全国大会2019 東北エリア予選 Bブロック決勝戦:YOSHIK.N(青森) vs. アズっち(宮城)
撮影者:後長 京介
ライター:増喜 浩之介
2019年12月8日正午。仙台にて、全国大会出場をかけた戦いが始まった。
会場内にはテーブルが辺り一面に並び、隙間なく出場選手が着席し繰り広げた予選第1回戦。
開始のアナウンスと共に、プレーヤー同士の挨拶や宣言、カードをプレイする音など、様々な音が会場に響いていた。
あれから7時間が経過した今。会場に残されたテーブルは、決勝戦と3位決定戦の2テーブルのみ。そのテーブルから放たれる緊迫感が、会場を包んでいた。
残された2テーブルの片方、決勝戦。
その決勝戦のテーブルに座るのは、『火光ミッツァイル』を使用するYOSHIK.Nと、『火水ミッツァイル』を使用するアズっちだ。
なんとYOSHIK.N(予選1位通過)もアズっち(予選2位通過)も、この決勝の舞台に辿り着くまでに黒星は一つもない。オポネントの関係で順位に差はあるものの、両者ともに予選を全勝で勝ち上がり、決勝トーナメントもその勢いで駆け上がった。
まさに、決勝の舞台で戦うに相応しいプレイヤー同士の対決だ。
優勝の座と全国大会出場を賭けた戦いが、今、幕を開ける。
先攻:YOSHIK.N
先攻は予選1位通過のYOSHIK.N。《ジャスト・ラビリンス》をマナに埋め、《予言者クルト》を召喚とロケットスタートを切った。対するアズっちは《ザババン・ジョーカーズ》をチャージして《トムのゼリー》をノータイムで場に送り出す。
続いてのターン、YOSHIK.Nは《MANGANO-CASTLE!》をチャージし、≪奇石 ミクセル≫をバトルゾーンへ。『火水ミッツァイル』へのキーカードの召喚に成功する。
アズっちはドローを確認すると、暫く考えたのち、《メラメラ・ジョーカーズ》をマナへ埋めて《ヤッタレマン》を召喚。YOSHIK.Nの場に≪奇石 ミクセル≫がいようが、その軽減による展開力は健在だ。今後の展開の起爆剤となれるか。
お互いにクリーチャーを並べ合う展開となり、双方共に徐々にリソースの底が見え始めてきた中、迎えたYOSHIK.Nの3ターン目。ドローしてハンドは3枚。その限られた選択肢で、これから起こり得る可能性を模索する。
YOSHIK.Nは考えたのち、ノーチャージを選択。そして《一番隊 クリスタ》の召喚してターンを返した。限りあるハンドを温存し、マナを追加せずに盤面を増やすその裏には、どこか赤きミサイルの存在をちらつかせる。
アズっちは《“魔神轟怒”万軍投》をチャージし、《ヤッタレマン》2体目と、《オケ狭間 寛兵衛》をバトルゾーンへ。GRゾーンからは《バイナラシャッター》が登場するものの、≪奇石 ミクセル≫効果でボトムに消えていった。そしてターン終了を宣言する。
このとき、隣のAブロックの決勝戦が終了し、会場が拍手で包まれた。自分たちが優勝の座と全国行きの切符を賭けて戦っている最中、先にそれらを獲得したプレイヤーが現れた。おのずと、双方の表情に緊張が走る。YOSHIK.Nは一層に顔を引き締め、アズっちは「落ち着け…」と自分に言い聞かせるように呟いた。
そして迎えた4ターン目。このターンが、両者にとって勝負のターンとなった。
YOSHIK.Nはドローを確認すると、《一番隊 クリスタ》の軽減が入った《ナゾの光・リリアング》を召喚。
YOSHIK.Nの場には4体のメタリカ。そして、残るマナは赤い1マナ。
その赤マナを捻るかを吟味するYOSHIK.N。今ここで《BAKUOOON・ミッツァイル》を召喚するとなると、自分の≪奇石 ミクセル≫を砕くことになる。そしてその≪奇石 ミクセル≫が盤面から消えた状態でターンを返せば、相手のアズっちの《BAKUOOON・ミッツァイル》にカウンターされるリスクが潜む。
アズっちのシールドは5枚、そして場にはブロッカーの《トムのゼリー》と《オケ狭間 寛兵衛》がいる。自らチューンしたGRゾーンに、それらを突破する手段を見出せるか。
YOSHIK.Nは、こくりと頷いた。結論が出たようだ。
意を決したように、マナゾーンに手を伸ばした。
《BAKUOOON・ミッツァイル》が引き連れてきたのは、
《ジェイ-SHOCKER》
《ジェイ-SHOCKER》
《ドドド・ドーピードープ》
《ポクタマたま》
の4体。これにアズっちは「よし!」と声を上げた。この打点数では、確実にアズっちにターンが渡るのだ。勝機はまだ残っている。
望み通りのGR召喚とはならなかったYOSHIK.Nだが、表情を変えることなく、攻撃を畳み掛けた。
まずは《ジェイ-SHOCKER》で、《ポクタマたま》をバックしながら攻撃。これによって、アズっちにコスト3のクリーチャーの召喚が禁じられた。
続いて《BAKUOOON・ミッツァイル》も攻撃。その攻撃は通すまいとアズっちは《トムのゼリー》でブロックし、破壊時にドローを進める。
立て続けに、YOSHIK.Nは《ドドド・ドーピードープ》も動かした。これによってYOSHIK.Nのハンドは0枚となる。アズっちは先程の《トムのゼリー》で引いたカードを見つめ、考えた末にその攻撃を通した。トリガーはない。
そして、YOSHIK.Nはターンを終了した。
祈るように手を合わせるYOSHIK.N。「最善の選択はした。だから頼む……!」と、全身が物語るように。
ターンが渡ったアズっち。先程のシールドブレイクによってハンドが増え、取れる選択肢が潤沢になった。ただ、そこに《ジェイ-SHOCKER》の召喚制限が重くのしかかる。コスト3を封じられるというのは、《オケ狭間 寛兵衛》 などのクリーチャー展開が阻まれるだけでなく、GR召喚が博打になるのだ。一度でも3コストのGRクリーチャーが捲れれば、その時点でGR召喚は全て禁止される。
しかし、返しの行動を起こさなければ、目の前のYOSHIK.Nの打点で押し切られてしまうのは明白だ。故に、アズっちの選択肢はたった一つ。
勝つためには、やるしかない。
優勝と全国行きを賭けたギャンブルを。
アズっちは《ザパンプ》を2体召喚。そして《ザパンプ》と《ヤッタレマン》それぞれを2体をタップし、繰り出される《夢のジョー星》。トップから4枚捲ると、アズっちはにこりと笑みを見せた。どうやらお目当てのカードに辿り着けたようだ。
そのお目当てのカードとは、これから行うギャンブルの発生源だ。
アズっちとYOSHIK.N、それぞれの願いが激突する。
アズっち「コスト4が捲れろ!」
YOSHIK.N「コスト3が捲れろ!」
GRゾーンに手を伸ばすアズっち。その腕はプルプルと震えている。このGR召喚には、賭けているものがあまりに大きすぎる。YOSHIK.Nも、アズっちのGRゾーンに目を向けることができず、ただ空を見上げている。
緊張の一瞬が、ここにある。
願いが叶うのは、たった1人だけ。
GRゾーンから捲れたのは……!
コスト「3」。アズっちの博打は、失敗に終わった。
これにはアズっちは頭を抱え、YOSHIK.Nは長い息をついた。
ただ、勝負はまだ終わっていない。アズっちはこの状況を整理し、YOSHIK.Nの盤面に目を向けた。
そして考えたのち、《BAKUOOON・ミッツァイル》で《ドドド・ドーピードープ》を殴り返して、ターンを渡した。
アズっちのシールドは残り2枚。場には、《BAKUOOON・ミッツァイル》とブロッカーの《オケ狭間 寛兵衛》。YOSHIK.Nの場には、《BAKUOOON・ミッツァイル》、《ジェイ-SHOCKER》、《ジェイ-SHOCKER》の3体。
YOSHIK.Nがジャスキル打点を揃えるまで、たったあと1打点。
再度、各々の願いが激突する。
YOSHIK.N「引け!」
アズっち「引くな!」
YOSHIK.Nもアズっちも、ギュッと手を合わせ念を込める。
今度は、YOSHIK.Nが山札に手を伸ばす番。その指先には、運命のドローが待っている。
YOSHIK.Nは目を瞑ったまま、山札からカードを引く。
そして、目を見開いたその先には。
YOSHIK.N「よし!」
一切の迷いはない。YOSHIK.Nはすぐさま《音奏 プーンギ》を召喚し、場にいる4体に攻撃命令を下した。
《BAKUOOON・ミッツァイル》でシールドを攻撃! 《オケ狭間 寛兵衛》 でブロック!
《ジェイ-SHOCKER》でシールドをブレイク!
《ジェイ-SHOCKER》で最後のシールドブレイク!
そして、《音奏 プーンギ》のダイレクト攻撃が決まった!
Winner: YOSHIK.N
「あそこで4が捲れていれば……」
試合後にアズっちが振り返る。
あそこでコスト4のGRクリーチャーが捲れていれば、YOSHIK.Nの盤面は2体以上破壊され、返しのターンにジャスキルをくらうことはなかった。そして、マナもハンドも潤沢に抱えていたため、リソースゲームで優位に立てていただろう。
しかし、無情にも1枚目のGR召喚で、それらの可能性は無と化した。ベストを尽くしても、届かぬ願い。アズっちは「ただただ悔しい」と唇を噛み締めた。
裏に敗者がいれば、表には勝者がいる。
YOSHIK.Nは、決勝戦が終わると初めて満面の笑みを見せ、「やった!全勝優勝だ!」と喜んだ。
店舗予選やランキング、GPを突破した強者揃いのプレイヤーの中で、唯一の全勝優勝。YOSHIK.Nの確かな実力を物語るには、十分すぎる結果だ。
そして、YOSHIK.Nの強靭な強さはきっと、東北の地を悠々と飛び越え、羽ばたくだろう。
彼が獲得した、全国行きの切符のその先で。
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