デュエル・マスターズ

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DMGP2023-2nd Round 3:いっぺこ vs. 7ok!/Mrはい

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:瀬尾 亜沙子

 頂上に立った者にしか、見えない景色がある。

 これまでのグランプリとは異なり、会場の中央で櫓のように高みへとせり上がったフィーチャーマッチ・エリアへと階段を上って現れたのは、今年の4月にオリジナル・フォーマットで開催されたデュエル・マスターズ グランプリ2023-1st 2日目において「火単我我我」を駆り頂上に立ったディフェンディング・チャンピオン、いっぺこだ。

 そう、第3回戦といえば2Bye(不戦勝)持ちの強豪たちが解き放たれるラウンド。2Byeは序盤のランダムなデッキとの当たりを回避できるというメリットがある一方で、エンジンがかかりきっていない中で2連勝した好調の対戦相手といいきなり当たることになるというデメリットもある。

 はたしていっぺこの対戦相手は、推しキャラの法被をまとい一際気合が入った様子の7ok!/Mrはい。ちなみに読み方は「なおき」とのこと。

7ok!/Mrはい「このプレマ、めちゃめちゃかっけー……」

いっぺこ「前回優勝した時も《我我我ガイアール・ブランド》のプレイマットでしたね」

7ok!/Mrはい「僕も前回トップ64に入賞して《我我我ガイアール・ブランド》取ったんですよ。こっちゃーさんに負けちゃったけど……」

 あらかじめ敷かれたプレイマット、配信用のカメラ、専属のジャッジ。さらに、普段にはない高さ。慣れないフィーチャーマッチ・エリアで7ok!/Mrはいは、息をはぁーと深く吐く。

7ok!/Mrはい「呼ばれて嬉しい反面……緊張するな」

 それでも着々と対戦の準備が進み、2人は互いに相手のデッキをシャッフルする。

7ok!/Mrはい《勝利宣言 鬼丸「覇」》のスリーブ、格好良いな……」

いっぺこ「前回もそれだったんで……」

 グランプリで優勝するには、実力だけではなく運も必要だ。

 使うデッキのプレイをどこまでも突き詰めたとしても、デュエル・マスターズにおいては勝つためにシールドをブレイクするという行動を基本的に伴う以上、上ブレや下ブレからは逃れられない。その裏目をなくせるのがループデッキだが、史上最強のループデッキとも評された「サガループ」は殿堂により既に環境を去っている。

 そして、1試合単位ですらそれなのだから、4000人規模のグランプリで予選9回戦+決勝7回戦を勝ち抜くのに運が絡まないはずがない。

 ゆえに、いっぺこが前回GPで優勝したのと同じ絵柄のスリーブを使い験を担ぐのも、頂上に至るための合理的な努力の一つなのだ。

 あるいはそれは、7ok!/Mrはいが文字通りの勝負服で己のテンションを高めて戦いに臨もうとすることもまた同様だ。

 何が勝敗を分けるかわからない以上、尽くせる手管はすべて尽くすしかない。己の行動が山札の一番上のカードを変えると、そう本気で信じられるようになったらカードゲーマーの仲間入りだ。

 だから。  頂上に至るための99%と100%との間、そのわずか1%の差を埋めるべく互いに全力の、第3回戦が始まった。


Game

 ジャンケンで先攻となった7ok!/Mrはいが「ちょっと考えます」と言いつつマナチャージしたのは、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》  環境のデッキでこれを採用するものといえば「グラスパーループ」。現在の環境ではそれほど上位メタというわけではないが、大型大会ではループが勝ちやすいというジンクスに乗った選択か。

 対するいっぺこのマナチャージは《単騎連射 マグナム》。前回優勝の験を担いだ「火単我我我」の線もまだ捨てきれないが、メタゲームに照らせば本命は「水火マジック」系といったところだろう。

 だが、返す7ok!/Mrはいが《死神XENARCH・ハンド》チャージから《フェアリー・Re:ライフ》を唱えてターンを返したところで、《死神XENARCH・ハンド》の効果を確認したいっぺこがチャージしてターンを返したそのカードは、予想外の《邪龍 ジャブラッド》 7ok!/Mrはい「ジャブラッドかー……」

 「闇単アビスロイヤル」。アビス・レボリューション第3弾で《アビスベル=覇=ロード》が登場したことにより「メクレイド」と「革命チェンジ」を主軸にした「闇自然アビスロイヤル」の方が主流になっている現状では、少し意外な選択と言えるかもしれない。

