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DMGP2024-2nd Day1(アドバンス) 3位決定戦:かい vs. じゃきー

ライター:原田 武(たけじょー)
撮影:瀬尾 亜沙子

 グランプリの3位決定戦。伝説が群れ成す大型大会において、一際ドラマが生まれやすい場所である。それこそ、優勝カップを賭けた決勝戦と同じくらいに。

 その理由のひとつに挙げられるのが、勝者のみに与えられる全国大会の出場権にあることは疑いようもない。長い長い大会の果てに夢の舞台への切符を掴むのか、あるいはそれを目の前にして取りこぼすのか……3位決定戦に辿り着いたプレイヤーの運命は、この最後の一戦の結果次第で大きく変わるといって差し支えない。

 そう、そうなるはずだったのだ。

かい「トロフィー取りたかったな……」

 この男、かいというイレギュラーが前提をひっくり返した。
 春に行われたDMGP2024-1stでチーム「みんなと戦えてよかった」の一員として頂点に輝き、そこで全国大会出場権を入手……したにもかかわらず上半期のDMPランキングにも参戦し、1位でゴールイン。この時点で出場権が重複し、ランキングでの権利獲得者が繰り下がる事態となった。

 そして、この日。かいの4位以上への入賞が判明した時点で、4位以上全員が全国大会に出場できることが確定した。かいの順位が1~3位ならば繰り下がりが発生するため、4位であっても既に出場は確定しているのである。
 以上をもって、全国がかかっていないグランプリ3位決定戦という史上でも稀な事態が発生することとなったのだ。

かい「チームで勝ったのは嬉しかったけど、1人でも勝ちたいなって……」

 対戦準備中のつぶやきに滲むのは、目前に迫った三冠王の座を逃した悔しさ。飽くなき挑戦を続けるかいのスタンスが垣間見える———勝ちたい。GP優勝にランキング1位を経験しても、その火は弱まることを知らない。

 そんな“現代最強”の称号に最も近しい男、かいと対峙するのは、かつて“最強”の座を掴んだプレイヤー。

 彼の名はじゃきー。殿堂改訂による弱体化直後の【ヘブンズ・ゲート】という当時のプレイヤーの度肝を抜くデッキを使いこなし、2015年全国大会を制覇した。そこからついた異名は「天門のカギを持つもの」。この日携えているのも、現環境における最新の天門デッキ【光水ヘブンズ・ゲート】である。

じゃきー「優勝したらランキング走ろうかと思ってたけど……流石に無理っすね」

 じゃきーもまた、直前でThrasiosの駆る【ガイアッシュ覇道】に敗れてこの席に座っている。明るく振舞ってはいるものの、応えているのは間違いなかった。

 しかし両者が準備を整えるにつれ、その場の空気は次第にピリついたものへと変わっていく。互いに互いの強さは知っている。万が一にも油断できる相手ではない。

 そして、目の前に勝負があるなら、それに勝ちたいと願うのがデュエリストの本能だ。

 この試合に全国大会出場権がかかっていないことは先述の通り。では、そのために勝負の重みは変わるのか?ジャッジからの「制限時間は無制限です」という告知を聞いた両者の反応を見れば、その答えは一目瞭然だ。

かい「全力でできる」

じゃきー「確かに」

 否。断じて否。
 リワードなんて関係ない。どこまでも純粋な、勝利のための勝負。

 偶然か必然か、舞台は整った。あとはプレイで語るのみだ。

Game 1

 予選順位の差でじゃきーが先攻。Ⅲターン目の《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》呪文側をファーストアクションとし、4ターン目も再度≪ギャラクシー・チャージャー≫。

 最速《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》呪文側こそ喰らわずに済んだかいではあるものの、こちらも《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》《理想と平和の決断》で手札を貯めこむ展開に。

 そう、この試合はこの日最強の【光水ヘブンズ・ゲート】を決めるミラーマッチでもある。じゃきーとしては「天門のカギを持つもの」の面目躍如。しかし対面がかいであることを考えれば、その結末は全くの未知数。どちらが挑戦者なのかは断言できないだろう。

 とはいえ、手番とマナで先行したアドバンテージは大きい。先に動きを見せたのは5ターン目を迎えたじゃきーだ。  開かれる、本家本元の《ヘブンズ・ゲート》

 《光開の精霊サイフォゲート》《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》が舞い降り、それぞれの効果で《聖霊超王 H・アルカディアス》《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を追加。ハイパーモードを開放した上でターン終了、《光開の精霊サイフォゲート》を経由して《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》が着地……  お手本のようなじゃきーの大量展開。ターンが回ったかいだが、チャージャー呪文をプレイできておらずマナは5止まり。《聖霊超王 H・アルカディアス》ハイパーモードが効いている今できることと言えば、マナを埋めておくことくらいだ。

 再度じゃきーのターンとなり≪天命讃華 ネバーラスト≫が龍解すると、あとはもう一直線。《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》によって《光開の精霊サイフォゲート》を止め、《聖霊超王 H・アルカディアス》で呪文をロック。そのまま総攻撃。

かい「いやー頼む……よしっ!」

 大げさに祈りながら捲ったシールドからはもはや用を成さない《光開の精霊サイフォゲート》

じゃきー「いけるいける」

かい「いやまだある……《閃光の精霊カンビアーレ》《水雲の聖沌 5u170n》なら……!」  オーバーリアクション気味にラスト1枚を開いたかいは一瞬瞠目し、息を呑んで……そのまま手札へ加える。

じゃきー「帰っちゃったw」

かい 0-1  じゃきー


 Game 2の準備を進めるじゃきーの超次元ゾーンには、傷だらけの《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》《百獣槍 ジャベレオン》が鎮座している。 じゃきー「今日は昔使ってたのと同じカードにしてる。もうボロボロだけど」

 今日はこれじゃないとダメな気がした、とは本人の談。《ヘブンズ・ゲート》なども、あの全国大会と同じバージョンで揃えた。

 じゃきーは決して【ヘブンズ・ゲート】しか使用しないプレイヤーではない。「天門はポジションデッキ」という言葉を残したように、環境の勢力図を的確に読み切った上で最適解を選択するタイプの選手だ。

 だが、やはりその上で、彼にとって「天門」は特別なのだろう。

 9年越しに、勝利を。目指すのはあと一勝。


Game 2

 今度はかいが先攻、3ターン目≪ギャラクシー・チャージャー≫3枚ヒットを見せる。じゃきーも負けじと≪ギャラクシー・チャージャー≫3枚回収で応戦し、お互いトップギアといったところ。

 が、先んじたのはまたもじゃきーだった。4ターン目を《理想と平和の決断》4枚回収で終えたかいに対し、じゃきーは≪スターゲイズ・ゲート≫を詠唱!  これで《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》を呼び出し《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を設置。ターン終了時に《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》を着地させて《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》の能力を消してしまう。

 一見自分にも被害が及ぶプレイだが、一度《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を設置したことによって既に後続の確保は容易となっている。さらに【光水ヘブンズ・ゲート】が超次元ゾーンにアクセスする手段は基本的に《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》のみ。その実一方的にかい側の供給を絶つ一手である。

 これを受けたかいは焦らずリソース確保に動く。≪ギャラクシー・チャージャー≫を2回唱えて手札とマナを確保。
 返すじゃきーの動きは《聖霊超王 H・アルカディアス》召喚とハイパーモード解放、そして《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》からの《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》着地。

かい「え!きつい……」

 そう漏らしたかいだったが、増やした手札には既に解答が握られていた。まずはターン終了時に《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》クリーチャー側をバトルゾーンへ。
続けて《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》クリーチャー側でプレイ。《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》を押し戻す!  3度も唱えた≪ギャラクシー・チャージャー≫でマナも潤沢、残る6マナで《光開の精霊サイフォゲート》を召喚するかい《闘門の精霊ウェルキウス》《闘門の精霊ウェルキウス》《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》と繋げ、《邪帝斧 デッドアックス》を装備。

 マッハファイターでじゃきー《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》へ攻撃し、《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》をP侵略させて《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》をタップする。そのままバトルに勝利して《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》を呼び出しつつ、《闘門の精霊ウェルキウス》効果が2回誘発する。

 そして、ここからが真骨頂。繰り出される《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》+《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》 じゃきー「強っ!」

かい「最強です」

 シークレットテク、《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》が相手のマナを吹き飛ばす。おまけに《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》が呼び出した《滅殺刃 ゴー・トゥ・ヘル》がターン終わりに龍解、≪魔壊王 デスシラズ≫となってじゃきー《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》を仕留めた。

 これによってじゃきーのマナは1、バトルゾーンには《聖霊超王 H・アルカディアス》《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》を残すのみとなった。《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》効果でタップされたままとなっており、ハイパーモード解放もままならない。
 超次元ゾーンまでフル活用したかいのビッグアクションにより、形勢が完全に逆転する。

