全国大会2025 九州エリア予選 決勝戦 Bブロック:きりよ vs. りんすき
ライター:原田 武(たけじょー)
撮影:後長 京介
そんな中で目覚ましい活躍を見せたのが、りんすきがチューンアップした【火水闇アビス】である。デッキの軸足を《~不死の黄昏司祭~》などによる対策が周知されつつある《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》から《究極の虚 ジャシン=ヴリドガルド》へ移行しているのが最大の特徴だ。
盤面の取り合いのみならず、《炎氷渦と鎮魂禍の決断》から踏み倒してのターン終了時自壊で《片翼の魂 アビスベル》によって水増しした「下のカードが離れた時」を多重誘発、手札破壊とブレイクを押し付ける必殺技も搭載。爆発力は据え置きで、コントロール系列のデッキとも渡り合えるように仕上がっている。りんすきは同じく熊本を中心に活動するきりよ・#きゅるんと共にこれを持ち込み、なんと3名全員で予選を突破。うちきりよは予選全勝という非の打ち所がないスコアを記録した。
そして、今。きりよとりんすきはBグループの決勝卓で相対している。
りんすき「すっごい嬉しい!」
きりよ「まず、まずはね」
これ以上の証明もそうはあるまい。彼らの創り上げたデッキは、《究極の虚 ジャシン=ヴリドガルド》×《炎氷渦と鎮魂禍の決断》の【火水闇アビス】は、この日の正解だった。ピースサインを見せあって、二人は互いを祝福する。会場の外から見守る#きゅるんも、この結果を誇らしく思っているに違いない。
だが残酷なことに、彼らの運命には最後の試練が待っている。共に旅路を歩んできた調整仲間との直接対決だ。全国大会への出場権を得られるのはいずれかのみ。最強になるためには、自らの手で引導を渡さなければならない。
りんすき「震えてる~?」
わざとらしく身震いしてみせるきりよ。当初は賑やかにコミュニケーションしていた二人だが、シャッフルが終わるころにはもう、一切の緩みを廃した顔つきへと切り替わっている。
ここまで来たら、もう言葉はいらない。お前だけには負けられない、と。勝つのは自分だ、と。無言のまなざしが互いに言い交す。それがきりよとりんすきの、最大限のリスペクトだ。
盟友を超えて、全国へ。二人の最終決戦、その火蓋が切って落とされた。GAME
先攻:きりよきりよ「……あっ、俺か」
りんすき「うん」
そんな会話も挟みつつ、手際よく《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》をチャージしたきりよとは対照的に、りんすきはここで小考を挟む。
りんすき「ちょっと考えるね」
きりよ「決まる時一瞬だし、いいよ」
そう、このミラーマッチの争点はそこだ。この【火水闇アビス】に、カウンターの要素はほとんどないと言ってよい。先にクリーチャーを展開し、攻勢に出た方がそのまま押し切る流れとなるだろう。
りんすきの手札には、最速4ターン目に5コストクリーチャーを2体踏み倒せる《炎氷渦と鎮魂禍の決断》が握られている。まず、それはいい。2ターン目のドロー兼墓地肥やしとなる《虚ト成リシ古ノ蛇神ノ咆哮》もある。これも好都合。だが最速《炎氷渦と鎮魂禍の決断》に不可欠な《ゲルエール=ゲール》、それがない。加えて、残る手札に踏み倒し先としたい《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》や《究極の虚 ジャシン=ヴリドガルド》もない。
そして、この試合は後手スタート。きりよの動きは常にりんすきよりも早い。間に合うか。だが追いつき、追い越さなければ勝利は掴めない。ややあって《虚ト成リシ古ノ蛇神ノ咆哮》の2枚目をチャージし、終了。一歩ずつ詰めていくしかない。2ターン目もチャージのみのきりよに対し、りんすきは予定調和の《虚ト成リシ古ノ蛇神ノ咆哮》で一歩前進。相手が2ターン目ノーアクションであるなら、取り急ぎ最速《炎氷渦と鎮魂禍の決断》の脅威はない。
しかし、当然と言うべきか。《炎氷渦と鎮魂禍の決断》を欠いていても、きりよもまた明確に勝利へのルートを捉えている。3ターン目プレイは《片翼の魂 アビスベル》だ。
登場時に2枚墓地を肥やし、墓地へと送られた《片翼の魂 アビスベル》2枚のうち1枚をこのクリーチャーの下へ。きりよ「殴るか考えます」
数瞬の間を置いて、攻撃。りんすきのシールドを4枚とする。まずは1手、相手の準備が整わぬうちに詰めていく。返すりんすきの動きは――渇望していた《ゲルエール=ゲール》!手札から《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》を落としつつ、これで墓地が6枚まで伸びる。下準備は整えた。あとは、次ターンまで漕ぎつけるのみ。
きりよ、4ターン目。予告されたに等しい4ターン目のビッグアクション。一度《炎氷渦と鎮魂禍の決断》からの展開が始まれば形勢は大きくりんすきに傾く。
故にこそ、今、前へ。躊躇いなくマナチャージし、即座に攻撃。やぶれかぶれの突貫ではない。D・D・Dにより強襲する赤い影、《轟く邪道 レッドゾーン》!
数少ない自由枠の中で、りんすきは採用せず、きりよは3枚確保した追加フィニッシャー。これを進化させず、そのままバトルゾーンへ送り込む。NEOクリーチャーの登場に反応し《片翼の魂 アビスベル》が進化元を供給すれば、進化クリーチャーとなってそのままシールドを割り切れる。シールドさえ詰め切れば、仮に盤面を作られたとしても《至高の邪騎 スベルニル》や《炎氷渦と鎮魂禍の決断》でワンチャンスを狙うことが出来よう。
きりよ「これしかないような状況ではありましたね。相手のデッキの中身もある程度わかっていましたし、こちらが先手で押し付けるしかない状況かな、と」
後にきりよはそう語った。たとえ《炎氷渦と鎮魂禍の決断》からの理想ムーブでなかったとしても、それでも前へ。前へ。覚悟を持って突っ込むしかなかったのだ、と。
そして、そうした覚悟は時に、幸運を連れてくる。
《片翼の魂 アビスベル》で山札からカードを墓地へ。1枚、2枚とめくった中から――
《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》という形になって、それは表出した。
りんすき「うおおおおおお!?え!?アリ!?」《轟く邪道 レッドゾーン》の下に《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》をセットするきりよ。引き継がれる効果は、攻撃時のクリーチャー蘇生と即時攻撃の付与。
《片翼の魂 アビスベル》で1枚。《轟く邪道 レッドゾーン》で3枚。そして《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》が呼び戻すクリーチャーで、ダイレクトアタック。3ターン目の1枚ブレイクがなければ届かなかった、紙一重のリーサル。薄氷を踏むが如き不確定の勝ち筋。それが今、確かな形をもってきりよの目の前にある!
まずは《片翼の魂 アビスベル》の1枚ブレイク。トリガーはなし。続いて、《轟く邪道 レッドゾーン》のT・ブレイク。攻撃に反応し、《片翼の魂 アビスベル》が復活する。
撃ち抜かれた最後の守りを、りんすきは見つめ……笑顔と共に、きりよへと開く。それが、全国大会へと友人を送り出すはなむけとなった。WINNER:きりよ
きりよ「これしかなかったんよ~」
りんすき「いや、実は《ゲルエール=ゲール》スタートは無かったか……」
勝利の余韻もそこそこに、プレイの振り返りをはじめる両者。きっと調整中も、幾度も幾度もこうして言葉を交わしたのだろう。
りんすき「……ああ、別のブロックだったら!」
悔しさをこぼすりんすき。あと僅か、届かなかった。その事実がどれほど堪えるものか、知るのは本人だけだ。
だが、きっと。いや、間違いなく。りんすきの分まで、九州のプレイヤー全員の分まで背負って、きりよは全国大会へと旅立つはずだ。熱は託され、さらに熱く燃え上がる。だって、それが友達ってものだろう?
九州エリア予選Bブロック、優勝はきりよ!おめでとう!©ANYCOLOR, Inc.
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