 とはいえ、7ok!/Mrはいにとっては後攻2ターン目のアクションがなかったことが何よりもありがたい。《フェアリー・Re:ライフ》チャージからの《天災 デドダム》という最高の動きで、《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》をマナに置きつつループ始動への手を進める。

 対し、返すいっぺこのアクションは《絶望と反魂と滅殺の決断》チャージからの《邪龍 ジャブラッド》召喚というゆっくりとした立ち上がり。それを尻目に7ok!/Mrはいは《流星のガイアッシュ・カイザー》チャージから《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》を唱え、マナの数だけで言えば余裕でループ寸前というところまで漕ぎつける。

 ただ、ここまで山札を掘ってもループに必要な《グレート・グラスパー》が1枚も見えていないことが、7ok!/Mrはいにとっての瑕疵になるかどうか。  一方、対するいっぺこは後攻4ターン目、《ハンマ=ダンマ》チャージからの《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で、《飛翔龍 5000VT》《流星のガイアッシュ・カイザー》《蒼狼の王妃 イザナミテラス》という3枚の手札からループパーツの《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を捨てさせる。

7ok!/Mrはい「チャージ考えます。ハンド何枚ですか?」

いっぺこ「3枚です」

 それでも7ok!/Mrはいは引き込んだ《天災 デドダム》でマナに《スクリプト》を置きつつ、見つけた《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》をそのまま唱えてリソースを切らさずにマナを大量に伸ばすことに成功する。

いっぺこ「いま手札は?」

7ok!/Mrはい「3枚」  だが、いっぺこは《邪龍 ジャブラッド》チャージからの《邪侵入》蘇生対象を考えるため、いっぺこは頭の中で状況を整理する。

 7ok!/Mrはいの手札は3枚で、《飛翔龍 5000VT》《流星のガイアッシュ・カイザー》と前のターンの《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》で加えた見えていない1枚。加えて言えば、《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》によっても《グレート・グラスパー》はマナに置かれなかった。

 だとすれば、その1枚のアンノウン・カードは一体何だというのか。

いっぺこ「マナが今?」

7ok!/Mrはい「にーしーろーやーとお……11マナです」

 いっぺこは少考ののちに《アビスベル=ジャシン帝》を蘇生すると、そのまま残った2マナで《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》を「アビスラッシュ」する。

 はたして7ok!/Mrはいの手札は……公開情報の《飛翔龍 5000VT》《流星のガイアッシュ・カイザー》、そして《グレート・グラスパー》  7ok!/Mrはいのマナには《蒼狼の王妃 イザナミテラス》《スクリプト》《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》があり、バトルゾーンにも進化元になれる《天災 デドダム》もある。《グレート・グラスパー》を抜かなかったとしてもこの時点ではループ確定ではおそらくないが、その場合でも少なくともさらなる《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を引かれた瞬間にゲームエンドとなってしまう。

いっぺこ「墓地のカード見てもいいですか?」

 7ok!/Mrはいの墓地を念のため確認し、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》の「シビルカウント」能力を使ったとしてもループを防ぐ役には立たないことを察したいっぺこは、ループの起点となる《グレート・グラスパー》を落としてループを徹底的に妨害することを選択する。「アビスラッシュ」した《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》が山札の下に行ってターンエンド。

 ただいっぺこはその代償として、このターン《邪侵入》を唱えていたためにエンド時に7ok!/Mrはいに《流星のガイアッシュ・カイザー》を召喚されてしまう。 7ok!/Mrはい「ハンドが2枚ですよね?」

いっぺこ「2枚です」

 さらに返すターン、7ok!/Mrはいが引き込んだのは《エンペラー・キリコ》そのままチャージして12マナから《地龍神の魔陣》を唱えると、仮にこの3枚で《グレート・グラスパー》に触れなくても、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》さえ見つかれば山札から無理矢理出すルートも選択肢に入ってくるという状況。  だが3枚の中に《蒼狼の王妃 イザナミテラス》はなく、代わりに見つかった《地龍神の魔陣》を加えてもう1回チャレンジ。山札は残り9枚、うち下2枚は見えている状態での3枚……だが、まだ見えない。さらに残り6マナぴったり残して、3枚目の《地龍神の魔陣》に望みを託す。

 とはいえ、ここで見る3枚は残り山札8枚中、知らないカードが上4枚しかないという状態での上3枚だ。さすがに見えるはず……残り2枚の《蒼狼の王妃 イザナミテラス》が、2枚ともシールドに落ちでもしていない限り。

 はたして、見た3枚は《グレート・グラスパー》《グレート・グラスパー》《水上第九院 シャコガイル》。序盤全く見えなかった、残りの《グレート・グラスパー》はここにいた。だが既に残りは6マナ、しかも《蒼狼の王妃 イザナミテラス》は見えない。まさか、2枚楯落ち?

