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全国大会2023 準々決勝:ZweiLance vs.キナリ

ライター:齋藤 陽(あーくん)
撮影者:堀川 優一(アノアデザイン)

ZweiLance「ミスった!ミスったミスったミスった!!」

 席についてシャッフルをしながら話すZweiLance
 予選6試合目でプレイミスをしたということを振り返っているようだ。
 それを見て少し笑った後、「フィーチャー、いいなぁ」とキナリが返す。
 数多くの実績を積んできたプレイヤーが多い全国大会において、言ってしまえばまだ無名の、今大会のダークホースであるキナリはフィーチャーテーブルに呼ばれたことがない。そこにあるのはひとえに憧れだろう。
 「俺に勝ったら呼ばれますよ」と、軽く返すZweiLance
 準々決勝といえど緊張はないようで、これをきっかけに二人の会話が始まる。

ZweiLance「確かめちゃくちゃお若いですよね?何歳ですか?」

キナリ「15です」

ZweiLance「若いなーw 高校生?」

キナリ「いや、今年から高校ですね。この前中学卒業しました」

ZweiLance「マジで?凄いなー。俺その時何してたかなぁ」

 軽口もそこそこに、二人は対戦の準備を進める


 ここで先に水魔導具ミラーにおける勝利条件を確認しておこう。

 《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えて大量のドルスザクを投げつけ、追加ターンで攻撃やループに入って勝利するのが水魔導具の基本戦略だ。

 仮にエレメント除去などで《卍 新世壊 卍》の完成が遠のいても、《卍 新世壊 卍》で稼いだ手札とドルスザクで時間を作り、相手の処理が追いつかなくなるのを待ち、最終的に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》に繋げることができるのがこのデッキの強みであると言える。

 しかし、ことミラーにおいては少し話が変わってくる。
 それが《堕呪 エアヴォ》《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》の存在。そして複雑な勝利条件だ。  《卍 新世壊 卍》がある状態の《堕呪 エアヴォ》は自身の手札を維持しながら相手の《卍 新世壊 卍》を一時的に退かすことで、《卍 新世壊 卍》のカウントを入れ替えることができる。
 しかし、《卍 新世壊 卍》を剥がすと下にあった魔導具呪文が墓地に置かれることで、ドルスザクの着地を早めてしまう。
 つまり、《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》の上面がバトルゾーンに降臨しやすくなってしまうのだ。  ここで重要になってくるのが《堕呪 エアヴォ》のコストが4であること。
 ≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫のマナが拘束によりその後の《堕呪 エアヴォ》が撃ちにくくなってしまうため、ゆっくりとカウントを巻き返されやすいことがゲームを複雑なものにしていく。

 なにより難しくしているのは《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えても即勝利に繋がらないことであろう。
《卍 新世壊 卍》により呪文ロックができないほか、≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫のマナ拘束はエクストラターンでも有効なので、追加のアクションが取りにくくなる。

 キナリ《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》を採用しており、打点を揃えた後に《堕呪 エアヴォ》《卍 新世壊 卍》を剥がすことが勝利条件。

 対するZweiLanceは、フィニッシュを無限ターンと《堕呪 ウキドゥ》によるループに据えているため、相手の≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を退かしながら《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えるのが勝利条件だ。

 前置きが長くなってしまったが、このミラーマッチは非常に難解なため、お互いのプレイヤーがどういった思考をしていたかの整理に役立ててもらいたい。  それではここから、最高峰の水魔導具ミラーをお届けしよう。

Game 1

先攻:キナリ  《堕呪 ギャプドゥ》《堕呪 エアヴォ》と埋め、キナリが先攻2ターン目に《卍 新世壊 卍》を設置するところからゲームは始まった。
 ZweiLanceも負けじと《卍 新世壊 卍》を貼って対抗する。お互い立ち上がりは上々だ。

 キナリ《堕呪 バレッドゥ》でドローを進めながら《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》を捨ててエンド。
 この時点でキナリの手札には《堕呪 エアヴォ》《堕呪 ゴンパドゥ》が構えており、先攻の利を活かしてアドバンテージを稼いで押しつぶすプランを取ろうとしている。

