全国大会2025 3位決定戦:kaisora vs. リノグレ
ライター:原田 武(たけじょー)
撮影:堀川 優一

「平常心で行こうと思っていました。気合を入れることも大事なんですけれど、楽に構えていた方がパフォーマンスも出しやすいので」
コンディションは上々だった。予選は順調に勝ち進み、5位での本選進出。準々決勝は後攻のビハインドを捲ってのストレート勝利。否応なしにボルテージが上がる。この調子なら。そう思った。
だがそれでも。時に、運命は人をあざ笑う。
向き合って腰かけたのは、さんやみ。使用デッキは――【水闇COMPLEX】。小型クリーチャーによる妨害と手札破壊を主軸とする、【光水自然der‘Bande】にとっての明確な不利対面。
「想定していなかったわけではないんですよ。1ゲーム先取ならなんとかなる。ただ、マッチ戦だとやっぱり厳しくて……」
不意を突かれたわけではない。さんやみとのマッチングも予選以来の二度目だ。その時はきっちりと《俳句爵 Drache der’Bande》で走り、勝ち点を奪っている。
しかし、そこまでだった。
初戦は先攻の利を活かせず、≪ボン・キゴマイム≫を維持されて投了。2回戦目は《俳句爵 Drache der’Bande》で攻め込むも、S・トリガーに阻まれて≪ボン・キゴマイム≫到着まで耐えられてしまう。あとはじわじわと手札を削られ、ゲームセット。
そして、今。kaisoraはフィーチャーテーブルに残って、3位決定戦の相手が来るのを待っている。
北海道エリアでの権利獲得から1年半。全国大会を制してから1年。前年覇者として恥じない戦いをしようと臨んだこの大会は、1回戦での敗北から始まった。
しかしそこから怒涛の5連勝で巻き返し、本戦に喰らいつく。ベスト8ではデンネを2-0で下し、昨年度の決勝を再現。
連覇。その2文字が脳裏によぎったのは、本人とて例外ではない。
「欲が出たのかもしれないですね。ここまで来たらもしかしたら、って」
普段は謙虚な彼だけに、その一瞬は見とがめられやすかったのかもしれない。勝負の女神が遣わせたのは予期せぬ伏兵、希亜の【自然単キャベッジ】だった。
予選1回戦、フィーチャーテーブルで敗北を期した相手との再戦。だが、相手が悪かった。最速4ターン目の《地封龍 ギャイア》に抗う術は、彼の駆る【4cアルファディオス】にはない。
「奇跡とか、起きないかなと思ったんですけど……」

念のため、超魂レイドを持つ《王導聖霊 アルファディオス》が《地封龍 ギャイア》を貫通できるかジャッジに確認するも、返事はNO。
【der‘Bande】に【ドリームメイト】、【ゴルギーオージャー】。環境に対するアンサーとして持ち込んだ【4cアルファディオス】は、間違いなく強かった。それなのに。【自然単キャベッジ】というイレギュラーが、全ての思惑を越えて行く。
そして、今。荷物をまとめた「北の巨人」リノグレは、フィーチャーテーブルに向けて歩みを進めていた。
合流した二人は、顔を見合わせて苦笑する。
リノグレ「いやあ、負けちゃいました」
kaisora「僕も肝心なところで……」
リノグレ「なかなか上手くいかないもんですね」
ここまでの戦績を振り返りながら、両者は対戦準備に取り掛かった。
二人は既に予選7回戦で対戦済みで、その試合はkaisoraの勝利に終わったという。互いに互いの手の内も、実力も良く分かっている。恐らくは、最後の最後で運命に行く手を阻まれた、その胸中も。
だが――シャッフルを続けながら、kaisoraがポツリと言った。
kaisora「楽しいっすね。一日でこんなにデュエマが出来るなんて」
それを聞いて、口元に笑みを浮かべるリノグレ
リノグレ「そうですね。どうせなら最後まで全部やり切りたい」
二人の目線は、既に未来へ向いている。すなわち、これから始まるデュエマへ。
もしとかたらとかればとか、そんなことばかり考えていても仕方ないのだ。悔しさは悔しさで、あとできちんと向き合えばいい。今すべきことは目の前の勝負に全力を尽くして、そして勝つこと。
なにより――kaisoraも、リノグレも、勝ちたいからここまで来たのだ。
知識と経験、ロジックとフィーリング。そして運。持てる全てをぶつけ合って闘い、勝つ。それが楽しくて仕方ない。
だから。
勝つのは俺だ。 その意志をカタチにすべく、最後の意地のぶつかり合いが始まった。
GAME1
先攻:kaisora先攻のkaisoraは《俳句爵 Drache der’Bande》を埋めての《ジャスミンの地版》から始動し、山上から《心転地と透幻郷の決断》をマナに置くことに成功。この上ないロケットスタートだ。
対するリノグレも2ターン目に《大集合!アカネ&アサギ&コハク》を繰り出し、きっちりと初動を成功させる。まず目指すべきは、《王導聖霊 アルファディオス》が召喚可能になる5マナ。
無論kaisoraがそれを待つ道理もなく、3ターン目を迎えた彼はエースたる《俳句爵 Drache der’Bande》を《ジャスミンの地版》から進化させる。

そのまま攻撃時に《キユリのASMラジオ》を唱え、リスナーを召集。《大集合!アカネ&アサギ&コハク》と《一音の妖精》が駆けつけた。進化させる選択肢もあるが、ここはそれぞれ単体のクリーチャーとして配置する。
最後に《大集合!アカネ&アサギ&コハク》で手札を1枚補充し、W・ブレイクしてターンを返す。S・トリガーはなし。
リノグレ「うーん……」
【4cアルファディオス】の本懐は5マナから。この段階でできることはかなり限られる。《フェアリー・ライフ》でもトリガーしていれば話は別だが、ないものねだりだ。
ここは≪ギャラクシー・チャージャー≫で地盤を固め、《ジャスミンの地版》でさらに加速。最後に《大集合!アカネ&アサギ&コハク》を《俳句爵 Drache der’Bande》にぶつけ、G-NEOの耐性だけでも剥がしておく。
これで次ターン、リノグレのマナは7。そろそろ潮時だ。kaisoraはメガネのブリッジを指で押し上げ、獲物を仕留めにかかる。まずは2枚目の《キユリのASMラジオ》から《一音の妖精》on《ネ申・マニフェスト》を参戦させ、手札を循環。

そして《俳句爵 Drache der’Bande》での攻撃時、今度は《心転地と透幻郷の決断》を詠唱。
実行モード2回で≪聖沌忍法 メカくしの術≫と《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を唱えて、《ピザスターのアンティハムト》から《洗打の妖精》! おまけにアンタップをばらまいた。
こうなると、G・ストライク程度ではどうしようもない。リノグレ側唯一の防御手段は《王闘の大地》からの《回転の精霊ナイッショエル》だが……?
kaisora「お願いします、お願いします」リノグレ「……はい、ないです」
しっかりと速攻の意志を貫き、GAME1はkaisoraがものにした。
kaisora 1-0 リノグレ
GAME2の準備の合間、指をパキポキと鳴らすkaisora。一方のリノグレは、先にも増してじっくりとシャッフルを進めていく。
リノグレ「最後のシャッフルかもしれないんでね……」
1年前の準々決勝。kaisoraと同じくシモカワ・ゴールデン・ラビッツに籍を置くRikkyに追い詰められたときにも、リノグレは同じようなことを言っていた。
シャッフルとは祈りだ。
どんなにデッキを練り上げても、どれだけプレイを突き詰めても、その瞬間にプレイヤーのできることは、ただ祈ることだけ。無作為とは時に残酷だ。とんでもない幸運とどんぞこの不幸、両方の可能性を等しく持っている。
だからこそリノグレは丹念にカードを混ぜる。少しでもいい手札が来てくれるように。後悔なく納得できるように。
kaisoraは、それを黙って見ていた。その行為に込められた祈りを、その価値を知っているからこその沈黙だった。
GAME2
先攻:リノグレ1ターン目のチャージはリノグレが《剣轟の団長 ドギラゴン王道》、kaisoraが《キユリのASMラジオ》。
リノグレは2ターン目に《フェアリー・ライフ》を埋めて《フェアリー・ライフ》を唱え、ここで《天彩の精霊ミルディアス》をマナに置くことに成功する。文明もさることながら、エンジェル・コマンドを埋められたことが大きい。
kaisoraのチャージエンドを尻目に、3ターン目を迎えたリノグレは《王導聖霊 アルファディオス》を埋めつつ《天彩の精霊ミルディアス》を召喚。
マナ加速で《王導聖霊 アルファディオス》を落とし、5マナとエンジェル・コマンド3枚を揃え切った。《王導聖霊 アルファディオス》の条件達成。あとは動くのみ。
まだ《ピザスターのアンティハムト》→《俳句爵 Drache der’Bande》などで動く目のあるkaisora。しかしここは《ネ申・マニフェスト》の召喚に留まった。リノグレに、自由な4ターン目が約束される。
そしていざ動いてしまえば、【4cアルファディオス】のパワーは圧倒的だ。《天彩の精霊ミルディアス》から進化した《王導聖霊 アルファディオス》が攻撃し、超魂レイド分も含めて3ドロー。《滝川るる&ラフルル ー閃光のヒロインー》がさらに重ねられる。


呼び出されたエンジェル・コマンドは《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》に《王導聖霊 アルファディオス》。T・ブレイクからG・ストライクが飛び出して《王導聖霊 アルファディオス》を止め、これ以上の展開は出来なくなった。
残る2枚のシールドを前に、リノグレはしばし手を止め……《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》でこれをブレイク。リノグレらしい、前へ進む意志のプレイだ。シールド無し、光以外の呪文禁止、クリーチャー1体制限の三重苦をkaisoraに課す。
果たしてkaisora側に切り返す術はなく、ここで投了。勝負は文字通り、最終決戦に持ち越しとなった。kaisora 1-1 リノグレ
三度訪れたシャッフルの時間、直前の試合についていくつか言葉が交わされる。
リノグレ「さっきの場面、行かない方が良かったかも……タマシード+《俳句爵 Drache der’Bande》で負けなので」
《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》でW・ブレイクするプレイのことだ。先程の盤面でkaisoraに勝ち筋があるとすれば、《心転地と透幻郷の決断》から《ジャスミンの地版》と《俳句爵 Drache der’Bande》を実行するしかない。
この形であれば《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》効果の範囲内で《俳句爵 Drache der’Bande》を動かせる。≪聖沌忍法 メカくしの術≫が複数枚あれば、逆転の可能性は大いにあるのだ。
kaisora「さっきはあったんですけどね」
聞けば、予選ではこれと似た動きでkaisoraが逆転劇を演じたらしい。2枚のカードと1手の判断ミスが勝敗を変える。そうしたこともあり得るのだ、デュエル・マスターズでは。
人事を尽くさなければ勝てない。そのことを改めて噛み締めながら、二人はカードを切る。
これが正真正銘、最後のシャッフル。
GAME3
先攻:kaisora先程は動き出しが遅れたkaisoraだが、今回は《大集合!アカネ&アサギ&コハク》で快調な滑り出し。これで山札から《心転地と透幻郷の決断》を埋め、初手のマナチャージと合わせて2枚を公開領域に確保する。
対照的に、リノグレの初手には初動が無い。ここに来ての手札事故……かとも思われたが、2ターン目のターンドローで《大集合!アカネ&アサギ&コハク》を引き込む。まだリノグレの祈りは通じているようだ。
kaisoraはペースを落とさず、《大集合!アカネ&アサギ&コハク》を《俳句爵 Drache der’Bande》に進化。攻撃時に唱えるのは《心転地と透幻郷の決断》だ。

ここは実行モード2回から《ピザスターのアンティハムト》・《ネ申・マニフェスト》と並べ、前者の効果でさらに《ネ申・マニフェスト》を場へ。
ドローを含む一連の処理が終わると、kaisoraのクリーチャーは4体にまで膨れ上がっている。その意図するところは進化元の確保と打点増強だろう。これだけ並んでしまえば、《天彩の精霊ミルディアス》の単体除去では追いつけない。
このターンの攻撃は《俳句爵 Drache der’Bande》のW・ブレイクのみで終わってしまうものの、次ターンに増やした打点で押し切る。これがkaisoraの打った布石だ。
とりあえずターンが返ってきたリノグレ。しかし《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》を埋めてなおマナは4枚。《王導聖霊 アルファディオス》に繋ぐには、あと1ターンがどうしても必要だ。ならばどうするか。リノグレが呼び出したのは閃光の巨人、《回転の精霊ナイッショエル》!

NEO進化させる場合のみ4コストになる光ジャイアント、その能力は相手クリーチャー全てのタップと次ターンの行動不能である。居並ぶkaisoraのクリーチャーは、打点はおろか進化元としても機能不全に陥ったのだ。
だがkaisoraの表情に動揺の色はない。ここまではあり得る展開、想定内だ。これを超えてこそ勝者足りえる。
《S級原始 サンマッド》を埋めての4ターン目のプレイは、温存していた《キユリのASMラジオ》!《ピザスターのアンティハムト》に《俳句爵 Drache der’Bande》を重ねて繰り出し、効果で《大集合!アカネ&アサギ&コハク》を出して手札を補充。
そのまま《俳句爵 Drache der’Bande》に手を伸ばし、攻撃宣言。手札からは《キユリのASMラジオ》が、マナからは《S級原始 サンマッド》が飛び出してくる。山札の上5枚から、《俳句爵 Drache der’Bande》on《洗打の妖精》でジャストダイバーの即時打点を組み上げた。

あとは《S級原始 サンマッド》が《回転の精霊ナイッショエル》をマナ送りにし、勢いそのままT・ブレイクで突っ込むのみ。
kaisora「3点でお願いしまーす!」
1枚、2枚、3枚。リズムよくシールドを捲ったリノグレは……ぱちり、と1枚、カードを開いた。

《フェアリー・ライフ》。
それがkaisoraとリノグレの勝負を締めくくる、最後の1枚となった。
kaisora 2-1 リノグレ
WINNER:kaisora
無言で両手を突き上げたkaisora。「負けたー!」と叫んだリノグレ。彼らはその瞬間、揃って天を仰いだ。kaisora「いい試合でした!」
リノグレ「リベンジならずか……!」
握手を交わす。勝って嬉しい。負けて悔しい。でもどちらにせよ、楽しい。デュエル・マスターズの本質が、その光景にありありと現れていた。リノグレ「今日は24年のエピローグだと思ってきたんです。でも終わってみれば、何だかんだでまた夢を見られた」
彼は今年も旭川を中心に、北海道の競技シーンのために活動するのだという。DMPランキングの制度も改訂され、地方勢にもチャンスが増えた。この好機を逃す手はないということだろう。
リノグレ「でもやっぱり大型大会での実績も欲しいですし、またエリア予選で権利も獲りたい、と思ってしまいますね」
2回も味わったからまた欲が出ちゃいます、とリノグレは笑う。「北の巨人」の次なる一歩は西か東か……きっと、魅力的な勝負が待っている方に向かうのだろう。
kaisora「嬉しいのは間違いないんですけど、全然満足はしてないですね。やっぱり1位じゃないと」
見据えるものは頂上のみ。満足するにはまだまだ早すぎる……というより、この男の辞書に満足という言葉はないのかもしれない。とはいえ、調整ではかなり無理もしていたとのこと。一旦自分を労おうと思います、との事だった。
kaisora「見てる人にも面白いなと思ってほしいし、この楽しさを少しでも伝えたかった。もっともっといい映像を届けていけるようになりたいですね」
1人のプレイヤーとしてのみならず、DTLリーガーとしての矜持も胸に戦うkaisora。「現代最強の決闘者」、その二つ名を証明すべく、彼は戦い続けていく。
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kaisora 全国大会2025 日本一決定戦 オリジナル |
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リノグレ 全国大会2025 日本一決定戦 オリジナル |
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