『赤緑ジョースターミッツァイル』を選んだヤルカ!ポケカ!ことのれんと、『青魔導具』を信じるミノミー。
舞台は整っている。
己とデッキ、その悲願を達成するため。
その瞬間は、ほんの手の届くところまで見えている。
初手を見たのれんは、僅かに呻き声を挙げる。それでも順調に《タイク・タイソンズ》からスタート。
対してミノミーは“しっかり新世壊”こと、2ターン目に《卍 新世壊 卍》を設置。「持ってるかぁ」と、思わずのれんも言葉を漏らした。
のれんが《タイク・タイソンズ》を《ガチャダマン》にJチェンジした返しの3ターン目、ミノミーは《H・センボン》を召喚し、シールドの入れ替えを行った。《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》と《堕呪 ギャプドゥ》という2種のトリガーの存在が、のれんに見えないプレッシャーを与える。
のれんの猶予は、あと2ターンだろう。ここは5マナを使って《夢のジョー星》を唱えてターンを返す。
ミノミーもここは《卍 新世壊 卍》の呪文のカウントを進めたいところだ。まずは《堕呪 ゴンパドゥ》から入り、続けて《堕呪 バレッドゥ》を唱えると、残るはあと2つ。
こうなると、のれんはこのターンで決着をつけねばならない。
手札を置き、何かを考えるように一度俯く。
やがて意を決したか、まずは《ウォッシャ幾三》を繰り出し、続けて場の4体をタップして唱えたのが《夢のジョー星》だ。
古来より、敗北が近づくと北斗七星の脇に星が見えるようになるという。
《夢のジョー星》とは、それすなわち死兆星だった。
当然、これに続いたのは《BAKUOOON・ミッツァイル》。《ヤッタレロボ》を2体が場に現れ、さらに《ゴッド・ガヨンダム》でドロー進める。
こうなると『赤緑ジョースターミッツァイル』は、もう止まらない。
マナゾーンから《バングリッドX7》が召喚され、さらに《バングリッドX7》の効果によって《ジョット・ガン・ジョラゴンJoe》までもが登場する。ミノミーの希望であった《卍 新世壊 卍》を場から退けると、最後は2枚の《ジョジョジョ・マキシマム》を含む攻撃で、完全に屈服させたのだ。
のれん 1-0 ミノミー
のれんの『赤緑ジョースターミッツァイル』は、率直に言えば不思議な構築をしていた。
印象的なのは、4枚採用された《ドンドド・ドラ息子》。デッキを掘り進める役割を担い、《タイク・タイソンズ》からもJチェンジを可能とするお洒落カードだ。《》は、トリガーすると《ウォッシャ幾三》+GRクリーチャーで複数面作れるカードとして、デッキを下支えしている。
そもそも、『赤緑ジョースターミッツァイル』が決勝にいることが一つのサプライズでもあった。
ご存知の通り、超CSⅢの環境は『青黒緑デッドダムド』が支配している。
『赤緑ジョースターミッツァイル』は、このデッキに対して決して有利ではない。《虹速 ザ・ヴェルデ》からの除去があまりに厳しいからだ。
多くのプレイヤーがこのデッキを諦める中、のれんは使用を決断した。
GP8thの優勝者デデンネらとその仲間内からリストの原型を貰い、一人で調整を続けたというのれん。
「先攻2ターン目にブーストさえされなければ充分勝機はある」と結論を出すと、結局この日は『青黒緑デッドダムド』に全勝。準決勝ではフルセットで志乃を破っている。
そもそも「今日勝つイメージはなかった」というのれん。本人も驚くような快進撃で、決勝でも堂々の立ち回り。
優勝と、全国大会への王手を掛けた。
眠る怪物を起こすことなく、このまま勝負を決めたいところだが……。
第2ゲームは、ミノミーの《堕呪 ゴンパドゥ》からスタート。対してのれんは《ヤッタレマン》の動き。
ミノミーは続くターンで首尾よく《卍 新世壊 卍》を設置したが、のれんはここでビッグアクションを取る。《ヤッタレマン》を追加し、1コストで《ウォッシャ幾三》を召喚すると、残る1マナで《BAKUOOON・ミッツァイル》を送り込む。
後手ながら3ターン目の《BAKUOOON・ミッツァイル》だ。GRクリーチャーが並び、《卍 新世壊 卍》のカウントが整わぬミノミーのシールドを削りにいく。
先攻であれば、先のゲーム展開のように《ジョット・ガン・ジョラゴンJoe》が間に合ったかもしれないが、後手だと厳しい。そうなると《堕呪 ギャプドゥ》をケアすべく、シールドを減らしにいくのは賢明な判断だと言えた。
