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DMGP2023-2nd 決勝Round 2:あごもん vs. 霧雨魔理沙

ライター:高橋 穂(北白河)
撮影者:瀬尾 亜沙子

霧雨魔理沙「DMPランキングに登録したユーザーネームが変えられないことに、決めた後で気付きまして……恥ずかしい」

 対戦相手に向けてそう語りながら(その名と同じキャラクターの描かれたスリーブに包まれた)デッキをシャッフルするのは、霧雨魔理沙。今回のフィーチャー卓に選ばれたプレイヤーの一人である。

霧雨魔理沙「カバレージを見るのを楽しみにしてたけど、書かれるのは初めてですね」

あごもん「ですねー!緊張する!」

霧雨魔理沙「あ、でも7-1で負けたら終わりだった予選最終戦の時の方が緊張したかも!」

 そして、彼と気さくに談笑しているのは、あごもん。同じくフィーチャー卓に選ばれたプレイヤーにして、Youtubeチャンネル「紳士的な俺たちのデュエマ!」にて活躍する人気Youtuberだ。

 ここがデュエマフェスの会場だと勘違いしてしまうほど和やかな雰囲気で笑い合う彼らの話題は絶えない。だが、その話題の中には異常事態の気配が確かにあった。

霧雨魔理沙「それにしてもあごもんさん、すごいデッキですよね。対策どうやったらいいんだろう……」

あごもん「すでに一回目のフィーチャーでデッキがモロバレなんでね……」

 何故対戦前からデッキがバレている?一回目のフィーチャーとは?

 そう。あごもんは、予選に引き続きこれがこのGPで二回目のフィーチャー卓参加なのだ。

 本来、(参加者の少なくなる終盤を除き)フィーチャー卓に同じプレイヤーが呼ばれることは滅多にない。

 しかし今回のあごもんはその「会場で間違いなく彼以外使用していない」と言い切れるほどのデッキの圧倒的な特異性により、特例的にテキストカバレージ入りでの二回目のフィーチャーが組まれることとなった……というわけだ。

 そんな背景を前提として、読者諸兄にはこのカバレージを読んでいただきたい。


 やがてシャッフルが済み開始の合図が近づくと、彼らの視線は「厳しい予選を勝ち抜き、ベスト32を賭けて争うプレイヤー」のものへと変わっていく。

 こうして、稀に見るほど奇妙かつ熱い一戦が幕を開けた。 先攻:あごもん

 速やかに《戦武の無限皇 ジャッキー / 「俺たちの夢は終わらねぇ!」》をチャージしてターンを返すあごもん。

 そしてターンが回った霧雨魔理沙もマナチャージ……の前に、ここで先んじてジャッジにとあるカードのテキスト確認を行う。「デッキがバレている」からこそ発生する、珍事件だ。

 2枚のカードのテキストをジャッジが読み上げるのを聞いたのち、改めて《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》をチャージしてゲームの幕開けとなった。

 このカードを使うデッキは、環境屈指の強度を誇るコンボ・コントロールデッキ【水魔導具】のみ。普段ならば恐れず横綱相撲を取ることもできるデッキだが、今回に限っては「相手が分かっているからこそ」勝手が違いそうだ。

 そして返しのターンのあごもんのマナチャージステップ。マナゾーンに逆位置で姿を現したのは……つい先ほど霧雨魔理沙がテキストを確認したカードの片割れにして、このデッキの主役、《神聖牙 UK パンク》

 ……読者諸兄は、このカードのテキストを何も見ずに完全に思い出すことができるだろうか?できたならば、胸を張ってデュエマ博士を名乗っていい。

 何故ならこのカードは、10年近く前のセット「ウルトラVマスター」収録の未再録ビクトリーカードだからだ。「ブータン」関連カードからのドロン・ゴーによる派手な効果を持ちながら、当時としても決して環境の中心にいたとは言い難い。

 だが、度重なるアウトレイジ強化の訪れた今は違う。実際にあごもんはこのカードの真のポテンシャルを見抜き、予選8-1という好成績を残したうえでここに立っているのだ。

 ありとあらゆるアウトレイジサポートや《飛翔龍 5000VT》といったパワーカードを駆使して《神豚 ブータンPUNK / ブータン両成敗》《俺神豚 ブリタニア /「カツキング、俺とお前の勝負だ!」》《神聖牙 UK パンク》の三段ドロン・ゴーを成就させ、蘇生させた《終剣連結 アビスハリケーン》のSA(スピードアタッカー)付与+強制自壊から≪俺神豚 ブリタニア≫を無限攻撃させる。

 それが、あごもんの駆るデッキ【水闇火ブータンドロン・ゴー】である。  ターンを返したあごもんに対し、霧雨魔理沙は《堕呪 エアヴォ》をチャージして《堕呪 バレッドゥ》で手を進める。ドロン・ゴーに対して良く刺さる殿堂入りカード、《ガル・ラガンザーク》を墓地に送るなど順調な滑り出しだ。

 これにはあごもんも大いに悩むことになる。じっくり悩んだのち、《制服槍 ブータン》をチャージして《神豚 ブータンPUNK / ブータン両成敗》をクリーチャー面で召喚してターンを終える。

 直後、《堕呪 ボックドゥ》をチャージした霧雨魔理沙の手から出てきたのは1ターン遅れての登場となる《卍 新世壊 卍》。即座に《堕呪 ゾメンザン》を唱えてカウントを進め、スピーディにゲームを終わらせにかかるプランのようだ。

 辛そうな顔のあごもんだが、それでも淀みなく《戦慄の魔女 アリス / 神にも届く旋律》チャージからの2枚目の《戦慄の魔女 アリス / 神にも届く旋律》をクリーチャー面で召喚。3枚ドローから、山札の上2枚を確定させる。

 この陣容なら【水魔導具】の切札である《「無月」の頂 $スザーク$》の破壊効果にもラスト・バーストからのメクレイドやドロン・ゴーで対抗できるうえ、次のターンに《制服槍 ブータン》あたりから能動的に爆発させていくこともできる。

 これで今度大いに悩むことになったのは霧雨魔理沙。ドロン・ゴーのテキストを再び確認して考えたのち、手札から唱えられるのは≪堕呪 ブラッドゥ≫!あごもんを対象にすることで、墓地こそ空っぽながら積み込んだトップを散らすことに成功する。《卍 新世壊 卍》のカウントを進めつつ、ドローを進める。

 そして、2マナしか残っていない状況から「これしかない」カードである《堕呪 ゾメンザン》を2連打!見るみる間に、無月の門99が開く準備が整う!

 ターン終了時に唱えられるのは、もちろん《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》。墓地が肥えておらず踏み倒し枚数こそ少ないが、それでも《ガル・ラガンザーク》《「無月」の頂 $スザーク$》がバトルゾーンに姿を現す。  《「無月」の頂 $スザーク$》の効果でハンデスしつつ≪神豚 ブータンPUNK≫を破壊する霧雨魔理沙だが、そこからウルトラ・ドロン・ゴーで出てくる≪俺神豚 ブリタニア≫を制そうとしたのち「しまった」という表情。

 《ガル・ラガンザーク》の効果が、「相手ターン」にしか刺さらないことを見落としていたのだ。思考に負荷をかけることで熟練の相手からもこうしたミスを誘発させることができる…というのも、またこの手の少数デッキの特徴である。  目論見が崩れる霧雨魔理沙を尻目に、あごもんは墓地のカードを≪俺神豚 ブリタニア≫で全回収。

 ゲームプランを立て直したい霧雨魔理沙だが、それでも追加ターンの利はこちらにある。じっくり悩んだのち、《堕呪 エアヴォ》をチャージしつつ《月下旋壊 ド・リュミーズ》で手札をリフレッシュにかかる。

 さらに2枚目の《卍 新世壊 卍》を設置して《堕呪 バレッドゥ》を唱えることで、再び無月の門99のオープンを狙うようだ。めげずに勝利を目指して最適解を見つけ出し、動き続ける霧雨魔理沙の切り替えが光る。


 ターンが無事に帰ってきたあごもんは、今度は《ガル・ラガンザーク》のテキストを確認する側に回る。自身のターンのドロン・ゴーが不可能になることを把握すると、《神豚 ブータンPUNK / ブータン両成敗》の呪文面で《「無月」の頂 $スザーク$》と≪戦慄の魔女 アリス≫を破壊にかかる。

 こうなると、ラスト・バーストで≪神にも届く旋律≫が唱えられ、アウトレイジ・メクレイド8が行われる。山札から訪れたのは、さらなる≪戦慄の魔女 アリス≫。事実上一方的に除去を行いつつ、山札操作のチャンスを得た格好だ。  山札の上と下に一枚ずつカードを送ろうとするタイミングで、ジャッジから声がかかる。破壊順とその処理に関するジャッジからのテキストチェックである。

 結果的に問題がないことはすぐに分かったが、これであごもんはカバレージを書いている筆者(手元のPCで検索した)を含めてこのフィーチャー席にいる全員にテキストチェックを行わせた形になる。これはさすがにGP史上でも初めてになるのではないだろうか。


 ともあれ、ターンが帰ってきた霧雨魔理沙は全力で《卍 新世壊 卍》のカウントを進めにかかる。山札の枚数をチェックしたのち、《堕呪 ゴンパドゥ》《堕呪 ゴンパドゥ》→≪堕呪 ブラッドゥ≫と連打!

 山札を3枚まで削りながら、再び無月の門99のスタンバイに成功する。

 再び《神聖牙 UK パンク》《戦武の無限皇 ジャッキー / 「俺たちの夢は終わらねぇ!」》のテキストチェックを行ったのち、その後の追加ターンを確信しつつ《ガル・ラガンザーク》にてシールドを詰めにかかる。

 ……だが。あごもんのデッキは。「アウトレイジ」で満ちているのだ

 シールドから出てきたのは、《俺神豚 ブリタニア /「カツキング、俺とお前の勝負だ!」》《終末の時計 ザ・クロック》  アウトレイジの基本中の基本トリガーたるこのカードが登場すると、「ターン終了時に無月の門99を開く権利」ともどもターンの残りが吹き飛んでしまう!しまったという表情の霧雨魔理沙。

 ≪「カツキング、俺とお前の勝負だ!」≫で墓地を肥やしたのちにターンスキップ効果が処理され、無事にあごもんにターンが帰ってくる……が、限界まで山札を掘られたうえで無月の門99のカウントがそのままな以上依然不利には変わりはない。
 
 打開策を求めて、≪♪やせガエル 負けるなケローラ スパイラル≫と≪戦慄の魔女 アリス≫で山札を掘り進めるあごもん。霧雨魔理沙の墓地の魔導具の枚数もチェック(ここまでチェックの多い試合も珍しい)し、考えながら山札を仕込む。

 そして、意を決したかのようにタップしている《ガル・ラガンザーク》に向けて≪戦慄の魔女 アリス≫で攻撃にかかる。能動的にラスト・バーストを唱え、≪神にも届く旋律≫で≪戦武の無限皇 ジャッキー≫を繰り出す!

 これで、最低限次のターンに霧雨魔理沙がコストを払って呪文を唱えることは封じられた。ここから先は、「ターンが帰ってきますように」という祈り……いや、デッキを信じられるかの世界だ。

 やるべきことをやり尽くしたあごもんは、ターン終了宣言を行う。


 運命の、霧雨魔理沙のターン。  「一応」と言った感じで《好詠音愛 クロカミ》が召喚されたのち、予定調和の無月の門99が開く。「コストを支払わず」唱えられるのは《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》

 出てくるのは、《「無月」の頂 $スザーク$》が2体。破壊しても安全な≪戦武の無限皇 ジャッキー≫と《終末の時計 ザ・クロック》とともに、あごもんの手札も2枚落とされる。

 そして、追加ターン。  コスト無限の枷から解き放たれた《神の試練》が霧雨魔理沙の手札から唱えられると、ここまであらゆる「試練」に抗ってきたあごもんもついに頭を抱え天を仰ぐ。

 ≪堕呪 ブラッドゥ≫で自らの山札を回復して事実上の半無限ターンが成就したのを確かめたのち、霧雨魔理沙の操る《「無月」の頂 $スザーク$》の群れがあごもんを貫いた。

Winner:霧雨魔理沙

 勝者インタビューに向かう霧雨魔理沙を「頑張ってください!」と見送ったあごもんに、デッキ選択理由を尋ねてみた。

あごもん「好きだから……というのもあるんですが、環境に通りがいいからですね」

 聞けば、《飛翔龍 5000VT》が【水闇自然ジャオウガ】や【マジック】に、≪神にも届く旋律≫による受けが【アポロヌス】に有利に働くという。

 また、今回の【水魔導具】も≪戦武の無限皇 ジャッキー≫が早い段階で機能すればまた違う結果があっただろう。

 一見奇妙に見えるこの構築も、このGPで勝ち抜くためにデッキを練り続けた一つの結果なのだ。

 このデッキの存在そのものが、「勝利を目指すアプローチはひとつではない」という事実を今一度物語っているようだった。


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