DMGP8th DAY2:プレイヤーインタビュー ZweiLance選手
2日連続で開催され、延べ6,000人以上が来場する前代未聞のイベントとなったGP8th。優勝を狙って集まった選手の中には、登録者数4.8万人のYoutubeチャンネル“FairyProject”を立ち上げたZweiLanceもいた。
昨シーズン、GP7thの準決勝でギラサキに惜敗するも全国大会での再戦を誓い、直後の南東北エリア予選で優勝。そして迎えた全国大会では、ギラサキとの再戦こそ成らなかったもののTop8入賞を果たし、名実ともにトッププレイヤーの1人としてその名を知らしめた人物である。
そんな彼は、昨秋に勤め先を退社し専業Youtuberに転身を果たした。と同時にカーナベル株式会社とのスポンサード契約を発表し、話題を呼んだのは記憶に新しい。
満を持して大きなチャレンジに踏み切ったZweiLanceだが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。DM史にその名を刻まんとする、彼の物語を聞いた。
・活動地域:北海道→宮城県
・公式戦績:GP7th 3位、2018年度南東北エリア予選優勝、2018年度全国大会Top8、2018年度DMPランキング8位
・所属:カーナベル株式会社
・その他:Youtuber“FairyProject”としても活動
北海道生まれのZweiLanceがデュエル・マスターズを始めたのは小学生時代、2005年のこと。その名の由来、《クリスタル・ツヴァイランサー》が収録された転生編からだ。
しかし、“試される大地”でカードゲームを続けるのは容易ではない。転機は、2013年に訪れた。
「2013年に、大学進学に伴って札幌に移ったんです。そこでセキボンさんに誘われ、初めてCSに出ることになりました」
とは言っても、北海道で初めて開催されたCSは、2015年の第1回北海道CS。当時はまだ、道内のCSはない。
「参加したのは、宮城県で2日連続開催されていた第4回仙台CS、おやつCS 2013 Summer東北。8月11日、12日ですか。フェリーで行きました。
船の中って、電波が入らないんですよ。だから、ずっとデュエル・マスターズで遊んでいました。調整環境としては最適でしたね」
札幌から仙台までは、陸路であれば800km。最も近いCSでそれなのだから、彼にとってどれだけ競技シーンが縁遠い存在だったかが窺い知れる。
だが驚くべきことに、ZweiLanceは距離の遠さを厭わなかった。
嬉しかったのだ。同じゲームで遊ぶ相手がいる、たったそれだけの事実が本当に嬉しかった。もう遊び相手には困らない。CSに行けばいい。
フェリーに飛行機。東北、関東、関西。
魅入られたように遠征を繰り返すZweiLanceの交友関係は、徐々に広がった。関東を中心として活動していた調整チーム『Heaven's Dice』の面々と親しくなり、チームへ加入もした。
時が経つにつれ、北海道のCS事情も改善されていった。背景にはタカラトミーによるCSサポートが始まったこと、それに伴って盛り上がったコミュニティの空気が道内の競技プレイヤー増加に貢献したことがあるだろう。
2018年の北海道のイベント数は、47都道府県中7位。東京、大阪などの大都市にはまだ及ばないものの、彼が遠征を始めた頃とは段違いだ。
「みついさんがCSを開催し始めてから変わったな、と思います。2016年ごろからですね。
現在、みついさんは月に4回、CSを開いてくださっています。サポート店舗は、カードショップみついさんとバトロコ札幌狸小路店さん。
悩ましいのは、そこまでしていただいても月8回に届かないこと。ランキングの上位勢は、毎週土日は必ずCSに出ています。北海道勢が追いつこうと思ったら、遠征せざるを得ません。
でも遠方で土、日とCSに出ると、必然的に金、月は移動時間になる。仕事があると難しいんです。海外遠征に近い状態なんですよ」
広大な北海道の大地に、今のイベント数はあまりにも少ない。だが熱い気持ちを持った選手はたくさんいると、ZweiLanceは語る。
「takiさんや、昨年のランキングでの全国招待圏内にあと一歩と迫ったセキボンさんなんかは既に知られていますよね。
他にも、スポットライトを当てられてはいないけれど、注目されて欲しい人たちがまだまだいる。彼らが実力を発揮できる機会がもっと増えて欲しい。
昔を思えば現状でも十分ありがたいんですけれど。本当にCSは増えたと感じます」
もっともZweiLanceは、道内のCS増加の恩恵にあずかってはいない。2018年、就職を機に仙台へと引っ越したからだ。
先駆けとなったのは、FairyProjectの動画に度々出演しているあー/中村らが立ち上げた、2010年の第1回仙台CS。以来、カードショップおやつのじかんによるおやつCS東北や、ビルダーとしても知られるちゃまらが運営した福島CSなど数々のイベントが開催された。
現在では、主にカードショップシーガルの系列店舗が各地でCSを主催し、東北の熱気を保っている。
「ランキング上位を狙うなら、ホームと呼べる場所が必要です。
東北ではシーガルさんが頑張ってくださっていて、普段はそこのCSに参加しています。ポイントの7割は東北で稼いで、大型イベントを狙って他地域へ遠征するイメージですね」
東北には、ランキングの上位を狙うプレイヤーや、全国的に名を知られたプレイヤーが多数いる。
「ペン山さん、鳶沢さん、八神さんたちは上位を狙っていますよ。P-90さんやchaserさんも、ストイックに努力されています。
ビルダーとしてすごいのはちゃまさん。あまりCSには出場されてないですが、有名ですよね。
一方で、学生プレイヤーの多い地域という印象もあります。そのせいか、遠征するプレイヤーは多くありません」
「2018年度の全国大会では悔しい思いをしました。今年もランキングのポイントを稼ぎつつ公式大会に出場し、まずは全国大会への出場権獲得を狙います!
最終的に10位以内に入るためには、シーズン中は上位30位以内にいることが大事。今の順位は当てになりません、ずっとCSに出続けたプレイヤーが勝つんです。
途中で全国大会の権利を取れたとしても、GPなどで2byeが付与される程度にはランキングを頑張る予定です。大会が始まる前から他人の方が有利だなんて、嫌ですから」
昨年の秋、勤め先を退職。そしてカーナベル株式会社とのプロ契約を発表し、FairyProjectを本業にすると宣言した。
ランキング上位を狙うからと言って、動画投稿を滞らせるようなことはしない。
「CSっていう場が大好きなんですよね。ついつい時間を割いて出てしまう。でも動画だって手を抜けない。楽しみにしてくださっている視聴者の方々がいますから。
だから、今はPCを背負って遠征しています。負けたら早めにホテルへ戻って編集作業。ようやく本業にできたことですし、今年はフェアプロにも全力投球ですよ!」
もはや、本業も趣味もデュエル・マスターズと言ってしまって良いほどこのゲームに打ち込んでいるZweiLance。
彼は何を求め、何を目指して活動しているのか。最後にそう問うと、真っ直ぐな答えが返ってきた。
「プロが増えてほしい。そうなることで、もっと競技シーンにプレイヤーが集まって欲しいんです。そのために、カーナベルさんと一緒に招待制の大会を開催しようかと考えています。最終的には、プロリーグを設立できるレベルまで盛り上がって欲しい。
自分には、業界に貢献したいという思いがあるんです。先に進むために何ができるか、常に考えています」
だから、と彼は言う。
「出来れば、なんですけれど……CSサポートの倍率上限を変えて欲しいです。現状は200人以上なら一律でポイント4倍ですが、これだと定員200人強ないしそれ以上のイベントを開催する意味がない。
今なら既存のものより大規模なCSを開催できるでしょうし、制度の壁を超えさせて欲しいんです」
この回答には、いちプレイヤーにとどまろうとしない彼の意思が込められている。
かつて、CSはプレイヤーが開くものだった。歳を重ね、経済的な余裕を持てるようになった人間が、後進のために運営に回る。決して利益の出るものではなく、むしろ赤字運営の大会が多かったが、彼らはコミュニティへの感謝の意も含めてCSを開催していた。
プレイヤーもイベントも、さほど多くない時代。遠征は珍しくなかった。必然、社会人になり時間的な余裕を失うと、競技シーンからは遠ざかっていく。
ここ数年で状況は変わった。CSサポートをきっかけとして、多くのカードショップがCSを主催するようになった。
公式側のサポートにより、プレイヤーは遊ぶ場所の心配をする必要が薄れた。大都市圏では、CSに出るだけならもう遠征は必要ない。ZweiLanceのように、社会人になってもプレイヤーとして活動を継続するユーザーが増えてきている。
そんな現状を踏まえてなお、ZweiLanceは業界に貢献したいと言う。与えられた恩恵に満足するのではなく、それをより広く分かち合いたいと。
おそらく、生まれ育った北海道での経験が彼にそうさせるのではないか。
CSのない地域に育ったが、遠征に活路を見出し折れなかった心。Youtuberと競技プレイヤーを兼ね、PCを抱えて遠征するほどの負荷を掛けても砕けぬ身体。2つを併せ持つ彼は、きっと自らの戦いを勝利に導く。
デュエル・マスターズを始めてから14年。ZweiLanceは、競技シーンの頂点……プロリーグを目指して動き出した。
昨シーズン、GP7thの準決勝でギラサキに惜敗するも全国大会での再戦を誓い、直後の南東北エリア予選で優勝。そして迎えた全国大会では、ギラサキとの再戦こそ成らなかったもののTop8入賞を果たし、名実ともにトッププレイヤーの1人としてその名を知らしめた人物である。
そんな彼は、昨秋に勤め先を退社し専業Youtuberに転身を果たした。と同時にカーナベル株式会社とのスポンサード契約を発表し、話題を呼んだのは記憶に新しい。
満を持して大きなチャレンジに踏み切ったZweiLanceだが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。DM史にその名を刻まんとする、彼の物語を聞いた。
プレイヤープロフィール
・年齢:24歳(1994年度生まれ)・活動地域:北海道→宮城県
・公式戦績:GP7th 3位、2018年度南東北エリア予選優勝、2018年度全国大会Top8、2018年度DMPランキング8位
・所属:カーナベル株式会社
・その他:Youtuber“FairyProject”としても活動
北海道からの初遠征
北海道生まれのZweiLanceがデュエル・マスターズを始めたのは小学生時代、2005年のこと。その名の由来、《クリスタル・ツヴァイランサー》が収録された転生編からだ。
しかし、“試される大地”でカードゲームを続けるのは容易ではない。転機は、2013年に訪れた。
「2013年に、大学進学に伴って札幌に移ったんです。そこでセキボンさんに誘われ、初めてCSに出ることになりました」
とは言っても、北海道で初めて開催されたCSは、2015年の第1回北海道CS。当時はまだ、道内のCSはない。
「参加したのは、宮城県で2日連続開催されていた第4回仙台CS、おやつCS 2013 Summer東北。8月11日、12日ですか。フェリーで行きました。
船の中って、電波が入らないんですよ。だから、ずっとデュエル・マスターズで遊んでいました。調整環境としては最適でしたね」
札幌から仙台までは、陸路であれば800km。最も近いCSでそれなのだから、彼にとってどれだけ競技シーンが縁遠い存在だったかが窺い知れる。
だが驚くべきことに、ZweiLanceは距離の遠さを厭わなかった。
嬉しかったのだ。同じゲームで遊ぶ相手がいる、たったそれだけの事実が本当に嬉しかった。もう遊び相手には困らない。CSに行けばいい。
フェリーに飛行機。東北、関東、関西。
魅入られたように遠征を繰り返すZweiLanceの交友関係は、徐々に広がった。関東を中心として活動していた調整チーム『Heaven's Dice』の面々と親しくなり、チームへ加入もした。
時が経つにつれ、北海道のCS事情も改善されていった。背景にはタカラトミーによるCSサポートが始まったこと、それに伴って盛り上がったコミュニティの空気が道内の競技プレイヤー増加に貢献したことがあるだろう。
2018年の北海道のイベント数は、47都道府県中7位。東京、大阪などの大都市にはまだ及ばないものの、彼が遠征を始めた頃とは段違いだ。
「みついさんがCSを開催し始めてから変わったな、と思います。2016年ごろからですね。
現在、みついさんは月に4回、CSを開いてくださっています。サポート店舗は、カードショップみついさんとバトロコ札幌狸小路店さん。
悩ましいのは、そこまでしていただいても月8回に届かないこと。ランキングの上位勢は、毎週土日は必ずCSに出ています。北海道勢が追いつこうと思ったら、遠征せざるを得ません。
でも遠方で土、日とCSに出ると、必然的に金、月は移動時間になる。仕事があると難しいんです。海外遠征に近い状態なんですよ」
広大な北海道の大地に、今のイベント数はあまりにも少ない。だが熱い気持ちを持った選手はたくさんいると、ZweiLanceは語る。
「takiさんや、昨年のランキングでの全国招待圏内にあと一歩と迫ったセキボンさんなんかは既に知られていますよね。
他にも、スポットライトを当てられてはいないけれど、注目されて欲しい人たちがまだまだいる。彼らが実力を発揮できる機会がもっと増えて欲しい。
昔を思えば現状でも十分ありがたいんですけれど。本当にCSは増えたと感じます」
もっともZweiLanceは、道内のCS増加の恩恵にあずかってはいない。2018年、就職を機に仙台へと引っ越したからだ。
新天地、東北地方
東北は古くからCSが開かれている地域で、その数も多い。先駆けとなったのは、FairyProjectの動画に度々出演しているあー/中村らが立ち上げた、2010年の第1回仙台CS。以来、カードショップおやつのじかんによるおやつCS東北や、ビルダーとしても知られるちゃまらが運営した福島CSなど数々のイベントが開催された。
現在では、主にカードショップシーガルの系列店舗が各地でCSを主催し、東北の熱気を保っている。
「ランキング上位を狙うなら、ホームと呼べる場所が必要です。
東北ではシーガルさんが頑張ってくださっていて、普段はそこのCSに参加しています。ポイントの7割は東北で稼いで、大型イベントを狙って他地域へ遠征するイメージですね」
東北には、ランキングの上位を狙うプレイヤーや、全国的に名を知られたプレイヤーが多数いる。
「ペン山さん、鳶沢さん、八神さんたちは上位を狙っていますよ。P-90さんやchaserさんも、ストイックに努力されています。
ビルダーとしてすごいのはちゃまさん。あまりCSには出場されてないですが、有名ですよね。
一方で、学生プレイヤーの多い地域という印象もあります。そのせいか、遠征するプレイヤーは多くありません」
ZweiLanceが目指す未来
東北に腰を落ち着けYoutuberとして活動する傍ら、競技イベントにも熱意を燃やすZweiLance。今年も、日本一を狙うのか。「2018年度の全国大会では悔しい思いをしました。今年もランキングのポイントを稼ぎつつ公式大会に出場し、まずは全国大会への出場権獲得を狙います!
