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全国大会2023 準決勝:ミノミー vs.キナリ

ライター:秋山 大空
撮影者:後長 京介

 リスクとは、「良い結果になる可能性」と「悪い結果になる可能性」の両方を含んだ「不確実性」のことである。

 しかし、一般的にリスクと言うと「危険」や「悪いことが起きる」可能性と言う意味で捉えられる。

 多くの人はその捉え方に倣うかのように、リスクよりも安定を取りたがる傾向にある。

 今大会でも「踏ませれば勝つ」トリガーの存在、ブロッカー展開後の守りの堅さ、多くのデッキを封殺する《∞龍 ゲンムエンペラー》等、安定感に定評のある『巨大天門』が使用者数トップのデッキとなった。

 環境的立ち位置が良かったことも追い風となったが、現環境の覇者の一角とされ、今大会でも使用者数2位の『水火マジック』と丁度ダブルスコアがつく差になった要因は、やはり安定と言う魅力があってこそだろう。

 とは言え、安定感のあるデッキこそが勝てるデッキと言うわけではない。

 キナリが使用するのは、新環境においてリスキーな選択肢であった『水魔導具』。

 少し前は安定感のあるデッキの代表と言えば『水闇魔導具』だったが、新殿堂レギュレーションによって『水闇魔導具』は『水魔導具』へ構築の変更を余儀なくされ、『火水マジック』に頭を抱えているのが現状だ。

キナリ「『闇自然アビス』と『水火マジック』が環境トップと仮定して、それに勝てる『水闇COMPLEX』も多いと思ったので『闇自然アビス』相手にもある程度戦えて『水闇COMPLEX』に有利な『水魔導具』を選びました」

キナリ「2ターン目《卍 新世壊 卍》の上振れもあるんで、デッキパワーもバッチリです」

 普段は三重県でプレイしており、明日から高校生と言うキナリ

キナリ「周りに知り合いもあんまりいないですし、強い人ばっかりなので一戦一戦カロリー高いっす…でも楽しいですね」

 東京と言うアウェーの地に加え、周りのプレイヤーは年上が殆どで、環境トップには『水魔導具』側が不利とされる『水火マジック』がある。

 一歩間違えれば、不利対面の『水火マジック』の海に飛び込むことになっただろう。

 だが、実際には『巨大天門』が環境を席巻し、その『巨大天門』にも通りが良い『水魔導具』は今大会においてすこぶる立ち位置が良いデッキとなった。

 数多のプレッシャーの中、『水魔導具』を握る凄まじい度胸。

 その度胸が『巨大天門』環境を切り開き、準決勝の舞台に立つ力となった。

 だが、マッチングと言う偶然は、その度胸を試すかのようにミノミーとのマッチアップを用意した。

 ミノミーの使用デッキは、奇しくも『水魔導具』と同じ使用者数となった『闇自然アビス』。

 『闇自然アビス』を使おうとしていた選手が『巨大天門』に流れたか、事前評価から大きく数を減らした『闇自然アビス』だが、重要なのはキナリの「『闇自然アビス』にもある程度戦えて」の一言。

 ある程度。つまり『闇自然アビス』は『水魔導具』相手に何もできないわけではない。

 もはや語る必要もないかもしれないが、語らずにはいられない48410ptsと言う異次元のランキングポイント。

 語らずにはいられない『水魔導具』のエピソード。『水魔導具』と言えばミノミーと言われるほどの使用歴、結果、理解度。

 上位の『水魔導具』の理解者ミノミーキナリの『水魔導具』をいなし切るか。

 それともキナリが今の『水魔導具』の力を見せるか。

 いざ、勝負。

Game 1

先攻:キナリ  キナリは2ターン目の《堕呪 バレッドゥ》から3ターン目に《好詠音愛 クロカミ》召喚と好調。

 後手を取ったミノミーも、《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》でマナ加速し3ターン目に《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》でメクレイドする黒緑アビスの王道展開。

 しかし捲った中に展開札がなく、≪「倒したいか?」≫を唱えるにとどまる。

 ジャストダイバーで何事もなく生き残った《好詠音愛 クロカミ》の1軽減を入れ《堕呪 バレッドゥ》を唱えるが、このドローがキナリ自身にとっては吉報、ミノミーにとっては凶報となる。

 《卍 新世壊 卍》を展開。《堕呪 ギャプドゥ》を唱え残りカウントは3。

ミノミー「チャージ無しで」

 ≪ドミー=ゾー≫召喚。効果で墓地へ送られた《ア:エヌ:マクア》《邪幽 ジャガイスト》で蘇生し、マナを2枚増やすモードを選択。

 《好詠音愛 クロカミ》攻撃時に《アビスベル=覇=ロード》へ革命チェンジし、ターン終了時に《ア:エヌ:マクア》を場へ。

 キナリの墓地をリセットするが、キナリもすかさず《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》ミノミーの墓地をリセットし、両者の墓地は綺麗さっぱり空に。

