超CSⅦ横浜 決勝戦A席:リルク vs. ごんべえ
ライター:原田 武(たけじょー)
撮影者:瀬尾 亜沙子
であれば、人が三人集まってチームを組むとなれば、そこには伝説が生まれうる。
この日会場に集ったデュエル・マスターズを愛する約3300名、1100チームのそれぞれに物語があった。勝者がいて、敗者がいた。笑いがあり、涙があった。語られずとも、そこには確かに伝説の息吹があったのだ。
そして、ならばこそ。最後まで勝ち残った2チーム……3面三十路眼鏡とおもちゃのアオキ2の決勝戦、そのA席で矛を交えたリルクとごんべえの試合の一部始終をここに刻む。
【火光水ゴスペル】を携えたリルク。【光自然巨大天門】を駆るごんべえ。
見届けよう。この日最も伝説に近づいたプレイヤー達の戦いを。
GAME 1
先攻:ごんべえごんべえは《巨大設計図》こそ絡まないものの、3ターン目《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》呪文側から動き出す。これで《闘門の精霊ウェルキウス》と《閃光の精霊カンビアーレ》を回収。
一方のリルクは1、2ターン目と多色カードをマナに置き、3ターン目の《氷柱と炎弧の決断》がファーストアクション。やや苦しい立ち上がりとなったか。 4ターン目を迎えたごんべえはきっちりと《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》の呪文側をプレイ!先程加えた《闘門の精霊ウェルキウス》を経由し……≪支配の精霊ペルフェクト≫をバトルゾーンへ送りこむことに成功。 呪文連打を咎められたリルクだが、それならば一撃の威力に頼るのみ。《ファイナル・ストップ》を唱え、4ターン目を終える。《光開の精霊サイフォゲート》という抜け道こそあれど、やはり【光自然巨大天門】にとって呪文禁止は痛手だ。5ターン目、ごんべえはマナチャージのみ。
リルクとしては既に≪支配の精霊ペルフェクト≫を設置されてしまった都合上、これ以上の展開を許す前に主導権を握っていきたいところ。5ターン目、《キリモミ・ヤマアラシ》+《水晶の王 ゴスペル》! 唱えたばかりの《キリモミ・ヤマアラシ》、さらに《ファイナル・ストップ》を回収してから攻撃を宣言。革命チェンジで《時の法皇 ミラダンテⅫ》まで繋げていく。《時の法皇 ミラダンテⅫ》効果で《ファイナル・ストップ》を唱えることも出来るが、≪支配の精霊ペルフェクト≫によってこのターンに呪文を唱えられるのはあと一回だけ。 故に《時の法皇 ミラダンテⅫ》では1ドローを選択し、《水晶の王 ゴスペル》攻撃時効果で《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を使用。ごんべえはブロックせず、T・ブレイクを受け入れる。
先出し≪支配の精霊ペルフェクト≫に対する考え得る限り最良の攻め手。既に追加ターンは確約されている。生半可なカウンターでは、追加ターン中に再度繰り出される《キリモミ・ヤマアラシ》+《水晶の王 ゴスペル》を止めることはできない。
……だが、今回ばかりは話が違う。 S・トリガー、《ヘブンズ・ゲート》。降り立つのは≪閃光の神官 ヴェルベット≫に《闘門の精霊ウェルキウス》。《闘門の精霊ウェルキウス》効果、1枚ドロー。 《∞龍 ゲンムエンペラー》。
これには折角の追加ターンも形無しだ。リルクは苦笑いを浮かべつつ、マナチャージのみでターンを返す。
ごんべえがこの機を逃すはずもない。無造作に《∞龍 ゲンムエンペラー》を突っ込ませ、GAME1の勝利を手にした。
リルク 0-1 ごんべえ
月嶋「勝ち?」
ごんべえ(うなずく)
月嶋「おけ」
おもちゃのアオキ2のコミュニケーションは簡潔ながら、付き合いの長さと深さを感じさせるものだ。劇的な逆転劇にも関わらず至って冷静なごんべえの精神力にも驚かされるが、地元・群馬の所謂「いつメン」で構成されたチームとのことで、言葉にせずとも伝わるものもあるのだろう。一方の3面三十路眼鏡はというと……
