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超CSⅦ広島 決勝Round 3:ECO vs. きゅうくりりん

ライター:河野 真成(神結)
撮影:瀬尾 亜沙子

 「鰻屋の鰻」という表現がある。

 この言葉の発祥は、将棋棋士の藤井猛九段だ。

 言葉そのものには様々な背景があるのだが、大約して言えば「自分は振り飛車という戦法を何年も指してきた専門家(=鰻屋の鰻)であり、最近この戦法を始めた人(=ファミレスの鰻)とは違う味わいを出したい」といったような内容である。

 それでいうと、ECOの【マーシャルループ】は「鰻屋の鰻」であり、「マーシャル屋のマーシャル」だ。  【マーシャルループ】と言えば、ご存じ《マーシャル・クイーン》を軸としたループデッキであり、その歴史は長く愛好家も多い。
 ECOのその1人であり、彼の同郷のプレイヤー曰くずっとマーシャルを使い続けているとのこと。この日はプレイマットもスリーブも、本超CSⅦにて頒布されている《マーシャル・クイーン》であった。本気度が違う。

 昨今ではトッププレイヤーの多くが、様々なデッキを使い分けているケースも多い。日々変化する環境に対して、その広い知識を使って攻略しようというわけだ。

 一方で、1つのデッキを極めた者しか至れない領域があるのもまた事実。

 では、そんなECOのマーシャルの動きをご覧いただこう。

 「CSに出ることすら初めて」というきゅうくりりんを迎えての一戦となった。

先攻:ECO ECO「最初のマナセット、お時間貰います」

 初手でおおよそのプランを決めるのは、いかにもコンボ・ループデッキ使いらしい仕草だ。結果、ここは《マーシャル・プリンス》埋めてターンを終了する。

 対するきゅうくりくんは《冥土人形アカイブ・ヤップップ》を埋めると、《DARK MATERIAL COMPLEX》を召喚。こちらはかなり上々のスタートと言えるか。

 2ターン目、ECO《深海の伝道師 アトランティス》を埋めて終了。ひとまず、3ターン目の《マーシャル・クイーン》はなさそうだ。

 一方きゅうくりりんの動きはなんと2マナから《霊淵 アガルーム=プルーフ》を2体というもの。ターン終了時、墓地を一気に6枚も肥やした。

 1ターン目の動きから【水闇COMPLEX】かと思いきや、これは恐らく《死神覇王 ブラックXENARCH》を使った【闇単XENARCH】と呼ばれるデッキであろう。  このデッキをざっくり説明すると、《霊淵 アガルーム=プルーフ》で墓地を増やしつつ3体のタップされたクリーチャーを用意し、ターン終了時に墓地から《死神覇王 ブラックXENARCH》が着地させる、というのが主な狙いだ。

 以降は《死神覇王 ブラックXENARCH》の破壊・ハンデスを軸にコントロールしていき、逆転の芽を刈り取りながら少しずつ詰めて勝利する。

 そのためまずは墓地に《死神覇王 ブラックXENARCH》を用意したいところだったが、6枚肥しの中に《堕魔 ザンバリー》《ビックリーノ》といったものはあったものの、要となる《死神覇王 ブラックXENARCH》の姿はなかった。

 ECO《B.F.F. モーメント》を埋め、3マナで《キール・ロワイヤル》を召喚。  ジャストダイバー持ちということで、本来であれば安心して送り込めるクリーチャーではあるのだが、相手が【闇単XENARCH】となると、その保証はない。《死神覇王 ブラックXENARCH》が着地してしまうと、《キール・ロワイヤル》は破壊される運命にある。

 きゅうくりりんはまず《無限皇帝の顕現》をプレイし、効果で《ベル=ゲルエール》を出して計4枚墓地肥やしするが、まだ《死神覇王 ブラックXENARCH》は見えない。

 更にターン終了時に前のターンと同じく《霊淵 アガルーム=プルーフ》で墓地を増やしていくものの、それでもまだ《死神覇王 ブラックXENARCH》の姿はなかった。墓地の枚数は、既に15枚を超えていた。

 《キール・ロワイヤル》が、生き残った。

 ECO《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》を埋めると、まず《エメラルド・クーラー》を召喚する。
 更に続けて《カシス・オレンジ / ♥応援してくれるみんなが元気をくれ~る》を召喚し、クリーチャーを展開。効果で山札のトップを固定すると、《キール・ロワイヤル》をハイパー化。