 ≪堕呪 ブラッドゥ≫効果で1ドロー。なぜ1ドローがついているのだろうか。《卍 新世壊 卍》効果で下に入れ更にドロー。

 場に《好詠音愛 クロカミ》を置きターンを渡す。

ミノミー「手札の枚数確認していいですか?」

キナリ「3枚です」

 《卍 新世壊 卍》下でドロー効果付きの魔導具呪文を唱え続けているため、当然手札が減らない。

 場にはジャストダイバーで触れられない《好詠音愛 クロカミ》が鎮座しており、あまり楽観視は出来ないミノミー

 手札の《ア:エヌ:マクア》《卍 新世壊 卍》の除去こそできるものの、キナリのマナが増えるため次に《卍 新世壊 卍》を出されたとき、より苦しい状況となる。

 ここは攻める判断をしたミノミー《邪幽 ジャガイスト》から《謀遠 テレスコ=テレス》をメクレイドし、先ほど捨てた《ア:エヌ:マクア》《卍 新世壊 卍》を除去。

 《アビスベル=覇=ロード》で盾を詰めに行くところで、1枚目に《堕呪 エアヴォ》がトリガー。

 《好詠音愛 クロカミ》効果も含めて2体止まるがミノミーは呟く。

「まあしゃあないよなあ…」

 2体目の《ア:エヌ:マクア》で攻撃。  3体止まり、ミノミー の攻撃は終了。

 ターンエンド時に《アビスベル=覇=ロード》効果から《ア:エヌ:マクア》を出し、再びキナリの墓地をリセットする。

 ここで、キナリは2枚目の《卍 新世壊 卍》

 《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》から《「無月」の頂 $スザーク$》《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》《ガル・ラガンザーク》が飛び立つ。

ミノミー 0-1 キナリ

Game 2

先攻:ミノミー  《フェアリー・Re:ライフ》から入り3ターン目はマナチャージのみで終えるミノミー

 キナリ《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 ウキドゥ》で墓地の魔導具を増やし、3ターン目に《ガル・ラガンザーク》宣言。

 並みのデッキであればゲームエンドレベルの展開だが、『闇自然アビス』ならばまだ戦える。

 《ア:エヌ:マクア》でマナを増やし2枚目の《ア:エヌ:マクア》を拾いつつ4ターン目には《謀遠 テレスコ=テレス》が着地。

 《好詠音愛 クロカミ》を添え《堕呪 ゴンパドゥ》を唱えた返しに置かれた《謀遠 テレスコ=テレス》を前に、キナリは考える。

キナリ「いやー苦しい…」

 そう呟きつつ《堕呪 ボックドゥ》《堕呪 ゴンパドゥ》、≪堕呪 ブラッドゥ≫と唱え、ここで引いた《卍 新世壊 卍》を展開。

 《謀遠 テレスコ=テレス》キナリの手札を締め上げているため、《卍 新世壊 卍》展開で減る手札1枚すらも重い。

 一方ミノミー《ガル・ラガンザーク》を跳ねのける、《アビスベル=覇=ロード》素召喚。

 マッハファイターで《ガル・ラガンザーク》を退けつつ、マナから《邪幽 ジャガイスト》

 効果で《ヨービリン=リリン / 「……誰を呼びたい?」》《ア:エヌ:マクア》を展開し、《好詠音愛 クロカミ》と墓地を同時に処理する。

 ここまで墓地と手札を削られると、『水魔導具』と言えども苦しい。魔導具呪文は手札こそ減らないが、《卍 新世壊 卍》がなければ増えもしないのだ。
 とは言え、《卍 新世壊 卍》とシールド・トリガーがあれば逆転されかねないのが『水魔導具』の怖いところ。

 この状況でどう動くべきか。『水魔導具』に熟練したミノミーは、勿論知っている。

 逆転の目が生まれないよう、速やかにシールドを割り切り勝負を決めた。

ミノミー 1-1 キナリ

 文字に起こしてしまうと一瞬だが、両者とも慎重に何が正解なのかを熟慮の末にプレイしている。

 3本先取のため、50分と言う長めの制限時間が設けられているが、それもあっという間に過ぎ去り、気づけば残りは僅か10分。

 制限時間が迫る中、悔いのないようにやり切るにはさっきの2試合よりも早指しを心がけるしかない。

キナリ「次、ちょっとお互い早めで行きましょう」

Game 3

先攻:キナリ

「ちょっとお互い早めで行きましょう」

 そう言ったキナリだが、ゲーム展開も2ターン目《卍 新世壊 卍》でアクセル全開。

 一方ミノミー《フェアリー・Re:ライフ》から《アビスベル=ジャシン帝》

 しかしキナリ、3ターン目に《堕呪 バレッドゥ》、4ターン目には《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 バレッドゥ》

ミノミー「手札が…」

キナリ「6枚です」

 ここまで手札を抱えられると、《卍 新世壊 卍》マナ送ったときどう動かれてもおかしくない。

 捨てられた《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》《ア:エヌ:マクア》で山札に戻すが、キナリの手札はあまりにも万全すぎた。

 4枚目の《堕呪 バレッドゥ》に2枚目の《卍 新世壊 卍》展開。

 4枚の《堕呪 バレッドゥ》から《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》が唱えられ、《ガル・ラガンザーク》《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》が場へ。

 EXターン中に引いた≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》効果で追加し準備万端。

 ドローゴーするミノミーに、《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》、≪堕呪 ブラッドゥ≫、《堕呪 ウキドゥ》のループが降り注いだ。

ミノミー 1-2 キナリ

Winner:キナリ

 今大会後、カバレージライターとして参加したあーくんは言った。

「『水魔導具』は今回勝ち組だったよね。相当立ち位置良かったと思う」

 そして、こうも言った。

「俺!今回全国大会に出てたとしても!『魔導具』握れるほどの心の強さはなかったよ!!」

 多くの人は、リスクよりも安定を取りたがる傾向にある。

 しかし、時にはリスクを取ることも重要なのかもしれない。

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