DMGP2024-1st Day2(オリジナル) 準々決勝:特田ハウス vs. カセキ団
ライター:高橋 穂(北白河)
撮影:瀬尾 亜沙子
その一つの答えとなるのが、「プレイヤー同士の相談」という要素である。一人の思考では足りない時に、頼れるチームメンバーの判断を仰げるというのは、チーム戦にしかない心強いファクターとなる。
では、その相談の効果を最大化するにはどうすればいいか。
それは、チームメンバー全員が同じデッキを使うことである。
全員が知っているデッキならば、当然答えられることは多くなる。こうすれば、理論上三倍の思考リソースをもってゲームを進められるという寸法だ。
そしてこの準々決勝では、そんな3面同デッキチーム…しかも、同じ《アビスベル=覇=ロード》を旗印にしたチーム同士がぶつかり合うこととなった。
「最強だから!」という単純明快かつ自信のこもった理由で特田ハウスの3人が持ち込んだのは【闇自然アビス】。総合力で見れば現代デュエマでもトップクラスの逸品だけに、その力強い選択にも頷ける。
対して、カセキ団の面々が選んだのは火文明を足した独自のチューンの【闇火自然アビス】。《鬼寄せの術》による加速や《イカリノアブラニ火ヲツケロ》によるカウンターに加え、秘策を搭載してこのGPに挑んでいるようだ。
近くて遠い【アビス】同士の戦いの中から、今回は最大の激戦となったA卓の様子を記録していこう。
A:青柳 vs kaseki…
B:UMAP vs バイクちゃん
C:TEMO vs オカリナ
Game1
先攻:青柳 お互い《ア:エヌ:マクア》をチャージしてゲームが幕を開ける。2ターン目、まずは青柳が《フェアリー・Re:ライフ》でマナを伸ばすと、負けじとkaseki…も《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》の呪文面でマナブースト。両者とも、【アビス】系列デッキとして最低限のスタートラインに立った形となる。
だが、両者とも表情はやや微妙。本来ビッグムーブに繋ぎたい3ターン目だが、青柳は悩みつつまたもや《フェアリー・Re:ライフ》止まり。kaseki…に至ってはB卓のUMAPと相談したうえで《イカリノアブラニ火ヲツケロ》のチャージしかできない。
こうしてお互い4-5マナ域に達すると、下手に先にクリーチャーを展開してしまうと《ア:エヌ:マクア》のマッハファイターで即座に殴り返されつつ《アビスベル=覇=ロード》への革命チェンジを許すというとんでもない裏目を引きかねない。
そう考えたのかは定かではないが、青柳は4ターン目の動きを《フェアリー・ギフト》をマナに埋めるのみでパスする。
こうした睨み合いを制するには、先に下手ではない展開をしてしまえばいい。
青柳の手札枚数を確認してからkaseki…が叩きつけたのは、超展開の化身こと《邪幽 ジャガイスト》! 《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》と《謀遠 テレスコ=テレス》を捨ててメクレイドを放つと、さらなる《邪幽 ジャガイスト》がめくれてさらなる展開が確約される。
2体目の《邪幽 ジャガイスト》のメクレイドこそ手札が足りず発動できないものの、《邪幽 ジャガイスト》自身が山札から出てきたことで2回分の蘇生が確定。先ほど捨てた《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》と《謀遠 テレスコ=テレス》がそのままバトルゾーンに蘇り、kaseki…に5枚の墓地と継続的なアドバンテージをもたらす。
【アビス】系列のデッキの必殺技たる通称「ジャガジャガ」への対処を迫られた青柳は、《謀遠 テレスコ=テレス》によるハンデスに苦しみながらも、《ア:エヌ:マクア》を展開。2マナブースト&マナ回収のモードで《アビスベル=覇=ロード》を回収すると、すぐさまマッハファイターで《邪幽 ジャガイスト》へと攻撃しつつ革命チェンジを宣言する。
これは《謀遠 テレスコ=テレス》でブロックされるが、ターン終了時の《アビスベル=覇=ロード》の効果で墓地から《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》が登場すると結局《邪幽 ジャガイスト》1体は(5枚の墓地肥やしのおまけつきで)破壊される。
しかも、ここで落ちたのは《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》と組むことで除去と大量展開をもたらす《邪闘 シス》をはじめとする非常に濃いメンツ。リソースとなる墓地の量や質についても、何としてでも食らいつかんとしていく構えだ。
こうなると、お互い「相手のムーブを読み切り」「半端なブレイクでリソースを与えることなく」「先に一方的な盤面を作るか」の勝負。しかし、この【アビス】系列ミラーにおいては、墓地やマナに見えた大量のカードたちをもチェックする必要がある。
ターンが回るたびに両者の墓地とマナを確認するとともに長考を行っていた、両者の脳の負担は想像を絶するものになったことだろう。
情報量の多さに苦しみながらも、kaseki…は《謀遠 テレスコ=テレス》を召喚するにとどめてリソースゲームの継続を図ることに決めた模様。