 そこから寝ている《霊淵 アガルーム=プルーフ》に向かって攻撃する時、メクレイド5で《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》を繰り出し、≪カシス・オレンジ≫の上に進化させた。  恐らくは世界でもっとも美しいドラゴンである《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》。攻撃時に《マーシャル・クイーン》と同じ効果を使えるというドラゴンだ。

 そしてこの《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》《ベル=ゲルエール》に向かって攻撃すると、埋めたシールド1枚と見えていないシールド2枚を拾い、ここからトリガーを宣言。これで《マーシャル・プリンス》を2体場に出した。

 ECOは、これで一旦ターンを終了。

 盤面を整理すると、ECOの場には《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》《マーシャル・プリンス》が2体、それとハイパー化した《キール・ロワイヤル》、そして《エメラルド・クーラー》が残っている。  対してきゅうくりりんの盤面は下に4枚カードが入った《DARK MATERIAL COMPLEX》に、《霊淵 アガルーム=プルーフ》

 ターン開始時、きゅうくりりんは残り山札を数えると、「入れません」と宣言。《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントをここで止めた。

 そしてドローの後、マナチャージ無しから《堕魔 ザンバリー》を召喚。手札から《死神覇王 ブラックXENARCH》が墓地へ置かれ、ようやく準備が整った。

 その後ムゲンクライムで《罪無 ターボ兆》を召喚し、更に《霊淵 アガルーム=プルーフ》のハイパー化で寝ているクリーチャーを用意すると、、ターン終了時に遂に《死神覇王 ブラックXENARCH》が宣言され、バトルゾーンへ。
 その効果で、ECO《エメラルド・クーラー》の破壊を選択する。

 返しのターン、ECO《エメラルド・クーラー》を召喚すると、《マーシャル・プリンス》の効果によって起きている《死神覇王 ブラックXENARCH》《罪無 ターボ兆》をタップさせる。

 そして《キール・ロワイヤル》をハイパー化させると、攻撃宣言。
 その対象は、なんとプレイヤー。

 《キール・ロワイヤル》のメクレイドで《マーシャル・クイーン》が登場すると、《マーシャル・プリンス》の能力でS・トリガーを得た《キール・ロワイヤル》が、2体をバトルゾーンへとやってきた。

 ……そう、ECOはループではなく、前のターンから殴り切ることを考えていたのだ。

 《マーシャル・プリンス》を出したのも単なるループの補助ではなく、ブロッカーを寝かせつつ展開を補助する役割を与えていたというわけだ。  そして【闇単XENARCH】というデッキはブロッカーで受けるデッキであり、S・トリガーで受けるデッキではない。攻撃は通る。 

 続けて《海姫龍 ライベルモット・ビターズ》を攻撃時に≪♥応援してくれるみんなが元気をくれ~る≫と《エメラルド・クーラー》をプレイし、ドローと展開を続けていく。

 結局、きゅうくりりんの楯を5枚殴り切ってターンを終了。
 ECOの盤面は、7体。

 きゅうくりりんはクリーチャーを召喚していき《死神覇王 ブラックXENARCH》効果を起動させていくものの、流石に盤面7体では捌ききることが出来なかった。

 最後はECO《マーシャル・プリンス》きゅうくりりんのブロッカーをタップさせると勝負あり。

 ECOがマーシャルもう1つのプランを見せ、見事な勝利を挙げた。

WINNER:ECO


 メイン択であるループを諦め攻めに転ずるという、ECOの判断が光った。

 試合後、ループ以外で勝った試合がここまで何試合あったかをECOに訊ねたところ、3回だという。思ったよりも、攻め勝つ試合が多いようだ。

 しかしこうしたプランの切り替えや判断というのは、一朝一夕で身に付くものではない。ギリギリまでループプランに拘り、攻めるプランに切り替えるのが1ターン遅れて負け、というのはよく目にする話だ。

 自分の手札、見えているカード、相手のデッキなどからその時の最善のプランを選ぶには、デッキに対する深い理解が求められる。そしてECOはここまで、その判断を誤ることなくここまで勝利を重ねてきたというわけだ。

 実際この試合も、あと1ターン殴る判断が遅ければきゅうくりりんが2体目の《死神覇王 ブラックXENARCH》の着地などで盤面が崩せている可能性が高く、勝敗は変わっていたかもしれない。

 これぞ鰻屋の鰻、マーシャル屋のマーシャル。

 まさに味わい深い一戦だったと言えよう。
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