全国大会2025 関東エリア予選 決勝戦 Bブロック:表裏が見えないゆーき vs. TIGHT
ライター:原田 武(たけじょー)
撮影:坂井 郁弥
終着点は見えず、そもそもそんなものが存在するのかすら定かでない、果てなき旅。一筋縄ではいかないことばかり。それでも、プレイヤー達は歩き続ける。その目にはきっと、それぞれが見出した旅の理由が焼き付いているのだ。
デュエル・マスターズを旅になぞらえるのなら、TIGHTは古参の旅人にして、後に続く者の道標を築いた先駆者と言える。2016年より調整チームヘルペンタゴンの総監督として活動を開始。同コミュニティは数多くの強豪を繋ぎ、文化を育んだ。
2024年にGP2連続ベスト3入りを果たしたえむつー、ランキングを走りつつ情報発信も欠かさないのすけ、言わずと知れたライター神結など……名を挙げ始めると止まらない。結成10年が迫る今でも、その影響がいかに色濃いかが伺える。
実はこの関東エリア決勝Bブロックは、昨年ヘルペンタゴンの同朋・ハマチが辿り着き、そして惜しくも敗れた場だ。加えてTIGHTが2019年日本一決定戦への進出を決めたのも、関東エリア予選だった。実力によって導かれた巡り合い。この「あと一勝」には、多くの願いが重なっている。
対する表裏が見えないゆーきもまた、エリア予選の険しい道を踏破してこの席に辿り着いた。店舗予選に挑み始めたころ、相方に選んだのは【闇単XENARCH】だったという。手ごたえはあるが決め切れない日々が続く中、突如告げられた《死神覇王 ブラックXENARCH》の殿堂入り。彼は杖を失った。
その後継として組み上げたのが今大会でも使用する【光水闇トリガービート】だった。友人の着想をもとに0から組んだという新たな愛機には、しっかりと《死神覇王 ブラックXENARCH》が1枚採用されている。7度の挑戦の末、表裏が見えないゆーきは店舗予選を突破した。
そのデッキをもって彼はこの日全勝。予選順位1位、都合9-0というスコアで決勝に挑む。ここまでの道程の正しさは、結果が保証してくれている。完全証明に必要なラストピースは、「あと一勝」。
エリア予選、決勝。ここはひとつのゴールにして、新たな旅への始発点だ。積み重ねてきたモノに、勝利の栄光を飾るべく。二人の旅路が交錯する。
GAME
先攻:表裏が見えないゆーき先述のように、予選1位通過の表裏が見えないゆーきの先攻でゲーム開始。《~世紀末の善悪~》・《聖霊超王 H・アルカディアス》とチャージして2ターン目までを終える。
後手を取ったTIGHTは2ターン目《虚ト成リシ古ノ蛇神ノ咆哮》がファーストアクション。《~創造、破壊、そして絶望~》を捨てて手札を回す。こちらの使用デッキは【火水闇アビス】だ。ある程度構築に幅のあるデッキタイプだが、TIGHTは《片翼の魂 アビスベル》と《炎氷渦と鎮魂禍の決断》を両採用、火水闇の3色純正で固めている。
このまま3・4ターンと順にカードをプレイし、テンポを掴みたいTIGHT。【トリガービート】のビッグアクションは5マナ域から、その前に先手を打っておきたい。
だが、立ちはだかったのはあまりにも大きな壁だった。先攻3ターン目、表裏が見えないゆーきのプレイは《霊淵 ゴツンマ=ダンマ》。
「相手のカードはマナゾーンにタップして置かれる」。在りし日の《停滞の影タイム・トリッパー》同様、先手で着地したこのクリーチャーは対戦相手に1ターンの遅延を強いる。返すターン、TIGHTはプレイしたかったであろう《片翼の魂 アビスベル》をマナに埋めるのみ。この隙にと《~悪意の武器商人~》を召喚する表裏が見えないゆーき。回収は《真気楼と誠偽感の決断》1枚と枚数的なアドバンテージこそ大きくないが、5ターン目の手打ちをTIGHTに突き付ける。
TIGHT「ちょっと考えます」
小考の後、TIGHTはプランを決めた。まずは《邪心臓の魔法陣》をマナチャージ。これは当然タップして置かれるが、そのテキストで即座にアンタップ。《霊淵 ゴツンマ=ダンマ》をすり抜けて4マナを確保し、《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》を召喚する。ランダムに捨てさせた表裏が見えないゆーきの手札は《真気楼と誠偽感の決断》。効果で墓地を5枚増やす。これでTIGHTの墓地は7枚。相手のプランを最低限乱しつつ、《炎氷渦と鎮魂禍の決断》のお膳立てが整った。
墓地には《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》・《至高の邪騎 スベルニル》が揃っており、火力は十分。そしてTIGHTの手には《炎氷渦と鎮魂禍の決断》がしっかりと握られていた。あと1ターンを凌げば、流れは変えられる。逆転を予告される形となった表裏が見えないゆーき。しかし彼の表情は崩れることなく、プレイにも淀みはない。ターンドロー後、すぐさまTIGHTの手札枚数を確認。「4枚」と返答が帰って来るが早いか、5マナをタップ。
召喚《~世紀末の善悪~》!
その効果で3ドローの後2枚カードを捨て、TIGHTの手札からランダムに2枚を捨てさせる。ここで《炎氷渦と鎮魂禍の決断》が落ちる可能性は50%。墓地に置かれたのは《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》と――《炎氷渦と鎮魂禍の決断》。TIGHTの表情がはじめて歪んだ。
あまつさえ表裏が見えないゆーきは《~世紀末の善悪~》効果で捨てさせた《炎氷渦と鎮魂禍の決断》を唱え、手札戻し+手札破壊モードを2回選択する。これでTIGHTの場は空、手札は残り1枚。ターンこそ返ってきたものの、《片翼の魂 アビスベル》召喚のみで手番を終える。
そして、ここから表裏が見えないゆーきのプレイはさらに加速する。《~不死の黄昏司祭~》を設置して《片翼の魂 アビスベル》をタップし、ハイパー化した《霊淵 ゴツンマ=ダンマ》でこれを戦闘破壊しつつ手札破壊。TIGHT、ついに手札0。それでも、とトップデックに望みをかけるTIGHT。展開の要《至高の邪騎 スベルニル》を引き当てるが……盤面を確認し、声にならぬ声を漏らす。
《~不死の黄昏司祭~》だ。《至高の邪騎 スベルニル》→《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》→《至高の邪騎 スベルニル》と展開するのが【火水闇アビス】の王道ルートなのだが、その過程で《至高の魂 アビスベル=ジャシン帝》が手札を捨ててドローすると、《~不死の黄昏司祭~》のタップ効果が発動。どうあっても攻め切れない。結局《トートロット=シャルロット》を復活させ《~不死の黄昏司祭~》こそ討ち取るものの、表裏が見えないゆーきにはもう決着の形が見えている。《真気楼と誠偽感の決断》からの《光開の精霊サイフォゲート》、降り立つは《聖霊超王 H・アルカディアス》。
《炎氷渦と鎮魂禍の決断》がシャットアウトされれば、最早憂いはない。最後は《~邪眼帝~》《~邪眼帝 PARTⅡ~》まで並べての一斉攻撃でゲームセット。表裏が見えないゆーきの旅路に、新たな勝利の1ページが書き加えられた。
Winner: 表裏が見えないゆーき予選で勝ち続けて得た先攻。1手の時間を稼ぐ《霊淵 ゴツンマ=ダンマ》。その時間差をアドバンテージ差に変換する《~世紀末の善悪~》。チェックメイトを言い渡した《~不死の黄昏司祭~》と《聖霊超王 H・アルカディアス》。
表裏が見えないゆーきのプレイは着実だった。それは言わずもがな、彼自身に蓄積された経験によるものだろう。彼の辿った旅路が、その力になったのだ。
そしてそれは、惜しくも敗れたTIGHTにとっても同じことだ。長い戦いの中で、多くの勝利と歓喜があり、多くの敗北と無念があった。その全てを推し量ることはできないが、この日の悔しさもまた、彼の糧となるはずだ。きっとまた次の舞台で、仲間たちと共にデュエマをするTIGHTの姿が見られるに違いない。
闘い続けることに、果てはない。終着点も見えない。だが次なる目的地点は定まった。3か月後に迫る全国大会に向け、表裏が見えないゆーきは新たな一歩を踏み出す。その足跡からどんな物語が生まれていくのか、今から心待ちにしたい。
関東エリア予選Bブロック、優勝は表裏が見えないゆーき!おめでとう!©ANYCOLOR, Inc.
TM and © 2025, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY










