デュエル・マスターズ

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DMGP8th DAY1 準決勝:おんそく vs. ぴな

 この瞬間しか、得られないものがある。

 デュエル・マスターズを嗜むプレイヤーたちの多くが、焦がれてやまないもの。

 それを手に入れるためなら如何なる労力をも払うことを厭わず、また如何なる困難に対してであろうとも立ち向かう気にさせるもの。

 3,000人近くの参加者たちがそれを得ることを欲して戦い、けれども祈り届かず散っていったもの。

 その輝きを求めて、彼らはここまで勝ち抜いてきたのだ。

 彼ら。おんそくぴな

 2人は互いに40枚のデッキと、12枚の超GRをそれぞれシャッフルする。

 その最中、おんそくがぴなのデッキをこぼしかける一幕があった。

おんそく「あっ……危ない。すみません」

ぴな「いえ、僕も緊張してるんでこぼしそうですわ」

おんそく「このへんになると、さすがにちょっと緊張しますよね」

ぴな「そうですね、こういう大舞台に立ったことが一切ないんで……」

 20172018と2度の日本一決定戦への出場経験のあるおんそくといえど、「グランプリの準決勝」という空気感はべっとりとした確かな粘度を持って、身体に重くのしかかっているようだった。

 ならば、ぴなの緊張はそれ以上だろう……何せここで勝てば日本一決定戦の出場権利が得られることはもちろん、優勝トロフィーをかけた決勝戦へと進む資格を、手にすることとなるからだ。

 おんそくは「目標のタイトルの一つ」と言った。

 ぴなは「夢」だと語った。

 そんな価値あるタイトルが今や、あとたったの2勝という手の届くところにある。

 だがそのためには。目の前の対戦相手を、ここで倒さなければならない。

 おんそくの右手が、シャッフルの終わった自らのデッキにかかる。

 そのデッキを、シャッフル後の左右のズレを直すためであろうか、底面を見ないようにしつつ大ぶりな動作で左手側へと移動させ……ドン、ドン、と2度、プレイマットを傷つけないようにしつつ、しかし、しっかりと力を込めて押しつけた。

 そう…… それはさながらまるで、魂を込めるかのように。

 デュエル・マスターズグランプリ8th、準決勝。

 魂のかかった一戦が、いま幕を開けた。

Game 1

先攻:ぴな

 先攻はジャンケンで勝ったぴな。《♪仰ぎ見よ閃光の奇跡》チャージに対して《罠の超人》チャージという静かな立ち上がりだが、2ターン目には一転《ナゾの光・リリアング》チャージから、《ナゾの光・リリアング》《ヘブンズ・フォース》《グレイト“S-駆”》×2という手札を使いきっての大展開を見せる。

おんそく「ここでいいですか?」
 だが、1体目の《グレイト“S-駆”》の攻撃が《KAMASE-BURN!》を踏み抜く!《煌銀河 サヴァクティス》がGR召喚されると、バトル効果で2体目の《グレイト“S-駆”》が処理されてしまう。さすがのぴなもここからの攻撃はオーバーリスクと判断し、《ナゾの光・リリアング》は攻撃させずにターンを返す。

 それでも返すおんそくは《罠の超人》をチャージすると、《幻緑の双月/母なる星域》《》を追加でマナゾーンに置きつつ《煌銀河 サヴァクティス》で1体目の《グレイト“S-駆”》に殴り返し、ぴなのクリーチャーを《ナゾの光・リリアング》1体のみにまで追い込む。

 この時点で既にぴなは手札を使いきっており、制圧は時間の問題かと思われた。

 しかし、魂が込められているのはおんそくのデッキだけではない。返すぴなのドローは、思いに応える《“轟轟轟”ブランド》 マナに火文明のカードはないため追加の1ドローはできないものの、おんそくに対して楽な展開を許さない。

ぴな「……マナ見せてもらっていいですか?」

 とはいえ、ぴなもただ何も考えずシールドを割りにいくわけにもいかない。何せ火自然という殴りデッキのカラーリングでありながら、現時点でおんそくのデッキからは《KAMASE-BURN!》《罠の超人》《》3種類ものS・トリガーが見えているのだ。

ぴな「ちょっと考えさせてください……手札は、今3枚ですか?」

おんそく「3枚です」

 迂闊にアタックすれば、カウンターで一気に詰められる可能性もある。それにぴなにはもう一つの懸念材料があった。《煌銀河 サヴァクティス》……マナコストが5であるこのカードを放置することは、将来的に瑕疵になりうる。
 意を決したぴなは《“轟轟轟”ブランド》《煌銀河 サヴァクティス》を処理しつつ、《ナゾの光・リリアング》でシールドブレイク。これが通り、おんそくのシールドを残り3枚としてターンを返す。

 そして、それが「おんそく劇場」の開演の合図となった。

 《KAMASE-BURN!》をチャージすると、《》を捨てながら《“必駆”蛮触礼亞》。出てきたのは……なんと《印鑑D》!!
ぴな「テキストいいですか?……はい、バトル対象どうぞ」

おんそく「バトル対象は……まず《“轟轟轟”ブランド》で」

 さらにおんそく劇場は終わらない。《印鑑D》でアタックするとき、《革命類侵略目 パラスキング》へと「侵略」!!
おんそく「手札が0枚なんで『侵略』後アンタップ、2ドローもらいます」

 そして《革命類侵略目 パラスキング》がT・ブレイク。S・トリガーは……ない!

 おんそくはわずかに手を震わせながら《革命類侵略目 パラスキング》をアタックに向かわせる。脇には≪幻緑の双月≫もいるため、この攻撃が通ればそのままダイレクトアタックまで貫通だ。

 続けて2枚ブレイク。ぴなが2枚を確認し……そのうちの1枚を、公開する。
 《♪正義の意志にひれ伏せ》

 ≪幻緑の双月≫をタップしてジャスキルを逃れつつ、《予知 TE-20》がGR召喚。登場時効果で山札の上を確認するぴな。

ぴな「下で」

 そしてエンド時には《“必駆”蛮触礼亞》の効果で《革命類侵略目 パラスキング》も墓地に落ち、おんそくのシールドが3枚、バトルゾーンに何もない状態でぴなにターンが返る。既に《ナゾの光・リリアング》《予知 TE-20》がいるため、スピードアタッカーで追加の2打点を組めればジャスキルが狙えるという状況だ。

 シールド5枚が一気に手札に加わったぴなは……しかし、《音奏 プーンギ》を出しながら≪幻緑の双月≫を殴り返すことしかできない。

 アンタップ。

 祈るようにドローするおんそく。

おんそく「……しぃっ!」

 《罠の超人》チャージ、≪幻緑の双月≫《“轟轟轟”ブランド》

ぴな「……もらいました」

 《印鑑D》がもたらした2枚の手札は、《罠の超人》《“轟轟轟”ブランド》だった。消費できる手札をきっちり引き込んだおんそくがギリギリの勝負を差しきり、まずは1本目を先取する。

おんそく 1-0 ぴな


 ドン、ドン、と。

 おんそくは気合を入れ直すように、再び力のこもった大げさな素振りでデッキを置きなおす。

 それは逸る心をリセットして落ち着けるための、おんそくの儀式なのかもしれなかった。

 なぜなら、きっとそうせざるをえないほど。

 おんそくの魂は今までになく、熱く滾っているだろうからだ。


Game 2

先攻:ぴな

ぴな「負け先もらいます」

 言いながら手札を開いたぴなが、少し苦い顔をする。それもそのはず、手札は赤一色。やむなく《行燈どろん》チャージでターンを返す。おんそくも《》チャージのみ。

 2ターン目も《“轟轟轟”ブランド》チャージと《“必駆”蛮触礼亞》チャージのみで回り……そして3ターン目。ぴなが苦しげに置いたマナチャージは、2枚目の《“轟轟轟”ブランド》。そしてそのまま、ターンエンド。

 事故っている。おんそくの目から見ても明らかすぎる、ぴなの失態。だがこの時、おんそくもまた十分系からは程遠い手格好だった。《龍装者 バルチュリス》チャージで終了……互いにS・トリガーを限界まで積んでいるからこそ起こりうる濁り。されど、これもまたデュエル・マスターズなのだ。

 先に動いたのは、やはりぴなだった。
 ようやく引き込んだ光マナ=《音奏 プーンギ》をチャージすると、《ヘブンズ・フォース》≪ゴリガン砕車 ゴルドーザ≫《グレイト“S-駆”》《“轟轟轟”ブランド》

 4ターン目にようやくとはいえ、あっという間に5打点を形成。まずは《グレイト“S-駆”》で1点……通る。≪ゴリガン砕車 ゴルドーザ≫で1点……通る。《“轟轟轟”ブランド》で2点。

 S・トリガー……《マン・オブ・すて~る》《罠の超人》!!
 《マン・オブ・すて~る》《ドドド・ドーピードープ》をGR召喚しながら≪ゴリガン砕車 ゴルドーザ≫を、《罠の超人》《“轟轟轟”ブランド》をそれぞれマナ送りにすると、残りシールド1枚でおんそくの反撃が始まる。

 すなわち、《KAMASE-BURN!》をチャージから≪幻緑の双月≫を出すと、《龍装者 バルチュリス》をマナゾーンへ。そして《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を捨てながらの《“必駆”蛮触礼亞》《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を出し、《グレイト“S-駆”》とバトル。ぴなのバトルゾーンを更地にしつつ、2点アタックに向かわせる。

 だがぴなもさるもの、ここで意趣返しとばかりにS・トリガー=《行燈どろん》×2!≪幻緑の双月≫《罠の超人》を処理しつつ、《予知 TE-20》《ドドド・ドーピードープ》をGR召喚する。

 しかし、おんそくにはまだ《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の破壊時効果による追加ターンがあった。そしてその1ターンが、勝負の明暗を分けた。

 おんそくが6マナから繰り出したのは《印鑑D》、そして《“轟轟轟”ブランド》
 《“轟轟轟”ブランド》の登場時効果が《予知 TE-20》を破壊すると、さらに《印鑑D》がアタック、アンタップ+2ドロー。S・トリガーは、ない。

 さらに《ドドド・ドーピードープ》で攻撃時、手札を2枚捨てる。これでおんそくの手札は再び0枚となり、《印鑑D》はなおも2度のアタックが可能となる。

 勝負の行方は、ぴなの2枚のシールドに《印鑑D》《“轟轟轟”ブランド》の両方を排除できるS・トリガーがあるかどうかにかかっていた……すなわち、S・トリガー2枚もしくは《♪仰ぎ見よ閃光の奇跡》要求。ぴなはゆっくりと2枚のシールドを確認する。

 この瞬間しか、得られないものがあった。

 そう、それは存在の印。価値ある存在証明だ。

 おんそくは自らの存在の証を、この一撃に乗せた。

 そして。

ぴな「……ありません」

 魂が込められたおんそくの《印鑑D》が、己が存在の印影を歴史に刻み付けたのだった。

おんそく 2-0 ぴな


ぴな「……きっつい! 完敗ですわ」

おんそく「環境きっちり見て組んだつもりだったんで。友達に感謝ですわ」
 対戦を終えたおんそくは、この準決勝の席に着いてから初めての満面の笑みを浮かべた。

 何といってもここでの勝利は、3年連続での日本一決定戦出場を決めたことをも意味しているのだ。

おんそく「またあいつらと戦いたいですね。絶対あいつら、今年も出てくると思うんで」

 2017年のジャッジエリア予選優勝、2018年のDMPランキング上位入賞に続き、おんそくはまた一つ壁を越えた。

 残る壁は、あと一つだけだ。

Winner:おんそく
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