DMGP2023-2nd 準々決勝:ユウキング/わいきん vs. おなかいたい
ライター:山口 海斗(ジャイロ)
撮影者:後長 京介
経験の差がより表れやすくなる勝負だが、ことユウキング/わいきんにその心配は不要だろう。
予選9回戦を負けで終えたユウキング/わいきんはトーナメント進出者128人のうち105位。常に後攻というハンデを背負いながらも、BEST8まで漕ぎ付けたその腕に疑いの余地はない。謹製の【水闇自然ジャオウガ】はどこまで行けるか。
対するおなかいたいは【水闇魔導具】を巧みに操りこの場に居る。4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》まで飛び道具の少ないデッキのため、一手一手に慎重な判断が求められる。今この場に居る彼は常に緊張の選択を続けてきたはずだ。ここにきて2本先取という、今までとは違う考え方を要求されることになるが、勝負の行方はいかに。早速見ていこう。
Game 1
先攻:おなかいたいユウキング/わいきんは2ターン目《天体妖精エスメル /「お茶はいかがですか?」》の上面、3ターン目《キユリのASMラジオ》と、理想的な展開でおなかいたいを引き離す。《キユリのASMラジオ》から発射されるのは《天災 デドダム》に《Disメイデン》。さらにアンタップインした2マナから追加の≪天体妖精エスメル≫。マナを7まで伸ばし切ると、リソースゲームを決定的なものにした。
リソースゲームにおいて【水闇自然ジャオウガ】に、否、“水闇自然”というデッキ基盤に勝るものは無い。
おなかいたいは【水闇魔導具】のメインエンジンである《堕∞魔 ヴォゲンム》で、魔導具を一挙に10枚用意する。が、時すでに遅し。ここは【水闇自然ジャオウガ】の、ユウキング/わいきんの舞台だ。
ユウキング/わいきんは溢れんばかりのマナと手札を使って勝利をより確実なものにする。《同期の妖精 / ド浮きの動悸》の上面を弾除けに用意し、《天災 デドダム》で手札の最終調整を終えると、《幻緑の双月 / 母なる星域》の呪文面でバトルゾーンに《CRYMAX ジャオウガ》を送り出した! 《CRYMAX ジャオウガ》の攻撃に対しておなかいたいは《堕呪 ボックドゥ》で抵抗を試みるも、≪同期の妖精≫がその抵抗すら喰い止める。まずはユウキング/わいきんが後攻という不利を捲って1勝を掴んだ。
ユウキング/わいきん 1-0 おなかいたい
後攻という不利を捲り……今更言うのも野暮だろう。ユウキング/わいきんは常に後攻を捲ってきた。今日の彼にとって平常運転そのもの。淀みがない。
Game 2
先攻:おなかいたいおなかいたいが《堕呪 ゴンパドゥ》に《堕呪 バレッドゥ》と手札と墓地を育て、ユウキング/わいきんは≪天体妖精エスメル≫から《キユリのASMラジオ》によって《Disメイデン》と≪同期の妖精≫を送り出し、手札とマナを育てる。この序盤、相手への干渉よりも自身の動きを優先したいという考えは両者で一致したようだ。
この均衡を先に破ったのはおなかいたい。4ターン目に《堕呪 バレッドゥ》で《ガル・ラガンザーク》を捨てると、《堕魔 ドゥポイズ》の召喚に合わせて墓地から《ガル・ラガンザーク》の夢幻無月の門を宣言と同時に召喚。ユウキング/わいきんの行動は大幅に制限され、《Disメイデン》の追加のみで返しのターンを終える。
これまでの展開を見てもらうと分かる通り、【水闇魔導具】というデッキは山札を掘り進めるスピードが速い。デッキ内からピンポイントな回答を用意することは得意中の得意だ。【水闇自然ジャオウガ】が小型クリーチャーを並べてきたこの瞬間、こういったこともできる! 《飛翔龍 5000VT》!
横に広がり切ったユウキング/わいきんのクリーチャー達は、全て手札に戻され、次のターンの展開すらも阻まれる。メガ・ラスト・バーストの≪ド浮きの動悸≫すらも、ジャストダイバーの前にはただの1ドローに終わった。
このターンも展開を阻害されたユウキング/わいきん。何もできずにターンを……返さない!ユウキング/わいきんは7コストで《CRYMAX ジャオウガ》を召喚。パワー13000の《CRYMAX ジャオウガ》は《飛翔龍 5000VT》のロック圏外だ。
《CRYMAX ジャオウガ》でおなかいたいの《ガル・ラガンザーク》を破壊し、シールドを0枚まで追い込む。直前の《飛翔龍 5000VT》によって追加の攻撃手がいないため、ここでターンを終えるユウキング/わいきん。一見無謀な強行突破に見えるが、強気なプレイには理由があった。
ユウキング/わいきんは手札に次の《CRYMAX ジャオウガ》を抱えていたのだ。ブロッカーである《ガル・ラガンザーク》を召喚されても、攻撃時の効果で破壊しながらおなかいたいにダイレクトアタックまで持ち込める。シールドを無くしてしまえば、《秩序の意志》のS・バックも怖くない。
ユウキング/わいきんのターン終了時におなかいたいは《「無月」の頂 $スザーク$》の無月の門・絶を宣言し、《CRYMAX ジャオウガ》とユウキング/わいきんの手札を破壊するが、ユウキング/わいきんの表情は変わらない。
おなかいたいも先程の《CRYMAX ジャオウガ》攻撃の意図を汲んだのだろう。相手の手札にはほぼ必ず《CRYMAX ジャオウガ》があると。ならば、今ここで対処せねばならない。
《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚し、《堕呪 ボックドゥ》を対象無しで墓地に準備する。おなかいたいのターン終了時、手札から宣言されたのは《「無月」の頂 $スザーク$》が2体。バトルゾーンには魔導具1体、墓地には先ほどの《堕呪 ボックドゥ》が1枚のみ。
《「無月」の頂 $スザーク$》2体の召喚を成功させるには、《堕∞魔 ヴォゲンム》が増やす13枚の墓地のうち、10枚は魔導具カードでなければならない。ここの結果がこのゲームの分水嶺になるだろう。両プレイヤー、周りのジャッジ、筆者までもがそれを確信していた。緊張の一瞬、おなかいたいが墓地に落としたカードの中に魔導具は……
11枚あった。これにより2体の《「無月」の頂 $スザーク$》がバトルゾーンに召喚されると、ユウキング/わいきんの手札に眠るであろう《CRYMAX ジャオウガ》を落としにかかる。 ユウキング/わいきんの手札は3枚。《「無月」の頂 $スザーク$》1体目の効果、《キユリのASMラジオ》を落とす。《「無月」の頂 $スザーク$》2体目の効果、ユウキング/わいきんの墓地に落ちたのは《CRYMAX ジャオウガ》!!
