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全国大会2025 関東エリア予選 決勝戦 Cブロック:プーさん。 vs. ムラカミハル

ライター:谷口 雄飛
撮影:堀川 優一

王道のデザイナーズデッキを信じるか、邪道のプレイヤーズデッキで己の道行きを信じるか。

これが2ブロックフォーマットによる戦いのテーマのうちのひとつだと筆者は思う。  今回の関東エリア代表決定戦の王道は間違いなく光水自然ゴルギーオージャーや火闇自然レッドゾーン、水闇火アビスといった、相性のいいカードを組み合わせれば自然と組み上がる、いわゆるデザイナーズデッキだっただろう。

 あらかじめ設定されたデッキの動きが保証されていて、全体のイメージも分かりやすく、ある程度デッキの完成形が決められている関係で自分好みのチューニングを施して数枚入れ替えたとしても、デッキの強度が落ちることはあまりない。それ故に王道の選択と言える。

 しかし、王道とは誰もがそれを信じることができる正統で定番なものであるということであり、一般化されたり研究され尽くしたりしている場合がほとんどである。

 だからこそ、一般的なものから脱却し、自分独自の考えを凝らして一からデッキを作り上げるプレイヤーもいた。筆者にはこれを「王道から外れた道だから」と邪道に括ることはとてもできない。

 当日の自分の相棒であるデッキを完成させるまでにどれほどの努力があったのだろう。

 デッキが完成形に行き着くまでにどれほど時間を使っただろう。

 時には知り合いに知恵を借りたり協力をお願いしたりもしただろうし、失敗もあったかもしれない。そして数多の試行錯誤の果てに完成した自分達だけの独自のデッキ。それは自分の最高の相棒である。

プレイヤーが己の相棒として共に戦うデッキを組み上げるとき、そこにも一つの物語がある。

 そしてそこにはもうデザイナーズだとかプレイヤーズもない。

 デザイナーズのデッキだとしても、リストが数枚違えばそれはテンプレートからかけ離れた独自のチューンであり、プレイヤーズデッキに近いものとなる。

 自分の信じる道を突き進み、工夫を凝らして、デッキを組み上げ選択し続けた。

 そんな厳しい戦いであるエリア代表決定戦に挑んだ全ての選手に敬意を表するほかない。

 そんなプレイヤーの努力による研究が進み、北海道エリアからメタゲームの様相に変化が生じた。

 メタゲームは回りはじめた。

 そんな熾烈な戦いが繰り広げられたデュエル・マスターズ全国大会2025も残すは決勝戦のみ。

 今回はCブロックのプーさん。ムラカミハルの模様をお送りする。


Game 1

 1人また1人と参加者が脱落していき、残ったプレイヤーの数も少なくなった静かな会場で2人の選手がフィーチャー卓に移動する。今回戦うのはプーさん。ムラカミハルの2人だ。

筆者 「今回、テキストカバレージを担当させて頂く谷口と申します。よろしくお願いします。」

ムラカミハル「あっ、はい。」(笑いながら)

プーさん。「知ってます。」(笑いながら)

 驚いて欲しかったところだが、実は両者ともに2ブロックのCSにも足を運ぶプレイヤー。というわけで2ブロックのCSがあるとだいたい会場にいる筆者のことも知っている、というわけである。

 ムラカミハルに関していえば、このエリア代表決定戦の1週間前の2ブロックCSで優勝しており、2023年下期のDMPランキング埼玉県部門では4位になったこともある。現在でも埼玉県を代表する実力者の1人だ。

 一方のプーさん。はCSで多数の優勝経験があり、アドバンスをメインにしながらも、いろんなフォーマットをプレイしているプレイヤーだ。昨年度のエリア代表決定戦では惜しくも本戦で敗退してしまったが、今回は調整メンバーとの練習の成果もあり、決勝戦までくることができた。

 大型大会の決勝戦ともなると、緊張などから会話が少なくなるのがよくあることなのだが、試合開始前の両者には会話があった。あまり面識はないようだったが、なんと2人とも埼玉県のプレイヤーなのだ。

 詳しく話を聞いていると、本拠地は川越方面と川口方面で別であるが、決勝戦を埼玉県のプレイヤーで占めていることには関係ない。今年は埼玉県から確実に関東代表として選手が送り出されることが確定している。

 どちらが埼玉県代表として全国大会に出場するのかを決める戦いという意味合いも含まれた決勝戦だが、そんなことは関係ない。あと1回勝てば全国大会。

 「勝ちたいから。」戦う動機なんてそれだけでいいのだ。

先攻:ムラカミハル  ムラカミハルの先攻でゲームは始まるが、ムラカミハルは2ターン目までをマナチャージで終えて、3ターン目に《~驚異的な矛盾~》を召喚。  このカードは今大会で《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》をはじめとした、攻撃することで強力な効果を使うことができるカードに対する対策カードとして、光水闇のカラーリングのデッキに搭載されることが多かったカードである。

 《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》に近い効果を持っていることで、ゴルギーオージャー側が1ターンに複数回クリーチャーを進化させて最後に《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》にしたとしても、そのターンの即時攻撃を止めることができる。

 そこに《真気楼と誠偽感の決断》を当てられるかどうかの心理戦が発生させることで、ゴルギーオージャー側はそのターンの勝利を諦めて《~驚異的な矛盾~》を除去してターンを終えるか、相手が《真気楼と誠偽感の決断》を持っていないと割り切った上でチェインコンボを行い、進化元を9枚下に入れた《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》を完成させた状態でターンを返すかの選択を迫ることができる。

 対するプーさん。のアクションは2ターン目《~時空の工兵~》召喚から。そして3ターン目に《~時空の工兵~》《~西方より来る激流の竜騎公~》にNEO進化させて手札を整える。カード3枚で構成されている進化元が用意され、《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》が発進する準備は整いつつある。

 相手の《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》が次のターンに召喚できるバトルゾーンになってしまったムラカミハル の4ターン目。一応《~驚異的な矛盾~》が場にいる状態だが、このターンはマナチャージのみで何もすることができない。《~驚異的な矛盾~》で牽制しているが、手札に有効打となるカードがないのだ。  そして迎えた プーさん。 の4ターン目。公開領域には1枚採用の《六番龍 シックスフォール Par滝》が駆けつけている。プレイ方針が間違っていないか確認してから《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》によるチェインが始まる。

プーさん。は4マナ目をマナチャージすると、まずは《観覧!ホールインランド・ヘラクレス》に進化。2ドロー。  そしてその上に進化、《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》。山札の上から5枚マナ加速し、マナからカードを2枚回収。そして4マナでその上に《観覧!ホールインランド・ヘラクレス》。2ドロー。マナが6枚回復。その上に《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》進化。

 今度は山札の上から7枚マナ加速し、《華謡の精霊カンツォーネ》《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》《一音の妖精》を回収。そしてすぐに《一音の妖精》、3枚目の《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》、と縦に進化クリーチャーが重なりつづける。

 そして最後に《六番龍 シックスフォール Par滝》を召喚。  《六番龍 シックスフォール Par滝》の効果で《六番龍 シックスフォール Par滝》《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》の構成元にする。これで超魂Xの効果により、《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》は相手のコスト8以下のカードの効果で相手に選ばれず、攻撃されない状態になった。

 このターンに勝ち切るところまではいけなかったが、プーさん。は「次のターンで特殊勝利だ」と言わんばかりにターンエンド。

プーさん。「ターン終ります。」

ムラカミハル「ターンもらいます…。」

プーさん。「よし、《真気楼と誠偽感の決断》なし!」

 直前のプーさん。のターンに行われた《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》によるカードチェイン唯一の裏目は、ムラカミハル《真気楼と誠偽感の決断》を2枚以上持っていた場合のみだった。

 《真気楼と誠偽感の決断》の手札交換効果で《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》が墓地に行き、そのまま墓地から《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》が実行されつつ、2枚目の《真気楼と誠偽感の決断》のシールド化で《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》が除去された時のみ、負けるプレイとなっていた。

 しかし、ムラカミハルは4ターン目までドローするカードを使っていないことに加えて《~驚異的な矛盾~》を場に出していて手札は少ない。ターン開始時のドロー数枚のうちに引く確率も低いのではないか。そういった情報から《真気楼と誠偽感の決断》はないと読み切ったのだと思われる。

 劣勢に立たされるムラカミハルだが、デッキにまだ解答となるカードはある。祈るようにドロー。

ムラカミハル「よしっ!」  引き当てたそのカードは、《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》

 マナチャージしたのちにすぐに唱え、能力を無視するコストの宣言が9。これで次のターンも《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》が特殊勝利条件を達成できない状態にして次への望みを繋ぐ。

 また勝てないターンが返ってきたプーさん。だが、前のターンにリソースは潤沢に伸びており、当然返しの手も持っていた。  そのカードは、《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》。今度は4が宣言され、次のムラカミハル《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》を唱えられない状態にする。

 そしてプーさん。はダメ押しの対策カードまで投入。《ソウルサンライト コハク》召喚から進化、《一音の妖精》

 これで相手のクリーチャーの召喚回数と呪文の使用回数をも制限。前のターンよりムラカミハルの行動を縛ってまたしても王手。手番を返す。

恐らく、ムラカミハルはドローするタイミングで悟っていたのだと思う。自分の選んだ40枚のデッキの中で、この状況を突破できる方法はないことを。

 《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》は相手の《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》で封じられている。
 《光開の精霊サイフォゲート》からの《閃光の精霊カンビアーレ》《一音の妖精》のせいで出来ない。
 《真気楼と誠偽感の決断》による除去も《六番龍 シックスフォール Par滝》の超魂Xにより選ばれなくなっていて不可能だ。

そして、ムラカミハルの手は震えていた。目の前の事実を受け入れるのが辛かった。

 何度手札を見ても、何度も盤面を見ても太刀打ちする手段はなかった。
 相手の場に鎮座している《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》を除去できれば自分の勝ちなのに。
 自分が最強だと信じたデッキと、自分の理論は正しいはずだったのに。

もう少しで全国大会に手が届いたはずなのに。

 ターンを返せばこの勝負に負けてしまうことが、分かっていた。逆転に繋げることのできる手は何もない。

 だけど、そんなムラカミハルは手札を見た。そこには今日1日、ともに戦い、ここまで付き従ってくれた、デッキのメインアタッカーであるスチーム・ナイトの姿があった。

 だから、ムラカミハルはそのカードに手をかけた。まだ自分のターンであり、クリーチャーを召喚できる自由がある。

 今日の自分がカードをプレイできる最後の機会に、王道から外れた自身の道のりをここまで共に戦ってくれた最高の騎士を場に送り出そう。そしてこの関東エリア代表決定戦の戦いの物語に、彼の名前を刻んでもらおう。

 歴史の歯車として蒸熱とともに戦場を駆けぬけ、書物に刻まれることを名誉とする騎士、スチーム・ナイトである自分の相棒に対して、これまでの感謝と愛を込めて。

 それが最高の騎士にむけて、ムラカミハルにできる最大限の敬意の表し方だった。

 かくして1体のクリーチャーがバトルゾーンに召喚され、この全国大会2025関東エリア代表決定戦での戦いの記録に名が刻まれた。《邪眼皇ロマノフI世》の物語を持ち、ムラカミハルをここまで連れてきてみせた、スチーム・ナイト。  その名は、《~邪眼帝~》。このエリア代表決定戦を戦ったプレイヤーの蒸熱は、確かなものとしてここに存在したのだ。

 できることを終えたムラカミハルはターンを終了した。そしてこの瞬間が事実上、1人の関東エリア代表が決まった瞬間でもあった。  プーさん。のターン。2ターンにわたり動かなかった《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》が動き出す。それは勝利むけての発進であると同時に、王道の道を突き進むプーさん。の全国大会への道のりにむけての発進でもあった。  この瞬間、埼玉県代表として、関東エリア代表決定戦から全国大会に挑戦するプレイヤーがプーさん。に決まった。

Winner:プーさん。

 試合が終わったあと、ムラカミハルは悔しい表情をしていた。あと一歩のところで負けてしまったので無理もない。

 しかし、そんな彼はしばらくしてから顔を上げて会場を後にした。また来年ここに戻ってくるために。今度こそ全国大会へ出場するために。ここからまた一年、彼は2ブロックを含めたデュエル・マスターズを続けていくに違いない。  そして見事優勝したプーさん。は、会場の外で待っていた2ブロック仲間と共に勝利を分かち合っていた。全国大会では彼と共に調整した仲間や、決勝戦を戦ったムラカミハルの想いも持っていってくれることだろう。 優勝おめでとう!プーさん。!関東エリア代表の1人として全国大会へ挑戦するのは君だ!

 プーさん。
 全国大会2025 関東エリア予選
 2ブロック構築
 35 クリーチャー
4 《ソウルサンライト コハク》
4 《一音の妖精》
3 《~時空の工兵~》
1 《昇カオスマントラ》
3 《PP-「P」》
2 《MATATA-美吾罪261》
4 《華謡の精霊カンツォーネ》
4 《観覧!ホールインランド・ヘラクレス》
1 《六番龍 シックスフォール Par滝》
3 《~西方より来る激流の竜騎公~》
2 《蒼神龍アナザー・ワールド》
4 《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》
 5 呪文その他
4 《超魂設計図》
1 《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》

 ムラカミハル
 全国大会2025 関東エリア予選
 2ブロック構築
 27 クリーチャー
4 《汽球男》
3 《~驚異的な矛盾~》
3 《~不死の黄昏司祭~》
4 《~世紀末の善悪~》
4 《~邪眼帝~》
4 《光開の精霊サイフォゲート》
3 《蒼神龍アナザー・ワールド》
2 《閃光の精霊カンビアーレ》
 13 呪文その他
4 《理想と平和の決断》
3 《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》
2 《深淵の逆転撃》
4 《真気楼と誠偽感の決断》

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