リルク「ゲンムまで出てきちゃった~」
と、B席で戦うtakiに泣きついている。手元で二試合目の準備を進めつつもなにやらチームメンバーと談笑しており、うってかわって賑やかだ。勿論プレイ相談も忘れてはいない。 それぞれのチームに、それぞれの信頼と団結がある。仲間たちのためにも、負けられない。
GAME 2
先攻:リルク2ターン目《勇愛の天秤》でスタートしたリルクに対し、負けじと《超七極 Gio / 巨大設計図》呪文側で対抗するごんべえ。《閃光の神官 ヴェルベット / フェアリー・パワー》《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》2枚をヒットさせるこの上ないスタートとなる。
リルクは慌てず《氷柱と炎弧の決断》でドローを重ね、追いすがる。が、ここにごんべえの《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》呪文側が突き刺さる! リルク「お清め撃たれた!やばいな~」
墓地に貯めこんだ5枚の呪文が山札下に送り返され、《水晶の王 ゴスペル》へのアクセスが一気に遠のく。返しのターンで《ファイナル・ストップ》を唱えGAME 1同様1ターンをもぎ取ることには成功するものの、リルクの表情は晴れない。
墓地の呪文が僅か1枚。マナは5枚。このターンはどうやっても走れないのだ。次ターンに望みをつなぐべく、《勇愛の天秤》と《バーニング・フィンガー》で手札と墓地を整えてターンエンド。 これを受けたごんべえはB席の月嶋に相談の末、≪スターゲイズ・ゲート≫→《闘門の精霊ウェルキウス》→《∞龍 ゲンムエンペラー》のビッグアクション。リルクの足回りを咎めに行く。
とはいえ前ターンの下準備が実り、墓地には十分な数の呪文が置かれている。6ターン目を迎えたリルクは《水晶の王 ゴスペル》の召喚に成功した。《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を回収してターン終了。 そして、ごんべえ側にはこの《水晶の王 ゴスペル》を除去する手段がない。《冥界を統べる新月のハーデス》も《閃光の精霊カンビアーレ》も手札になく、よしんば抱えていたとしても≪スターゲイズ・ゲート≫も機能しないのだ。結果的にこのターンは≪支配の精霊ペルフェクト≫召喚という動きとなる。
ターンが返ってきたリルクはしばし手を止め、プランを検討。途中、隣で同型の【火光水ゴスペル】を操るtakiにも相談する。ややあって意志を固めたか、笑いながら7マナをタップ。
リルク「いろいろ踏めねえわ!≪ブルー・インパルス≫!」 《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》呪文側。《∞龍 ゲンムエンペラー》の影響を受けないこのカードで《闘門の精霊ウェルキウス》と《∞龍 ゲンムエンペラー》をごんべえの手札へ送り返す。
そのまま《水晶の王 ゴスペル》でごんべえへ攻撃、今回は《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》へと革命チェンジしながら《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》で追加ターンを確保。W・ブレイクが通る。GAME1とは逆に今度は《光開の精霊サイフォゲート》が有効だが……ここはトリガーなし。
追加ターンに突入したリルク、「あとはツモるしかないね」とデッキトップに祈りを捧げてドローするもここは不発。《時の法皇 ミラダンテⅫ》に辿り着けない限り、常に《光開の精霊サイフォゲート》の陰に怯えることを強いられる。
taki「通してください、この試合も次の試合も」
リルク「厳しいこと言うね!」
が、リルクはそんなことは承知の上。それでも笑う。最早止まれない。もとより止まるつもりもない!