 ターンが返ってきたZweiLanceの手札は《堕呪 エアヴォ》《好詠音愛 クロカミ》《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》が2枚と、山札を掘り進める見通しがあまり立っていない。
 少考の後、《堕呪 エアヴォ》をマナに置いて《好詠音愛 クロカミ》をプレイし、行動回数を増やしてキナリの速度に追いつく準備をする。

 キナリ《堕呪 エアヴォ》ZweiLance《卍 新世壊 卍》をバウンス。自身の《卍 新世壊 卍》のカウントを進める。
 返しに《卍 新世壊 卍》を貼り直して、そのまま≪堕呪 ブラッドゥ≫を2連打してターンを終えるZweiLance

 一方的に《堕呪 エアヴォ》を唱えることができたため《卍 新世壊 卍》のカウントが2の状態で、キナリにターンが渡る。
 まずは≪堕呪 ブラッドゥ≫でドローを進め、《堕呪 ゴンパドゥ》《堕呪 エアヴォ》をキャッチ。そのまま1回目の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えると、《ガル・ラガンザーク》《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》の上面を踏み倒す。  続くターンで2枚目の《卍 新世壊 卍》を張り、《堕呪 エアヴォ》で相手の《卍 新世壊 卍》をもう一度手札に返してターンを終える。

 「この卍壊は時間を取るための卍壊」と言わんばかりのキナリ

 これを受けたZweiLanceは、目下すぐには使わないであろう《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を埋めて、《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 ゴンパドゥ》と唱えて手を進めながら、ターンエンド時に無月の門・絶で≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫の宣言で受け応える。

キナリ「(≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫の)下、失礼します」

ZweiLance「大丈夫です。今って手札3枚ですよね?」

 お互いに状況を確認し合う。


 ここで一旦状況を整理しよう。
 先に1回目の卍壊を行ったキナリはマナが6枚。
 さらに《卍 新世壊 卍》で稼いだ大量の手札を持つが、≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫のマナ拘束により稼いだアドバンテージを上手く逃がすことができない。

 対するZweiLance《卍 新世壊 卍》の定着ができていないためドローをあまり行えていないが、《好詠音愛 クロカミ》によって≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫の支配の影響を受けにくい状態だ。

 形こそ違えど、ここからはマナの拘束を意識しながら《卍 新世壊 卍》のカウントを伸ばし、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を目指すことになる。


 キナリの7ターン目は≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫の縛りが重く、マナチャージのみで終了。
 ZweiLanceは三度目の《卍 新世壊 卍》を貼り直し、相手が育てている《卍 新世壊 卍》《堕呪 エアヴォ》で弾いて優位を取りに行く。

 このままでは《好詠音愛 クロカミ》分のアドバンテージでゲームがひっくり返ることを懸念したキナリは、冷静にZweiLanceのマナと盤面を数える。
 やがて考えがまとまったようで、マナをチャージすると、たった今手札に戻された《卍 新世壊 卍》を張り直し、キナリ側4枚目となる《堕呪 エアヴォ》をプレイ。

キナリ「戻す対象は《好詠音愛 クロカミ》で」

 行動回数のアドバンテージを帳消しにしながら、《堕呪 ウキドゥ》でさらなるドローをして終了。
 これでキナリ《卍 新世壊 卍》は2カウント。ターンが返ってくれば二度目の無月の門99を狙える状態だ。

 ZweiLance《好詠音愛 クロカミ》を出し直し、《堕呪 バレッドゥ》を唱えてターンを返すのみ。

 そして9ターン目を迎えたキナリ

 まずは≪堕呪 ブラッドゥ≫を唱えて《堕呪 エアヴォ》を自分の山札に返す。
 そのまま《堕呪 ゴンパドゥ》《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を回収すると、《卍 新世壊 卍》のドローで《「無月」の頂 $スザーク$》が手札に加わる。

 そのまま2回目の卍壊を行い、《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》《「無月」の頂 $スザーク$》の召喚を宣言。≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を破壊して山札を固定した場所まで掘り進める。

 追加ターンに突入すると即座に《堕呪 エアヴォ》を唱え、ZweiLance《卍 新世壊 卍》を除去。これにより《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》の呪文ロック効果がアクティブになる。  勝利条件を達成したキナリはそのままドルスザク軍団で一斉攻撃を宣言し、1ゲーム目を終了させた。

