ライター：塚本 樹詩
撮影者：後長 京介

　3位決定戦。
　賞品の差で言うならば4位とは最新弾のボックス2つ分の違いしかない。
　DMPランキングのポイントの点数も同じ。

　では、順位以外の意味とは何なのだろうか。
　決勝の舞台へ上がれなかった者同士の戦いは、ある意味では精神力やプライドだけを競うものとなるだろう。

　決勝戦の喧騒から少し離れた席で、たった一つの順位を上げるための静かな戦いが始まった。

先攻：サノル
　二人は、お互いに《SSS級天災 デッドダムド》をマナにチャージした後で、動きが分岐したのは2ターン目。

　サノルは《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》をチャージ。
　そして、kazunaは《キャディ・ビートル》をチャージの後に《悪魔妖精ベラドンナ》を召喚。

　おそらく多色系のコントロールであろうサノルを相手に、手札破壊のモードを使うと思いきやkazunaはマナ加速のモードを選択。山札からマナゾーンに《有象夢造》が置かれる。kazunaのデッキもおそらくは水闇自然のコントロールであろう。

　相手の手札を削がないのは、このデッキにマナ加速の価値があるからだ。そう、kazunaのデッキは《CRYMAX ジャオウガ》に特化したタイプ。

　7マナ揃って、そこから《CRYMAX ジャオウガ》という制限時間が設けられたに等しいゲーム展開をサノルがどう立ち回るか。まずは《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》をチャージした後に《天災 デドダム》を召喚。1枚を手札に加えてから《ドラゴンズ・サイン》をマナへ《絶望と反魂と滅殺の決断》を墓地へ置く。

　kazunaは《若き大長老 アプル》をチャージして《キャディ・ビートル》を召喚。公開領域に見えているカードだけ見ても、このカードが制限するものは多そうだ。

　《キャディ・ビートル》の影響から逃れるためにサノルは次のターン2体目の《天災 デドダム》を召喚。ここでは上から3枚の内1枚を手札に加え《天災 デドダム》をマナ《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》を墓地に置く。

　kazunaはさらに《有象夢造》を使い、クリーチャーの頭数を増やす。2ドローした後に《キャディ・ビートル》と《若き大長老 アプル》を捨て、《若き大長老 アプル》と《悪魔妖精ベラドンナ》を墓地から復活させる。《悪魔妖精ベラドンナ》のモードはもちろん、マナブースト。山札の上から《若き大長老 アプル》が置かれると、これで手札からチャージした《秩序の意志》とあわせて6マナとなる。

　これで、次のターンからいつでも《CRYMAX ジャオウガ》がやってきそうな雰囲気となったが、バトルゾーンには《キャディ・ビートル》と《若き大長老 アプル》が睨みを利かせているという雁字搦めな状態になったサノル。

　この状態を打破すべく、まずサノルが取った行動は《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》の召喚。効果によって手札に《覚醒連結 XXDDZ》を加えると《キャディ・ビートル》を手札に戻す。メタクリーチャーによる制限が一つ外れたので《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》がマッハファイターで《若き大長老 アプル》へ攻撃。手札から《》に革命チェンジして《若き大長老 アプル》を討ち取ると、盤面を一掃し更にkazunaの呪文を封じるという優位を築く。

　しかし、ここでサノルはターンを終えなかった。2体の《天災 デドダム》を順々に《SSS級天災 デッドダムド》にSSS級侵略してkazunaのシールドを４つブレイクしたのだ。これはもう《CRYMAX ジャオウガ》に対抗するための意志と言ってもいいだろう。 　予定調和的にkazunaは《CRYMAX ジャオウガ》を召喚。サノルのシールドを3枚にしてから《》へ攻撃、効果で盤面の《天災 デドダム》と手札から《覚醒連結 XXDDZ》と《龍風混成 ザーディクリカ》を刈り取る。

　サノルは手札破壊を魔逃れた《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を召喚して手札に《ドンドン火噴くナウ》を手札に加え《CRYMAX ジャオウガ》をバウンス。残った《SSS級天災 デッドダムド》が最後のシールドをブレイク。

　ここで《有象夢造》がトリガーし、2ドロー、そして《若き大長老 アプル》と《Disジルコン》を捨て2体の《若き大長老 アプル》が復活。1体は《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》にマッハファイターで取られるものの、1体は確保した形となる。

　前のターンにバウンスされた《CRYMAX ジャオウガ》を再び召喚して、攻撃と効果によりサノルの盤面と手札を全て刈り取る。

　ここでスピードアタッカーを引けば勝ちという場面を用意できたサノルであったが、ドローは《龍風混成 ザーディクリカ》。EXライフによる延命はできたのかと思いきや《龍風混成 ザーディクリカ》の呪文を踏み倒す効果は《若き大長老 アプル》によって封じられているので、これ以上の行動はできずターンエンド。

　自分のシールドが無い状態なので、kazunaは《CRYMAX ジャオウガ》で詰めにかかると思いきや、ここで手札から使ったのは《生命と大地と轟破の決断》。マナゾーンから出た《天災 デドダム》がマッハファイターを得て《龍風混成 ザーディクリカ》を攻撃。《SSS級天災 デッドダムド》にSSS級侵略しEXライフを剥がしてから《龍風混成 ザーディクリカ》を倒しターンエンド。あくまでここは、安全な勝利を目指す構えだろう。

　再びトップデッキで勝てるチャンスがある場面だが、サノルは山札からカードを引いた後にエンド。

　返しのターン、kazunaが《有象夢造》から《異端流し オニカマス》を復活させると、手札から《悪魔妖精ベラドンナ》を召喚し、手札破壊モードを選ぶとサノルの手札から《時の法皇 ミラダンテⅫ》が捨てられる。

　墓地からブロッカーである《Disジルコン》を召喚し2ドローの後に《絶望と反魂と滅殺の決断》を捨てたところでサノルは投了を宣言。

　石橋を叩ききったkazunaがまずは一勝。

kazuna 1-0 サノル

先攻：サノル

　後が無くなったサノルだが《覚醒連結 XXDDZ》《天災 デドダム》《ロスト・Re:ソウル》とマナチャージするのみでターンを終える。

　この間にkazunaは《天災 デドダム》《生命と大地と轟破の決断》チャージから《悪魔妖精ベラドンナ》を召喚、ここでもマナチャージのモードで《有象夢造》をマナに置き、3ターン目には《樹界の守護車 アイオン・ユピテル》をチャージの後に《天災 デドダム》を召喚。《若き大長老 アプル》をマナへ《SSS級天災 デッドダムド》を墓地に置くという順調な滑り出しを見せている。
　4ターン目にサノルはマナチャージをスキップしてから《フェアリー・ミラクル》で《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》《ロスト・Re:ソウル》と、2枚加速。

　次のターンになるとkazunaは《SSS級天災 デッドダムド》をチャージして、手札から《絶望と反魂と滅殺の決断》を使う。手札破壊と墓地からクリーチャー復活のモードを選び、まずは任意ハンデスでサノルが《ドラゴンズ・サイン》を捨てた後に、ハンデスで《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》が捨てられる。

　手札は破壊されたものの、盤面にインパクトある物が残らなかったので、今の内にリソースだけでも追いついておきたいサノルだが、このターンもマナチャージはせず《天災 デドダム》召喚のみでターンエンド。1枚の手札と《ドンドン火噴くナウ》をマナ《》を墓地に置く。

　ここでkazunaは再び墓地から《絶望と反魂と滅殺の決断》を使う、と思いきやマナゾーンから《生命と大地と轟破の決断》を使用。《若き大長老 アプル》と《天災 デドダム》をバトルゾーンに呼び出して《樹界の守護車 アイオン・ユピテル》がマナに《Disジルコン》が墓地に置かれる。

　ここにきてサノルは《ドラゴンズ・サイン》をマナチャージ。7マナに到達したことで手札から《龍風混成 ザーディクリカ》を召喚。EXライフでシールドを増やした後に効果で手札から《ドラゴンズ・サイン》を使う！《若き大長老 アプル》をかわし手札から《覚醒連結 XXDDZ》を追加するとEXライフで更にシールドを増やす。

　今まで煮え湯を飲まされていた分を発散するかのように《覚醒連結 XXDDZ》がすぐさま攻撃に向かい、EXライフを剥がし呪文を封じながらW・ブレイク！《天災 デドダム》《龍風混成 ザーディクリカ》も攻撃し、kazunaのシールドは一気に無くなり、更にトリガーは無し！エンド時に《龍風混成 ザーディクリカ》が《若き大長老 アプル》を破壊しながら1ドローし、一気に優位を勝ち取る。

　kazunaは呪文が封じられていることを確認しながら《絶望と反魂と滅殺の決断》をチャージの後に《天災 デドダム》を召喚。《秩序の意志》をマナに《Disジルコン》を墓地に置いた後で《悪魔妖精ベラドンナ》を召喚。効果でサノルの手札から《フェアリー・ミラクル》を捨てさせる。

