デュエル・マスターズ

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全国大会2024 北海道エリア予選決勝戦:セキボン vs. リノグレ

ライター:河野 真成(神結)
撮影者:瀬尾 亜沙子

 5年という月日が流れた。
 
 1つ前のエリア予選の記録を追うと、2019年まで遡ることになる。
 元号が令和に改元されたこの年、デュエル・マスターズは超GRゾーンの導入という新たな試みを行った。
 各プレイヤーは、この新ギミックの解析に励んだ。

 超GRは強かった。
 それは、殿堂・2ブロックというフォーマットによる違いを問わなかった。
 
 やがて行われた全国大会エリア予選に於いて、北海道エリアを制したのはやはり超GRだった。
 《極幻空 ザハ・エルハ》を主軸に据えた【水闇オーラ】を使用したNJが、全国大会への切符を掴んだのだ。
 
 この年は他のエリアでも《BAKUOOON・ミッツァイル》を始めとした超GRは大活躍を見せた。新元号、そして新ギミックと共に、デュエル・マスターズは新時代へと突入したかに見えた。
 
 だがそこに待ったを掛けたのは、超GRに対抗するデッキでもなく、《零龍》でもなく、メタカードでもなかった。

 襲い掛かったのは、コロナという未曾有の大災害だった。

 全国大会は幾度となく延期を余儀なくされ、それが開催されたのは2022年に入ってからのことだった。

 この間に外部ゾーンを用いない『オリジナル』フォーマットが考案され、このゲームの主流となった。
 超GRが使用可能な『アドバンス』も、直近2年のカードを用いる『2ブロック』も、気付けばその存在意義を問われるほどに冷遇されてしまった。
 
 それでも全国大会を終えて以降、デュエル・マスターズはこれまでの日々を取り戻すべく動き始めた。
 大型大会が次々と行われ、激しいDMPランキング争いもあり、2022年には最強位決定戦が、そして翌23年には再び全国大会が行われた。

 我々の知っているデュエル・マスターズが、帰ってきたのだ。
 
 しかしただ一つ、足りないものがあった。
 それが、各地域の代表を決めるエリア代表決定戦だった。
 
 2023年の全国大会は、DMPランキングで結果を残したプレイヤーとDMGP・超CSで上位となったプレイヤーで開催された大会だった。

 それ自体は、問題ない。しかしこの煽りを最も受けることになったのは、地方で活動するプレイヤーたちだった。
 
 もちろんこのDMPランキングが現在の競技シーンを作り、デュエチューブリーガーのようなプレイヤーを生み出したのは間違いない。
 しかしDMPランキングはその性質上、都市圏以外で“走る”のは難しかった。
 
 地域を代表し、その地域の期待と声援を受けて戦う。
 そんなシーンは見られなくなってしまった。
 
 前置きが長くなった。
 
 5年という月日が流れた。  この長い長い時を経て、今年再び行われることになった『2ブロック』フォーマットによる、エリア代表決定戦。

 店舗予選という狭き門を突破した者たちが集い、地域を背負って立つ者を決める戦いだ。

 その口火を切って行われた北海道エリアの決勝戦は、まさに地域の代表を決めるのに相応しいカードとなった。
 セキボン vs. リノグレという、10年以上も北海道で戦い続けている、北海道を代表するプレイヤー同士の対決となったのだ。

 これもまた、我々が待ち望んでいた競技シーンのもう1つの姿ではないだろうか。
 
 試合前、話題の中心となるのはもちろん思い出話だった。

リノグレ「最初に出たエリアが、ドラゴン・サーガなんですよね」
セキボン「ドラゴン・サーガの時は、確か《龍覇 イメン=ブーゴ》使ったなぁ」

 奇しくもこの日、会場を彩るタペストリーに選ばれていたのは《龍覇 イメン=ブーゴ》であった。

リノグレ「知っていますよ。《音感の精霊龍 エメラルーダ》が入っているリストですよね」
セキボン「詳しすぎでしょ」
リノグレ「昔話が好きなんですよ。かっち選手とか大好きで……」

 そしてそのまま話題は、プレイヤーへの話へと移っていく。
 
リノグレ「俺、NJの名付け親なんですよ」
セキボン「そうなの!?」
リノグレ「本人に向かってずっとNJって呼んでいたら、いつの間にか彼のHNがNJで登録されていました(笑)」

 やがて開始前の準備も終わったところで、ジャッジが声を掛けた。

 北海道から既に前期GPにてtakiえむつーの2人が全国大会への出場を決めている。
 2人も会場(のすぐ外)へと駆け付ける中、彼らとともに北海道を背負って戦うプレイヤーとなるのは、果たしてどちらのプレイヤーか。

先攻:リノグレ  先攻のリノグレ《超重竜 ゴルファンタジスタ》のチャージから。対してセキボン《芸魔龍王 アメイジン》を埋める。

 リノグレのデッキはこの日最大数だった【水自然ジャイアント】。2種のゴルファンタジスタを使い、中終盤に厚いデッキである。  対してセキボンは【火水マジック】ではあるが、これは早期に殴り勝つことを目的としたリストではない。
 《シャングリラ・クリスタル》でマナを伸ばした後に最終的に《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》の呪文側で追加ターンを取って勝つ、【火水水晶マジック】というようなリストであった。  前期のデュエチューブリーグで披露した型でもあり、覚えている人も多いだろう。

 さて、ゲームは2ターン目、リノグレ《》召喚から始まる。
 これにセキボン《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》の呪文側を使い、手札交換で応じる。1枚裏向きにして、ターンを終えた。
 
 3ターン目、リノグレ《アシステスト・シネラリア》を召喚すると、続けざまに≪同期の妖精≫を革命チェンジで《チアスペース アカネ》へ。
 順調にマナを伸ばしていく。
 
 ……実はリノグレのデッキは、2ターン目のスタートを想定している訳では無い。2コストは≪同期の妖精≫の3枚のみで、他の多くのプレイヤーが採用している≪竹刀の超人≫はなく、代わりに【火水マジック】を止める《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を採用していた。
 だがこの大一番でロケットスタートを見せたことで、セキボンに大きなプレッシャーを掛けることになる。

 続くターンにはいずれかのゴルファンタジスタの着地も見えてくるような展開だ。

 セキボンリノグレに一声掛けると、ここでじっくりと考える。
 このゲーム展開で使うカードは何か。そんなことを呟きながら、改めて手札を整理していく。

 やがて《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》のマナチャージを決めると、《シャングリラ・クリスタル》をプレイし、2マナブースト。
 これで裏向きのマナは3となり、このデッキの鍵でもある《グレート・流星弾》の水晶マナ武装達成に大きく近付いた。

 だが、リノグレはこれに2体目の《アシステスト・シネラリア》を建て、更に≪同期の妖精≫を追加することで応じる。

 そして《チアスペース アカネ》動かす前に、まずは《アシステスト・シネラリア》で1点から。

 シールドをチェックしたセキボンは、それを勢いよくプレイ。
 トリガーしたのは、《グレート・流星弾》だった。  だが、除去の割り振りを考えるセキボンは、難しい表情をしている。
 
セキボン「偉いが、いうてか……」

 ここはリノグレのケアも光った展開だ。
 水晶マナ武装が前に踏むことが出来た上に、≪同期の妖精≫と2体の《アシステスト・シネラリア》《チアスペース アカネ》を守っている。
 どうやっても、《チアスペース アカネ》は動いてしまう。

「これか……」

 悩んだ末、手札から切ったのは《煙幕の聖沌 k3mur1 / 聖沌忍法 メカくしの術》セキボンの隠し味的な1枚であったが、ここは≪同期の妖精≫を割ることに貢献した恰好だ。  攻撃の続行が許されたリノグレは、満を持して《チアスペース アカネ》を革命チェンジ宣言、《銀河竜 ゴルファンタジスタ》へ。  そのままT・ブレイクが通り、トリガーの宣言もなくセキボンのシールドは0枚に。

 盤面にはスピードアタッカーを許さない《銀河竜 ゴルファンタジスタ》と、それを守る2体の《アシステスト・シネラリア》が控えている。
 まさに絶体絶命。
 
 しかしセキボンも、ここから驚異的な粘りを見せる。

 チャージして6マナから。まずは《シャングリラ・クリスタル》でスタート。

 そして水晶ソウル2を使い、4マナで召喚したのは《偽りの名 システイス》  盤面を3体止めつつマナも伸びたことで、次ターンに望みを繋ぐ!
 
リノグレ「そういうのがあるのか……」

 流石のリノグレも、これは予想外。改めて、プランを練り直す。
 
 ただ盤面にクリーチャーを出してくれるなら、それはジャイアントにとっては美味しい状況でもある。
 
 リノグレは2つの軽減を使って、《チアスペース アカネ》《チアスカーレット アカネ》を連続で召喚していき、更に≪同期の妖精≫を追加。

 そして《偽りの名 システイス》に向かって《チアスカーレット アカネ》が動くと、革命チェンジ宣言。
 2体目の《銀河竜 ゴルファンタジスタ》を見せると、続けてメクレイドを使用。ここで《五番龍 レイクポーチャー ParZero》を盤面に追加。万が一の展開も防ぎ、ターンを終了する。
 
 リノグレの盤面は6体。2体の《銀河竜 ゴルファンタジスタ》に2体の《アシステスト・シネラリア》、更にジャストダイバー状態の《五番龍 レイクポーチャー ParZero》と≪同期の妖精≫が構える盤面。
 盤石、という言葉が似つかわしい。

 しかし、まだセキボンは諦めない。

セキボン「ここから勝てるカード1種類しかない……」

 まだ勝ち筋を見出している。チャージして9マナの場面。

セキボン「あれとあれを同時に引くしかなくて……」

 やがて、決断。

セキボン「やれることをやるか……」

 まずは3マナで《氷柱と炎弧の決断》でドロー2回を選択。
 《シャングリラ・クリスタル》を捨てて2ドロー。
 
セキボン「ハンドに《チアスカーレット アカネ》が帰っている」

 冷静に状況を振り返る。
 そして再び、《シャングリラ・クリスタル》を捨てて2ドロー。
 
「引いた……!」

 セキボンは、土壇場で数々の奇跡を起こしてきた男だ。この男なら、ここからでもまだ何かを魅せてくれるのではないか、そんな期待を抱かせてくれるのだ。
 
 セキボンのプレイにも、力が籠る。
 
 残る6マナで唱えたのは《グレート・流星弾》だ。
 《芸魔龍王 アメイジン》を捨て、破壊対象に≪同期の妖精≫と《アシステスト・シネラリア》を選択する。
 《アシステスト・シネラリア》が≪同期の妖精≫をセイバーするが、水晶マナ武装の力で墓地から蘇った《芸魔龍王 アメイジン》が盤面を全て止め、このターンをも耐え凌いでみせる!  これで《チアスカーレット アカネ》をプレイされても、革命チェンジがなかったり、メクレイドの出力弱かったりといった展開次第では、遂に“必殺”を見せる時が来るかもしれない。

 ターンはリノグレへと渡った。

 マナチャージから、軽減込みで《チアスカーレット アカネ》をプレイするための4マナを捻り……。
 いや、捻ったマナは4ではなかった。

 それより3つ多い、7マナ。
 
 バトルゾーンに投下されたのは《チアスカーレット アカネ》ではなく、なんと≪超球の超人≫。  このカードがある限り、コスト5以下の呪文を使うことが出来ないという、まさにマジックの急所を突く1枚だった。

 しかもこれが、マッハファイターをも持っている。《芸魔龍王 アメイジン》へと強烈なタックルをお見舞いし、ターンを終える。
 
 それでも、まだセキボンは粘った。

 手札にあった《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》をクリーチャーでプレイし、≪同期の妖精≫をバウンス。
 これを、《アシステスト・シネラリア》のセイバーで防ぐリノグレ

 更に2体目の≪der'Zen Mondo≫で、今度こそ≪同期の妖精≫を返したあと、《偽りの名 システイス》を召喚しクリーチャー3体の動きを止める。

 ……しかし、《五番龍 レイクポーチャー ParZero》は止まっていない。
 
 リノグレも、最後の最後まで丁寧にプレイを続ける。万が一もないようマッハファイターで一度盤面を潰すと、そして最後の攻撃を宣言。

「ありがとうございました」  セキボンは自らの手を、勝者を称えるために差し出した。

WINNER:リノグレ

 5年の月日が流れた。

 エリア予選はこの日ここより、また新たな歴史を刻み始める。

 その再開の1ページとなったのは、北海道という最北端の場所で、長きに渡りデュエル・マスターズをプレイし続けた2人の対決によるものだった。
 そして最後は、粘るセキボンリノグレが振り切った。

 おめでとう、リノグレ
 
 地元のプレイヤーたちが、そしてこの日ここで共に戦った仲間たちが、全国大会では貴方の背中を押してくれる筈だ。
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