DMGP2024-1st Day1(アドバンス) 決勝Round 2:みみみ vs. ルーヨッシー
ライター:林 直幸(イヌ科)
撮影:瀬尾 亜沙子
試合後、ルーヨッシーがそう語るのも無理はない。元々別のゲームをやり込んでいた彼はCSに出たことがない、今日が初めての大型大会というプレイヤーだ。
歴戦の猛者ですら至難の業であるグランプリ予選突破を果たしたことから、そこで蓄積されたゲームIQが只ならぬものであることは言うまでもない。
もちろん本大会に向けて環境のことは事前にある程度把握していただろうが、環境外の【サバキZ】に対する知識は皆無だったという。
【サバキZ】。最初の全盛期は《煌メク聖戦 絶十》《トライガード・チャージャー》がリリースされた2018年度まで遡る。
当時のエリア予選、2ブロックでは【水火覇道】と対をなすトップデッキとして名を馳せ、CSではセキボンが全国大会を目指す際の相棒として好んで使用し、DMGP8thで準優勝という結果を残した。
そこからは多少の浮き沈みを挟みつつ、緩やかに環境から消えていった。
紅蓮やイナえもんといった名手が環境に合わせたチューニングを行ったとしても、環境トップに追いつくデッキパワーは持ち合わせておらず、5年の月日が経ち…… 転機は突然に訪れた。2023年10月、《煌世主ノ正裁Z》のリリースである。
まるでサバキZを得た《ドラゴンズ・サイン》。《正義ノ裁キ》リリースによる強化も伴い、かつて【サバキZ】を相棒にしてきた各地のプレイヤーが新たな研究に乗り出した。
来る全国大会2023。アドバンス構築において結論という形に辿り着いた紅蓮は、関西のプレイヤーに【サバキZ】を託す。
結果は惨敗。2人が使用し、合計で1-5という結果に終わった。
この結果に納得いくわけがない。全国大会から3週間、紅蓮が率いる関西のプレイヤーたちによる猛練習が始まった。
「紋章の置き方、効果解決の順番、GRクリーチャーの取り回し……普通のデッキに比べて考えることが多すぎて、とにかくプレイングが難しいんですよ」
そもそもの敷居が高かった6年前を優に超える難易度に、多くのメンバーが持ち込むことを挫折した。
しかし、この高い壁を乗り越えれば使う価値が十二分にあることは師匠である紅蓮が教えてくれた。
全国大会のリベンジと言わんばかりに【サバキZ】をグランプリの舞台に持ち込んだみみみは、あらゆる難敵を退けて決勝トーナメントの舞台に立っている。
決勝トーナメント第2回戦。
真の最強を証明するための戦いは、幕張の地にて加速していく。 先攻:ルーヨッシー
2マナを支払ったルーヨッシーは、先制の《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》を展開する。
みみみは思わず顔をしかめつつ、《正義ノ裁キ》を唱えて準備を進めていく。 ルーヨッシーが操る【光闇火ドルマゲドン】。
アドバンス構築を代表する環境デッキのひとつであり、《魔の革命 デス・ザ・ロスト》による3ターン目オールハンデスという危険な技を持つ。
多種多様なデッキが跋扈するアドバンス環境において、あらゆるデッキを力で捻じ伏せる。ルーヨッシーがここまで勝ち上がった要因のひとつであろう。
しかし、この試合に関してはルーヨッシーの手札に必殺の《魔光神官ルドルフ・アルカディア》はない。
2軽減された≪D2V3 終断のレッドトロン≫を出し、封印を進めてターンを終了する。
「対【光闇火ドルマゲドン】は有利ですよ。《魔の革命 デス・ザ・ロスト》が絡む展開以外は負けない対面なので」
この日リストをシェアし、同じく予選を突破したはんちゃん/青賢はそう語る。
唯一の敗着である《魔の革命 デス・ザ・ロスト》が一手遅れた時点で、みみみにとっては勝つための条件がすべて整っていた。
《転生ノ正裁Z》で1枚の盾を確認。それを墓地に送り、サバキZ《煌世主ノ正裁Z》。
手札から飛び出すのは、《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》。
そして、全ての紋章が同じシールドに重ねられる。 「1枚のシールドに重ねた紋章に《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》のブレイクを当てるこの動き、言うなればひとり"ミルザムエメラルーダ"ですよね」
このブレイクが、必中必殺の大魔術の引き金となった。
トリガーを得た《煌世主ノ正裁Z》が≪音奏 ハイオリーダ≫を出す。《正義ノ裁キ》がドローを重ねる。
さらに、《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》《正義ノ裁キ》の効果が付与された領域下においては、《転生ノ正裁Z》で加える紋章のトリガーすらも使用することができる。
サバキZによって唱えられた《集結ノ正裁Z》も処理に加わり、次々とデッキが掘り進められる。
一連の処理を追え、≪音奏 ハイオリーダ≫のストックが7回。
GR召喚が繰り返し行われる。《予知 TE-20》でGRデッキを1枚多く掘り進め、最後のGRで《バルバルバルチュー》に辿り着く。
《バルバルバルチュー》効果でさらにトリガーの紋章を唱え、その《煌世主ノ正裁Z》から《煌龍 サッヴァーク》が降臨……。 何が起こっているんだ。
いつまでもみみみの処理が完結しない。
初めて目の前で【サバキZ】を使われたルーヨッシーにとって、目の前で起きた光景は信じられないものだったに違いない。
気付けば眼前には数えきれないほどのクリーチャー。
《煌龍 サッヴァーク》によって《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》は消えてしまった。
《無双の縛り 達閃 / パシフィック・スパーク》《全能ゼンノー》による制限がかけられている。
単体除去をしようにも、除去耐性を得た《パス・オクタン》が吸い込んでしまう。
後攻3ターン目に、ゲームが決まってしまった。
《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》を潰されたルーヨッシーはチャージエンドしかできない。
その手には《終断χ ベガスランチャー》、シールドには≪終断γ ドルブロ≫が2枚。最大限の防御札があった。下手なビートダウンが相手であればこれで十分だったはずだ。
「(《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》を引けず)めんどくさ…殴るか」
この絶対防御ですらみみみにとっては、そう呟く程度の脅威にしかなり得なかったのだ。
Winner:みみみ
「デュエマでは珍しい、受け攻め両方のプランを試合中にコントロールできるデッキタイプなんですよ」
「特に受け方において相手の出方を見てからプランを切り替えることができるため、読まれにくい上に初見で対応ができないんです」
「目隠しして歩いてる人間に、足を引っかけて転ばせるようなもんですね」
今回見せた鏖殺ですら、デッキの強さの一部に過ぎないと紅蓮は語る。
彼が託した最強は、いったいどこまで行くのだろうか。
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