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DMGP9th 準決勝:アーチー vs. イヌ科

アーチー「勝ったら全国、やばいって!!」

イヌ科「俺もここで全国取りたいんだってぇ!!」


 イヌ科の運営するCSによく参加していたアーチー。互いに面識のある彼らが、着席するなり互いに言い合う言葉の中には「全国」という言葉。

 GP8thから3位までが全国出場権を得ることができる。この試合の勝敗如何でその権利が確約されるのだ。自然と、それを獲得したいと思うのは当然のことだろう。


 イヌ科と言えば、普段は公認CSやGPなどでカバレージライターとして活躍しているプレイヤーだ。

 彼が綴る勢いのある文体にファンも多く、カバレージ班からのその実力の信頼も厚い。

 一方で、今大会でも随所で破竹の勢いを見せている関西・北海道の調整チーム「マラかっち」のメンバーでもある彼は競技プレイヤーとしての腕も確かなものだ。


 アーチーは、全国大会出場経験もある三重のプレイヤー。調整チーム「YamadaPros」に所属する彼は、ユウキングをはじめとする全国区のプレイヤーと日夜調整及び情報交換をしていたと聞く。


 次にここまで勝ち残った彼らが使用するデッキを見てみよう。
多くのプレイヤーがGP直前にリストが出回り始めた『火水自然ミッツァイル』の強さに魅了され、本GPでも使用を選択した中で、彼らの使うデッキは大勢の使用するような代物ではなかった。


 イヌ科が使用するのは、「マラかっち」秘蔵レシピの『水闇カリヤドネ』


 ≪魔導管理室 カリヤドネ≫のシンパシーの関係上、墓地の枚数を稼ぐ点については従来の『墓地ソース』と類似している点はあれど、そのフィニッシュ手段は『墓地ソース』のそれとはまったく異なる。
 このデッキの最終的な到達点は、≪「大当たり!もう一本!!」≫によって「場に出たとき」能力を倍化させた≪魔導管理室 カリヤドネ≫から《ブラッディ・タイフーン》《エマージェンシー・タイフーン》で残りの山札を一気に掘り進るところから始まる。
 最終的に《セイレーン・コンチェルト》《ブラッディ・クロス》《レスキュー・タイム》、≪「大当たり!もう一本!!」≫を無限に唱えれるように山札を固定化させて、ライブラリアウトを狙う
 なんといってもベスト16の時点でイヌ科はもちろんのこと、リストを共有した魔王dotto、末永先パイことよしゆきが残ったのだ。このリストの完成度や「マラかっち」の個々のプレイヤーの修練度にはただただ脱帽するしかない。


 一方のアーチーの使用するデッキは『メルゲドッカンデイヤー』

 あの悪名高き《アクア・メルゲ》を元にコンボ始動するデッキ……ということからも察するようにこちらのデッキも主なフィニッシュ手段はそのループにある。
 《神秘の宝箱》《レインボー・ストーン》などで殿堂カードである《アクア・メルゲ》をサーチした後、マナレシオの概念を崩壊させた《生命と大地と轟破の決断》を唱え、マナから《アクア・メルゲ》《MEGATOON・ドッカンデイヤー》を場に出す。

するとどうなるか?


 《MEGATOON・ドッカンデイヤー》が場に出たことにより、《アクア・メルゲ》の効果が起動。
 手札を1枚捨てて1枚ドロー、それに誘発され《MEGATOON・ドッカンデイヤー》の効果によりGR召喚……後は言わずともわかるだろう。
 《生命と大地と轟破の決断》という1枚のカードから実にGRクリーチャーを含めた14体ものクリーチャーが一挙にならぶ。

 フィニッシュ手段は、まず上記の方法で確実に出る《マリゴルドⅢ》《ダダダチッコ・ダッチー》から《百発人形マグナム》《早撃人形マグナム》を出すことによって、「場に出たとき」の効果を持つGRを破壊する。
 そして、マグナムの効果を絡めつつ、無限に《予知 TE-20》を場に出すことで自身のトップを固定する。
その後、《ツタンメカーネン》を破壊して出す、を繰り返す間に自分は任意のタイミングで《永遠の少女 ワカメチャ》を捨てることで山札が0枚になることはなく、対戦相手の山札のみが減っていく、というもの。
 実際は上記のループに入るには《マリゴルドⅢ》のマナドライブを達成させることがほとんどであるために、超速マナブーストとして《アクア・メルゲ》のシールド落ちケアを兼ねた《ラ・ズーネヨマ・パンツァー/逆転のオーロラ》+ツインパクトではない《逆転のオーロラ》を合わせて計6枚もの《逆転のオーロラ》が、アーチーのリストには採用されている。