逆転の芽を摘まれたユウキング/わいきん。トップドローに全霊を懸けるもそこに《CRYMAX ジャオウガ》の姿はない。
3体立ち並ぶ《「無月」の頂 $スザーク$》に《飛翔龍 5000VT》、大型クリーチャーの行軍を止める術は、ユウキング/わいきんには無かった。
ユウキング/わいきん 1-1 おなかいたい
先に勝負をしかけたのはユウキング/わいきん。それを見事に捌き、カウンターを決めたおなかいたいがこのロングゲームを制して、決着は最終戦へともつれ込んだ。
と、ここにきて制限時間が両者を追い込む。前述の2戦を終えて、残る時間は10分程。時間切れによる決着はお互い望まないもの、今までよりも速く、精度の高いプレイが求められる最終戦だ。
Game 3
先攻:ユウキング/わいきん初めての先攻を3戦目にして掴むが、2ターン目の動きが無いユウキング/わいきん。先攻の利を活かしきれないのは痛手に見える。対するおなかいたいは絶好調。2ターン目、3ターン目と《堕呪 バレッドゥ》を連打し、《ガル・ラガンザーク》の召喚まで辿り着いた!
《キユリのASMラジオ》によるゲームメイクを止められたユウキング/わいきん、ここからリソースゲームを仕掛けるには、手段も時間も圧倒的に足りない。
しかし、これで終わりではないのが“水闇自然”という基盤の強さだ。
《天災 デドダム》で手札を減らさずにマナを伸ばし、余裕のできた手札を≪幻緑の双月≫でマナに変換する。おなかいたいが《堕∞魔 ヴォゲンム》で墓地を13枚増やして攻めの準備を整えたのを契機に、ユウキング/わいきんは意を決してマナゾーンのカードを7枚タップした。
《CRYMAX ジャオウガ》!
攻撃時に《ガル・ラガンザーク》を破壊し、おなかいたいのシールド3枚を割り切る。横には《天災 デドダム》と≪幻緑の双月≫。1体止めるだけでは止まらない、おなかいたいに2面要求を突きつけるユウキング/わいきん。
制限時間も少ない、この攻撃さえ通れば!ユウキング/わいきんはBEST4に王手をかけた!
おなかいたいが恐る恐るシールドを覗き込むと、そこには… 《堕呪 エアヴォ》がいた。
≪幻緑の双月≫をユウキング/わいきんの手札に戻し、《ガル・ラガンザーク》を夢幻無月の門で召喚。ユウキング/わいきんの猛攻をギリギリの所で凌ぎ切ったおなかいたい。先ほどの《堕∞魔 ヴォゲンム》によって増え切った墓地を元に《「無月」の頂 $スザーク$》を2体召喚。
自身の《CRYMAX ジャオウガ》によって3枚になってしまったシールドを《「無月」の頂 $スザーク$》が割り切り、制限時間いっぱいのロングゲームは《「無月」の頂 $スザーク$》の攻撃によって幕引きとなった。
ユウキング/わいきん 1-2 おなかいたい
Winner:おなかいたい
Game1を観るだけでは【水闇自然ジャオウガ】の一方的な勝利を予想せずにはいられなかったが、《飛翔龍 5000VT》による見事な切り返しから勝利を掴んだGame2、スピーディながらもS・トリガーによる逆転勝利というデュエルマスターズの醍醐味を魅せてくれたGame3、加えて2本先取勝負に伴う時間制限下での攻防、見る者を唸らせる華麗な逆転劇であった。
2023年上期ランキング上位のユウキング/わいきんも、続く準決勝を見事勝利したおなかいたいも、どちらも今年の日本一決定戦の出場資格を得ている。再び対戦した際に今回の様な痺れる戦いが見られるかもと思うと楽しみなのは隠せない。読者の皆にもこの熱気が、緊張が、面白さが、少しでも伝わっていれば嬉しい。日本一決定戦での彼らの活躍にも期待だ。
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY