DMGP2024-2nd プレイヤーインタビュー :~日本1位の男、kaisora~
ライター:河野 真成(神結)
撮影:後長 京介、瀬尾 亜沙子
現時点で2024年の男を1人選ぶとしたら、間違いなく彼の名前が挙がる筈だ。
2024年前期はGP優勝から始まり、その後もCSを勝ち続け、最終的に2位に12000近いポイント差を付けて圧倒的なトップでフィニッシュ。君臨、という言葉が相応しいかもしれない。
それだけに留まらず、この前日に行われたDay1でもなんと3位。その勢いは留まることを知らない。
そんなkaisoraだが、2023年度は前後期とランキング上位には上り詰めたものの、あと一歩全国大会には届かず、悔しい想いをしてきた。
そこから彼は、どのように変わったのか。
そして、現在どのように勝ち続けているのか。
今回は本人にインタビューを依頼したところ、快くOKをしてもらった。
kaisoraのデュエマへの姿勢や彼自身の魅力について、ぜひ存分に味わって欲しい。
夜明け前 2023年後期
――では今回はよろしくお願いします。
kaisora「よろしくお願いします。」
――そうですね。まずはデュエマ歴から教えてもらってもいいですか?
kaisora「デュエマ歴は2016年(革命ファイナル)の最後で、そこからずっとですね」
――ガッツリ始めたのはジョー篇(2017年~)という感じなんですか?
kaisora「ガッツリやってたというか、公認大会などでみんな楽しくワイワイやるという時期が長くて。CSに出始めたのがコロナ禍の直前の2019年に数回。そのあと自粛期間が入って、ガッツリ出るようになったのは2021年の、《天災 デドダム》期の10月以降ですね」
――その辺から競技をやり始めたという感じなんですね。例えば当時好きだったデッキとかってありますか?
kaisora「その時はずっと【アナカラー(水闇自然)墓地退化】(※1)を使っていました。このデッキがかなり好きで……。2022年にランキングが再開したじゃないですか? その時はアナカラー退化とたまに【ゼーロベン】(※2)を使って、(2022年の)前期はそれで100位以内に入れましたね」
(※1:《竜魔神王バルカディア・NEX》を進化元とした《死神術士デスマーチ》に《龍脈術 落城の計》を当て、場に残った《竜魔神王バルカディア・NEX》で蹂躙するというコンボデッキ。進化クリーチャーの上だけを引き剥がすことから、退化と呼ばれる。水闇自然の場合、《天災 デドダム》などを使ったロングゲームで戦えるのが魅力で、2021年の末から2022年春頃に掛けて流行した)
(※2:《闇王ゼーロ》で《砕慄接続 グレイトフル・ベン》を繰り出すデッキ。その後なんやかんやして、ループする)
――この2つはやっぱり思い入れがあるんですか?
kaisora「思い入れというか、最初の方はずっとループデッキが好きだったんですよね」
――そのあとも結構ループデッキって使うことも多いんですか?
kaisora「《絶望神サガ》を一番使いました」 ――ああ……。(そりゃそうかみたいな顔)
kaisora「サガ期が全国大会を本格的に目指し始めた年ですね。2023年のランキングで」
――確か私の記憶が正しければ、2023年のkaisora選手は前期も後期もかなりランキング走っていましたよね?(前期26位、後期24位)
kaisora「そうですね。ただ前期は全国大会を目標にはしていましたけど、サガが好きなのでひたすら使って、『当たればいいな』という感覚でやっていました。本格的に全国大会を目指すためにデッキ選択などを考えるようになったのは後期からですね」
kaisora「いままでループデッキしか使っていなかったんですけど、当時のランキングで全国大会を目指すとき、勝っているプレイヤーでサガ以外を使っているプレイヤーもいたので、色んなデッキを使えた方がいいだろうと思って、まず最初に自分が苦手だった【水闇魔導具】(※3)から触ることにしました」 (※3:《堕∞魔 ヴォゲンム》+《「無月」の頂 $スザーク$》のコンボを軸に戦うコントロールデッキ。4ターン目以降の対応力が高く、《「無月」の頂 $スザーク$》の殿堂まで環境に居座り続けた)
kaisora「後期のランキングが始まるまで、9月くらいはずっと【水闇魔導具】を使って、それで後期のランキングに挑み最初は調子良かったんですよ。ですがランキング終盤の(遠征先である)関東のメタゲームについていけなくなって……」
――あの頃の関東の環境だと、【水闇魔導具】はベスト8には行けても優勝は難しい、みたいな立ち位置だったと思います。
kaisora「そうなんですよ」
――あとは【火水マジック】とか、【アカシックフィオナ】とかが活躍してたのもこの時期でしたね。
kaisora「特には関東はフィオナが多かったんです。【水闇魔導具】はアベレージは高いデッキなんですけど、フィオナとかマジックとか……マジックはまだ何とか対応出来ても、フィオナが本当にダメで。【水闇魔導具】しか練習してなかったのが弱点になって……」
kaisora「そこで1回マジックに切り替えたんですけど、練度が追い付いてなくて。『もうやるしかない』と【水闇魔導具】に絞ったんですが、最終的に300pts差くらいで全国には届きませんでした」
覚醒前夜 2023年度末
――その2023年後期ランキングで、記憶が正しければなんですが、確か最後のCSに挑むに当たって、2位以上であれば全国大会という状況だったと思うんですが、その時に使用したのが【火自然アポロ】だったとか。 kaisora「あ、そうなんです。アポロなんですよ。最後めちゃくちゃ考えて。関東のプレイヤー層のこととか。(最終日ということもあり)こちらに対して有利なデッキを持ち込んでくるという印象があって。それで、彼らが考えるボクの使うデッキはなんだろうとなると、【水闇魔導具】じゃないですか。なら、ボクが一番使わなさそうで、すぐでも使えるデッキって何かとなると、【火自然アポロ】なんですよ」
――ランキングの最終戦で、全国大会の可能性が残った選手の多くが「その時期一番使った思い入れのあるデッキ」を持ち込む中、一人だけ【火自然アポロ】を選んだという話が個人的に凄く印象深かったんですよね。
kaisora「当時のアポロって不利が凄く少なくて、主導権もこっちにあるので、それで懸けて見ようと。結果は全国は獲れなかったんですけど、【アカシックフィオナ】にはちゃんと当たって勝って。デッキ選択は間違ってなかったと思うんですよ」
――そうしたらその、今年になって、弾けて……。
kaisora「(笑)。やっぱり悔しくて、色んなデッキを短時間で回せるようにしたいとなって。全てのデッキを最高標準で回そうとするともの凄い時間掛かるんで」
――100点は難しい、と。
kaisora「そうですね。でも70~80点を回せると環境が変わった時に対応出来るので。他に負けない水準をキープしながら、満遍なくデッキを使えるようになったらいいな、と」
kaisora「その時、ちょうどみみみちゃんの全国大会の調整の手伝いをしたんですけど、基本的にボクは参加しないので壁役をやるんですけど、対戦相手だったら全てのデッキを回せないといけないんですよ。それも全国大会なんで、プレイもちゃんとしなきゃいけない。それで当時のボクは、色んなデッキを使えるようになりたくて、片や色んなデッキと対戦したい人がいた、ということで……」
――あー、そこで上手く利害が一致したんですね。
kaisora「そうなんです(笑)。それでもちろんデッキの理解も上がったんですけど、一番良かったのは『どのデッキをどれくらい練習すればいいか』の要領が掴めたんですよね」
――つまり、『〇〇回くらい回せば、だいたい××%の練度にはなる』というのがわかった、ということですか?