しかし、ミノミーのシールドがあまりにも強すぎた。
《BAKUOOON・ミッツァイル》の2点で2枚の魔導具トリガーを宣言すると、更に続く1点にも《堕呪 カージグリ》がトリガー。のれんの猛攻をいなしただけでなく、《卍 新世壊 卍》の起動まで残り1つとしたのだ。
もらった1ターン、魔導具呪文を連打するミノミー。
手札になかった、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を必死に探しにいく。
そして、デッキは応えた。
最後の最後、残りの1ドローで見事《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を引き当てたのだ。
「よしっ」と強く頷くミノミー。
怪物が……いや、“兄貴”が目を覚ました。
《卍 新世壊 卍》が起動し《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》が唱えられると、《凶鬼卍号 メラヴォルガル》3体がバトルゾーンに姿を現す。
それは、ゲームの終わりの合図であった。
のれん 1-1 ミノミー
3ターン《BAKUOOON・ミッツァイル》を耐え、最後に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》をその手で引いてみせたミノミー。
試合は最終ゲームへともつれ込む。
†
物語は、ある。
2019年の夏、この男は掛け値なしに最強であった。
だが当初、誰もが半信半疑であった。『青魔導具』というデッキは、あまりにも線が細く見えたからだ。
人は言う。
「青魔導具は先攻2ターン目に《卍 新世壊 卍》を貼らねば勝てない」
だからこそ、快進撃を繰り広げてもにわかに信じ難かった。『青魔導具』というデッキに、2日連続で優勝するような力があるとは思えなかったからだ。
しかし遠征先の関西で、彼はその実力を西のトッププレイヤーたちに証明してみせた。驚くほどの丁寧な所作だけでなく、圧巻のプレイ速度、そして洗練された技術……。
4ターン目以降に《卍 新世壊 卍》を設置する通称“ゆっくり新世壊”でもゲームを作れることを、彼は見せ付けたのだ。
この日は優勝こそ逃したものの、9ラウンドという長丁場の予選を全勝で勝ち抜いた。
その力は、確かだったのだ。
以降、堰を切ったようにトッププレイヤーたちも『青魔導具』に触れ、そして使用を決断した。
プレイヤーたちに、『青魔導具』を環境の一角として認識させた。
ミノミーは自らの勝利とその継続、そして圧倒的な技量によって新たな環境……もとい、“新世界”を定義したのだ。
《轟く侵略 レッドゾーン》は徐々にカードプールが追加されることで、一時代を築いた。
《蒼き団長 ドギラゴン剣》は、そのカードが生まれた時から環境だった。
『青魔導具』は違う。環境の変化はあったものの、一人の男のたゆまぬ継続によって、環境入りを果たしたのだ。
いつしかミノミー自身もそのトッププレイヤーの仲間入りを果たし、この夏最大の成功者としてDMPランキング上位に名を連ねる。
そんな男の旅路の果て、超CSⅢの決勝。
その行方は、この目で確かめねばならない。
先攻を貰ったのれんだが、ここに来て2ターンスタートに失敗する。対してミノミーは《堕呪 ゴンパドゥ》からスタートし、一目散に《卍 新世壊 卍》を目指す。
《ウォッシャ幾三》を召喚したのれんに対し、ミノミーはここで《卍 新世壊 卍》を設置。
のれんは続くターンも《ウォッシャ幾三》を追加すると、盤面は4体になった。ミノミーも、《夢のジョー星》を撃たれる前に急がねばならない。《堕呪 ゴンパドゥ》、《堕呪 バレッドゥ》と唱え、《卍 新世壊 卍》のカウントを進めながら手札をかき集めにいく。
だが5ターン目を貰ったのれんは、ここで盤面を4体寝かせて《夢のジョー星》を唱えた。
ミノミーの表情にも、緊張が走る。
しかし、のれんの手札に《BAKUOOON・ミッツァイル》はない。《ドンドド・ドラ息子》では《BAKUOOON・ミッツァイル》を拾うことは叶わないのだ。
苦悶の表情を浮かべるのれん。ターンを終了するしかなかった。
その《夢のジョー星》は、死兆星ではなかった。
ターンが返ってきたミノミーは、まず《堕呪 ゴンパドゥ》から入ると、続けて《堕呪 ウキドゥ》を唱える。
さぁ、条件は揃った。
ターン終了時に《卍 新世壊 卍》が起動し、この日最後の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》が唱えられる。
バトルゾーンに現れた、勝負を決める《凶鬼卍号 メラヴォルガル》2体と、≪卍 ギ・ルーギリン 卍≫。
《凶鬼卍号 メラヴォルガル》の蠢きが、のれんのシールドを穿つ。
ここにトリガーはなかった。
最後は追加ターンで《堕呪 ウキドゥ》で残る1枚のシールドを確認すると、ミノミーは勝負を決めるダイレクトアタックを宣言する。
それはこの夏、“新世界”を築いた男が勝ち取るに相応しい、栄光の瞬間だった。
のれん 1-2 ミノミー
物語がありすぎる。
この夏の王者であった“兄貴”ことミノミーが、その旅路の終わりに勝ち取った栄光と、掴み取った全国大会への切符。
幾多の壁を乗り越えた果ての優勝は、かくも美しいのだ。
「このデッキの悲願を果たしました」
彼が言うからこそ、この言葉は深く重い。
『青魔導具』を認めさせ、環境を作り替えた男。幾多の『青黒緑デッドダムド』や『赤白サンマックス』を乗り越え、いまこの地にこの場で栄冠を掲げている。
その勝利には会場に残ったプレイヤーから惜しみない拍手が送られた。
“兄貴”の悲願と残した功績を、ここにいる誰もが分かっていたからだ。
真夏の山形で行われた超CSⅢ。
その頂点に君臨したのは、《卍 新世壊 卍》と共に“新世界”を作った、2019年夏最強の男だった。
Winner:ミノミー
舞台に選ばれたのは、山形だった。
超CSⅢ決勝戦。この地この場所に、ミノミーの名前がある。
2019年の夏、「もっとも強かったプレイヤーは誰か?」と尋ねれば、間違いなく彼の名前が挙がるだろう。
それ故に夏の集大成とも言えるこの場所に彼が辿り着いたのは、或いは必然なのかもしれない。
関東で、遠征先で、ミノミーは勝利を重ねた。CS優勝回数は7月以降だけで実に4回。
その全てが『青魔導具』によるものだ。もはや怪物的な強さである。
付いた渾名は、誰が呼んだか“兄貴”。
かつては彼の実力を疑問視する声もあったが、それはいつしか称賛に変わっていった。積み重ねた14,000にも達するDMPポイントが、雑音をシャットアウトしてみせた。
さて、超CSⅢの最後の試合がいよいよ始まる。
『赤緑ジョースターミッツァイル』を選んだヤルカ!ポケカ!ことのれんと、『青魔導具』を信じるミノミー。
舞台は整っている。
己とデッキ、その悲願を達成するため。
その瞬間は、ほんの手の届くところまで見えている。
Game 1
先攻:のれん初手を見たのれんは、僅かに呻き声を挙げる。それでも順調に《タイク・タイソンズ》からスタート。
対してミノミーは“しっかり新世壊”こと、2ターン目に《卍 新世壊 卍》を設置。「持ってるかぁ」と、思わずのれんも言葉を漏らした。
のれんが《タイク・タイソンズ》を《ガチャダマン》にJチェンジした返しの3ターン目、ミノミーは《H・センボン》を召喚し、シールドの入れ替えを行った。《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》と《堕呪 ギャプドゥ》という2種のトリガーの存在が、のれんに見えないプレッシャーを与える。
のれんの猶予は、あと2ターンだろう。ここは5マナを使って《夢のジョー星》を唱えてターンを返す。
ミノミーもここは《卍 新世壊 卍》の呪文のカウントを進めたいところだ。まずは《堕呪 ゴンパドゥ》から入り、続けて《堕呪 バレッドゥ》を唱えると、残るはあと2つ。
こうなると、のれんはこのターンで決着をつけねばならない。
手札を置き、何かを考えるように一度俯く。
やがて意を決したか、まずは《ウォッシャ幾三》を繰り出し、続けて場の4体をタップして唱えたのが《夢のジョー星》だ。
古来より、敗北が近づくと北斗七星の脇に星が見えるようになるという。
《夢のジョー星》とは、それすなわち死兆星だった。
当然、これに続いたのは《BAKUOOON・ミッツァイル》。《ヤッタレロボ》を2体が場に現れ、さらに《ゴッド・ガヨンダム》でドロー進める。
こうなると『赤緑ジョースターミッツァイル』は、もう止まらない。
マナゾーンから《バングリッドX7》が召喚され、さらに《バングリッドX7》の効果によって《ジョット・ガン・ジョラゴンJoe》までもが登場する。ミノミーの希望であった《卍 新世壊 卍》を場から退けると、最後は2枚の《ジョジョジョ・マキシマム》を含む攻撃で、完全に屈服させたのだ。
のれん 1-0 ミノミー
のれんの『赤緑ジョースターミッツァイル』は、率直に言えば不思議な構築をしていた。
印象的なのは、4枚採用された《ドンドド・ドラ息子》。デッキを掘り進める役割を担い、《タイク・タイソンズ》からもJチェンジを可能とするお洒落カードだ。《》は、トリガーすると《ウォッシャ幾三》+GRクリーチャーで複数面作れるカードとして、デッキを下支えしている。
そもそも、『赤緑ジョースターミッツァイル』が決勝にいることが一つのサプライズでもあった。
ご存知の通り、超CSⅢの環境は『青黒緑デッドダムド』が支配している。
『赤緑ジョースターミッツァイル』は、このデッキに対して決して有利ではない。《虹速 ザ・ヴェルデ》からの除去があまりに厳しいからだ。
多くのプレイヤーがこのデッキを諦める中、のれんは使用を決断した。
GP8thの優勝者デデンネらとその仲間内からリストの原型を貰い、一人で調整を続けたというのれん。
「先攻2ターン目にブーストさえされなければ充分勝機はある」と結論を出すと、結局この日は『青黒緑デッドダムド』に全勝。準決勝ではフルセットで志乃を破っている。
そもそも「今日勝つイメージはなかった」というのれん。本人も驚くような快進撃で、決勝でも堂々の立ち回り。
優勝と、全国大会への王手を掛けた。
眠る怪物を起こすことなく、このまま勝負を決めたいところだが……。
Game 2
先攻:ミノミー第2ゲームは、ミノミーの《堕呪 ゴンパドゥ》からスタート。対してのれんは《ヤッタレマン》の動き。
ミノミーは続くターンで首尾よく《卍 新世壊 卍》を設置したが、のれんはここでビッグアクションを取る。《ヤッタレマン》を追加し、1コストで《ウォッシャ幾三》を召喚すると、残る1マナで《BAKUOOON・ミッツァイル》を送り込む。
後手ながら3ターン目の《BAKUOOON・ミッツァイル》だ。GRクリーチャーが並び、《卍 新世壊 卍》のカウントが整わぬミノミーのシールドを削りにいく。
先攻であれば、先のゲーム展開のように《ジョット・ガン・ジョラゴンJoe》が間に合ったかもしれないが、後手だと厳しい。そうなると《堕呪 ギャプドゥ》をケアすべく、シールドを減らしにいくのは賢明な判断だと言えた。
しかし、ミノミーのシールドがあまりにも強すぎた。
《BAKUOOON・ミッツァイル》の2点で2枚の魔導具トリガーを宣言すると、更に続く1点にも《堕呪 カージグリ》がトリガー。のれんの猛攻をいなしただけでなく、《卍 新世壊 卍》の起動まで残り1つとしたのだ。
もらった1ターン、魔導具呪文を連打するミノミー。
手札になかった、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を必死に探しにいく。
そして、デッキは応えた。
最後の最後、残りの1ドローで見事《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を引き当てたのだ。
「よしっ」と強く頷くミノミー。
怪物が……いや、“兄貴”が目を覚ました。
《卍 新世壊 卍》が起動し《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》が唱えられると、《凶鬼卍号 メラヴォルガル》3体がバトルゾーンに姿を現す。
それは、ゲームの終わりの合図であった。
のれん 1-1 ミノミー
3ターン《BAKUOOON・ミッツァイル》を耐え、最後に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》をその手で引いてみせたミノミー。
試合は最終ゲームへともつれ込む。
†
物語は、ある。
2019年の夏、この男は掛け値なしに最強であった。
だが当初、誰もが半信半疑であった。『青魔導具』というデッキは、あまりにも線が細く見えたからだ。
人は言う。
「青魔導具は先攻2ターン目に《卍 新世壊 卍》を貼らねば勝てない」
だからこそ、快進撃を繰り広げてもにわかに信じ難かった。『青魔導具』というデッキに、2日連続で優勝するような力があるとは思えなかったからだ。
しかし遠征先の関西で、彼はその実力を西のトッププレイヤーたちに証明してみせた。驚くほどの丁寧な所作だけでなく、圧巻のプレイ速度、そして洗練された技術……。
4ターン目以降に《卍 新世壊 卍》を設置する通称“ゆっくり新世壊”でもゲームを作れることを、彼は見せ付けたのだ。
この日は優勝こそ逃したものの、9ラウンドという長丁場の予選を全勝で勝ち抜いた。
その力は、確かだったのだ。
以降、堰を切ったようにトッププレイヤーたちも『青魔導具』に触れ、そして使用を決断した。
プレイヤーたちに、『青魔導具』を環境の一角として認識させた。
ミノミーは自らの勝利とその継続、そして圧倒的な技量によって新たな環境……もとい、“新世界”を定義したのだ。
《轟く侵略 レッドゾーン》は徐々にカードプールが追加されることで、一時代を築いた。
《蒼き団長 ドギラゴン剣》は、そのカードが生まれた時から環境だった。
『青魔導具』は違う。環境の変化はあったものの、一人の男のたゆまぬ継続によって、環境入りを果たしたのだ。
いつしかミノミー自身もそのトッププレイヤーの仲間入りを果たし、この夏最大の成功者としてDMPランキング上位に名を連ねる。
そんな男の旅路の果て、超CSⅢの決勝。
その行方は、この目で確かめねばならない。
Game 3
先攻:のれん先攻を貰ったのれんだが、ここに来て2ターンスタートに失敗する。対してミノミーは《堕呪 ゴンパドゥ》からスタートし、一目散に《卍 新世壊 卍》を目指す。
《ウォッシャ幾三》を召喚したのれんに対し、ミノミーはここで《卍 新世壊 卍》を設置。
のれんは続くターンも《ウォッシャ幾三》を追加すると、盤面は4体になった。ミノミーも、《夢のジョー星》を撃たれる前に急がねばならない。《堕呪 ゴンパドゥ》、《堕呪 バレッドゥ》と唱え、《卍 新世壊 卍》のカウントを進めながら手札をかき集めにいく。
だが5ターン目を貰ったのれんは、ここで盤面を4体寝かせて《夢のジョー星》を唱えた。
ミノミーの表情にも、緊張が走る。
しかし、のれんの手札に《BAKUOOON・ミッツァイル》はない。《ドンドド・ドラ息子》では《BAKUOOON・ミッツァイル》を拾うことは叶わないのだ。
苦悶の表情を浮かべるのれん。ターンを終了するしかなかった。
その《夢のジョー星》は、死兆星ではなかった。
ターンが返ってきたミノミーは、まず《堕呪 ゴンパドゥ》から入ると、続けて《堕呪 ウキドゥ》を唱える。
さぁ、条件は揃った。
ターン終了時に《卍 新世壊 卍》が起動し、この日最後の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》が唱えられる。
バトルゾーンに現れた、勝負を決める《凶鬼卍号 メラヴォルガル》2体と、≪卍 ギ・ルーギリン 卍≫。
《凶鬼卍号 メラヴォルガル》の蠢きが、のれんのシールドを穿つ。
ここにトリガーはなかった。
最後は追加ターンで《堕呪 ウキドゥ》で残る1枚のシールドを確認すると、ミノミーは勝負を決めるダイレクトアタックを宣言する。
それはこの夏、“新世界”を築いた男が勝ち取るに相応しい、栄光の瞬間だった。
のれん 1-2 ミノミー
物語がありすぎる。
この夏の王者であった“兄貴”ことミノミーが、その旅路の終わりに勝ち取った栄光と、掴み取った全国大会への切符。
幾多の壁を乗り越えた果ての優勝は、かくも美しいのだ。
「このデッキの悲願を果たしました」
彼が言うからこそ、この言葉は深く重い。
『青魔導具』を認めさせ、環境を作り替えた男。幾多の『青黒緑デッドダムド』や『赤白サンマックス』を乗り越え、いまこの地にこの場で栄冠を掲げている。
その勝利には会場に残ったプレイヤーから惜しみない拍手が送られた。
“兄貴”の悲願と残した功績を、ここにいる誰もが分かっていたからだ。
真夏の山形で行われた超CSⅢ。
その頂点に君臨したのは、《卍 新世壊 卍》と共に“新世界”を作った、2019年夏最強の男だった。
Winner:ミノミー
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