 奇しくもループをフィニッシュ手段に持つデッキ同士の対決となった本試合。
 精緻なプレイングを積み重ね、相手より先に自身の動きを押し付ける、文字通り「頭脳の格闘技」ともいえるこのマッチを制するのはどちらになるのか。



Game 1

先攻:イヌ科

 両者が慎重にマナに置くカードを選択していく中、


2ターン目、3ターン目にイヌ科は《ブラッディ・タイフーン》、≪終焉の開闢≫。


 アーチーは《フェアリー・ライフ》からの≪ラ・ズーネヨマ・パンツァー≫とお互いにコンボデッキとして順調な滑り出しを見せる。

 先攻4ターン目、イヌ科がおもむろに唱えた呪文は……≪「本日のラッキーナンバー!」≫

イヌ科「宣言は『3』で」


 アーチーは、この返しのターン、熟考する。

 綿密に相手の墓地≪魔導管理室 カリヤドネ≫のテキストを確認することはもちろん。

 自身の山札の枚数、マナなど一通り目を通して唱えた呪文は、


《逆転のオーロラ》だ。

 バトルゾーンに≪ラ・ズーネヨマ・パンツァー≫がいることにより、シールドから5枚、そして山札から5枚、計10マナを4ターン目にブーストしてのけた。

 そして、増えたマナの中にはあった。
 《生命と大地と轟破の決断》、そして《MEGATOON・ドッカンデイヤー》《アクア・メルゲ》のパッケージ。


 準備が整ったアーチーは、意を決し、マナから《生命と大地と轟破の決断》を唱え、《アクア・メルゲ》《MEGATOON・ドッカンデイヤー》を場に出す。

 《アクア・メルゲ》効果で場にクリーチャーが出る度にドローをして1枚捨てる。
 その捨てる行為に誘発して《MEGATOON・ドッカンデイヤー》でGR召喚を行う。

 あわや、ここでゲームが終わるのかと思われた瞬間、GRデッキから捲れた《予知 TE-20》を出そうとするアーチーを見てイヌ科は制した。


イヌ科「≪「本日のラッキーナンバー!」≫で止まってるよ」


 見事なコスト宣言で、窮地を脱したイヌ科。

 歯噛みしながらアーチーはターンを返すにとどまることしかできない。
 既に《逆転のオーロラ》の代償としてアーチーのシールドは0枚だ。

 続くターン、墓地と手札を確認するイヌ科は「よし!」と力強く宣言した。


 場に出て来るのはもちろん、≪魔導管理室 カリヤドネ≫だ。

 幾たびもの呪文が唱え続けられる。

 《ブラッディ・タイフーン》《ブラッディ・クロス》《セイレーン・コンチェルト》……

 《エマージェンシー・タイフーン》《レスキュー・タイム》、≪「大当たり!もう一本!!」≫…

 …終わらない詠唱の果てに囁かれる終わりの囁き。


イヌ科「今からループ証明入ります」


 ……音もなく崩れ去ったアーチーの山札。
 ループ対決の初戦を制したのは『カリヤドネ』のイヌ科だった。

アーチー 0-1 イヌ科


 『カリヤドネ』、『メルゲドッカンデイヤー』ともに、両者の所属するチームの秘蔵リスト。
 ダブルエリミネーションだからこそ、2本目以降につながる情報を少しでも得たいというのが実情である。

 お誂え向きにGame1が終わる直前、イヌ科はデッキの性質上10枚以上のカードが墓地にたまり、アーチーの山札は全て墓地に送られている。

 こうなってしまえば、互いのデッキはほぼほぼ丸裸。

 互いに互いの構築を見合って、次の試合が始まっていくのだった。


Game 2

先攻:アーチー

 イヌ科が初手でマナに置いた≪魔導管理室 カリヤドネ≫を見て、アーチーはテキスト確認を求めた。

イヌ科「出すと勝ちます」

 一見軽口に見えるこの口調も、彼の心からのデッキへの信頼感から生まれる自信から来るものだろう。
 このゲームにおいてもイヌ科は2ターン目に《ブラッディ・タイフーン》を唱える好調の滑り出しを見せている。


 デッキへの信頼度がそのまま動きの良さにつながるというのであれば、アーチーの擁する『メルゲドッカンデイヤー』もまた、彼に応えてくれた。

 2ターン目《霞み妖精ジャスミン》、3ターン目《神秘の宝箱》とイヌ科とのマナ差を大きく引き離しつつ、マナにパーツを揃えていく。


 そして先攻4ターン目にアーチーは、《生命と大地と轟破の決断》をマナからキャスト。

 後手4ターン目からでも≪魔導管理室 カリヤドネ≫が場に出てしまえば、《ブラッディ・タイフーン》《ブラッディ・クロス》のめくり方次第でループに入られてしまう事が分かっているアーチーは、2ゲーム目は短期決戦の択を選んだようである。

 マナから出て来たのは、先のゲームと同じく《アクア・メルゲ》《MEGATOON・ドッカンデイヤー》
 しかし、先ほどと違い、このターンは≪「本日のラッキーナンバー!」≫で拘束されてはいないのだ。

 《アクア・メルゲ》で、ドローそして捨てる→《MEGATOON・ドッカンデイヤー》でGR召喚→出たクリーチャーによってまた《アクア・メルゲ》が誘発→……

 真価をやっとのことで発揮できたアーチーの盤面には一挙12体ものGRクリーチャーが出尽くした。

 本来のプランであれば、《マリゴルドⅢ》から《百発人形マグナム》及び《早撃人形マグナム》を絡め、《ツタンメカーネン》による山札切れを狙いたくはあるのだが、今回はキルターンを早めたためマナの枚数が足りない。


 だが見切り発車でアーチーは打って出たわけではない。


 よくよく並んだGRクリーチャーを見てみると、その中には《ソニーソニック》《“魔神轟怒”ブランド》の姿が!


 ループができなかったとしても、ワンショットの方策を有しているのがこの『メルゲドッカンデイヤー』の応用力の高さ。

 《ダダダチッコ・ダッチー》を含め、計5体の火のクリーチャーを召喚しているため、《“魔神轟怒”ブランド》の「超天フィーバー」も誘発。
 《“魔神轟怒”ブランド》の攻撃が通れば十分すぎるほどの打点がある盤面となった。

 この攻撃をいなせるかどうかが、ゲームの勝敗を握ると言っても過言ではない。

 2体の《ソニーソニック》の攻撃後、意を決して《“魔神轟怒”ブランド》の攻撃。


 イヌ科のシールドからは《知識と流転と時空の決断》《》

 《“魔神轟怒”ブランド》2体を《知識と流転と時空の決断》でバウンスし、アンタップした《ソニーソニック》2体のうち1体を≪ハーミット・サークル≫で止めることで、既の所で生き延びることに成功。
 これにはたまらずアーチーを嘆息せざるを得ない。

 返ってきたイヌ科のターン。

 ここで1ゲーム目と同じように≪魔導管理室 カリヤドネ≫からのループが始まると思いきや……

 ここで問題が発生。先のアーチーの総攻撃、トリガーで《》を撃たなければならなかった場面だったために手札にまだ≪魔導管理室 カリヤドネ≫がないのだ。

 サーチカードにより、≪魔導管理室 カリヤドネ≫を探すしかないイヌ科。

 《ア・ストラ・センサー》で3枚確認……≪魔導管理室 カリヤドネ≫はない。

 2枚目の《ア・ストラ・センサー》でも………ない!

 マナと手札を考えこむイヌ科。残りのマナではもうこのターン≪魔導管理室 カリヤドネ≫を出すことはできない。

アーチー「ワンチャン来たよこれ!!!」


 どうしても≪魔導管理室 カリヤドネ≫に触れられないイヌ科。

 次ターン、盤面のアーチーの多勢から身を守る盾はもう、ない。


アーチー「1-1の方が熱いっしょ!?」


イヌ科「ああ、そうだな! 3本目に行くか!!!」


 イヌ科は高らかに投了を宣言した。

アーチー 1-1 イヌ科


 ついに最終戦までもつれ込んだ本マッチ。

 しかし、時間は有限ではない。

 イヌ科、アーチー共に全国の切符をかけた一戦であるため、必然的に思考時間も伸びていた。

 3本目の残り時間は3分半、そして時間切れの場合の処理はゲーム終了時点のプレイヤーのターンを0ターンとし、3ターンのエクストラターンの措置。それが終わればシールドの枚数差で勝敗が決まる。

 イヌ科は、自分の頬を強く叩き、集中してプレイ速度を上げるため気合を入れ直す。

 泣いても笑っても、これが準決勝最後のゲームなのだ。


Game 3

先攻:イヌ科


 2ターン目に《ブラッディ・タイフーン》を唱えて、先に動いたのはイヌ科。

 これに対し、アーチーは3ターン目に、《神秘の宝箱》《アクア・メルゲ》をマナに埋めるという初動となった。

 続くイヌ科のターンで唱えたのは1ゲーム目でも猛威を振るった≪「本日のラッキーナンバー!」≫だ。


イヌ科「コスト宣言『3』で」


 アーチーのマナに《生命と大地と轟破の決断》を見たイヌ科。
ここは1ゲーム目と同様、GR召喚を止めることで、次ターンのループとワンショットを防ぐことにしたようだ。


 返しのアーチーのターン。

……すると、アーチーがマナをセットする段階で、ジャッジからの「時間制限」の合図。

 先に述べたように、このアーチーのターンを0ターンとして、続くイヌ科のターンを1ターンとする説明がジャッジからなされゲームが再開。

 どう転んだとしても、この試合はあと4ターン以内に終わることが確約された。


 どちらもコンボデッキの関係上、相手より早く動いた方が有利を取れることは明白。
 だが、このターンは≪「本日のラッキーナンバー!」≫が重すぎた。
 アーチーは《レインボー・ストーン》《フェアリー・ライフ》を埋め、次ターン《マリゴルドⅢ》のマナドライブを達成させループで勝つ算段のようだ。


 しかし、アーチーのターンがこれ以降来ることはなかった。


 続くイヌ科のターン、≪終焉の開闢≫で《》を回収。

 墓地には既に12枚もの呪文。回収した≪魔導管理室 カリヤドネ≫から≪終焉の開闢≫を撃つと墓地から2枚目の《》を手札に戻す。

 2体目の≪魔導管理室 カリヤドネ≫から≪「大当たり!もう一本!!」≫を含む3枚の呪文が唱えられ、このターン唱えた呪文は7枚


イヌ科《次元の嵐 スコーラー》の効果を2回処理して2ターンもらいます」

 本GPのルール上、カードの効果による追加ターンは、時間切れの際の措置のエクストラターンに含まれる。
 この1ターン目を起点とし、残りの2ターン目、3ターン目の支配権をも得たイヌ科。
 
《次元の嵐 スコーラー》の追加ターンとなる次ターンに、≪魔導管理室 カリヤドネ≫と《次元の嵐 スコーラー》の総攻撃により、長丁場となった準決勝の幕は降ろされたのだった。

アーチー 1-2 イヌ科

Winner:イヌ科


イヌ科 「dottoさん、見てるかーーー!!!」

 咆哮するイヌ科。

 気付けば「マラかっち」の秘蔵レシピを共有したdottoはベスト16でリヒッコチュリスに敗れ、メンバー同士の決勝か、と思われたよしゆきも、準決勝のもう1つの卓で惜敗を喫していた。
 トーナメント表に「マラかっち」のメンバーとして名前が残っているのは己ただ一人。だが、彼のこれまでの歩みは一人ではない。

 試合前に全国の切符の執着を見せた彼も、ことここに至ってはそれだけでは満足できない様子。

 至強のチームの証明として、「マラかっち」の想いを双肩に乗せ、イヌ科の最後の挑戦が始まる。
 目指すは頂点のみだ。

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