kaisora「そうです。【水闇魔導具】の時はとにかくこれだけを回していて、ひたすら練度を上げようと思って繰り返していたんですよ」
――90点を95点にするのはめちゃめちゃ難しいですからね。
kaisora「それよりかは、色んなデッキを80点で使える方が効率いいので。それで意識を変えて。今までの自分のやり方だと違うなぁ、となって。勝てないところを考えるとそれが当てはまっていたんですよね」
――23年度の全国大会の調整に参加したのが、1つのターニングポイントだったと。
kaisora「そうですね。調整と手伝いと、自分の練習のやり方を変えたいというのが一致したのが良かったです」
そして日本1位の男へ
――踏まえて、2024年シーズンになりました。今シーズンの成績は凄まじい事になっています。kaisora「4月のランキング開始後はずっと【火水マジック】が強くてCSではマジックを使っていましたが、練習では【闇自然アビス】を使うようにもしていました。マジックは練習を積めば勝率が出るデッキですし、特に対【闇自然アビス】の練習はしましたね。駆け引きがあって面白いんですよ」
――対アビスというと、どうしても《邪幽 ジャガイスト》からの爆発の印象が強いですが……。
kaisora「その時の環境って、3ターン目の上振れ以外は練習量で捲れたんですよね。練習して、マジックもちゃんと強くて、GPでも優勝して。GPの前日のアドバンス2.4倍でも準優勝出来て、(GPの順位と関係なく)ランキング的にも順調だったんですよね」
――これは聞いて見たかったんですが、GPで全国獲ったら普通(?)は、CSの参加回数とかは減ると思うんですけど、kaisora選手の場合は走り続けていましたが、これはどういった理由なのでしょうか?
kaisora「(笑)。全国獲ったのは本当に嬉しかったんですけど、そもそもGP抜きにしても上位にいて、優勝した時点で17000ptsくらいあったんで、全国1位を狙えるかなーって」
kaisora「もちろん全国大会出場も目標ではあるんですが、全国1位も同じくらいの目標で。同じ兵庫県のどんよく選手が過去に1位獲ったこともあって、ボクも兵庫で1位を獲りたいなと目標にしていたので。負けず嫌いなので、勝ちたいな、と。なんなら、GPポイント抜きでも(笑)。」
――確か、12000pts抜きにしてもしても1位でしたよね?(※4) (※4:前期ランキング1位はkaisoraの39152ptsで、2位が同じくGP優勝の紅蓮の27789pts。GP抜きでの最高ポイントはキャンテの26586ptsであり、これはGP抜きでも上回っている)
kaisora「GP優勝した後だと心に余裕も出来たので、デッキ選択も偏らなくなったんです。だったらこの期間を、全国1位は目指すけど今までとは違う方向でやってみようと、色んなデッキを使うことにしました」
kaisora「一番大きいのは《死神覇王 ブラックXENARCH》ですね。【闇単ゼナーク】を考えるにあたって、『《緊縛の影バインド・シャドウ》で展開すると強くないかな?』って原案を出して。そしたらりっきーと一緒にやってるうちに、『アドバンスの方が強くない?』ってなって、ボクらもCSで使って優勝もして……」 ――信じられないくらい強いデッキになりましたからね。
kaisora「デッキを1から作ったという経験をしたのが大きくて。元々あるデッキを完璧に回せたりチューニングするのも凄いので、それを目標にしていたんですけど。デッキを作るって、また別な能力じゃないですか。だからかなり嬉しくて、今年の思い出ですね」
――他には、どんなデッキを使っていましたか?
kaisora「マジックが環境から衰退した後に、【火光水ゴスペル】を使った時期があったんですよ。その時のファイアー・バード対ゴスペルってまだプレイが確立していなかったり、《コッコ・武・ルピア》の採用とかもなかったので、ゴスペルを弄ってCSで勝てるレベルに仕上げることは出来たと思っています」
――前期は本当になんでも使っていたんですね。
kaisora「あとは【光水ヘブンズ・ゲート】ですね。超CSの前にアーチーさんが《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》が強いって話をしていて。《∞龍 ゲンムエンペラー》って《闘門の精霊ウェルキウス》と2枚で1つのセットだけど、《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》は1枚で完結するカードじゃないですか。そこからロマイオン入りの構築を考えていて、《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》入れた方がいいかな? と」 kaisora「たぶん、ボクが一番最初に入れたんじゃないですかね? 超CSの前日には、これでループフィニッシュしていましたからね」
――え、早くないですか? 超CS前ってみんなで「どうやら《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》が強いらしいぞ」みたいな話をしていた頃だと思うんですけど……。
kaisora「一緒に調整していたメンバーからの助言もありましたけど、関西では他に《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》入りを使っている人もいなかったので、常に環境の一歩先を行けている状態でした。」 ――余裕が出来たのもあって、常に環境をリード出来たと。
kaisora「上位ランカーの方々を見ていると、皆さん常に環境の一歩先を行くメタゲーム読みとか構築とかで勝っていたので、自分がそれを出来るようになったのも成長を実感したところです」
――ちなみに、その流れ「前期これはオレしか使ってないだろ!」みたいなデッキって何かありましたか?
kaisora「いや……そういうのはなかったような……。あ、【水闇魔導具】!(笑)」
――(笑)
kaisora「【水闇魔導具】が【ファイアー・バード】に頑張ればって感じだったんですが、一時期関西が【ファイアー・バード】メタのデッキが多くて、それで【ドリームメイト】が増えた時期があったんですよ。【ファイアー・バード】はCS中に1回当たるかな?くらいで。しかもボクが天門使ったあとだったので、【ゴスペル】とか【ヘブンズ・ゲート】とかも多くて。そこに有利が付く【水闇魔導具】を使って、ちゃんと優勝しました」
――素晴らしい。
kaisora「【ファイアー・バード】は1回当たって頑張って勝って、それ以外だとちゃんと想定した対面に当たって、ちゃんと勝ちましたね」
――Twitter(X)に流れてくるツイート(ポスト)を見ていると「なんかいっつも違うデッキで優勝しているな?」って印象を持っていました。
kaisora「去年は本当に魔導具だけだったのですが、今期は6個くらいのデッキで勝てました。前期は色んなことに挑戦出来たり、色んなデッキを回せるようになったり、チューニングしたり、自分が理想としているランカー像になれたので……」
――我々はどうしても結果を見て「勝っているなぁ」くらいしかわからないのですが、中身が充実していたのですね。
kaisora「濃かったですね(笑)。去年と比べものにならないくらい成長出来ました」
そして2024-2ndへ
――ところで既に何名か挙げてらっしゃるのですが、仲のいいプレイヤーとなるとどなたがいますか? kaisora「基本はGPでも組んだ紅蓮さんとりっきーなんですが、関東から引っ越してきたTJM選手と、あと鬼龍さんが基本的な調整メンバーです。基本的にはみんなと仲いいですよ」
――例えば、プライベートで……いや、デュエマもプライベートではあるんですけど、何かやってらっしゃることとかありますか?
kaisora「ずっとランキングをやっていたので、ほとんどデュエマしかやってなくて……。続けている事と言えば、生活リズムを整えていることですかね。早く起きたり、早く寝たり、軽くランニングしたり……。身体動かすのは好きなんですよ。CS終わった後、軽くランニングしながらその日の反省したり、とか」
――ばりばりデュエマ生活ですね。
kaisora「そういう意味では、色んなアイデア出してくれる他のメンバーには感謝していますね。どうしても同じ事だけやっていると、自分の考えが及ばないこととか出てくるので……」
――それは私も思います。今回のGPでも、他の方のリストとか見て「それは思い付かなかったなぁ」というのが多かったですね。
kaisora「今回は、かなり自信があったんですよ」
――《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》入りの【光水ヘブンズ・ゲート】ですよね? kaisora「全員同じリスト使ったんですが、ミラーに強くて他の対面も落とさないというコンセプトだったので。ちゃんと結果も残ったので良かったです。天門で言えば、一番成績が良かったですし」
――3位ですもんね。
kaisora「ミラーもちゃんと勝てました。5-0していますし、メタ読みも当たりました」
――昨日のメタゲームって、どのように読んでいましたか?
kaisora「デュエキングドリームが発売されましたが、アドバンスって競技層もそうですけど、カードやデッキのファン層も多いと思っているんですね。例えば、《超戦龍覇 モルトNEXT》とか。バイク系統もそうですね。《禁断 ~封印されしX~》入りのビートデッキが多いな、と。《頂上混成 BAKUONSOOO8th》もそうですね」 ――直前のCSとか見るととにかく殴るデッキが多かったので、「これは光水しか勝たんなぁ」とは思っていました。
kaisora「そうなんですよ。最初は《死神覇王 ブラックXENARCH》を使うつもりだったんですが、みんながメタってきて。それにアドバンスって、デッキ間の強さにそんなに差がないんですよ。例えばモルト系統も、先攻で《メンデルスゾーン》撃って≪「助けて!モルト!!」≫から《夢双龍覇 モルトDREAM》ってされると勝たないので……。《零龍》で1ドロー与えるのも、ちょっと嫌でした」
――アドバンスのデッキって、相性差は縮まっている印象はあります。
kaisora「逆に言うとゼナークって不利はないんですけどね。だからずっと調整していたんですけど、天門を触ったら『本当に殴るデッキには強いな』となって。じゃあゼナークとぶつけてみようとなったら、思ったよりも勝つんですよ。ちゃんと詰めているとゼナークが勝つんですが、じゃあその『ちゃんと詰めているゼナーク』って会場に何人いるんだ?という」
――そうなんですよね……。
kaisora「自分たちが使わなければ、ゼナークの人数減らせますし(笑)。それで天門が強いとわかったんですが、みんなもそれがわかっている筈なので。じゃあミラーどうするかと詰めていったんですが、ミラーって先に展開した方が負けるじゃないですか(※5)。先に山札を掘っていた方が勝つんですけど、最初に投入したのは《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》の2枚目だったんですよ」
(※5:このミラーで先に展開すると、相手側の《闘門の精霊ウェルキウス》+《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》+《邪帝斧 デッドアックス》で悲惨な目に遭うため、基本的には後出しが有利とされている)
――とにかく素早く《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》を使って、詰めるみたいな。
kaisora「そうです。【光水ヘブンズ・ゲート】を一種のループデッキと見て構築を練り始めて、それで一番大事なのは『ミラーに勝つこと』となり、そこで出てきたのが《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》だと」
――ミラーに強いカードって言うと、例えば他にも《ガル・ラガンザーク》とかもあるじゃないですか。その中で今回は、《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》だったと。
kaisora「《ガル・ラガンザーク》も択で、メンバーの中には1:1で分けて採用している人もいました。他の候補で言うと《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》はどうしても単体で勝たないので厳しい。《閃光の精霊カンビアーレ》はオリジナルは強いんですけど、アドバンスだと《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》が《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》に強くて、それ以外のクリーチャーだと《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》で触れるので、これじゃなくていいかな、と」
――《閃光の精霊カンビアーレ》が強い時って、そもそも場に《闘門の精霊ウェルキウス》残っているじゃん、という。
kaisora「《聖霊超王 H・アルカディアス》と《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》は、両方いると強いんですけどね。順番に並べる状態だと、対処できちゃうんですよね。実際2回戦であったんですけど、《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》が出てきた後に《聖霊超王 H・アルカディアス》が出てきたんですが、マナ伸ばして《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》の上でバウンス出来て。同時に揃われたら割り切りですけど、そうじゃなければ」
――同時はほぼ無理ですからね。
kaisora「どれも要求値が高いんですが、一番要求値を探した時に紅蓮さんが見付けてきたのが《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》だったんですよね。このカードのいいところはバレてなければもちろん強いんですが、バレてしまっても強いんです」
――と、言いますと?
kaisora「バレた時の相手のプレイって、マナを飛ばされることがわかるので『先に展開する』じゃないですか。このミラーってそもそも先に展開するのが弱いのに、先に出さないとゲームにならないんです。でもこっち側は、そもそも《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》があるお陰で先出しが正当化されるんですね」
――なるほど……。
kaisora「カウンター狙いのプレイも、先出しのプレイも取れて、しかもこっちは楯を触らずに勝つことも出来る。ロック性能で言えば《∞龍 ゲンムエンペラー》を超えているな、という」
――このミラーを意識している人は当然いたと思いますが、《聖霊超王 H・アルカディアス》を増やしたり、《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》を入れたりということはしても、ここまで振り切れた人は中々いなかったでしょうね。
kaisora「他のカードってプレイで何とか出来ても、《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》だけはプレイが関与しないし、どうにもならないんですよね。2回戦で紅蓮さんがフィーチャー卓で映ったのも良かったですね。警戒してくれて、先出しのプレイをされたところを返したり」
―――《氷牙君主ハイドロ・ビスマルク帝》を出されて詰むくらいなら、《闘門の精霊ウェルキウス》と《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》を持ってないことに賭ける方が分がいいとは思いますからね。 kaisora「それでいうと、じゃきーさんとの試合は、普通の試合では起きないことが起こってました」
――互いに先出しを正当化されるリストでしたからね。
kaisora「お互いが最大値持っているので、お互いの調整が出てた凄い試合でしたね」
これからの目標
――ちなみに余談なんですが、大会前に欠かさずやっているルーティーンとかって何かありますか?
kaisora「うーん……早く寝るくらいですね(笑)」
――SSS Tierですね、それは(笑)
kaisora「睡眠が一番大事です。脳が働いていないと、ミスが酷いので。後は、毎試合前にチョコレート食べています」
――あー、試合前には糖分補給を。
kaisora「チョコレート自体はその日の気分で何を買うか決めるんですが、満腹にはしたくないので、ご飯とかはガッツリ食べないんですね。糖分は欲しいのでお菓子を軽く摘まむ感じです」
――試合間の準備って結構していらっしゃるんですね。
kaisora「そうですね。あと水は飲んでます」
――最後になるんですが、今後のやりたいことや目標とかあればお願いします。
kaisora「一番の目標は全国大会優勝ですね。あとは……もう1つあるのは、今期の自分のポイントを超えることですかね」
――え、結構凄まじいポイントですよね?
kaisora「自分がランキング始めた後って、毎回それまでのポイントを超えているんですよ。今回はちょっとヤバいんですけど(笑)。今後の目標というと、自分に勝つことですね」
――ありがとうございました。
おわりに
私がkaisoraに興味を惹かれたのは、インタビュー中にもある「2023年度後期ランキング最終戦」の出来事からだ。この日であれば、信念や思い入れといった感情に任せても誰にも責められないであろう中で、彼は理性的に、そして説得力のある形で【火自然アポロ】を選択した。
結果として念願は叶わなかったが、彼の選択は私の心に強いポジティブな印象を与えた。
何人かのプレイヤーに聞いたが、口を揃えて「今年のkaisoraは明らかに一段階強くなった」という。
それは、悔しい想いをした2023年度を経たからに違いない。
そしてその悔しさを以て、彼は自身の課題に向き合い、反省し、そして極めて理性的なアプローチでその解決に挑んだ。
その結果、彼は日本1位の男になった。
インタビューを経て私がkaisoraに抱いた印象は、とにかく物事を理詰めで考えているということであった。自分の課題はAであり、であればBという手段で解決する。自分の目指す理想がCであるならば、Dという手段でそれにアプローチする。
こうした理詰めというのは、説得力があり、そして再現性もある。
kaisoraが強くなるために採った手段というのは、天賦の才に物を言わせたものでもなければ、常人とかけ離れた発想によるものでもない。彼は天才かもしれないが、強くなるに当たって天才であることを使ってはいない。
彼は我々にも再現可能な方法で、どうすれば強くなれるのかを教えてくれたのだ。
もし貴方が強くなりたいと希うならば、きっとこのインタビューは大きなヒントを与えてくれるはずだ。
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