DMGP8th DAY2 決勝第1回戦:弥生町(千葉) vs. セキボン(北海道)
関西の超強豪、ギラサキの優勝で終えた全国大会2018から1ヶ月が経った。
彼の調整を手伝った関西勢や、上位を占めた関東勢にスポットライトが当たる中…
光の陰には闇があり。
その裏で苦杯を嘗めたプレイヤーも数知れず存在する。
ここに座る弥生町はまさしくその1人だ。
『赤黒ドルマゲドン』、『赤白《“轟轟轟”ブランド》』の名手として知られる彼は2018年度、関東エリア予選を突破して全国大会に出場。
…したものの、2ブロックで行われる予選3回戦で1-2。この時点でオポネントの関係上、早々と予選突破が難しくなってしまった過去を持つ。
後半戦で3-0最終戦績は4-2だが…決勝の舞台には立てなかった。全国の頂点に立つ権利はこの時点で奪われてしまった。
この雪辱を晴らすためには、もう1度あの舞台に立つしかない。
その対面に座るのは、全国大会で戦う権利を目の前で逃した男…セキボンだ。
北海道を拠点とする彼だが、「2倍ポイントのCSで複数回優勝すればDMPランキングで全国大会の参加権利を得ることができる」という僅かな望みに賭け、1月は毎週末本州のCSに遠征したとんでもない男だ。
彼が多額の旅費を積んででもそうした背景には確かな勝算があった。それはこの時彼が得意としていた『白ゼロサバキZ』にある。
調整グループ「マラかっち」内で◆ドラえもんと構築・プレイを練り上げたこのデッキ、初見での対応のしにくさから大会勝率が非常に高い。1月中に2回の優勝は決して夢物語ではなかったのだ。
しかし、届かなかった。相性最悪の『青単ムートピア』の隆盛など不運が重なり、結局招待枠単位で数えれば13位。
その前年度も超CSで2位入賞したときのポイントを生かして全国を目指したが届かなかった。セキボンにとって全国大会の参加権利は非常に高いハードルとなっていた。
これを乗り越えるためには、3度目の正直を成し遂げるしかない。
予選突破を成し遂げた彼らにとって、それは少しずつ近づいてきている。
DMGP8thからは3位以上に全国大会の出場権が与えられる。そのためには…1回戦から強豪同士の対決になったとしても、負けるわけにはいかないのだ。
彼らにとって懸かっているものはこの日の頂点だけじゃない。
来年3月に控える最高の舞台…そこに駆け上がるため、まずは目の前の対戦相手と向かい合う。
さあ、長い長い決勝トーナメントの幕開けだ。
先攻:弥生町
先攻弥生町が《ヤッタレマン》、後攻セキボンが《憤怒スル破面ノ裁キ》とお互い上々の立ち上がり。
弥生町は3ターン目に《ポクチンちん》を出して《煌メク聖戦 絶十》を牽制しつつ、クリーチャーを並べる。
対するセキボンは《剣参ノ裁キ》を撃ち…「少し考えます」と悩み始める。
熟考の末《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を回収、シールドは同じ場所へ貼り付ける。
セキボンはここまでで《集結ノ正裁Z》を3枚マナゾーンに埋めている。少しきついハンドキープになっているのか、逆に決めきる算段がすでに立っているのか…
弥生町は《ジョット・ガン・ジョラゴン》をセットし…ターンエンド。
《ガヨウ神》を引けない展開、今後のリソース不足は必至となる苦しい立ち回りを強いられる。
それを受けて余裕ができたセキボンは考える。《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》で一呼吸置くか、すぐさま仕掛けるか…
その答えはGo。
《転生ノ正裁Z》で表向きになったシールドを爆発させ…2枚を捨ててサバキZ、《煌メク聖戦 絶十》《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》!!
まずは《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》の効果で《ポクチンちん》をシールドに磔に。その制限能力を解いてから《煌メク聖戦 絶十》を着地させることに成功。
そのまま軽減能力を使って《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》。今後のリソースを確保する。
……単刀直入に言うと、ここまでのセキボンのプレイはかなりの悪手だった。
真横で試合を見ていた調整相手の◆ドラえもんはこう言う。
「《ガヨウ神》が出せてないジョーカーズ相手に急ぐ理由は1つもなく、こちらもリソースカードを挟んで動くことで動きの安定性出すことが重要です。
あのタイミングで仕掛けてもガス欠にしかならないのだから、4ターン目は《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》のみプレイが明確に正解でした。
そもそも《集結ノ正裁Z》を3枚全部埋めてるのがおかしいのですが…」
セキボンとて半年『サバキZ』を使い続けた日本屈指の名手だ。普段の彼ならノータイムで《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》を出しているはず。
これを招くのが2日間続いたGPの疲労、そして全国の権利を賭けた緊張。普段通りのプレイをしろと言われても非常に難しいのが、DMGP決勝トーナメントという舞台なのだ。
遅れて《ガヨウ神》に辿り着き、余った1マナで《ヤッタレマン》を追加した弥生町に対して、セキボンはここから苦しい立ち回りを強いられる。
とはいえ《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》がある分今後のリソースに困ってはいないはずだが…
そのプレイは≪音奏 ハイオリーダ≫から《バツトラの父》。
これで手札は1枚。裁きの紋章から入らなかったということは…その手札に有効牌は0!!
