超CSV新潟:メタゲームブレイクダウン
ライター:河野 真成(神結)
第3次サガ包囲網とダンタルサガの登場
現在の環境について書く際、《絶望神サガ》を無視することは出来ない。まずはこの大会に至るまでのサガとその対策について、簡潔に記しておきたい。
最強位決定戦で準優勝、DMGP2023-1st(アドバンス)で準優勝と、登場から僅か数か月で二度も大きな戦果を残した《絶望神サガ》のデッキ。
しかしそれ故に“サガ包囲網”とも呼べるような各種対策も進んでいる。
特にメタカードによる勝負を仕掛けやすいオリジナルではそれが顕著で、DMGP2023-1stでもオリジナルの方ではTOP8に残ることはなかった。
最強位決定戦以来使われ続けている《とこしえの超人》や《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》はもちろんのこと、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》、最近では《若き大長老 アプル》も再注目された。
加えて《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》の登場によって、水文明で手札をまかなうデッキが自然とサガ対策を取りやすくなった。 ドローソースと墓地対策、両方を兼ねるこのカードはデッキのスロット削減にも大きく貢献。特に【光水火ライオネル.star】はこの恩恵が大きく、一躍環境トップを伺おうかという勢いである。
一方でサガ自身も、DMGP2023-1stの頃と比較して大きな変化があった。
これまでサガの主流は《超神星DOOM・ドラゲリオン》から《水上第九院 シャコガイル》を出してフィニッシュする、いわゆる【DOOMサガ】だった。
しかし5月頃からサガを導入として《龍素記号wD サイクルペディア》+《蝕王の晩餐》でループをする、いわゆる【ダンタルサガ】へと変わったのだ。
この背景には《超神星DOOM・ドラゲリオン》を止められる《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》の台頭もあったが、最も大きかったのが《ドアノッカ=ノアドッカ / 「…開けるか?」》の登場だろう。 《蒼狼の大王 イザナギテラス》とのシナジーの他、これまで天敵とされてきた《U・S・A・BRELLA》を添えた攻撃に対してトリガーの≪ドアノッカ=ノアドッカ≫が回答になったのだ。
元々《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》の呪文側や《絶望と反魂と滅殺の決断》などで、コントロール的な動きをするこのデッキは、DOOM型に比べて中・長期戦に強い。相手がメタカードを出して手札を減らしてきたところにハンデスなり除去を浴びせ、相手が身動きを取れなくなっている間に《絶望神サガ》を揃えて勝つ、というパターンが強力だ。
そこに、求めていた最後のピースが埋まった。
これによってこれまで対サガの筆頭であった【火単我我我ガイアールブランド】は、環境的な立ち位置を落とすことになった。高速のビートダウンデッキの主役は、速度を下げずに横に並べない……つまりに、≪ドアノッカ=ノアドッカ≫のトリガーで止まりにくい【火自然アポロヌス】へ変わった。
直近では【闇火テレスコ=テレス】という新デッキの登場もあったが、上記のような変化があった中で三度目となる「サガ vs. 対サガデッキ」の戦いが始まったのである。
それぞれ戦い
さて、超CSⅤ新潟の参加者は2087名だった。その中から8回戦の予選ラウンドを戦い抜き、本戦へと進出したのは128名。彼らの使用したデッキは、以下の通りである。
サガ系 合計 26
・水闇ダンタル 13
・水闇DOOM 7
・水闇火ダンタル 6
5c系 合計 18
・ザーディクリカ 17
・その他 1
アポロヌス 合計 17
・火自然 16
・火水 1
水魔導具 15
闇火テレスコ=テレス 14
水闇自然ジャオウガ 12
水闇自然オービーメイカー 5
火単我我我ガイアールブランド 4
闇単アビス 2
光水闇ヘブンズ 2
マーシャル・クイーン 2
その他 9
トータルしたときの最大数となったのは、やはりサガ。以下、5cやアポロヌス、水魔導具と続いている。
・5cザーディクリカ 単体のデッキで見たとき、予選突破最大数となったのは【5cザーディクリカ】だった。
元々人気のデッキであることに加え、《龍風混成 ザーディクリカ》や《聖魔連結王 ドルファディロム》など、強力なカードが多い。これらは、様々なデッキと戦うことになる大型大会を勝ち抜くのに於いて、大きな力となっただろう。トリガーの枚数が多いことも、対アポロヌスなどを考えたときに心強い点だ。
しかし対サガを考えると、このデッキはやや心もとない。《とこしえの超人》+≪お清めシャラップ≫というギミックは存在しているものの、これで得た時間を使って素早く《ロスト・Re:ソウル》や《聖魔連結王 ドルファディロム》というカードにアクセスせねばならない。
ただ再現性というのはこのデッキの苦手分野でもある。≪ウォズレックの審問≫1枚でも苦しい戦いを強いられることや、加えて【水魔導具】というもう一つの大きな不利なマッチアップがあったことも影響して、TOP8に残ることは出来なかった。
・火自然アポロヌス ビートダウンの主役となったのは、【火自然アポロヌス】。
ただしこのデッキは、手札に3種のカードを揃えるコンボデッキとしての性質が強い。
もっともコンボデッキでありながら環境最高速である所以は、自然文明の豊富なサーチカードのお陰である。
サーチをしながら進化元になる《ヘルコプ太の心絵》、「質より量」の《進化設計図》、そして「量より質」の《エボリューション・エッグ》がそれぞれ手札の足りない部分が補うことが出来るため、想像以上の再現性があるのだ。
対サガという観点でいくと、最近のリストは《パーリ騎士の心絵》を採用しているケースが多い。 サガはアポロに対して≪エマージェンシー・タイフーン≫等であらかじめサガを墓地に置いておくことで、《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》のトリガーを狙うが、《パーリ騎士の心絵》はこの思惑を外すことが出来る。
また先攻であれば2ターン目の《オンソク童子 <ターボ.鬼>》+《轟く侵略 レッドゾーン》で、サガに対して低リスクで3点行くことも可能だ。このパターンだと、後続の《覇帝なき侵略 レッドゾーンF》と合わせてのリーサルを狙うことになる。
この日は全体的にアポロの活躍が目覚ましくTOP8に3名を輩出した。
しかしそれぞれ準々決勝で【水闇自然ジャオウガ】の《天体妖精エスメル /「お茶はいかがですか?」》、また対ビートダウンに重きを置いた【水闇火ダンタルサガ】の《百鬼の邪王門》、そして【水闇サガ】のコントロールプランの前に、無念の敗退となってしまった。
・水魔導具 サガに勝てるデッキとして広く知られているのが【水魔導具】だ。
元々コントロールデッキに対して無類の強さを誇るこのデッキだが、サガに対しても強い。他のデッキが色の都合で中々採用しにくい《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》を無理なく搭載することが出来る上、《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》で墓地をリセットすることが可能。2コストの対策が複数積めることで、先攻3ターン目のサガループの被弾率も大きく下げることが出来る。
加えて、魔導具のいいところはそれらのカードを使っても手札が減らず、更に《卍 新世壊 卍》や《「無月」の頂 $スザーク$》のおかげで中長期戦にも滅法強いのだ。
よってサガがこのデッキに勝つにはメタカードを引かれる前に最速3ターン目で入るか、《勝熱と弾丸と自由の決断》等で《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》を剥がすか、或いは辛抱強く《卍 新世壊 卍》を剥がしながら打点を並べて殴るか、といったように少し変わった動きをせねばならない。これはサガ側にかなりのプレイスキルが必要となる。
……と、サガに対する強さは保証されているものの、明確な弱点も用意されている。
それは、対ビートダウンに致命的に弱いというものだ。
前回のDMGP-2023 1-stで優勝できなかった要因もそこにあった。このデッキは【火単我我我ガイアールブランド】はもちろん、【火自然アポロヌス】にもかなり弱い。
特に今回はそれらのデッキが最後まで上位に残っていたこともあったか、TOP16の段階で大会から姿を消してしまった。
・闇火テレスコ=テレス 超CS前に現れた新デッキが、【闇火テレスコ=テレス】だ。
このデッキの主役となるのは、《謀遠 テレスコ=テレス》。ハンデスとドローを備えたシステムクリーチャーであり、このカードを軸にゲームをコントロールしていくことになる。
デッキには多数のメタカードが採用されており、いうならば「メタカードをテレスコで支える」といったような戦い方をする。
中でも、特に《ルピア炎鬼》は面白い。 自身にも影響が及ぶもののパワーラインが5000と高く、≪「…開けるか?」≫の効果で処理されないことが強み。もちろん《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《コッコ・武・ルピア》といったカードも健在である。
守りはお馴染み《百鬼の邪王門》+《一王二命三眼槍》が、フィニッシュはこちらもお馴染み《CRYMAX ジャオウガ》が担当してくれる。
元々サガを意識して構築されたこともあって、サガ対しては確かに強い。サガはメタカードを複数搭載しているデッキに対して「メタカードを処理し続けて、相手の息切れを狙う」という勝ち方を狙う。しかしこのデッキは《謀遠 テレスコ=テレス》で手札の枚数差を付けることで、先にサガ側の息切れを狙うことが出来るのだ。
一方で《謀遠 テレスコ=テレス》での優勢を維持しにくいデッキに対しては、苦戦を強いられることとなる。
