全国大会2024 九州エリア予選決勝戦:サラダ vs. えいりゅー
ライター:清水 勇貴(yk800)
撮影:後長 京介
運命の頂 サラダ「僕、予選最終戦がそのパターンでしたよ、おかげさまで予選2位です」
えいりゅー「2位! うわ、じゃあ後手だ!」
2023年。全国大会の復活が告知された際、歓喜の声と同時に落胆の声も少なからず上がっていたことを覚えている。
「エリア予選はないのか」と。
当時、全国出場の切符を掴む手段は2つ用意されていた。大型大会での上位入賞と、DMPランキングの順位だ。
大型大会の入賞は一発勝負、しかも数千人規模の大会を勝ち抜いたものだけに与えられる狭き門だ。
ではDMPランキングの方はどうかというと、獲得ポイントの倍率や開催される大会数の都合で、東名阪の都市圏に在住していなければ上位を狙うのはかなり難しい。
だからこそ、2024年。エリア予選の復活が告知された際、あらゆるプレイヤーが喜びの声をあげていたのを覚えている。
当然だろう、単純に全国大会に出場できる機会が増えたのだから。自分だけでなく、友人・知人が全国の舞台に立てるチャンスがより増えるのであれば、それは嬉しいことだろうと、そう思っていた。
それもまた紛れもない事実なのだと思う。だが、エリア予選決勝の舞台で相対する2人を目の当たりにし、同時にこうも思うのだ。
単純に、デュエル・マスターズへの想いの丈をぶつけ、証明する機会が増えたこと。それ自体がすでに彼らにとって喜ぶべきことだったのだろうと。
えいりゅー「デュエパーティーの練習の成果が活きましたね。今日も朝5時までやってたんで」
えいりゅーのデッキは【火水闇プレジール】。
熊本在住の彼が福岡の2ブロック大会に参加した際に、現地でその強さを目の当たりにして使用者に頼み込み、デッキをシェアしてもらったという。店舗予選の突破以降、2ブロックにはほとんど触れていなかったというが、彼自身の実力と託されたデッキの強さでここまでを勝ち残った。
そんな彼が愛してやまないのがデュエパーティー。「週50時間」ともなれば、1日7時間睡眠を取っても、寝ている時間よりデュエパーティーをしている時間の方が長いことになるのだから脱帽だ。
デュエパにおいても「お気に入りの1枚」であるという《楽識神官 プレジール》を手に、エリア予選最後の戦いに挑む。
サラダ「じゃあ僕は、デッキへの愛が応えてくれたおかげですかね」
デッキをシャッフルしながらそう返すサラダのデッキは【水自然ジャイアント】。
彼がデュエマに復帰した際、購入したのは2つのクロニクル・デッキだったという。
「アルカディアス鎮魂歌」と、「風雲! 怒流牙忍法帖」。《天罪堕将 アルカクラウン》のデッキを組みたくてついでとばかりに一緒に買ったところ、ジャイアントの魅力にもハマッてしまったそうだ。
構築自体は今や大きく様変わりしてしまったが、その時に感じたジャイアントへの愛は未だ冷めず。アビス・レボリューションでジャイアントがフィーチャーされはじめた時からジャイアントを組み、新弾が出るたび磨き続けたデッキが、2ブロックではトップTierだった。
ドルゲユキムラのスリーブに【水自然ジャイアント】を携え、サラダは沖縄の地からエリア予選決勝の舞台へと歩んできた。
相対する2人から熱気が直に伝わってくる。ギラギラとした闘争心ではなく、デュエマへの、そして相棒として選んだカードへの愛だ。
デュエル・マスターズを愛している。だからこそ、負けられない。たった1枚の切符を賭けたゲームが始まる。
Game
先攻:運命の頂 サラダ 予選順位で先攻となったサラダは2ターン目に《竹刀の超人 / サイバー免許皆伝》のクリーチャー側を召喚する立ち上がり。対するえいりゅーも2ターン目に《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を召喚し、安易な3ターン革命チェンジに待ったを掛ける。
しかし、続くターンにサラダが召喚したのは、
サラダ「≪der'Zen Mondo≫召喚、≪テスタ≫バウンスで」
《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》のクリーチャー側でメタクリーチャーを弾き飛ばすと、えいりゅーの眉尻がピクリと跳ねる。
サラダはそのまま≪竹刀の超人≫でプレイヤーを攻撃、と同時に《チアスペース アカネ》へと革命チェンジ。テンポとリソース拡充を同時に確保し、一歩早く序盤を抜け出す。
しかし、えいりゅーも負けてはいない。《氷柱と炎弧の決断》で《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》2体を戦線へ送り出し、5から7への革命チェンジをガッチリと止める。
成長チェンジプランが封じられたサラダ。続くターンは《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》で《楽識神官 プレジール》の速攻を牽制する。
サラダ「《チアスペース アカネ》で1点」
革命チェンジによる盤面形成こそ止まったが、それは歩みそのものを止める理由にならないとばかりに、果敢にクロックを刻んでいくサラダ。
しかし、ここでえいりゅーのシールドから《終止の時計 ザ・ミュート》がトリガー。2ドローしながら《楽識神官 プレジール》を捨てたえいりゅーは、そのまま自身のターンへ。
2体のメタクリーチャーにより一旦の猶予を得ているえいりゅー。《同期の妖精 / ド浮きの動悸》と《DARK MATERIAL COMPLEX》を召喚して自身の戦線を補強して、ターンを終える。
続くサラダの5ターン目、《チアスペース アカネ》をタップインさせつつ5マナに手を掛けたサラダが召喚したのは《チアスカーレット アカネ》。《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》をマッハファイターで上から排除しつつ、メタ能力に阻害されないメクレイドを起点に展開を作成できる、値千金の1枚だ。
まずは《チアスペース アカネ》で1点を刻む。トリガーのリスクよりも1打点のリターンにベットした格好だが、トリガーやG・ストライクはなし。小さくも大きい賭けにサラダは勝った。
《チアスカーレット アカネ》で《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》へと攻撃。先ほど攻撃した《チアスペース アカネ》をマナに置いてデッキトップから3枚を確認する。
2種の≪ゴルファンタジスタ≫のうちどちらかか、《五番龍 レイクポーチャー ParZero》か、あるいは《蒼神龍トライクラブ・トライショット》か……いずれにせよ大きく盤面に干渉をできるカードをメクレイドしたいサラダだったが、その表情は今ひとつ優れない。
小考したサラダは《アシステスト・シネラリア》の召喚を宣言。ドローしながら盤面を固めるに留まった。
大きなリターンは得られなかったサラダだったが、臆さず≪der'Zen Mondo≫でプレイヤーへの攻撃を宣言。えいりゅーのシールドがジリジリと削られ、いつの間にやら残すところ1枚となっていた。
ターンをもらったえいりゅーはデッキ《DARK MATERIAL COMPLEX》に3枚目のカードを放り込むと、大きく息を吐いて盤面に臨む。
サラダの戦列はタップされた《チアスカーレット アカネ》と≪der'Zen Mondo≫、アンタップ状態の≪ボン・キゴマイム≫と《アシステスト・シネラリア》。
対するえいりゅーの手駒は《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》、≪同期の妖精≫、《終止の時計 ザ・ミュート》、《DARK MATERIAL COMPLEX》の4体。
バトルゾーンだけで見ればサラダの方が優勢。シールドも残り1枚まで減らされた状況だが、
手札と墓地は潤沢だ。えいりゅーの目に憂いはなく、鋭く盤面を見通す。ジャッジにカードの挙動を確認する一幕を挟みつつ、いよいよえいりゅーがマナゾーンのカードに手を掛けた。 えいりゅー「《アーテル・ゴルギーニ》を召喚、マイナスと蘇生で」
サラダの≪ボン・キゴマイム≫を破壊してスピードアタッカーを有効化したうえで、《終止の時計 ザ・ミュート》で捨てていた《楽識神官 プレジール》を墓地から蘇生。登場時能力で2ドローし、《鬼火と魍魎の決断》を墓地へと送り込む。
流れるように《アーテル・ゴルギーニ》で《楽識神官 プレジール》のハイパーモードを起動すると、パワー9000へと超化した《楽識神官 プレジール》で《チアスカーレット アカネ》を攻撃。 能力で唱えるのはもちろん《鬼火と魍魎の決断》。コスト3以下のエレメントを破壊する効果を2回適用し、横に居並ぶ≪der'Zen Mondo≫と《アシステスト・シネラリア》を破壊。サラダのボードを一掃する。
サラダの手元から4体のクリーチャーが一挙にいなくなったことで、ターン開始時には3枚だった《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントは今や7枚。サラダの手元には展開の起点となるクリーチャーの1体も残されておらず、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》が一発逆転のコスト踏み倒しに睨みを効かせる状況。
今や戦況は逆転し、えいりゅーへと大きく傾いた!
一夜にしてほとんどのリソースを失ってしまったサラダは、≪♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり≫でコスト1を宣言し、《DARK MATERIAL COMPLEX》の攻撃をどうにか阻止。
さらに《アシステスト・シネラリア》を召喚して、次のターンのアクションに望みをかけるが……。
泣きっ面に鬼。
えいりゅーが唱えたのは、追撃の《鬼火と魍魎の決断》! 鬼の一撃は《アシステスト・シネラリア》と残る1枚の手札を無慈悲にも刈り取り、サラダのリソースはいよいよ持って尽き果てる。
トップ勝負を余儀なくされたサラダのドローは《竹刀の超人 / サイバー免許皆伝》。攻撃禁止は≪同期の妖精≫に吸われ、1ドローから繋がるアクションもない。サラダは力無くターン終了を宣言する。 迎えたえいりゅーの7ターン目。《DARK MATERIAL COMPLEX》に8枚目のカードが送り込まれてアンタップ、手札からは2体目の《楽識神官 プレジール》も戦線へと到来する。
≪同期の妖精≫でハイパーモードを起動した《楽識神官 プレジール》が攻撃すると、《鬼火と魍魎の決断》によりえいりゅーの打点はさらに加速する。
残る3枚のシールドは《DARK MATERIAL COMPLEX》で一気にブレイク。攻撃時に《死神覇王 ブラックXENARCH》を呼び出し、逆転の芽を可能な限りケアするえいりゅー。
果たして残り3枚のシールドにトリガーは≪サイバー免許皆伝≫しかなく、サラダは《アーテル・ゴルギーニ》のダイレクトアタックを受け入れた。
Winner:えいりゅー
デュエル・マスターズを愛する者同士の激突は、いっときの決着を迎えた。
もちろん愛に大小や貴賤はない。勝敗が愛の多寡を決めるわけではない。
しかし、ひとつだけ確かなことがある。勝った者はいつだって、惜しみない愛をデュエル・マスターズに捧げてきた者なのだ。 おめでとう、えいりゅー! 君が九州エリア代表だ!
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