デュエル・マスターズ

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DMGP2023-1st Day1(アドバンス)決勝Round 3:るるる vs. 時雨みぐれ

ライター:小林 龍之介
撮影者:瀬尾 亜沙子


※撮影時のみマスクを外しています。  GPはお祭りである。
 デュエマ、スタート!の合図で地鳴りのようなハンドシャッフル音に包まれる瞬間はコンサートの開幕を思わせる。
 約4000人4000通りの悲喜こもごもが飛び交い、大きなうねりとなって会場は混沌に包まれる。
 この熱量が大型大会の魅力なのだ。

 しかし、会場の中には一か所浮世離れした空間がある。
 フィーチャーマッチテーブルだ。
 ついたてで区切られただけの席は喧噪のただなかにあるはずだ。
 しかし、何故かこの空間にはノイズが入ってこない。
 極度の集中状態は音の洪水の中でも2人だけの閉鎖空間を生み出すのだろう。

 ジャッジに連れられ対戦する両者が席に着く。
 準備のあいだ静かな時間がテーブルを満たす。

 シャッフルを終えて配信を待つ間は否が応でもカメラの向こうを意識させてしまう。

 「フィーチャーは初めてなんで緊張します」と声をかけるるるる
 時雨みぐれも「僕はGP自体が初めてなので緊張しっぱなしです」とにこやかに応え、2人の中につかの間の穏やかな雰囲気が流れる。
 何気ない会話を交わすうち気付けば2人の震えは止まっていた。
 良い試合にしたいじゃないですか、と気持ちが共鳴する。

 実のところるるるは全国大会2019にランキング上位者として参加した強豪プレイヤーで、GPのTOP32はこれで3回目である。
 しかし、これまでの2回は32人の壁を越えられず敗退してきた。
 ここでの勝利は目の前の相手だけでなく過去の自分に打ち勝つという意味を持つ。
 他の誰よりもこの一戦にかける気持ちは強い。

 るるるはこの緊張感を「たまらなく好き」 と表現した。

Game

 先攻を取ったのはるるる。
 初手には《メンデルスゾーン》《炎龍覇 グレンアイラ / 「助けて!モルト!!」》《超戦龍覇 モルトNEXT》と黄金ムーブが揃っている。
 先攻2ターン《メンデルスゾーン》はどんなデッキにも勝てるのがNEXTデッキの魅力だ。

 時雨みぐれは落ち着いた様子で《コダマダンス・チャージャー》を置きターンエンド。
 この1マナの情報だけで相手がサガループと理解したるるる。
 ぽつりと「一番嫌なの来たな……」と呟く。
 最速ループに勝つには最速ムーブしかない。

 るるるは2ターン目に《メンデルスゾーン》で2マナ加速に成功するが浮かない表情である。
 理想的な展開に見えるが、《メンデルスゾーン》を撃つためにマナに置けるカードが火文明を持たない《インフェル星樹》しか無かったのだ。
 これは、《超戦龍覇 モルトNEXT》のマナ武装が1ターン遅れることを意味している。

 時雨みぐれは《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》呪文面で墓地にクリーチャーを2枚揃える。
 その堂々とした立ち振る舞いはとてもGPが初めてとは感じさせない。
 こちらはあと《絶望神サガ》が揃えば勝ちますよ、何かありますかと無言で問いかける。

 るるるはマナチャージのみで3ターン目を終える。
 マナに火のカードが4枚になった。次のターンが来れば≪「助けて!モルト!!」≫から《超戦龍覇 モルトNEXT》のワンショットを仕掛けられる。

 次のターンが来れば。

 祈るように手を合わせ、相手のターンを静かに見守る。

 ゆっくりと時雨みぐれが3マナをタップし――静かに提示されたカードは《コダマダンス・チャージャー》

 深いため息をつき、ぽつりと「生きてる」。
 るるるの呟きがフィーチャーテーブルの賑やかな静寂に吸い込まれていく。

 実は《絶望神サガ》が1枚も見えていないにも関わらず、時雨みぐれはポーカーフェイスを貫いている。
 それは手札の状況を悟らせないことで相手の判断を難しくさせる高度なテクニックだ。
 与えられた手札で最良のプレイを取り続ける。
 間違いない。この2人の対戦は会場に1席しかないフィーチャーテーブルに相応しい。

 そして、るるるが火マナをチャージしたことで全ての準備が整った。
 5マナで≪「助けて!モルト!!」≫、登場するのは《超戦龍覇 モルトNEXT》  8年前に登場して以来、1枚でゲームに勝てるカードとしてデュエル・マスターズの歴史を象徴する存在である。
 装備するドラグハートは《爆銀王剣 バトガイ刃斗》だ。
 アタック時効果で《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》が捲れ、≪爆熱王DX バトガイ銀河≫に龍解した。
 そのまま《超戦龍覇 モルトNEXT》のWブレイクに入る。

 時雨みぐれが耐えるにはS・トリガー≪エマージェンシー・タイフーン≫で《絶望神サガ》を墓地に送ったあと、《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》の呪文面で蘇生してループに入るしかない。
 2枚要求かつブレイク順が逆でもループは成り立たない。
 しかし、フィーチャーテーブルは数々のドラマを目撃してきた。
 勝ち筋があるのなら己のデッキを信じるだけだ。今度は時雨みぐれが祈る番である。  デュエル・マスターズの華、シールドチェックの瞬間がやってきた。

 2枚のシールドを見て、静かに頷きながら「ないです」。

 ≪爆熱王DX バトガイ銀河≫アタック時に手札から《禁断竜王 Vol-Val-8》が出てくる。
 最後のシールドに手をかける時雨みぐれ。

 そこにトリガーが無いことを確認した瞬間、ずっと保っていたポーカーフェイスが崩れた。

 まるでイヤホンのノイズキャンセリング機能をオフにしたように喧噪が流れ込む。
 緊張が解けて現実に引き戻される感覚でるるるは勝利を実感する。

 凝縮された4ターン。
 喉元に刃を突き付けあうヒリつきを求めて彼らはまたこのGPの舞台に立つのだろう。
 なぜなら、この緊張感が「たまらなく好き」なのだから。

Winner:るるる

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