《キリモミ・ヤマアラシ》で《水晶の王 ゴスペル》を再度射出し、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱えながらW・ブレイク。ここもトリガーなし。
二度目の追加ターン。《氷柱と炎弧の決断》で≪支配の精霊ペルフェクト≫をブロック不能にしつつさらに山札を掘り進めるリルクだが、なお《時の法皇 ミラダンテⅫ》の姿は見えない。ここは2体目の《水晶の王 ゴスペル》を召喚し、墓地の《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》をキャッチ。《水晶の王 ゴスペル》でごんべえ最後のシールドをブレイク!
ごんべえ「……はい、通ります」
《光開の精霊サイフォゲート》、トリガーせず。GAME 2はリルクが制し、決着は最終戦へ持ち越しとなった。
リルク 1-1 ごんべえ
リルク「勝ったよ~!」
ひとまず安堵しつつチームメイトに話しかけるリルクだったが、彼が目にしたのはtakiが月嶋のブロッカー軍団に蹂躙される瞬間だった。よくよく見ればハイパー化した《聖霊超王 H・アルカディアス》までもが降臨しており、そのままB卓は0-2のスコアで月嶋が勝利、おもちゃのアオキ2のポイントとなる。
しかしそれに先んじてC卓ではあらすかの【火光闇ファイアー・バード】をかつんの【水闇COMPLEX】が捌ききり、こちらも2-0で3面三十路眼鏡に勝ち星をもたらしていた。このため、これから始まるA卓GAME 3がチーム全体の運命を決することとなる。 かつん「頑張って!」
taki「頑張れ」
リルク「辛すぎるよもう鬼門すぎるって!」
一見雑で、しかし愛情に溢れた激励を受けるリルク。
対照的に、ごんべえはポーカーフェイスを崩さない。月嶋とあらすかとのやりとりも最小限に淡々と最終戦の準備を進めていく。これから始まる最後の大勝負に向けて、集中は切らせない。そんな意志が感じられる。
そしておそらくは、その意図はチームメイトにも伝わっているのだろう。祈るような、あるいは託すような優しいまなざしが月嶋とあらすかからの最大のバックアップなのだ。
最高の仲間たちに見守られ、リルクとごんべえは三度向かい合った。正真正銘、最後の一戦の幕が上がる。
GAME 3
先攻:ごんべえ
貴重な先攻を手にしたごんべえは2ターン目≪巨大設計図≫3ヒット、3ターン目≪ギャラクシー・チャージャー≫2ヒットのロケットスタート。リルクは2ターン目に《バーニング・フィンガー》を唱えたものの、3ターン目は苦渋のマナチャージエンドとなる。 この乱れを逃さず、≪お清めシャラップ≫を唱えるごんべえ。自身はマナを6まで伸ばしつつリルクにペースを握らせない。返すターンもリルクはマナチャージしてエンド。どうやら有用な軽量呪文を全く引き込めていない様子だ。 ごんべえの5ターン目、《ヘブンズ・ゲート》か≪スターゲイズ・ゲート≫があればゲームが一気に動かせそうなものだが、ここは《邪光魔縛 ネロマノフ=ルドルフⅠ世》を召喚する堅実な動き。2マナ加速で見えていなかった《ヘブンズ・ゲート》が落ちたため、先んじてマナに置いていた《∞龍 ゲンムエンペラー》と合わせて回収した。
次ターンには天門が開くぞ、という強烈なプレッシャーを放つごんべえに対し、事ここに至ってもリルクの手札は今一つ。
リルク「どう考えても奇跡待ちだなあ……」 ぼやきつつ、ささやかな抵抗として《オリオティス・ジャッジ》を唱える。《邪光魔縛 ネロマノフ=ルドルフⅠ世》はEXライフで踏みとどまるが、墓地に呪文を1枚でも置いておくことが反撃の狼煙となるかもしれないのだ。まだ、勝負を諦めてはいない。