　アタッカー3体を処理しないとダイレクト・アタックを許してしまうため、2体の《天災 デドダム》とマナゾーンの2枚の《SSS級天災 デッドダムド》を使ってEXライフを持った《龍風混成 ザーディクリカ》を含む全てのクリーチャーを対処してみせた。

　前のゲーム同様、自分のシールドがあるうちに《覚醒連結 XXDDZ》へ辿り着けるかという状況になったサノル。しかし、今回は《若き大長老 アプル》はいないので条件は先ほどよりは緩い。

　が、ここでもトップに恵まれずサノルは何もせずターンを終える。

　導火線に火が付いた状態のkazunaだったが、ここでは冷静に《キャディ・ビートル》チャージから《有象夢造》。2ドローから《異端流し オニカマス》《SSS級天災 デッドダムド》を捨て《異端流し オニカマス》《悪魔妖精ベラドンナ》を復活させる。ここでの《悪魔妖精ベラドンナ》は手札破壊のモードでサノルに《時の法皇 ミラダンテⅫ》を捨てさせる。

　墓地から《Disジルコン》を召喚しブロッカーを確保した後に2ドローしてから《CRYMAX ジャオウガ》を捨てると、今度は逆にサノルが一気に危うくなる。

　サノルは自分のターンになると、解決策を求めドロー。手札から使ったのは《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》。kazunaの墓地から《CRYMAX ジャオウガ》以外のカードを山札に戻してシャッフさせ、何とか墓地利用だけは防いだ。

　これを受けてkazunaは《樹界の守護車 アイオン・ユピテル》をチャージした後にマナゾーンから《Disジルコン》を召喚、更に守りを固めるとともに2ドローしてから《悪魔妖精ベラドンナ》を捨てる。

　そこから《有象夢造》を使い、2ドローしてから捨てた2枚の《若き大長老 アプル》を復活させると、これはもう石橋を叩ききった形となったか？

　ここまで来ると1枚のドローで何が変わるのか？とサノルはカードを引いてから、バトルゾーンに出したのは《百族の長 プチョヘンザ》。《CRYMAX ジャオウガ》にフィニッシュは一旦防ぎきれたか？と思いきや、盤面には無数のメタクリーチャーが並んでいたので、kazunaは7マナを使ってサノルのシールドを2枚焼却するだけでも、安全な勝利が取れるような形になっていた。

　並み居るクリーチャーでシールドを全てブレイクしてから《若き大長老 アプル》でダイレクト・アタックをすると、安堵の息を漏らしながらkazunaは勝利を嚙み締めた。

kazuna 2-0 サノル

Winner：kazuna

　2本とも丁寧に丁寧に盤面を詰め勝利を得たサノル。

　手札破壊を最小限に抑えて、メタクリーチャー増し増しの構成にして《CRYMAX ジャオウガ》による決定力に重きを置いた最近のトレンドともいえる構築を見事に使いこなしていたので、このアーキタイプをどれくらい前から使っていたのか、と質問すると、kazunaはこう答えた。

kazuna「うーん、昨日決めましたね。」

---「え？昨日ですか！？！？」

kazuna「はい、色々試してみて、これになった感じですね。」

---「決め手となったのはやっぱりこのアーキタイプが強かったからですか？」

kazuna「いえ、嫌いなので使いました。」

---「？？？？」

kazuna「まわりに散々使われて、このデッキが嫌って程強いのがわかっていたので、使いました。」

---「で、結果強かったと。特に《CRYMAX ジャオウガ》は凄いですもんね。」

kazuna「はい、本当にこいつで何とかなった試合は多かったですね。」

---「《CRYMAX ジャオウガ》を出せば勝てるデッキだったのですか？」

kazuna「いえ、そういう訳ではなく、メタクリーチャーや手札破壊の使い方は難しいですね。」

　前日に決めたデッキながら、嫌いなアーキタイプをきちんと使いこなしたというkazunaの驚愕なプレイセンスが光る試合となった。ひいては3位まで登り詰めた彼の今後の活躍を期待したくなるものだ。

　下半期チャンピオンシップ(仮)に向けてDMPランキングのポイントをいきなり3000も得てロケットスタートを決めたkazunaが次の大舞台でどんなデッキを選択して、どう戦うのか？4か月後が楽しみだ。