これに対する青柳は、ハンデスを受けながらも「こちらもリソースゲームを受ける準備があるぞ」と言わんばかりに《謀遠 テレスコ=テレス》を鏡打ち。ターン終了時の《アビスベル=覇=ロード》でふたたび《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》を蘇生し、《邪幽 ジャガイスト》を処理していく。
こうしてkaseki…が先に築いた盤面優位がなくなると、戦況は泥沼の様相を呈してくる。 kaseki…が《ア:エヌ:マクア》で回収した《アビスベル=覇=ロード》を革命チェンジして青柳の《アビスベル=覇=ロード》と相打ちしたかと思えば、返しのターンの青柳は《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で手札を攻める……という壮絶な潰し合いが始まったのだ。
両者の《謀遠 テレスコ=テレス》が手札を奪い合う中、すでに1戦を終えてシャッフル中のB卓のバイクちゃんと相談するkaseki…。このままではらちが明かない……と考えたか、ここまで触れられなかったリソースを攻めるプランを決行する。
まずは《アビスベル=覇=ロード》を素出ししてマッハファイターで《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》を落とすと、ターン終了時効果で《ア:エヌ:マクア》を呼び出して青柳の墓地を掃除しにかかる!
あれほど充実していた自身の墓地というリソースを空っぽにされた青柳だが、その視線はすでに墓地でもマナでもない、とある場所を指している。
まずは《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》を寝かせて《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》をハイパー化すると、シビルカウント達成済みの《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で《アビスベル=覇=ロード》を攻撃する際、「kaseki…の墓地」という最後のリソースから《邪幽 ジャガイスト》の出たとき効果を抽出にかかる!
カギとなる《ア:エヌ:マクア》を含む手札を2枚切ってのメクレイドから出てきたのは2体目の《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》。これでひとまずkaseki…の手札を空にしつつ、《アビスベル=覇=ロード》と相打ち。
そしてハイパー化した《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》がシールドに向けて動き出し、攻撃時に先ほど捨てた《ア:エヌ:マクア》を蘇生!マナブースト&回収で《アビスベル=覇=ロード》を回収しつつ、ついにシールドを2枚ブレイクする。
もちろんこの《アビスベル=覇=ロード》は先ほど出した《ア:エヌ:マクア》からの革命チェンジで即座に登場。《謀遠 テレスコ=テレス》をバトルで破壊しつつ、ターン終了時の踏み倒しでさらなる《ア:エヌ:マクア》を呼んでkaseki…の墓地を掃除にかかる!
青柳のビッグターンによりバトルゾーンも墓地もごっそり削られたkaseki…だが、先ほどのブレイクにより手札には余裕ができた形となる。
そして、【闇火自然アビス】に手札を与えると何が起きるか。 怒りの油に火が付くのだ。
《イカリノアブラニ火ヲツケロ》で手札から《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》が飛び出ると、ハイパー化していないほうの青柳の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》と相打ちになりつつ《アビスベル=覇=ロード》を破壊し、7枚の墓地肥やしでリソースも一気に取り返す。
だが、ここで墓地に落ちてはいけないとあるカードが落ちてしまう。 《聖魔連結王 ドルファディロム》。ハイパー化した《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》から蘇生する「爆弾」として投入された秘密兵器たる一枚だが、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》がいる今となってはその力は逆にkaseki…を襲いかねない。
これに気付いた両者の表情が変わっていく。
ターンを得た青柳は、まず《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》の呪文面を3回連鎖させて《ア:エヌ:マクア》に辿り着き、(いつの間にか山札が一周してマナに送られていた)《邪闘 シス》を回収。
その《ア:エヌ:マクア》をタップして《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》をハイパー化させると、満を持して《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》が攻撃しつつ《聖魔連結王 ドルファディロム》の力を奪ってkaseki…の盤面を……。
というところで、ジャッジから待ったがかかる。 今の青柳のバトルゾーンにある闇のクリーチャーは、《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》と《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》のみ。シビルカウント未達成であることを指摘されると、両者は驚きの表情とともに苦笑い。
これまで多種多様なリソースの熾烈な取り合いを行ってきただけに、バトルゾーンという基本中の基本が足りていなかったことに両者とも気づかなかったのだ。
ゲームは巻き戻され、全クリーチャーを吹き飛ばすはずだった必殺の一撃はただの1枚ブレイクへと変わる。……だが、一度終幕へと進み始めたゲームはここで止まらない。
ハイパー化した《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》が《邪幽 ジャガイスト》を蘇生しつつ2打点を刻むと、効果によりクリーチャーを攻撃可能な《邪幽 ジャガイスト》がこの長すぎたゲームに終止符を打った。
青柳 0-1 kaseki…
青柳「しんどい……」
勝ったはずの青柳から、弱音とも取られかねない発言がこぼれる。管理する領域が多すぎることによる脳への負担と、ゲームの長期化による時間の経過。準々決勝という場もあり、その消耗はkaseki…も同じだろう。
気付けばB・C卓はすでに決着がついており、チームの勝敗はA卓の結果にかかっているようだ。
Game2
先攻:kaseki… ゲームが開始するや否や、両チームメンバーが一気にA卓に顔を寄せて相談を始める。3面同デッキのチーム同士の戦いだけに、チーム全員の頭脳というすべてのリソースがこの一戦に注ぎ込まれる。だが、2ターン目のkaseki…の動きは《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》チャージという精彩を欠いたもの。自然文明のカードが引けておらず、基本となる2ターン目マナブーストに失敗した形となる。
3ターン目も動けなかったkaseki…に対して、青柳は2ターン目《フェアリー・Re:ライフ》→3T《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》の呪文面でメクレイド→《謀遠 テレスコ=テレス》という理想的ムーブ。
ただでさえ動けないところにハンデスまで飛んできて苦しそうな顔のkaseki…に対して、B卓のバイクちゃんから「頑張れ!」の叱咤が飛ぶ。
そこで気合が入りなおしたか、《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》の呪文面を唱えて出てきたのは《ア:エヌ:マクア》。マナブースト&回収で《邪幽 ジャガイスト》を回収しつつ《謀遠 テレスコ=テレス》をマッハファイターで破壊し、次のターンに望みを繋ぐ。
だが、青柳のムーブはさらにその上を行った。
《邪幽 ジャガイスト》で《謀遠 テレスコ=テレス》と《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》を捨ててメクレイドをすると、めくれたのは2枚目の《邪幽 ジャガイスト》。
2体の《邪幽 ジャガイスト》の蘇生効果をまず処理し、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》と《謀遠 テレスコ=テレス》を蘇生。《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》のハンデスののち、それに対応して《謀遠 テレスコ=テレス》がドローをもたらす。
そしてこれにより手札が足りたので、それをすぐさま捨てて2体目の《邪幽 ジャガイスト》のメクレイドを行うと、出てきたのはまたもや《邪幽 ジャガイスト》!先ほどの「ジャガジャガ」ならぬ「ジャガジャガジャガ」のムーブが成立する!
こうして自身の効果で《謀遠 テレスコ=テレス》を蘇生すると、わずか1ターンにして6体の強力クリーチャーを並べることに成功したのだ!
こうなれば、毎ターン2枚のハンデスと4枚のドローが誘発して絶大なアドバンテージ差がつくこととなる。
手札も墓地も整わずなすすべのないkaseki…に対し、青柳は執拗に墓地を掃除しつつ「少しずつシールドを刻んでからハンデスで手札を落とす」という完璧なコントロールを始動する。この動きを続ける限り、先ほど見せた《イカリノアブラニ火ヲツケロ》を絡めたカウンターは完封される。
そして、2ターン後。マナチャージ以外何もできないまでにリソースを奪われつくしたkaseki…は、ずらりと並んだアビス軍団によるダイレクトアタックを受け入れた。
Winner:特田ハウス
kaseki…「すみません、時間使いすぎて…」
青柳「いやいやこちらも…」
文明構成こそ違うとはいえ、【アビス】系列ミラーマッチということでお互いの辛さが痛いほどわかるであろう二人は、両手でがっちりと握手を交わす。
バイクちゃん「次もジャガイストジャガイストしてください!」
同じ【アビス】の使い手たるカセキ団らしい最大級のエールを受け、特田ハウスの面々は準決勝に足を進めた。
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