キナリ 1-0 ZweiLance

 キナリは2023年の後期ランキング争いに突如頭角を表したプレイヤーだ。
 ランキングレースを走るためには関東か関西で回数を稼ぐのがセオリーと言われていた今期において、三重県を中心に高い勝率で一気にポイントを積み重ねた。

 その優勝回数は後期ランキング期間だけで16回。
 CSに積極的に出始めたのは2023年からだったため、中部地方のプレイヤーに聞いても、今まで話題になることはなかったという。

 今年に入るまでは全く知られていなかったプレイヤーだが、彼は今、完全なダークホースとしてこの場に立っており、圧倒的な実力を持って全国にその名を轟かせようとしている。

Game 2

先攻:ZweiLance  2戦目は先攻になったZweiLance。今回も2ターン目に《卍 新世壊 卍》をプレイ。最高速度でゲームを開始した。
 しかし、対するキナリの動きはそうではない。

キナリ「2マナ……《堕呪 ゴンパドゥ》で」

 水魔導具が環境デッキとして成り上がった背景には、《卍 新世壊 卍》の引き込みが遅くても試合に勝てるということが判明したからだ。
 しかし、それはあくまでも動き出しが遅い相手に対しての話。
 ミラーにおいて、片方のプレイヤーだけが《卍 新世壊 卍》を張れないことは致命的なテンポロスを生んでしまう。

 お互いにそのことを理解しているため、キナリの顔は歪み、反対にZweiLanceは一瞬満面の笑みを浮かべてから3ターン目のドローをする。
 まずは《堕呪 ゾメンザン》で1ドローして≪堕呪 ブラッドゥ≫で更に2ドローして終了。
 キナリは3ターン目も《堕呪 ゴンパドゥ》を唱え、ようやく《卍 新世壊 卍》へのアクセスを完了させる。

 ZweiLanceはもう一度≪堕呪 ブラッドゥ≫を唱えて2ドロー。そして《堕呪 ゴンパドゥ》を使って《堕呪 ゾメンザン》を回収。
 カウントを4に進めながら後続を確保し、手札の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》唱えずにターンを返す。

 相手の《卍 新世壊 卍》が遅れているため、無理に勝とうとせず、ただ負けなければいい。
 現在ZweiLanceの目的は相手より先に卍壊して優位を築くことではなく、卍壊してから確実に勝てる盤面を作ることに変わっている。

 王手を掛けられているキナリは延命のため《堕呪 エアヴォ》《卍 新世壊 卍》を戻す。

 ZweiLanceはこれに《卍 新世壊 卍》の2枚張りと《堕呪 ゾメンザン》のプレイでカウントアップ。
 キナリは次のターン5マナしか使えないため、《卍 新世壊 卍》《堕呪 エアヴォ》のどちらかしか使えないという間合いを見極めている。
 仮に相手が追加の《堕呪 エアヴォ》を唱えても最小限のテンポロスで抑える構えを取る。

 キナリは少考の後《堕呪 ゴンパドゥ》を唱え、そのまま《好詠音愛 クロカミ》をプレイ。ターンが返ってくれば巻き返せる形を整えた。

 そうして迎えたZweiLanceの6ターン目。
 ここからは相手に一切の自由を与えない青の時間が始まる。  まずは《好詠音愛 クロカミ》をプレイし、呪文のコストを軽くして下準備を行う。
 そのまま≪堕呪 ブラッドゥ≫で自身の山札に《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》を2枚戻す。
 続く行動は《堕呪 ギャプドゥ》《堕呪 バレッドゥ》と繋げて合計5ドロー。終了時に1度目の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》の上面を踏み倒す。

 7ターン目は《堕呪 ゴンパドゥ》2連打から《堕呪 ボックドゥ》を2連打。山札を掘り進め3枚目の《卍 新世壊 卍》にアクセスする。
 すかさず設置して追加の《堕呪 ゴンパドゥ》。終了時に2度目の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》をプレイ。
 ここで少し考えるが、リスクはないと判断し《凶鬼卍号 メラヴォルガル》《「無月」の頂 $スザーク$》を投下。楯回収も含めて更にドローを進める。

