全国大会2019 東北エリア予選 Bブロック準決勝:YOSHIKI.N(青森) vs. 初代仙台番長(岩手)
撮影者:後長 京介
ライター:伊藤 敦(まつがん)
そんなエリア予選の佳境、準決勝における2つのブロックの対戦カードは、以下のようになった。
Aブロック
マ・ヒーロー ("B-我"ライザ) vs. 宀 (カウンタージョーカーズ)
オヤシュー (カウンターオラマッハジョーカーズ) vs. クローム@ (水火自然ミッツァイル)
Bブロック
アズっち (火水万軍投ミッツァイル) vs. @Neru (水闇ハンデス)
YOSHIKI.N (メタリカミッツァイル) vs. 初代仙台番長 (水火自然ミッツァイル)
混沌。そこでは一連のエリア予選が始まる前からは想像もつかないほど、熾烈なメタゲームが繰り広げられていた。
両ブロックの参加者、合計260名強のうち《BAKUOOON・ミッツァイル》を使用したのは、『水火自然ミッツァイル』が全体の20%強、『火水万軍投ミッツァイル』が14%弱で、おおよそ全体の3分の1を占めている。したがってプレイヤーたちは否が応にも向き合わざるをえなかったはずだ。
すなわち、《BAKUOOON・ミッツァイル》を使うか、乗り越えるか。使うとしたらどんな風に使うか。そしてまた、乗り越えるとしたらどのような方法で乗り越えるのか。
それらの問いに対し、各人の出した答えがこの準決勝に集約されている。《BAKUOOON・ミッツァイル》を「使う側」は3種類のデッキに分かれ、「乗り越える側」も3種類のデッキに分かれた。あとは誰の出した答えが一番強いのか、直接ぶつかって証明するだけだ。
だが準決勝に臨もうとする8人の使用する中に、一際異彩を放つデッキがあった。
《龍装者 バーナイン》も《音奏 アサラト》も入っていない、かなり独特なチューンが施された『メタリカミッツァイル』。YOSHIKI.Nが練り上げたそのリストからは、ある強烈な意図が読み取れた。
そう、このデッキは「《BAKUOOON・ミッツァイル》を倒す《BAKUOOON・ミッツァイル》」として組まれたデッキであるという意図が。
そんなデッキが簡単に組めれば苦労しないという難解極まるパズルを、YOSHIKI.Nは解き明かした。予選ラウンドを全勝で駆け抜け、そしてその勢いのままたどり着く。
準決勝4卓のうち唯一、「使う側」を選んだ者同士の対戦に。
初代仙台番長「ここまで来れるとは思ってなかったです」
YOSHIKI.N「自分もです」
初代仙台番長「……お互い頑張りましょう」
フィーチャーテーブルに呼ばれた緊張を解すためだろう、対戦相手の初代仙台番長はそうYOSHIKI.Nに話しかける。
初代仙台番長が駆るのは《グレープ・ダール》《エモG》に加えて《》までも搭載したジョーカーズ軸の『水火自然ミッツァイル』。多くのプレイヤーが安定性を追求した末にたどり着いたオーソドックスな形。
天を貫くのは、同族殺しの槍か。それとも大衆の支持を受けた既製の槍か。
準決勝。決勝という高みを目指して、"爆音"を轟かせる者同士の戦いが始まった。
先攻:YOSHIKI.N
先攻のYOSHIKI.Nが《ヘブンズ・フォース》をチャージしたのを見た初代仙台番長は、環境には有効な1マナアクションがないことを知っているために反射的にターンをもらおうとするのだが、あにはからんやYOSHIKI.Nはそのまま《ヘブンズ・フォース》をタップする。
送り出されたのは、まさかの《予言者クルト》!
15年もの昔、聖拳編の頃より1マナクリーチャーの代表格として知られるこのカードだが、「2ブロックに存在していたのか」と思われる方もいるかもしれないので念のため説明しておくと、雑誌「カードゲーマー」のプロモとして超天篇のブロックマークが付いたものが存在するため、使用可能カードなのである。
だが問題は、純粋なビートダウンとしてならいざ知らず、それ以外ではお世辞にも手札を減らす価値があるとは思えないこのカードを何のために採用しているのかだ。とはいえYOSHIKI.Nのデッキ構築の意図を知る由もない初代仙台番長は、ひとまず《グレープ・ダール》をチャージするのみでターンを返す。
2ターン目を迎えたYOSHIKI.Nは《MANGANO-CASTLE!》チャージからの《ジャスト・ラビリンス》で1ドロー。《予言者クルト》がいなければそもそもカードは引けなかったし、もし《ナゾの光・リリアング》から《ジャスト・ラビリンス》につながっていたなら2ドローになっていたという点で、《予言者クルト》を生かすカード採用がまずは光る。返す初代仙台番長は《エモG》チャージからの《ジョラゴン・オーバーロード》で順調にマナを伸ばしてターンエンド。
すると3ターン目、YOSHIKI.Nの意図がついに明らかになる。《ナゾの光・リリアング》チャージから送り出されたのは《音奏 シャンタン》。このカードを《BAKUOOON・ミッツァイル》の種として安定運用することこそが《予言者クルト》に課せられた真の役割だった。《ポクタマたま》がめくれ、3体のクリーチャーを立たせることに成功する。
一方の初代仙台番長は《》チャージからの《超GR・チャージャー》でGR召喚しつつマナブースト。《全能ゼンノー》が出てきて欲しい場面だったが、めくれたのはマナドライブが足りない《天啓 CX-20》で、あとはYOSHIKI.Nが《BAKUOOON・ミッツァイル》を持っていないことを祈りながらターンを終えるしかない。
そしてついに先攻4ターン目、YOSHIKI.Nにとっての正念場が訪れる。自分のクリーチャーの数と手札の内容を慎重に吟味し、初代仙台番長が既に5マナにまで到達していることからこれ以上待つ選択肢もないことを確認すると、《MANGANO-CASTLE!》チャージ、《ナゾの光・リリアング》召喚から4体を破壊して《BAKUOOON・ミッツァイル》!
そのまま4回のGR召喚で登場したのは、《鋼ド級 ダテンクウェールB》《ドドド・ドーピードープ》《ポクタマたま》《無限合体 ダンダルダBB》という顔ぶれ。一瞬にして形成された8打点を前に、初代仙台番長はたまらずこう呟く。
初代仙台番長「……強っ」
だが、YOSHIKI.Nの視点から見るとこの状況は瀬戸際の窮地でもあった。《無限合体 ダンダルダBB》で使えそうな呪文は追加の打点にならない墓地の《ジャスト・ラビリンス》くらいしかなく、このターンに勝負を決めきれなければ逆に《BAKUOOON・ミッツァイル》が走られてしまいそうなこの状況ではドローはほぼ意味がない。
せめて、《ジェイ-SHOCKER》がめくれてくれていれば。
YOSHIKI.Nのデッキ構築のもう一つの工夫……それはメインデッキのクリーチャーの種族とGRクリーチャーの種族との峻別にあった。《BAKUOOON・ミッツァイル》で出てくるGRは《ドドド・ドーピードープ》と《グッドルッキン・ブラボー》を除いてジョーカーズで構成されており、《無限合体 ダンダルダBB》と《ジェイ-SHOCKER》のJトルネードによって、それぞれ追加打点を形成したりGR召喚を封じたりすることができるようになっていたのだ。
しかしめくれなかった以上、"if"を考えても仕方がない。このターンで勝負を決めなければ、初代仙台番長に仕掛けられてしまうかもしれない。それゆえに8打点をどのような順番で攻撃に向かわせるか、YOSHIKI.Nはじっくりと検討する。
YOSHIKI.N「アタック時……いや……」
ここまで来たら、S・トリガーがないことを祈るのみ。一度は《無限合体 ダンダルダBB》にかけた手を戻したYOSHIKI.Nは、ついに意を決してクリーチャーを順次攻撃に向かわせる。
《鋼ド級 ダテンクウェールB》でW・ブレイク。S・トリガー……は、《フェアリー・ライフ》。これでは、攻撃が止まらない。
さらに《ドドド・ドーピードープ》でW・ブレイク。2枚のシールドを確認した初代仙台番長が、そのまま手札に重ねる。
残るシールドは1枚、攻撃可能なクリーチャーは3体。ここから止められるS・トリガーがあるとすれば、《》からの《全能ゼンノー》くらいしかない。
はたして、《ポクタマたま》が最後のシールドをブレイクする。
《》はあるのか。シールドを確認する初代仙台番長の手にも力が入る。
その力が、ゆっくりと失われていき。
YOSHIKI.Nが、そのままダイレクトアタックを決めたのだった。
Winner: YOSHIKI.N
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY