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DMGP9th プレイヤーインタビュー:ヨーカン選手

“したい会”と呼ばれるチームがある。
2018年3月に関東で結成された調整集団で、現在のメンバー数は10人。立ち上げから2019年4月のGP8thまでの約1年で、3人のプロ契約選手と1人のGP優勝者を輩出している。現代デュエル・マスターズの競技シーンにおいて、大きな成功を収めたチームのひとつだと言える。

チームであるからには、リーダーがいる。
ヨーカン
2017年の暮れに静岡から東京へ引っ越し、翌年に“したい会”を作り、トーナメントシーンをリードするまでに育て上げた男の名前だ。

現在の競技シーンで勝つために必要なのは、試行回数を稼ぐための調整集団と、得られた結果を束ねる知見者とされる。その両方の形質を獲得したかに見える“したい会”。
ヨーカンは、どのような手法を使ってチームを作り上げたのか。彼の物語を聞いた。


プレイヤープロフィール


・年齢:31歳(1988年度生まれ)
・活動地域:長崎県→大阪府→三重県→静岡県→東京都
・その他:調整チーム“したい会”を主宰する


競技チームを立ち上げた理由

今年、31歳になったヨーカン。近年、社会人プレイヤーが増えてきている競技デュエル・マスターズにおいても、比較的高い年齢だ。
チームを立ち上げたときは、30歳。なぜそのタイミングで、競技シーンへの参入を決意したのか。

引越しが1つの転機だったとヨーカンは振り返る。

「2017年の末に東京へ引っ越して、2ブロック構築が発表された翌3月にチームメンバーを集めて……ですね。それまでもずっとデュエル・マスターズはプレイしていたのですが、CSが少ない地域だったので、なかなか調整が出来ませんでした。近場のCSには参加していましたが、それだけでしたね」

このころのヨーカンは、様々な切り口からデュエル・マスターズというコンテンツに触れていた。
例えばワールドホビーフェア。デュエルヒーローたちの、ライブのようなステージを現地で見るのを楽しみにしており、現在でもイベントに通っている。
その情熱が、東京への移住を機に噴き出した。と、いうことらしい。


ヨーカンのチーム運営論

もっとも、それまで競技シーンのメインストリームにいたわけではないヨーカンである。東京に来たからと言って、急に知人が増えるわけでもない。
彼は、Twitterで調整メンバーを募集した。折良くサポートの始まった新レギュレーション、2ブロックの調整をするチームだと紹介したところ、3人が名乗りを上げてくれた。

「最初のメンバーは、あーくんこっちゃーふらわん、そして自分の4人。あーくんとは初対面でした」

「一般的な調整チームって、気心の知れた友人同士で作ることが多いじゃないですか。でも、そうしたくなかった。これまでの関係性よりも、2ブロックという新しいフォーマットに対してモチベーションを持っている人たちを集めたかったんです」

Twitterでの呼びかけは成功し、メンバーは揃った。しかし、すぐ壁にぶつかった。
連絡はLINEで取り合っていたが、互いに遠慮しあってか、メンバーがなかなか発言しない。活発化しないグループLINEを前に、ヨーカンは悩んだ。

彼の凄さは、ここでモチベーションを失わなかったことにある。

ヨーカンは粘り強く調整を続け、2018年4月のブルーホースCSで『白零サッヴァーク』を使って優勝。更に5月、みに超ガチCSで自身の手による新しいアーキタイプ、『赤青蓄積覇道』を使って準優勝という結果を残した。

この戦績、特に『赤青蓄積覇道』を世に送り出したことが、メンバーを刺激した。
当時の2ブロックは『ジョーカーズ』が強力で、メタゲームはほとんど固まっていると思われていた。そんな環境に、見たこともないアーキタイプが降って湧いたのだ。しかも、作ったのは所属チームのリーダー。

狙い通り、LINEの“したい会”グループは活性化した。
当然の帰結だろう。メンバーは、勝つために競技へ身を投じている選手ばかり。優勝に準優勝という結果、そして新たなアーキタイプを見せつけられて、やる気を引き出されないプレイヤーはいない。

全員のモチベーションを上げたところで、次にヨーカンが取った施策は、調整の定期開催だった。

「競技への取り組みを長期的に続ける上で重要なのは、モチベーションの維持です。
みんなの気持ちを途切らせないようにするため、平日の水曜日をショップで調整する日にしました。終わった後は全員で夕食を摂りながら雑談。やっぱり1人だと気持ちが揺らいじゃいますから、集まって話をするのは有効な対策です」

「土日は、CSに出場する時間。2ブロックのCSは殿堂ほど多くはないので、毎週参加できるとは限りません。大会数が少なく日程に余裕がある分、取りこぼしがないよう注意しました」

と言っても、厳しく管理しているわけではない。
好例が、メンバーの追加だ。GP7th前に「そろそろ人数を増やしたい」という声が誰ともなく上がり、あーくんが連れてきたのがおんそくだった。以降も増員する際は、既存のメンバーが自発的に声かけしている。

調整も同じだ。ヨーカンが参加出来なかったとしても、動けるメンバーたちが集まり、デッキを回す。

「堅苦しい組織、みたいなものではないんですよね。趣味のつながりですから。あまりに緩すぎたせいで、7人目のマイケルが加入した時に“したい会はリーダーがいないんだね”って言われちゃいました」

ヨーカンは、苦笑しながらそう語ってくれた。

「強いデッキを作って、CSへ持ち込む。自分たちがやっているのは、それだけです。年齢差を感じさせないように努力する、ぐらいはしていますけどね。意見を言いづらい空気になって欲しくないので」

そんな彼は、しばしば実施される前日の深夜調整に対し、否定的な意見を持っている。

「前日はしっかり寝ないと、大会当日のパフォーマンスが落ちてしまいます。ただ、近年の環境は流動的ですから、直前にやり込みが必要なのも事実。メンバーの都合にもよりますが、前々日に力を入れて調整する手法が理想的ではないでしょうか」

「2018年のエリア予選の前々日、新宿にある一軒家を1日だけ借りて調整したことがあります。ばんぱくが外国人向けの民泊用の家を探して来てくれて実現しました。費用は1万円強。
カードショップだと周りの目もありますし、夜遅くまでデッキを試したかったので、借りてみました。結果は、調整メンバーのユーリがエリア予選で優勝。効果のある手法だと感じています」


“したい会”の調整手法とは?

調整という単語が意味するのは、多くの場合「実際にデッキを回して試行錯誤すること」だろう。
ヨーカンら“したい会”は、具体的のどのような方法を採っているのだろうか?

「自分たちも、デッキを回して試行錯誤していますよ。
“したい会”の特徴は、ビルダーが複数いること。自分がそうですし、こっちゃーも、ユーリもそう。だから試行錯誤の選択肢を多く作れて、デッキのチューニング効率が良いんです。
それに……やっぱり、自分が作ったデッキには愛着というか、これは強いんだという先入観を抱きがち。そんな時、別の視点から意見をもらえると助かります」

特別なことはしていないし、する必要もない。当たり前のことを徹底してやる。ヨーカンの発言からは、そんな哲学が読み取れる。

「回す。修正する。また回す。その繰り返しです。
調整の方法論の良し悪しよりも、むしろメンバーのモチベーションを保つことの方が大事。気持ちがついてこないまま無理に続けても、いい結果にはつながりません」

いい結果につながらない。
それは本人にとってのみならず、チーム全体にとっても、だ。
ランキングが制定され、1年を通じて戦い続ける必要のある現在の競技シーンで最も重要な要素。それがモチベーションなのだとヨーカンは指摘する。

「普段のやりとりにはLINEを使っています。ああいうのって、自分の発言に対してレスポンスが返ってこないとモチベが下がるでしょ。だから、常にみんなには意見を出し続けてもらう必要がありますし、そのためにもモチベを高く保つ必要がある。
なので、モチベの下がったメンバーは、一旦離れてもらうルールを作っています。もちろん、やりたい気持ちが強まったらまた戻って来ればいい。ルールらしいルールは、これぐらいかな」


「勝利のため」から「デュエル・マスターズのため」へ

3人のプロプレイヤーに、1人のエリア予選優勝者と、1人のGP優勝者。
次々と実績を重ねる“したい会”。当初は「2ブロックCSでの勝利」を最優先に掲げていた。
しかし、結成から1年半を迎え、ヨーカンの心境には変化があった。

「最初は、自分たちが勝つことを目指して頑張っていました。メンバーは誰も公式大会のタイトルを持っておらず、全員がまだ何者でもない状況だったので。
けれど、最近は状況が変わって来ています。プロプレイヤーが所属しているチームになりましたし、今年はおんそくがGP優勝した上、あーくんがランキング暫定1位を達成。
近場のCSでは、『印鑑パラス』や『青白スコーラー』など、自分たちが送り出したデッキをよく見るようになりました。もう、なんの影響力も持たない集団ではないんです。
メンバーには、本当に感謝しています。みんなのおかげで、今があるので

実は“したい会”、多様な人材が揃っている。カバレージライターが1人、認定ジャッジが5人。やろうと思えば、自分たちだけで大会の運営まで出来てしまう。

「デュエル・マスターズを取り巻く環境が、良くなって欲しい。楽しいデュエル・マスターズを広めたい。そんな思いがあります。いまの自分たちになら、出来ることがあるんじゃないかと。
それに、一緒に調整してくれているみんなに、もっと活躍してほしいですからね。彼らは色んな方面の能力を持っていますから。ゲームに勝つこと以外にも、才能を発揮する場所があっていいはずです」

まだ、明確なビジョンがあるわけではない。
ただ、今年に入ってから、実験的に情報の公開を始めた。『青白スコーラー』が広まったのは、彼ら自身の意思によるものだ。

「今は、自分たちに何が出来るのか、少しずつ確認している段階です。これからはチームとしてデュエル・マスターズに貢献できるよう、手段を探っていきたいですね」




期せずして一定の影響力を持つに至った“したい会”。その事実を受け止め、自分たちの在り方を変えていこうとするヨーカン。

彼らの物語は、この先も続いていく。

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