DMGP2023-1st Day2(オリジナル)3位決定戦:出戸ももぐま vs. 札剣
ライター:河野 真成(神結)
撮影者:三田 健太
ただし現在のDMGPでは、この問題に結論が出ている。答えは「是」。
何故ならこの3位決定戦の勝者こそが、年度末の全国大会の出場権を獲得出来るからだ。与えられるDMPポイントは同じ。されど、3位と4位には雲泥の差がある。
決勝と並んで……或いはそれ以上に残酷なのが、この3位決定戦なのだ。
そして全国大会の枠を賭けて争うのは、出戸ももぐまと札剣。両者ともに、準決勝は不完全燃焼に終わっただけに、この戦いに期するものがあるだろう。
使用デッキは出戸ももぐまが【水闇自然ジ・ウォッチ】で、札剣が【火自然アポロヌス】。
アポロが駆けるか、凌げるか。勝負は一瞬。アポロが絡むマッチアップは、大抵そんな言葉になりがちだ。
だがこの試合では、その一瞬に懸かるものがあまりにも重いのだ。
※撮影時のみマスクを外しています。
Game1
先攻:札剣ゲームは当然、1ターン目から動く。
まず先攻の札剣が、1コストで《ストリエ雷鬼の巻》からスタートする。
水闇自然のデッキである以上、しばらくは眺めるしかない出戸ももぐま。だが、慎重にマナ置きを検討する。「あの時迂闊に埋めなきゃよかった」では、悔やんでも悔やみきれない。やがて《CRYMAX ジャオウガ》を埋めてターンを返した。
2ターン目、札剣は順調に《進化設計図》を唱える。しかし回収できたのは《禁断の轟速 ブラックゾーン》のみだった。これには思わず首をかしげて、ターンを返す。対して出戸ももぐまは、《とこしえの超人》を埋めてターンを終了。
動き出しとなる3ターン目。
札剣は《轟く侵略 レッドゾーン》をチャージしてから《オンソク童子 <ターボ.鬼>》を召喚し、ドローを進める。先攻の特権があるので、まだ待てる。駆け出す瞬間を、じっと待つ。
出戸ももぐまのプレイは、《天災 デドダム》。
続くターンで《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》や《絶望と反魂と滅殺の決断》といった選択肢が増えることを考えると、いよいよ猶予がない。
4ターン目、札剣は2枚目《進化設計図》を唱える。しかし今度は《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》のみの回収となった。12枚を捲って進化が2枚と、これはかなり苦しい。
出戸ももぐまは《絶望と反魂と滅殺の決断》を唱え手札破壊を選択する。札剣は迷わず《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を2枚落とした。続くターンで《絶望と反魂と滅殺の決断》の追い討ちが確定しており、いよいよラストターンに見える。
だが、それでもまだ走れなかった。
なんとここまでデッキを回して、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》を引けなかったのだ。苦しそうに《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を埋めると、《轟く侵略 レッドゾーン》での3点を選択する。
しかし準備をしていた出戸ももぐまは、それなら当然と《流星のガイアッシュ・カイザー》を誘発させ、バトルゾーンに登場した。 後続の脅威の心配がなくなったので、《九番目の旧王》で眼前の脅威である《轟く侵略 レッドゾーン》を破壊し、ターンを終える。
札剣の続くドローは、皮肉にも《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》であった。しかしこれはもう、後の祭りと言えよう。
こうなるともう、後は出戸ももぐまの自由な時間だ。
《終末の監視者 ジ・ウォッチ》が着地し、《天災 デドダム》に《絶望と反魂と滅殺の決断》とやりたい放題。
最後は《CRYMAX ジャオウガ》がゲームを締め、まず出戸ももぐまがゲームを先行した。
出戸ももぐま 1-0 札剣
残酷なことに、確率は誰に対しても平等だ。
《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》が走れず負けることもあるし、2ターン目の《卍 新世壊 卍》からそのまま真っ直ぐ進行されて負けることもある。そしてそれが、続くこともある。だからこそ二人は、この3位決定戦で対峙している。
まるで天に意思があるかのようにゲームが進行することもあるが、全ては偶然に過ぎない。
札剣の《進化設計図》が1枚ずつしか回収しなかったのも、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》がデッキの下に眠っていたのも、全ては偶然なのだ。
「流れ」や「風」といったものは、本来存在しない。
……それは仮に、アポロで走れない試合が準決勝からずっと続いたとしても、だ。
Game2
先攻:札剣 初手を見た札剣だが、表情が芳しくない。一旦《轟く侵略 レッドゾーン》を置いてターンを終えると、続く2ターン目は《進化設計図》をチャージし、《冒険妖精ポレコ》を召喚した。マナチャージのみの出戸ももぐまに対し、札剣は相変わらず浮かない様子だ。
ひとまず《オンソク童子 <ターボ.鬼>》に進化させて《禁断の轟速 ブラックゾーン》を捨ててドローすると、続けて浮いている1マナで《ヘルコプ太の心絵》をプレイ。ずっと手に付かなかった《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》をようやく加えて、ターンを終了する。