最終的に10位以内に入るためには、シーズン中は上位30位以内にいることが大事。今の順位は当てになりません、ずっとCSに出続けたプレイヤーが勝つんです。
途中で全国大会の権利を取れたとしても、GPなどで2byeが付与される程度にはランキングを頑張る予定です。大会が始まる前から他人の方が有利だなんて、嫌ですから」
昨年の秋、勤め先を退職。そしてカーナベル株式会社とのプロ契約を発表し、FairyProjectを本業にすると宣言した。
ランキング上位を狙うからと言って、動画投稿を滞らせるようなことはしない。
「CSっていう場が大好きなんですよね。ついつい時間を割いて出てしまう。でも動画だって手を抜けない。楽しみにしてくださっている視聴者の方々がいますから。
だから、今はPCを背負って遠征しています。負けたら早めにホテルへ戻って編集作業。ようやく本業にできたことですし、今年はフェアプロにも全力投球ですよ!」
もはや、本業も趣味もデュエル・マスターズと言ってしまって良いほどこのゲームに打ち込んでいるZweiLance。
彼は何を求め、何を目指して活動しているのか。最後にそう問うと、真っ直ぐな答えが返ってきた。
「プロが増えてほしい。そうなることで、もっと競技シーンにプレイヤーが集まって欲しいんです。そのために、カーナベルさんと一緒に招待制の大会を開催しようかと考えています。最終的には、プロリーグを設立できるレベルまで盛り上がって欲しい。
自分には、業界に貢献したいという思いがあるんです。先に進むために何ができるか、常に考えています」
だから、と彼は言う。
「出来れば、なんですけれど……CSサポートの倍率上限を変えて欲しいです。現状は200人以上なら一律でポイント4倍ですが、これだと定員200人強ないしそれ以上のイベントを開催する意味がない。
今なら既存のものより大規模なCSを開催できるでしょうし、制度の壁を超えさせて欲しいんです」
この回答には、いちプレイヤーにとどまろうとしない彼の意思が込められている。
かつて、CSはプレイヤーが開くものだった。歳を重ね、経済的な余裕を持てるようになった人間が、後進のために運営に回る。決して利益の出るものではなく、むしろ赤字運営の大会が多かったが、彼らはコミュニティへの感謝の意も含めてCSを開催していた。
プレイヤーもイベントも、さほど多くない時代。遠征は珍しくなかった。必然、社会人になり時間的な余裕を失うと、競技シーンからは遠ざかっていく。
ここ数年で状況は変わった。CSサポートをきっかけとして、多くのカードショップがCSを主催するようになった。
公式側のサポートにより、プレイヤーは遊ぶ場所の心配をする必要が薄れた。大都市圏では、CSに出るだけならもう遠征は必要ない。ZweiLanceのように、社会人になってもプレイヤーとして活動を継続するユーザーが増えてきている。
そんな現状を踏まえてなお、ZweiLanceは業界に貢献したいと言う。与えられた恩恵に満足するのではなく、それをより広く分かち合いたいと。
おそらく、生まれ育った北海道での経験が彼にそうさせるのではないか。
CSのない地域に育ったが、遠征に活路を見出し折れなかった心。Youtuberと競技プレイヤーを兼ね、PCを抱えて遠征するほどの負荷を掛けても砕けぬ身体。2つを併せ持つ彼は、きっと自らの戦いを勝利に導く。
デュエル・マスターズを始めてから14年。ZweiLanceは、競技シーンの頂点……プロリーグを目指して動き出した。
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