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全国大会2018 北東北エリア予選 決勝戦:かじゅある(秋田) vs. koharu(青森)

 「よっしゃ!」

 準々決勝、準決勝で勝利と同時に声は上がった。

 対戦数は増し、蓄積した疲労とは反比例するかのように、彼の声は確実に力強くなっていた。自身を鼓舞すると同時に、掲げる目標へ一歩一歩近づいていることを周囲へも示すかのように。

 声の主はかじゅある、3年前の『全国大会2015』決勝戦で敗れた男だ。

 “あの時の忘れ物を取りにいく”

 この言葉は優勝が目の前へと迫り、気持ちが先走り出たものではない。このトーナメントを勝ち抜くだけの確固たる自信を持ち合わせているからこそのものだ。優勝への確かな意志はデッキへと表れている。

 かじゅあるが相棒に選んだのは環境トップ『火水 クラッシュ“覇道”』をメタった『卍 デ・スザーク 卍』。《堕魔 ドゥリンリ》《堕魔 ドゥスン》、2種の魔導具が自身の《卍 デ・スザーク 卍》の着地を助け、相手のキーカードである《“必駆”蛮触礼亞》を遅らせる。実際に決勝戦まで6連続して同マッチアップに勝利しており、その言葉と意志がフロックではなく、確かなロジックによって成り立っていることを示している。


 そのかじゅあると決勝戦で相対するのは、今大会中最も勢いがあるkoharuだ。

 予選ラウンド終了時点での成績を4勝2敗とし、順位は17位。本来であれば、決勝ラウンド進出を逃したkoharuだったが、デュエルの神は見捨ててはいなかった。なんと私用により急遽16位の選手が大会をドロップアウトしたのだ!

 これにより繰り上げで決勝ラウンドへ進出を果たすと、三連勝で決勝戦へとやってきた。諦めず、不貞腐れず、真摯にデュエルを続けたものに、神は優しい笑みを投げかける。

 それでもかじゅあるがメタゲームの勝者であることは間違いない。koharuのデッキは狙い通り『火水クラッシュ“覇道”』なのだから。
先攻:かじゅある

 じゃんけんに勝利し先手が決まると、

 「よしっ!」

 とかじゅあるは短く、しかし、はっきりと声にする。

 先手の場合に対『火水クラッシュ“覇道”』勝率90%を誇るのが、かじゅあるの『卍 デ・スザーク 卍』だ。3ターン目に《卍 デ・スザーク 卍》が降臨すれば雁字搦めならぬ卍搦めとなり、そうそう脱出することは叶わない。

 事実、《堕魔 ドゥリンリ》《堕魔 グリナイブ》を墓地へ落とし、続く《堕魔 グリギャン》が墓地を肥やしたことで、3ターン目にして無月の門は開き、手札より《卍 デ・スザーク 卍》が降臨する。
 このマッチアップでのポイントは如何に早く《卍 デ・スザーク 卍》を着地させ、後続のクリーチャーを潰していくか、だ。この動きを見れば先手での勝率90%も頷ける。それほどまでにこの漆黒の朱雀の存在は重く、全国への切符をほとんど手中に収めたといって過言ではない動きだった。

 しかし、あくまでも勝率は100%ではなく90%だ。残る10%、つまりは干渉力を凌駕する動きに対してはどうしようもないのだ。

 そうはいってもこの状況を打開するには無駄なカードは1枚も許されない。もしも対戦相手が別のプレイヤーだったなら無月包囲網により、ゲームはロックアップしていただろう。

 実際の対戦相手は、今日最もデュエルの神に愛されし男。決勝ラウンドへの切符を掴むことができたシンデレラボーイの手札には、全てのカードが揃っていた。
 B・A・D・S2で手札を捨てつつ、プレイ《“必駆”蛮触礼亞》。バトルゾーンへと降り立つのはご存知《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》だ。バトル効果で《卍 デ・スザーク 卍》を破壊することで漆黒の枷を外し、後続へとバトンを繋ぐ。

 そう、一連の動作によりkoharuの手札は1枚となっている。この状況でもう一種類のビートジョッキーを持っていないわけがない。

 予想と違わず《“轟轟轟”ブランド》は降臨し、2ターン目に召喚しておいた《異端流し オニカマス》と合わせ一気に3枚のシールドをブレイクする。ターンの終わりを迎え、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》は自身の命と引き換えにkoharuへ力を与える。
 追加ターンとなり盤面上はダイレクトアタックまで届くものの、打点はぴたっりのジャスキルと余分はない。脳裏には《堕魔 ドゥグラス》の存在がちらつき、何かしらの追加のスピードアタッカー持ちを、と願っていただろう。デッキは最高の解答を届ける。
 ドローすると信じられないとばかりにkoharuは目を見開き、僅かに動きを止め、落ち着くように言い聞かせてから追加アタッカーを召喚する。
 トップデッキされた《“轟轟轟”ブランド》を見て、かじゅあるは思わず吹き出してしまう。なぜなら彼のデッキにはこの状況を耐えうる《堕魔 ドゥグラス》は存在していない。一時しのぎの単体防御手段ではなく序盤から試合展開を優位に進める《堕魔 ドゥリンリ》《堕魔 ドゥスン》を採用し、デッキの構造から『火水クラッシュ“覇道”』をメタった結果、解雇されてしまっていた。

 こうなっては、もうどうしようもない。ダイレクトアタックの意志表示としてタップされた《“轟轟轟”ブランド》《卍 デ・スザーク 卍》の包囲網を突き破り、koharuに全国大会への道を切り開いた。

Winner:koharu


 「全国優勝はお預けです、来年以降に。」

 掴みかけていたものは手からこぼれ落ち、かじゅあるの想いはここで潰えてしまった。自身が積み上げたロジックは力業により崩され、3年前の忘れ物は今年も手元には戻ってこない。

 それでもかじゅあるは一呼吸おくと、再び口を開く。

 「いや、やっぱりkoharuに取ってきてもらいますよ。東北勢が大規模大会で優勝する姿を見たいので。」

 これまで開催されたグランプリ、全国大会の優勝者は圧倒的に西日本に多い。寧ろ、DMGP7thでやっと関東地方から優勝者が誕生したくらいなのだ。

 かじゅあるの言葉を受け、koharuも応える。

 「決勝戦だけでなく予選ラウンドから戦ってきた方や応援してくれた友人、多くの人の想いを託されてきました。だからこそ……」

 控え目に、それでいてはっきりと。使用デッキである『火水クラッシュ“覇道”』のそれとは対照的に、それでいてkoharuらしく宣言する。

 「優勝、したいですね。」


 デュエル・マスターズはデッキという媒体を通じ、プレイヤー同士が対戦するゲームだ。プレイヤーとカードの絆と同じかそれ以上に、ゲームを通じてプレイヤー同士の絆は深まり、気持ちは伝播していく。

 他人の想いを背負って戦うのは重荷かもしれない。しかし、時として想いは力となりて、デュエルの神すらも振り向かせる。それこそ17位からの決勝トーナメント進出という奇跡は、koharuが予選ラウンドで戦ったプレイヤーたちの想いからかもしれない。

 東北のプレイヤーの期待を一身に背負い、koharuは全国へと挑む。

 東北勢初の、優勝を目指して。

北東北エリア チャンピオンはkoharu! おめでとう!

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