 選択肢がない7ok!/Mrはいは、仕方なく《グレート・グラスパー》を回収するだけした後、《飛翔龍 5000VT》を召喚してターンを返す。

いっぺこ「手札2ですか?」

7ok!/Mrはい「2です」

 だが、いっぺこは《絶望と反魂と滅殺の決断》の手札破壊モード×2によって加えた《グレート・グラスパー》ごと7ok!/Mrはいの残り手札をすべて刈り取る。

 そして7ok!/Mrはいの、ある意味での実質的なラストターンがやってくる。

 なぜならこのターン引き込むのは、シールド以外で見ていない山札の最後の1枚だからだ。

 5枚のシールドを含めた7ok!/Mrはいにとっての6枚の非公開情報の中に、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》は2枚ある。

 問題は、それが山札に眠っているかどうか。

 最後の、その1枚は。  《蒼狼の王妃 イザナミテラス》

 マナから進化した《エンペラー・キリコ》が残る山札から《グレート・グラスパー》《水上第九院 シャコガイル》《飛翔龍 5000VT》を呼び出すと、《水上第九院 シャコガイル》が7ok!/Mrはいの山札を修復し、《グレート・グラスパー》がいっぺこの《アビスベル=ジャシン帝》をマナに送る。

 一気に形勢を逆転されてしまったいっぺこは、墓地から《絶望と反魂と滅殺の決断》を唱えて7ok!/Mrはいが残した2枚の手札を再び刈り取るくらいしかできない。

 ただ、7ok!/Mrはいの側もここからループに入るには一手間かかる。山札の中にループパーツは戻っているが、《邪侵入》《アビスベル=ジャシン帝》蘇生からの「アビスラッシュ」連打を受け止められるとも限らない。

 だから。

 返すターン、7ok!/Mrはいは意を決すると、《グレート・グラスパー》での攻撃時にマナから《飛翔龍 5000VT》を呼び出しながらT・ブレイク。S・トリガーはなく、さらに《エンペラー・キリコ》でW・ブレイク……これも通る。  そして、世にも珍しい《水上第九院 シャコガイル》のダイレクトアタックが、まさしく紙一重の戦いにおける決着の一撃となったのだった。

Winner: 7ok!/Mrはい

 激闘を終え、すべてを出しきった様子の2人に、簡単に話を聞いてみた。

--「いっぺこさんの『闇単アビスロイヤル』というデッキ選択は、どういった理由からでしょうか?」

いっぺこ『水火マジック』に有利なのと、『闇自然アビスロイヤル』はブレが激しいために2Byeだと当たらないだろうと思って、その他のデッキには満遍なく戦えるということで選択しました」

--「となると、『グラスパーループ』は少し予想外という形だったんでしょうか?」

いっぺこ「予想外ではあったんですが、《ブルーム=プルーフ》を引けていればもっと戦えたのに、というところです。少し惜しかったです」

--「7ok!/Mrはいさんは、『グラスパーループ』はどういった理由から選択されたのでしょうか?」

7ok!/Mrはい「前回のグランプリでは『サガループ』がいましたが、《絶望神サガ》がいなくなった後に注目できるデッキタイプとして候補にあげていたんです。最終的に殴らないで勝てるプランがとれて、対応力もあって、《飛翔龍 5000VT》でロックもあってということで選択しました」

--「普段からも使われているんでしょうか?」

7ok!/Mrはい「そうですね、アナカラー(水闇自然)系統の中だと一番自信があるデッキでした」

--「……ところで、3枚目の《蒼狼の王妃 イザナミテラス》って公開領域の最後にあったんですよね?」

7ok!/Mrはい「そういうことになりますね」

 「運も実力のうち」とは言うが、運を最後まで手放さない正確なプレイ選択こそが、山札の最後の1枚を、すなわち7ok!/Mrはいの運命を、まさしく変えたのだろう。

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