果たして6ターン目を迎えたごんべえは、予告通りに《ヘブンズ・ゲート》を唱えた。《闘門の精霊ウェルキウス》2体を経由し、《∞龍 ゲンムエンペラー》と《光開の精霊サイフォゲート》がバトルゾーンへ。《光開の精霊サイフォゲート》が連れてきたのはダメ押しの≪支配の精霊ペルフェクト≫! 依然チャージエンドのリルクに対して、ごんべえはいよいよ決着へと動き出す、7ターン目、まずは《邪光魔縛 ネロマノフ=ルドルフⅠ世》でマナ加速。月嶋とあらすかに確認を取って、無防備なシールドへと《光開の精霊サイフォゲート》を向かわせる。
絶体絶命のリルクと3面三十路眼鏡。だが、まだだ。まだ彼のデッキには「解答」が眠っている。 すなわち≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫。そして隠し玉の《S・S・S》。計4枚採用された、大型S・トリガー呪文。
《∞龍 ゲンムエンペラー》でも止められないこれらの呪文さえトリガーすれば、ごんべえの盤面を解体しながらターンをもらうことが出来る。「奇跡待ち」も立派な戦略の一つだ。あと1枚の奇跡で、全てをひっくり返せるかもしれない。それがデュエル・マスターズなのだから。 だからリルクは、takiは、かつんは祈る。
そして、その「解答」の存在はおもちゃのアオキ2の面々も承知の上だ。仮にトリガーを踏んだ場合にそこで攻撃を終了し守勢に切り替えるための、打点で刻むプレイング。だが、最終的には乗り越えなくてはならない壁であることには変わらない。 だからごんべえは、月嶋は、あらすかは祈る。
知識と技術と情熱を総動員したその果てに、奇跡の支配する世界が待っている。今が正にその瞬間なのだ。 山札側からリルクのシールドをブレイクしていくごんべえ。まずは《光開の精霊サイフォゲート》で1枚。トリガーなし。 続いて《闘門の精霊ウェルキウス》で2枚。トリガー……なし。
最後の2枚も《闘門の精霊ウェルキウス》に託す。トリガーは…………なし! リルク「お見事でした!」 ダイレクトアタックが決まる。リルクの差し出した右手を、ごんべえはしっかりと握り返した。
リルク 1-2 ごんべえ
WINNER:ごんべえ
CHAMPION:おもちゃのアオキ2!
あらすか「ありがとうっ!」
席から立ちあがったあらすかが駆け寄り、ごんべえと月嶋を後ろから抱きしめる。歓声こそあげなかった二人も口元に小さく、しかし最高の笑みを浮かべていた。
そのうち、どちらからともなく右手が差し出され、改めて互いに握手を交わし合う3面三十路眼鏡とおもちゃのアオキ2のメンバーたち。
二つのチームの物語が、伝説になった瞬間だった。
リルク「めっちゃ喋ってたと思うんですけど、凄く集中はできてて。ミスもなかったんじゃないかなって思います」
会場を去る直前、リルクはそう語った。軽妙なトークは素の持ち味でもありつつ、やはり決勝の大舞台の緊張に触発されてもいたのだろう。悔しいな、と零す一幕もあった。DMPランキングにて全国大会出場を狙っているというリルクにとって、手の届きかけた出場権は何より欲しかったものに違いないのだ。
リルク「いや、俺はランキングで(全国大会に)行くねん!」
taki&かつん「頑張ってください」
リルク「いやー、ここからキツいな~!」
しかし同時に、そんなリルクの緊張を受け流し、時にイジり返すtakiとかつんの二人とのチームは、やはりベストマッチだったのだろう。
リルク「次は広島で会いましょう!」
悔しさすらもバネにして、彼らは進む。次なる伝説の一部となる為に。
うおおおおおおお、と。
撤収が進む会場内に咆哮が響いた。声のする方を探ってみれば、優勝チームへの賞品贈呈のテーブルが目に入る。
月嶋とあらすか、そして地元の友人に囲まれたごんべえが、男泣きに泣いていた。
試合中は終始クールだったごんべえが、その胸にこみあげるものを、頼れる仲間たちと分かち合っている。
それはどこまでも美しい、新たな伝説の一ページだった。 おもちゃのアオキ2、優勝おめでとう!
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