先ほど◆ドラえもんの指摘の通り、ここでガス欠。
機能しない《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》《煌メク聖戦 絶十》を目の前にした弥生町、相手の手札が0ということもあり余裕をもって仕掛けることができる。
ノーチャージ《ジョジョジョ・ジョーカーズ》で《ガヨウ神》を加え、《パーリ騎士》追加から《ガヨウ神》をキャスト。
最後に余った1マナは《ジョジョジョ・ジョーカーズ》に回す。《パーリ騎士》を回収してエンド。
さあ、セキボンのトップデックからは…紋章は来ず。《》チャージから≪音奏 ハイオリーダ≫を追加し《バツトラの父》《防護の意志 ランジェス》が並び…ついに手札は0。
盤面は広がるが何もできない。まだまだ余裕がある弥生町は《パーリ騎士》から3枚目の《ガヨウ神》、《ヤッタレマン》追加も追加しエンド。
さあ、もう潮時だろう。ターンを回せば概ね《ジョット・ガン・ジョラゴン》が2体突っ込んでくる。
己の悪手が招いた状況とはいえ、半年を共にした『白ゼロサバキZ』がここで裏切るわけがない。
半笑いで振りかぶり…捧げたのは、祈りだった。
セキボン「頼む頼む頼む………」
セキボン「ああ~~~~!!!」
半年を共に連れ添った伴侶は、いとも簡単にセキボンを裏切った。
そのデッキトップは《煌メク聖戦 絶十》。追加したデッキトップは…「今じゃねーだろおおおおお」の悲痛な叫びとともに捲られた《トライガード・チャージャー》。
だが、超GRゾーンだけはセキボンを見放さなかった。
2枚の≪音奏ハイオリーダ≫効果誘発、捲られたのは…《煌銀河 サヴァクティス》2枚!!
超天フィーバーは発動済み、これにより一気に4打点と2体のブロッカーを獲得。埋め尽くされた盤面とともにターンが返れば勝てる盤面を形成。
できることはやった。概ね負けてしまうだろうが…祈りを込めて弥生町にターンを渡す。
だがこのとき、弥生町の手札にもアクシデントが発生していた。
なんとその手札に…《ジョット・ガン・ジョラゴン》が1枚もないのだ。
とはいえ《ガヨウ神》を3回出し《ジョジョジョ・ジョーカーズ》を2回撃ったその山札、中身は概ね把握している。
まずは3軽減、≪キング・ザ・スロットン7≫から≪キング・ザ・スロットン7≫を捲り、1枚目の《ジョット・ガン・ジョラゴン》に辿り着く。
さらに余ったマナから≪キング・ザ・スロットン7≫を出し……
ここで弥生町、難易度が高かったとはいえ…あまりに致命的なミス。
弥生町「山札の順番、覚え間違えてたんですよね……」
捲った3枚の中には…《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》!?
そう、1周して把握していたはずの山札の順番を間違え…本来もっと展開できるはずだった場面で《ジョット・ガン・ジョラゴン》1体のみの展開になってしまったのだ。
このままターンを渡しても≪音奏ハイオリーダ≫による超展開に押し潰されてしまうと悟った弥生町、仕方なく《ジョット・ガン・ジョラゴン》の攻撃で《アイアン・マンハッタン》を射出し4枚ブレイク。
サバキZは《煌メク聖戦 絶十》のみ。《ジョット・ガン・ジョラゴン》で《バイナラドア》を捨て≪音奏 ハイオリーダ≫を処理。
《煌メク聖戦 絶十》の効果でシールド追加、《The ジョラゴンGS》をGR召喚して攻撃を《バツトラの父》で止める。
≪キング・ザ・スロットン7≫の攻撃も《バツトラの父》で止める。
そして…打点での突破が不可能と判断し、ターンエンド。
つまり、《煌銀河 サヴァクティス》の召喚酔いが解け、セキボンに逆転のチャンスが回ってくることを意味する。
《アイアン・マンハッタン》で手札を抱えたセキボン、今まで眠っていた《煌メク聖戦 絶十》《超煌ノ裁キ ダイヤモン将》が動き出す。
《剣参ノ裁キ》で《煌龍 サッヴァーク》を回収し、≪音奏 ハイオリーダ≫効果で《マシンガン・トーク》を盤面に。そこから《トライガード・チャージャー》を絡めた一連の流れでGRクリーチャーで盤面を埋め尽くし《煌龍 サッヴァーク》までの道を作る……
ことができなかった。お互いに《アイアン・マンハッタン》の効果を忘れており、途中でジャッジの注意が入る。
しまったといった顔で苦笑いするセキボン…だが、ここで目指していたのは《煌龍 サッヴァーク》の擁立だけではなかった。
探していたのは…この過剰打点をより強固なものにする《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!!
《煌銀河 サヴァクティス》2体と《The ジョラゴンGS》がこれを絡めて弥生町に襲い掛かる!!
すでに≪7777777≫を展開のためにクリーチャー面で3体盤面に並べた弥生町。
つまり…彼のデッキの中にはこれを止める手段が残されていないのだった。
Winner:セキボン
試合とインタビューが終わり、セキボンは調整仲間と合流。
彼を待っていたのはベスト64進出に対する労いの言葉……
そんなものはない。そこにあったのは罵詈雑言の嵐だった。
「緊張しすぎ!!」
「《ガヨウ神》出せてないジョーカーズ相手になんでそんな苦戦してんだよ!!」
「何ヶ月サバキZ使ってきたんだよ!!!」
そこにあったのは調整チーム「マラかっち」、例えベスト64だろうがミスして勝ったメンバーに人権はない。
当然それはセキボン自身が分かっていること。ここで気持ちを入れ替える。
セキボン「OK、またひとつ賢くなった」
同時にまたひとつ、全国への階段を登っていく。
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