DMGP2024-2nd Day1(アドバンス)決勝Round 3:午後茶 vs. Nettoban
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:後長 京介
激変したアドバンス環境。その立役者は間違いなく、前週に発売したばかりの「天下夢双!!デュエキングDreaM 2024」だろう。
とはいえ、「そうは言っても環境に影響を与えたのは《頂上混成 BAKUONSOOO8th》《頂上電融 クライアッシュ“覇星” ’22》《夢双龍覇 モルトDREAM》の3枚がほとんどでしょ?」と思う人もいるかもしれない。
だが、そうではないのだ。なぜなら、このトップ32というトップ8まであとわずかの段階で、独り奮闘を続ける孤高のデッキビルダーが存在していたからだ。 そのデッキビルダーこと午後茶が使うのが、まさかの《イミッシュ・イツァヤナ》。週刊コロコロコミックで好評連載中のマンガ「デュエル・マスターズLOST ~月下の死神~」において悪役キャラクターの側についているクリーチャーだが、カードとしては能力がランダム性を伴う《ミステリー・キューブ》をモチーフにしているということもあり、競技シーンで活躍を見ることはさすがにないだろう……というのが、おそらくこれまでの世間一般の評価だった。
しかし午後茶はこの《イミッシュ・イツァヤナ》を大きくフィーチャーした自然単のデッキで、並み居る《ヘブンズ・ゲート》と《頂上混成 BAKUONSOOO8th》をばったばったと薙ぎ倒し、ここまで勝ち上がってきたのだ。
午後茶「フィーチャー慣れてます?」
Nettoban「(首を振る)……けどもう、やることはやる」
機材トラブルで開始の合図を待つ間、午後茶は何度も深く息を吐く。対し、予選ラウンドを9戦全勝で勝ち上がったNettobanは、確定先攻ということもあってか落ち着いた様子……いや、もう腹をくくっているのか。
いま自分にできることを、最大限やるしかないと。 はたして孤高のデッキビルダーは、己が名を歴史に刻むことができるか。注目の対戦が幕を開ける。
Game
予選全勝で先攻のNettobanがマナチャージした《超光喜 エルボロム》を見て、午後茶が早くも顔を歪める立ち上がり。午後茶「エルボロム、エルボロム……」
なぜならNettobanのバトルゾーンにはゲーム開始時から《禁断 ~封印されしX~》がある。加えて光水という文明。そしてS・トリガー呪文のタダ打ちという要素。すなわち、導き出される答えは……だが、それでもできることをやるだけだとばかりに、午後茶も《ナ・チュラルゴ・デンジャー / ナチュラル・トラップ》をチャージしてターンを返す。
しかし返すNettobanが《アクア・スペルブルー》チャージからマナゾーンを2枚タップしようとする仕草を見て、覚悟完了したはずの午後茶から思わず「くっ……」と声が漏れる。着地したのは予想通りの《エメラルド・クーラー》。答え合わせをするまでもなく、Nettobanのデッキは「マーシャルデリート」だ。 それでも、《龍覇少女隊ハラグロX》をチャージした午後茶は《シェル・アルカザール》を召喚し、迷わず自身をマナに送ってマナ加速する。ここで日和って相手のマナを伸ばしている場合ではない。
だが、Nettobanは《ホーガン・ブラスター》をチャージし、3マナをタップする。
午後茶「ははは……マジかよ」 進化、《マーシャル・クイーン》!
《エメラルド・クーラー》のおかげで埋められる手札は3枚。即座にすべてを埋める……だがNettobanが手に取ったのは見えていない3枚のシールド。《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》を抱えていない。まだチャンスはある。
……しかしNettobanが未知の3枚の中から公開したのは、S・トリガー《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》!これによりNettobanは、今やS・トリガーと化した埋めた1枚を拾い上げる……そしてそのカードは、《煌銀河最終形態 ギラングレイル》! Nettoban「ターン終了で」
午後茶「えーと……はい、ターンもらいます」
3ターン目、GR召喚12回。だがNettobanの超GRは《“魔神轟怒”ブランド》を廃した構成であり、ターン自体は返す形。午後茶は、わずかな勝機を信じてプレイを続ける。《シェル・アルカザール》チャージから、《シェル・アルカザール》で自身をマナに送りつつ《ベイB セガーレ》でターンエンド。
4ターン目を迎えたNettobanは、まず《エメラルド・クーラー》を召喚。《オールデリート》はどうやらなさそうだ……が、そもそもこの物量を返せるだけのトリガーが、午後茶のシールドに眠っているかどうか。 まずは《ジェイ-SHOCKER》で《The ジョラゴン・ガンマスター》を戻して「5」指定しつつブレイク。ここで《逆転の剣スカイソード》がトリガーし、午後茶は《全能ゼンノー》をマナ送りにしつつマナから《シェル・アルカザール》を出して2体目の《ジェイ-SHOCKER》をマナ送りにする。だが、まだ10体殴れる。
続けてNettobanは《無限合体 ダンダルダBB》攻撃時に《ジェイ-SHOCKER》と《The ジョギラゴン・アバレガン》を戻しながら「Jトルネード」で《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》を唱え、午後茶の盤面を一掃しながらブレイク。通る。さらに《マーシャル・クイーン》でブレイク。《ナ・チュラルゴ・デンジャー / ナチュラル・トラップ》がトリガーし、《C.A.P. アアルカイト》をマナゾーンに。だが、まだ6体殴れる。
さらに《暗黒の騎士ザガーン GR》攻撃時に《時空の禁断 レッドゾーンX》へと「P侵略」しつつ残る2枚のシールドをW・ブレイク。《逆転の剣スカイソード》がトリガーし、《無限合体 ダンダルダBB》をマナゾーンに送りながら《シェル・アルカザール》で《バツトラの父》を除去。だが、まだ3体殴れる。
そしてダイレクトアタックを宣言するには、残った《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》を横に倒すだけで十分だった。
午後茶「通ります!……お見事!」
Winner: Nettoban
午後茶「これじゃ謎のデッキの人になっちゃったじゃーん……このデッキが一番苦手なものが来ました……自分より早いデッキは絶対無理です」
放送でのインタビューに向かったNettobanとは対照的に、フィーチャー席に残ったまま「くっそ悔しいな……」と消沈する午後茶に、今回のデッキについて話を聞いてみた。
--「このデッキはご自身で考えられたんでしょうか?一体、どういった経緯でできたものなんでしょうか?」
午後茶「誰のデッキも参考にしてないので、たぶんオリジナルです。深夜3時とか4時くらいに『《邪帝斧 ボアロアックス》と《イミッシュ・イツァヤナ》使ったらものすごく面白いんじゃないか』と思って、わーすごい面白いデッキだって組むだけ組んで寝て。次の日に回してみたらやっぱり面白かったので、ブラッシュアップしました」
午後茶「なので偶然の産物というか。GP持ち込みデッキを考える息抜きの産物です」
--「どういった部分がGPでも通用すると考えましたか?」
午後茶「なんだかんだ4ターン目で決まるんですよね。《フェアリー・ギフト》が絡むと最速3キル、絡まなくても大体4キルで。あと環境的に《ベイB セガーレ》の通りがよくて、スムーズに採用できるのも良いです」
午後茶「何より見栄えが良かった……あと面白かった。もっと対戦相手の腕を破壊したかったです……《アクア・ギャクテンポインター》がいなくなってみんなが安心してたところにね。予選はずっとこれでひたすらシャッフルしてました。悔しいなー……」
残念ながら孤高のデッキビルダーの夢は、半ばにて潰えた。だがそれでも、参加者4000人……はリストを見ていないからわからないにしても、決勝ラウンドに進出した128名の中では、間違いなく最も格好良いデッキリストだと(私が個人的に)思うので、ローグデッキビックアップでぜひそのリストをご覧いただければ、午後茶が今日どれだけの偉業を達成したのか、きっとご理解いただけるはずだ。
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