デュエル・マスターズ

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DMGP2024-2nd Day1(アドバンス)決勝戦:Nettoban vs. Thrasios

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:後長 京介

 夢の舞台が、目前に広がっている。

 グランプリの決勝戦。「デュエキング」パックのシリーズでカード化もされてきた頂上の戦い。その歴史に、また一つ新たな1ページが刻まれようとしている。

 大分のNettobanは、何とここまで17勝0敗。2本先取となった後の準々決勝・準決勝すら、ともに土つかずという驚異の戦績でここまで勝ち上がってきた。

 さらに特筆すべきは、その特徴的なアーキタイプ(デッキコンセプト)とカード配分だ。使用しているのは、「マーシャルデリート」。といってマーシャル系列自体は、今大会では「ヘブンズ・ゲート」「バクオンソー」「ファイアー・バード」に次いで予選突破者数が多いアーキタイプであり、メタ読みが合致した結果とも言えるが、そのリストの細部は一見して常人の理解を超えるバランスをしており、確率の向こう側を覗き見ようという意志すら感じさせる。

 他方、対する石川のThrasiosも、準々決勝で1ゲームを落としたものの、こちらもここまで17勝1敗という戦績。しかもデッキは《禁断 ~封印されしX~》に加えて《13番目の計画》を採用した45枚の「ガイアッシュ覇道」で、情と理の狭間で優雅にタップダンスを踊るような、しかしそれでも不思議と洗練された印象のデッキとなっている。

 奇しくも、そんな個性溢れるデッキ同士が予選3位と5位で全勝同士、かつ地方勢同士でぶつかる決勝戦となった。

Thrasios「そんなつもりじゃなかった……w」

Nettoban「良いデュエルをしましょう」

Thrasios「イベントのプレイマットっていつも狭い……」

Nettoban「お互い《禁断 ~封印されしX~》ありますからね」

 時刻は20時ごろ。会場である愛知スカイエキスポの喧騒も気づけばなくなり、2人は悠々とフィーチャーテーブルにカードを並べる。疲労と眠気はある。だがそれをおして、やっとたどり着いた最終戦に臨む緊張感もまた心地良いものだ。

Thrasios「GP出るのも初めてなんで……」

 初めてのグランプリで、望外の決勝進出を果たしたThrasios。勝ちたい。北陸の友人たちが、フィーチャーエリアの外で見守っている。

Nettoban「楽しむだけなんで。終わるなら一瞬だと思うんで、この試合」

 飲み物を取りにいっていいと言われて立ち上がったThrasiosと対照的に、席で静かに集中するNettoban。勝ちたい。《オールデリート》で優勝という前代未聞の栄光が、まさにいま目前にある。

 デュエキングがもたらしたDreaM……夢とは、願いだ。ゲームの勝利という手段を通じて、高みに到達したいという意志。それだけが、自分をここへ連れてきた。

 だから。  頂上へと到達したいという願い。それを実現するべく、DMGP2024-2nd Day1……その決勝戦が、始まった。

Game 1

 予選順位の差でNettobanが先攻。だが開幕3ターンを《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》《アクア・スペルブルー / インビンシブル・オーラ》《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》とタップイン処理に終始したのに対し、Thrasiosは《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》《流星アーシュ》《インフェル星樹》というチャージから《ボルシャック・栄光・ルピア》でゲームの口火を切る……だが《メンデルスゾーン》がめくれると、露骨にがっかりしたリアクション。

 これに対しNettobanもようやくのアクションとなる《超光喜 エルボロム》で楯を1枚仕込んでターンエンド。すると返すThrasiosは2マナブースト失敗が響いたか、《流星アーシュ》チャージのみでターンエンド。この隙にNettobanは2枚目の《超光喜 エルボロム》を送り出し、追加で1枚をシールド化しつつ「ハイパー化」する。  そして自ターンのエンド時、《超光喜 エルボロム》の能力で唱えたのは《テック団の波壊Go!》!「5以下バウンス」で《禁断 ~封印されしX~》が≪伝説の禁断 ドキンダムX≫へと強制解放し、2体の《超光喜 エルボロム》は「封印」されるも、《テック団の波壊Go!》《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》を打てれば勝ち」という状況を作る。

 だが《テック団の波壊Go!》を踏み倒したことで、そのターンエンドにThrasiosの《流星のガイアッシュ・カイザー》が着地する!

 さらに自ターンに入ったThrasiosはまずは《メンデルスゾーン》で2マナブーストすると、「B・A・D」の軽減込み4コストで《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を召喚。そして《流星のガイアッシュ・カイザー》で攻撃時、《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》へと「革命チェンジ」!  7枚のシールドのうち埋めた2枚をW・ブレイク。これが通ると、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》でもW・ブレイク……通る!

 それでも慎重に≪伝説の禁断 ドキンダムX≫は攻撃せず、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》が破壊されて追加ターン。《ボルシャック・栄光・ルピア》で2マナブーストから《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を回収し……。

 ……と、ここでThrasiosが自分のシールドを崩してしまい、非公開領域をすべてシャッフルという裁定が下りそうになったところで、既に《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》が見えていて勝ち目がないと判断したNettobanが、先回りして投了を宣言したのだった。

Nettoban 0-1 Thrasios

Nettoban「気にしないで大丈夫ですよ」

 対戦直後、すみませんと謝るThrasiosにNettobanはそう伝える……今日初めての敗戦。《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を食らったのもおそらく初めてだろう。それでもNettobanは、「あそこで時間を食っても皆さんに申し訳ないので」と紳士的だった。

 あるいはその投了によって、《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を噛ませばクリーチャーのS・トリガーなどの可能性もなく確定的に勝ちなのだ」とThrasiosに示す形になったとしても、それでも。

 それは、あまりにも不利なマッチすぎることから来る諦めだったのかもしれない。《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を積む隙間がない環境と読んだからこその「マーシャルデリート」なのだ。それが決勝戦まで来て《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》に直面するとは、なんという皮肉か。

 だが、Nettobanは最後まで勝負を諦めない。可能性が1%でもある限り。

Game 2

 再びNettobanの先攻。《エメラルド・クーラー》《煌銀河最終形態 ギラングレイル》チャージからの《エメラルド・クーラー》で好発進。対するThrasiosは《流星のガイアッシュ・カイザー》《蒼き団長 ドギラゴン剣》をチャージするのみ。

 するとNettobanは《オールデリート》チャージから《キール・ロワイヤル》。3マナタップ時は思わずThrasiosも後方にのけぞりかけるが、カードを見て「……っはい」と声を上ずらせながらも一安心。だが確認した楯は「このままで」と言いつつ1ドローが走ると、返すターンはさすがに見ているばかりではいられないと、《夢双龍覇 モルトDREAM》チャージから《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》でマナ加速する。  しかし、なおもNettobanは《光喜の夜 エルボロム》を送り出すと、《エメラルド・クーラー》をタップしつつ《キール・ロワイヤル》を「ハイパー化」して攻撃時「メクレイド」。着地したのは2体目の《キール・ロワイヤル》で、見ていない楯をチェックしつつそのままで1ドロー。ブレイクも通りターンエンド……そして、今度は《流星のガイアッシュ・カイザー》宣言はない!

 さらに返すThrasiosは《インフェル星樹》で自身の《禁断 ~封印されしX~》の「封印」をマナに送って2マナブースト2ドローするのみ。《キール・ロワイヤル》2体に《光喜の夜 エルボロム》という大量のシステムクリーチャーが並んだ状態で、再びNettobanにターンが返る。  そしてここでNettobanが召喚したのは《マーシャル・クイーン》手札を3枚埋めて発動したS・トリガーは……ツインパクト含めて計3枚の《アクア・スペルブルー》  準決勝では勝負を決める一打となった。それが3回。運命を決めるシャッフルが、入念に行われる。

 まずは1枚目……《オールデリート》!……はお互いに《禁断 ~封印されしX~》がある状態で自ターンに唱えると確負けなので唱えられない。再びシャッフルして2枚目……《マーシャル・クイーン》が手札に。そして3枚目……《ホーガン・ブラスター》で再抽選……《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》Thrasiosは厳しそうに顔を歪める。

Nettoban「暴発で唱えます」  しかし、まだ当たりがシールドに埋まっているかはわからない。《キール・ロワイヤル》で見た楯は1枚。そしてNettobanが選んだのは……見ていないシールド!はたしてその中身は……《エメラルド・クーラー》。結果、クリーチャーが5面並んだだけに終わる。

 それでも、まだNettobanのターンは終わっていない。盤面でジャスキルはあるのだ。《キール・ロワイヤル》2体と《光喜の夜 エルボロム》を「ハイパー化」して《キール・ロワイヤル》で攻撃。「メクレイド」で《マーシャル・クイーン》が見つかればというところだったが、3体目の《キール・ロワイヤル》で見ていない楯を確認してそのままにしつつ1ドロー。ブレイク……通る。

 さらに《キール・ロワイヤル》の攻撃時「メクレイド」……はハズレ。シールドブレイク……トリガー、《王道の革命 ドギラゴン》Thrasiosが、ゲームの流れを一気に引き戻す。  この時点でNettobanのジャスキルはなくなった。仕方なく終了時に《超光喜 エルボロム》の効果で《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》の呪文側を唱えてThrasiosの盤面を空にするが、なおもThrasiosは今度こそエンドに《流星のガイアッシュ・カイザー》

 さらに自ターン、2体目の《流星のガイアッシュ・カイザー》を召喚すると、1マナで《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》。そして《流星のガイアッシュ・カイザー》《エメラルド・クーラー》へのアタック時《時の法皇 ミラダンテⅫ》へと「革命チェンジ」!《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》でタップ状態の《アクア・スペルブルー》も処理しつつ、ターン終了時の破壊で追加ターンを獲得する。  さらに追加ターンに入り、満を持して5マナから《夢双龍覇 モルトDREAM》《銀河大剣 ガイハート》《爆銀王剣 バトガイ刃斗》、双剣のドラグハート・ウェポンをまとったモルトが、Nettobanの夢を終わらせるべく降臨する。

 続けて《頂上電融 クライアッシュ“覇星” ’22》も召喚し、《爆銀王剣 バトガイ刃斗》へと「龍解」させつつ「マッハファイター」で《超光喜 エルボロム》を倒した後に、《時の法皇 ミラダンテⅫ》プレイヤーアタック、「革命チェンジ」……《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》

 7コスト以下のクリーチャー召喚も、呪文も、すべてが止まった。W・ブレイクは、空しくNettobanの手札に重ねられる。「龍解」した≪熱血星龍 ガイギンガ≫が《マーシャル・クイーン》を破壊し、視界良好。

 未来の奇跡の力に後押しされた《夢双龍覇 モルトDREAM》の初太刀が、シールドを袈裟懸けにする。そして立て続けに、双剣が連撃を見舞った。

 それはまるで、いまだ語られていないモルトと≪伝説の禁断 ドキンダムX≫との戦い……その最終章を目撃したかのような光景だった。

Thrasios「ダイレクトアタックで!」

Nettoban「ありがとうございました」

Nettoban 0-2 Thrasios

Winner: Thrasios


Thrasios「っしゃー!!!」

 公式生配信でのインタビューに向かうThrasios。一方、すべてを出し尽くした様子でフィーチャーエリアに残ったNettobanに、少し話を聞いてみた。

Nettoban「まあ、もともと不利対面なのわかってましたからね……とにかく《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》が厳しくて。≪伝説の禁断 ドキンダムX≫飛ばすにしても《テック団の波壊Go!》をかまさないといけないから、そこでも拾われちゃうんですよね。最速で《煌銀河最終形態 ギラングレイル》しないと向こうの要求値が緩くなっていくだけだから、分が悪いことも割りきっての《アクア・スペルブルー》3体でしたが……まあ、でも今までさんざんめくったんで仕方ないですね」

--「今回はどういった理由でデッキを選択されたんでしょうか?」

Nettoban「マーシャル自体はかなり使ってて。使った理由はメタ読みが天門とバクオンソーが多い読みだったからです。《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》《禁断 ~封印されしX~》が入ってないデッキの方が多いだろうと。結局《禁断 ~封印されしX~》入りで当たったのは決勝含めて3回あったかないかでしたし、モルトも入ってない型もあったりして、その分通りが良くなっていたのかなと」

--「《エメラルド・クーラー》3枚採用など、細部の枚数調整はどういった理由からでしょうか?」

Nettoban最速を目指さない形だからですね。4で回したりしたけど、めくりも弱くなるし。あと同じ役割のカードを、8枚ではなく7枚にすることでデッキ全体のバランスをとる部分にこだわりました《アクア・スペルブルー》が7枚、《オールデリート》《煌銀河最終形態 ギラングレイル》も7枚、《キール・ロワイヤル》《エメラルド・クーラー》で7枚、《テック団の波壊Go!》《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》で7枚……みたいに。8だと多いですが、7だと自分でコントロールできるんですよ」

 一方、生放送の出演が終わり、グランプリ初出場での初優勝でまさしく夢をつかんだThrasiosにも、話を聞いてみた。

--「まずは優勝おめでとうございます。このデッキはご自身で作られたんでしょうか?」

Thrasios「ありがとうございます。いえ、『ガイアッシュ覇道』自体はずっと握ってはいたんですが、リスト自体はぺん丸さんという、アドバンスのGPで3年連続で予選突破している人からもらったものです。なので、細かい採用理由とかはあまり答えられないですよね」

--「グランプリ初参加ということでしたが、どういった理由で出ようと決めましたか?」

Thrasios「今回は愛知で開催ということで、住んでいる石川からそこまで遠くないから現実的だなと思ったのと、グランプリというものに出てみたいなと前々から興味もあって。石川勢で調整して出てみたら、なんかこんなことになっちゃいました。明日のオリジナルは、抽選落ちちゃって出られないんですけどね」

--「最後に、何か伝えたいことなどありますか?」

Thrasios「デッキを勧めてくれたぺん丸にとにかくありがとうって言いたいのと……すごく個人的な話で申し訳ないんですけど、半年くらい会ってない兄貴がいて、『決勝出るよ』って連絡したら、すぐ電話をくれて。『頑張れ』って言ってくれて、すごい嬉しかったです。心強いなと……」

 願いを込めた言葉は、現実を変容させる。

 「グランプリに出たい」と思い、友人を誘ったこと。「勝ちたい」と思い、ぺん丸にデッキを相談したこと。「見守って欲しい」と思い、兄に連絡したこと。

 「こうありたい」と口に出すことで、夢は少しずつ現実に近づいていく。

 そうして、夢見た高みへとついに到達したThrasiosの姿もまた。

 誰かの夢へと、つながっていくのだ。
 DMGP2024-2nd Day1、優勝はThrasios!おめでとう!!

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