じゃきー「最強だ……」

 チャージエンドでターンを終え、《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》から《光開の精霊サイフォゲート》×3と《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》を繰り出すじゃきーではあるものの、もはやその程度では覆せない。  薄くなった山札に≪♪必殺で つわものどもが 夢の跡≫を打ち込み、さらにそれを《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》、≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫で使いまわすことによって追加ターンのストックを溜めていくかい

 複数ターンを跨ぐ波状攻撃にS・トリガーで抗うじゃきーだが、いくら守りの王道・天門でも許容量というものはある。
 最終的には受け止めきれず、勝負は三戦目に持ち越しとなった。

かい 1-1  じゃきー


 じゃきーがそうであるように、かいにも【ヘブンズ・ゲート】への特別な思い入れがある。

かい「デュエマをはじめた2016年ごろ、よく2015年の全国大会のクリップを見ていて……じゃきーさんの天門を見て、自分でも使っていたんです」

 かつて自身を魅了した画面の中の存在との一騎打ち。大会出場を重ねて実力を付けてからも、その機会はなかなか訪れなかった。「知り合いの知り合い」くらいの距離感で、対戦をするタイミングも来なかった。

 今、ついにその時が来た。大型大会の配信卓。マッチアップは【ヘブンズ・ゲート】ミラー。これ以上のシチュエーションはそうそうない。何としても勝ちたい。

じゃきー「ありがとう、嬉しい」

 憧れの存在から、勝利を。目指すのはあと一勝。


Game 3

 ふたたびじゃきーの先行。3ゲーム連続の3ターン目≪ギャラクシー・チャージャー≫を決めるものの、回収は《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》のみ。

かい「僕も持ってます!」

 かいも追いすがるように≪ギャラクシー・チャージャー≫。こちらは2枚回収となる。
 4ターン目の動きは両者ともに《理想と平和の決断》で手札補充。ここまでは、まだ間合いの探り合いだ。

 そして続くじゃきーの動きが再度《理想と平和の決断》4枚回収であるのに対して、かいが選んだのは……

かい「さあ、魅せるか」

じゃきー「マジ?ある?」 ある。運命の1枚、《ヘブンズ・ゲート》

 《闘門の精霊ウェルキウス》《光開の精霊サイフォゲート》が降り立ち、更に展開。《闘門の精霊ウェルキウス》、≪星門の精霊アケルナル≫、《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》と計5体の天使が揃い踏みする。

 そして、ターン終了時。≪星門の精霊アケルナル≫が3体目の《闘門の精霊ウェルキウス》を呼び出し、《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》に到達する!

 これでじゃきーのマナは空になる。≪ブルー・インパルス≫を踏み倒し、アタック時の≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫でクリーチャーを減らしにかかるが如何せん他にできることがない。また1枚ずつマナを溜めなおして≪ギャラクシー・チャージャー≫のプレイまでは果たしたものの、そのころにはかいは山札を掘り進め、フィニッシュの下準備を完了させていた。

じゃきー「ループ見たいな。見て終わりたい」  最早あとは見届けるだけ、というそぶりのじゃきー。その鋭くも温かみを感じるまなざしは、後進に贈るエールのようにも見えた。

 かいは適宜≪♪必殺で つわものどもが 夢の跡≫で追加ターンを取りながら、《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》《獄龍刃 ディアボロス》や≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫で手札に必要パーツを揃えていく。

 そして、ついに決着の瞬間が訪れる。11マナ+≪♪必殺で つわものどもが 夢の跡≫+《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》で無限の追加ターンを確保し、再度《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》じゃきーのマナをリセット。この《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》を≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫で使いまわすことで、自身は山札切れで負けない中、相手を山札切れまで0マナの状態に釘付けにすることが可能となる。

じゃきー「(≪ブルー・インパルス≫を)出した場合は?」

 追加の出題にもきっちりとアンサーを出すかい。その場合はこちらから≪「真実を見極めよ、ジョニー!」≫を唱え、相手の≪ブルー・インパルス≫を手札に戻したうえで自分のクリーチャーを3体まで減らす。その後≪♪必殺で つわものどもが 夢の跡≫を唱えることで、ケア完了となる。  のちに「一番やりたかった」と語った天門ミラーマッチの攻略法、《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》と無限ターンの必殺コンボ。
 納得したようにうんうんとうなずくじゃきーの姿で、長かった3位決定戦は締めくくられた。

かい 2-1 じゃきー

Winner:かい
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