 お互いのシールドからトリガーはなく、そのまま追加ターンが始まる。

 そしてこの時点で実質的にゲームは決着を迎えていた。

 《好詠音愛 クロカミ》を維持した水魔導具はもう止まらない。
 《卍 新世壊 卍》《堕呪 エアヴォ》+≪堕呪 ブラッドゥ≫+2コスト以下の魔導具呪文×2回を駆使することで、なにもないところから山札を回復しつつ無月の門・99まで到達できるようになるからだ。
 ZweiLanceが目指す盤面は10マナ作った状態で《卍 新世壊 卍》を起動すること。
 この後は何度も《卍 新世壊 卍》を起動し、少しずつマナを伸ばし、山札を薄くしていく算段だ。

 8ターン目の始動は《堕呪 エアヴォ》で使用済みの《卍 新世壊 卍》を回収。下に敷かれた4枚の魔導具を墓地に置く。
 一度《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》で山札に返すと、もう一度《堕呪 エアヴォ》を使い2個目の使用済み《卍 新世壊 卍》も手札に加える。
 直後《堕呪 ゴンパドゥ》を唱え、ボトムを固定。この《堕呪 ゴンパドゥ》は墓地に送って山札の消費を抑えた状態で3度目の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を使用する。

 効果で9ターン目を迎え、《堕呪 エアヴォ》で墓地肥やしと《卍 新世壊 卍》 の再利用。
≪堕呪 ブラッドゥ≫を使って山回復。すぐさま《堕呪 ゴンパドゥ》を2連打してパーツの回収。

このタイミングで、キナリからジャッジに質問が入る。

キナリ「すみません。制限時間残り何分くらいですかね」
ジャッジ「約13分です」

 このマッチは2本先取であるため、ほとんど負けている試合であれば早めに投了して最終戦の時間を確保することも戦略である。
 ZweiLanceの動きは、よほど致命的なミスを死ない限り止まることはないが、確実なフィニッシュまではあと数ターンかかる見込みだ。
 それを把握したキナリは、ZweiLance《堕呪 ウキドゥ》を唱えたところで投了を宣言し、最後のゲームに向かった。

キナリ 1-1 ZweiLance  ZweiLanceを知らない競技プレイヤーはいない。
 それどころか、もしかしたらZweiLanceを知らないプレイヤーも珍しいのではないだろうか。
 ZweiLanceがデュエル・マスターズの代表プレイヤーなのは、誰も疑う余地がないだろう。

 彼は北海道で生まれ、仙台で修行をし、今は東京でデュエル・マスターズを楽しんでいる。
 現在こそ誰もが認めるトッププレイヤーだが、そのキャリアの始まりは「デュエル・マスターズがしたい」の一点だった。
 何者でもなかった彼は、競技シーンでの活躍と、デュエル・マスターズの面白さを発信し続け、現在の立場を築いている。
 そして彼は今、最強の壁として新星の前に立ちはだかる。

Game 3

先攻:キナリ  最終ゲームは再びキナリから始まる。
《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》《堕呪 ボックドゥ》とマナに埋め、このマッチ三度目となる先攻2ターン《卍 新世壊 卍》を決めてみせる。
 これに対してZweiLance《ガル・ラガンザーク》《堕呪 ギャプドゥ》とマナに埋め、もちろん《卍 新世壊 卍》で返す。

 キナリは3ターン目に《好詠音愛 クロカミ》をプレイして行動回数を増やしにいき、対するZweiLance《堕呪 ゾメンザン》《堕呪 ギャプドゥ》でカウントを進める。

 キナリの4ターン目は《堕呪 ゴンパドゥ》で手札を整えた後に《堕呪 エアヴォ》。バトルゾーンからZweiLance《卍 新世壊 卍》が退く形だ。
 こうなるとZweiLanceは卍解を目指すより相手の妨害を優先することになる。

 ZweiLanceはまずマナをチャージすると《堕呪 バレッドゥ》を2連打。《堕呪 ゴンパドゥ》《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》と墓地に送ると、ターン終了時に無月の門・絶を宣言。
 呼び出されたのは頂きの名を冠する者、《「無月」の頂 $スザーク$》  キナリ《好詠音愛 クロカミ》を破壊しながら1ハンデスを行い、《卍 新世壊 卍》とは別軸の圧力をかける。
 キナリ《堕呪 エアヴォ》で自分の《卍 新世壊 卍》の下にある《堕呪 ゴンパドゥ》を手札に加えて1ドロー。相手にドローを与えずにリソースの回復を目指す。

 ZweiLanceは完成が遠くなりそうな《卍 新世壊 卍》をマナに埋め、《堕呪 エアヴォ》キナリ《卍 新世壊 卍》を除去して2ドロー。

 ここまででキナリの手札が5枚。ZweiLanceの手札は7枚。
 バトルゾーンはお互い《卍 新世壊 卍》がなく、ZweiLanceだけ《「無月」の頂 $スザーク$》を維持しできており、アドバンテージの面でZweiLanceが先攻後攻のビハインドを捲ろうとしている。

 ゲームを伸ばすわけにはいかないキナリ《卍 新世壊 卍》《好詠音愛 クロカミ》を設置し、《堕呪 ゴンパドゥ》を唱えて決着を目指す。
 なんとか食らいついているZweiLance《卍 新世壊 卍》をプレイして《堕呪 エアヴォ》で妨害に回る。

 7ターン目を迎えたキナリは、もう一度《卍 新世壊 卍》を貼り直す。その後≪堕呪 ブラッドゥ≫をZweiLanceの墓地に撃ち込むと、祈るようにドローを進める。
 まず1枚ドロー。そして、《卍 新世壊 卍》の下に入れてもう1枚ドロー。

 手札に加わったカードを確認すると、大きく頷いて手を進める。
《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 ゴンパドゥ》と繋いで、このマッチを決定づける《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》!!!!!!  効果で《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》《ガル・ラガンザーク》《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 卍・獄・殺》を一気に揃え、追加ターンに突入。
 最後にキナリはマッチ通算14回目の《堕呪 エアヴォ》で頂上への道を切り開く。
 自身を守る《卍 新世壊 卍》がなくなると、ZweiLanceは満足した表情で、決勝に向かうキナリに健闘の握手を申し込んだ。

キナリ 2-1 ZweiLance

Winnre:キナリ ZweiLance「マジで上手いですね。ミラー、自信あったんだけどな」

キナリ「ありがとうございます」

 試合の振り返りや構築について少し言葉を交わすと、キナリは準決勝のテーブルに向かう。

 残されたZweiLanceは、キナリの強さを噛み締めながら、筆者と彼について会話を続ける。
ZweiLance「いやあ、上手かったなぁ。1試合目の≪クロカミ≫戻しとか、かなり的確だった。あれで中学生でしょ?末恐ろしいよ、本当」
 このように、いなくなった後もキナリを褒め称えていた。
 そしてひとしきり話した後、少し笑いながらこうぼやいた。

「まあ、突き詰めるとどうやっても青魔ミラーはこうなるよな」

 ある程度結果が予想できていたような言い方だ。気になったので「こうなる」の意味を訊ねてみた。

ZweiLance「ああいや。結局さ、突き詰めるとどこまでいっても先2《卍 新世壊 卍》なんだよね。色々あったけど、全試合(勝ったのは)先2《卍 新世壊 卍》だったでしょ?やり込むと、引いてるかどうかの運がかなり絡んじゃうんだよね」

 それは、そうなのかもしれない。

 事実2試合目のZweiLanceは、自分だけ《卍 新世壊 卍》を貼れたことで満面の笑みを見せていた。

 「まあ突き詰めるまでが難しいんだけどね~」と続けるが、そこには「この会場にいるプレイヤーなら突き詰めてくるよね」という意味を含めているようにも聞こえた。

 実際、最近のメタゲームではあまり見かけないデッキだったが、キナリはこの日に向けてミラーマッチの練習を重ねてきたという。

突き詰めれば、運の良い方が勝利する。ならば運の良い時に確実に勝てるように、プレイを突き詰める。

 言葉にするのは簡単だが、実践するのは難しいことをやってきたのがZweiLanceであり、彼に勝利したキナリだったというわけだ。
 その後ZweiLanceは残されたプレイヤーたちに激励を送り、日本一決定戦の会場を後にした。

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