出戸ももぐまは返しのターン、≪お清めシャラップ≫をプレイする。《禁断の轟速 ブラックゾーン》を山札に戻し、ひとまず出来ることはやった格好だ。
4ターン目、ドローをした札剣の表情がようやく晴れた。
《ヘルコプ太の心絵》を《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》を進化させると、攻撃時に《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の侵略を2枚宣言。 準決勝より中々恵まれなかったが、遂に5枚ブレイクの時を迎えたのだ。
シールドをチェックした出戸ももぐまは、それをしばらく見つめた後に負けを認め、決着は最終ゲームへともつれ込むこととなった。
出戸ももぐま 1-1 札剣
残酷なことに、確率は誰に対しても平等だ。
だが不思議なことに、1回の勝利が気持ちを軽くすることもある。憑きものが落ちたように、全てが上手くいくことがある。
そして逆に僅かな変化で、歯車が狂うこともある。
第1試合、出戸ももぐまはシールドを割られずに勝利した。
彼のデッキにおいて、対アポロに有効となる《テック団の波壊Go!》と《B.F.F. モーメント》の採用枚数は、それぞれ1枚と2枚だ。 ……試合後に開けたシ―ルドには、それらが埋まっていたという。
本人曰く「(確率的に)数試合に1回くらいは埋まってくれる」という話だ。
もちろん、あくまで確率の話に過ぎない。
だが、どうしてもふと頭を過ぎってしまうだろう。
「逆だったら、なぁ……」
Game3
先攻:出戸ももぐま 泣いても笑っても、という奴である。この試合で決着が決まってしまう。出戸ももぐまが初手の《流星のガイアッシュ・カイザー》をチャージし、対して札剣は《ストリエ雷鬼の巻》から入る。
メタカードが《とこしえの超人》に寄っている都合、アポロの5点は受ける必要がある。そこに《テック団の波壊Go!》や《B.F.F. モーメント》が当たれば、《流星のガイアッシュ・カイザー》で蓋をして勝てるというわけだ。
2ターン目、札剣は《進化設計図》を唱える。
ここまでいずれも1ヒットだったこのカードが今度は《オンソク童子 <ターボ.鬼>》、《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》、そして《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》と3枚のカードを回収し、遂に期待に応えた。 「風」や「流れ」といった言葉で表現されるものは、所詮は偶然に過ぎない。
だが1回のアポロが、1回の勝利が、まるで札剣を後押ししているかの如く、デッキが応えだしたのだ。
見えているカードで言えば、《轟く侵略 レッドゾーン》等の「中間進化」だけは確認出来ていない。出戸ももぐまはこれを引かれていないことを信じて、≪お清めシャラップ≫を唱えて《進化設計図》を山札に戻した。
引かれる確率を、極限まで下げる。出来ることが少ないからこそ、全部やる。そうしたプレイが、勝利を呼び込むこともある。
だが返しのターン、札剣は《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》へと進化させると、無情にも《轟く侵略 レッドゾーン》を2枚と《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を宣言した。
こうなるともう、トリガーで勝負するしかない。
天か地か、文字通り命の懸かった《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の攻撃が、駆けていく。
出戸ももぐまは、シールドを5枚加え、その中身をじっと見つめた。《テック団の波壊Go!》、《B.F.F. モーメント》、その行方を追う。
……だがそれは、敗北を受け入れるための時間だったのかもしれない。
出戸ももぐまにカードのプレイ宣言はない。
そしてそれは、勝負が決したことを意味していた。
出戸ももぐま 1-2 札剣
Winner:札剣
札剣が晴れやかな勝利を飾り、勝利者インタビューのために放送席へと移動していった。
そして勝者が去った後のフィーチャーエリアは、異様な雰囲気に包まれていた。
空気が重い。誰もその場を動こうとしなかった。動けなかった。
出戸ももぐまは、押し殺すように黙っていた。
その悔しさ、無念さはいかほどだろうか。
カードゲームをやる以上、自らの優れたプレイによって勝敗を決したい、と思うプレイヤーは多いだろう。
しかし現実的には、どうにもならないものがある。
《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》はその1つであり、如何に優れたプレイヤーであっても、トリガーなしにアポロを止めることは出来ない。
自分のデッキ、自分のプレイ。相手のデッキ、相手のプレイ。どれ1つとして、否定するものはない。
かといって、それは無念の慰めにはならなかった。
少しイタズラ好きな確率が、二人の勝敗を決した。出戸ももぐまに残ったのは、4位という結果だった。
残酷なことに、結果は誰に対しても平等だ。
……彼の様子を好ましく思わなかった人も、いたかもしれない。
敗北を爽やかに受け入れる人もいる。それはいい。だが万人に対してそれを求めるのは少し傲慢で、観戦者のエゴなのではないか、そう思う時もあるのだ。
やがて――長い沈黙を経て、出戸ももぐまがポツリと呟いた。
「全国、いきたかったな……」
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