その代表例と言えるのが対コントロールに滅法強い【水魔導具】だろう。
また《ドンドン火噴くナウ》等でテレスコの処理が比較的容易な【5cザーディクリカ】等も、一度主導権を取られると巻き返すのは中々難しいだろう。
加えて、デッキの強度という点にもやや課題を残しているだろうか。
TOP32の時点でこのデッキを使用していた2人のプレイヤーのうち、1人は【火単我我我ガイアールブランド】の《烈火大聖 ソンクン》、そしてもう1人は「3ターンサガ」に屈して、大会を去ることとなった。
とはいえまだまだ出てきたばかりの新デッキであり、今後のリストの変化や活躍には注目していきたい。
・水闇自然ジャオウガ 対サガに留まらず、本大会に於いて大きな成果を出したのが【水闇自然ジャオウガ】だった。
サガへの対抗として《とこしえの超人》+《若き大長老 アプル》を採用し、ビートダウンには≪ボン・キゴマイム≫+《絶望と反魂と滅殺の決断》で対応。《天災 デドダム》や《キユリのASMラジオ》でリソース・盤面を広げ、最後は《CRYMAX ジャオウガ》でゲームを締める。
《極楽鳥》や≪母なる星域≫が絡めば5ターン目にはジャオウガが、凄まじく嚙み合えば夢の4ターンジャオウガも可能だ。
このデッキの魅力は、採用出来るカードの幅広さにあるだろう。
以前は《我我我ガイアール・ブランド》への対抗として《キャディ・ビートル》を採用していたが、火単の減少に伴い《若き大長老 アプル》の増加傾向にあることは、前述した通り。
また準々決勝ではトータルで不利を背負う【火自然アポロヌス】に対して、《天体妖精エスメル /「お茶はいかがですか?」》を絡めたことで勝利。本戦ではビートダウンに対して、粘り勝ちしている光景も幾つか見られた。
そして決勝もあと一歩のところまでサガを追い詰め、勝利を掴みかけたことを考えると、最もサガに肉薄したデッキと言えるのかもしれない。
・水闇ダンタルサガ だがこれだけの包囲網をもってしても、【水闇ダンタルサガ】は強かった。
ひんた「サガはメタったとしてもメタり切れない強さがある」
どんよく「デッキ強度が違う。サガは不利にも一定確率で勝てるので、『絶対に勝てない』相手が存在しない」
トッププレイヤーたちがそう称賛するだけのデッキの強さが、サガにはあった。
ダンタルサガのとにかく強い点は、広い対応力にある。
2ターン目に≪エマージェンシー・タイフーン≫を撃てば3ターンフィニッシュがチラつき、殴りにいけば≪「迷いはない。俺の成すことは決まった」≫からのループが、メタカードをだせば《龍素記号wD サイクルペディア》や《絶望と反魂と滅殺の決断》等による締め上げが待っている。
例えばメタカードで決着を付けたい【水闇自然ジャオウガ】のようなデッキはリソース切れを、単体の強力なカードでリソースがなくてもゲームに勝てる【5cザーディクリカ】のようなデッキには、テンポをずらして早期のループを狙うことで対応可能ということだ。
これだけでも強力だが、このデッキはメタカードを乗り越える手段にも事欠かない。 前述したひんたは、今大会の中で《アルカディアス・モモキング》を7マナから《蒼狼の大王 イザナギテラス》でサガを引っ張ってきて、《疾封怒闘 キューブリック》で乗り越えて勝ったという。
また決勝戦でもサガループの過程で《疾封怒闘 キューブリック》を見付けたことで≪ボン・キゴマイム≫を退けることに成功し、《邪神M・ロマノフ》からの勝利に繋げることが出来た。
またこれまで書いてきたように、対サガ包囲網を構成するデッキは、当然それらの間にも相性が生じてしまう。サガにだけ勝てるだけではいけないのだ。
同胞に《百鬼の邪王門》などを採用した【水闇火ダンタルサガ】がいたのも心強かった。直接対決は水闇に軍配が上がるが、とりこぼしがちな対ビートダウンに対して、火が入っている構築がかなり有利を主張出来る。実際、TOP8以降はそういった流れになっていた。
……と、このデッキはデュエマの歴史に於いても最強クラスのデッキである一方で、それ故に最高クラスの難易度のデッキでもある。出来ることが多すぎるため、手札や自分の山札状況、相手のデッキによって柔軟にプレイの方針を決めねばならない。各種環境デッキへの理解度はもちろん、対戦に於いては時に「未来が見えている」かのようなプレイが求められることがある。
またこの構築・プレイに至るまでに、数々の上位プレイヤーたちが数か月の時を費やした。
サガが最強である所以は、サガを最強にするまで洗練させ続けたプレイヤーたちがいたことも、忘れてはならない事実であろう。
おわりに
今回の大会は「サガ vs. 対サガデッキ」を軸にメタゲームが展開され、その上で【水闇サガ】が厳しい包囲を見事に突破して優勝を果たした。現環境は【水闇ダンタルサガ】が頭一つ抜けて強いという事実があり、そこから目を逸らすことは出来ない。
しかし超CSⅤはもう一回ある。場所は大阪。
更に大阪大会までには新カードも登場する。
新カードを受けて環境はどう変化するのか。どういったカードが活躍するのか。
楽しみにしたい。
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY