DMGP2024-1st Day1(アドバンス) 準々決勝:Reus vs. みみみ
ライター:高橋 穂(北白河)
撮影:瀬尾 亜沙子
唱えるとシールドに張り付く「裁きの紋章」呪文と、裁きの紋章が手札に加わった際にそれを捨てることで踏み倒せる「サバキZ」のシナジーによって戦う……という、5年前の「双極篇」期に登場したデザイナーズデッキであり。
フル活用した時の圧倒的な出力やシールドを駆使したカウンター性能と引き換えに、どのシールドに紋章を重ねるか、どのカードを切ってサバキZを発動させるか、などの選択肢の多さから来るプレイングの難しさや、S・トリガーや処理順に関する詳細なルール習熟・山札の下に送ったカードの順番の記憶までも要求する超上級者向けのデッキであり。
そして、棋譜の記録の難しさからカバレージライター泣かせのデッキとして知られるデッキだ。動きの複雑さはもとより、「文章の形で『今どのシールドに何が張り付いているか』を表現するか」を考えていただければ、読者諸賢にその一端が伝わるだろうか。
そんなあらゆる面でピーキーすぎるこのデッキを手に、この準々決勝まで勝ち抜いてきた男がいる。
「日本一のサバキZ使い」として知られる紅蓮にプレイングを叩き込まれるとともに調整を重ね、先日の全国大会2023においてもこのデッキを使用してきた強豪プレイヤー、みみみだ。
その実力とキャラクターにより幅広い交友関係を持つ彼だけに、エリアの外側から応援する面々も強豪プレイヤー揃い。
そしてその名を知るものはエリア外だけでなく……。
Reus「いつも見てます!」
彼の対戦相手であるReusもその一人であったようだ。
彼の愛機は、【5cモルト】。デュエマ全てを見渡しても屈指のカードパワーを誇る《最終龍覇 グレンモルト》を核に強力な多色カードを多数搭載した構成は、まさにコントロールの王道と言えるだろう。
いわゆる押し付けムーブの強さに加えて随一の柔軟性をもって戦えるこのデッキは、多数のデッキが登場した今大会においては母数に対してかなり高い成績を残している。プレイ練度や環境読みについても、疑う余地はなさそうだ。
腕を組んでやや緊張気味のReusに対し、ぼんやりと手札を眺めているようにみえるみみみという対照的な姿だが、数千人の参加者の中からここまでやってきた彼らの実力は本物だ。
準決勝にコマを進めるのはテクニカルなコンボか、王道のコントロールか。
Game 1
先攻:Reus ゲームは、後攻2ターン目の《正義ノ裁キ》の1ドローで幕を開けた。呪文ロックなどに対する「対策の対策」となる一枚を貼り付けて順調な滑り出しのみみみに対して、Reusは3ターン目《フェアリー・ミラクル》が1マナブーストに終わるなどやや初動がもたついている様子。
この隙に動きたいみみみは、表情を変えないまま手札を眺めて考える。唱えられたのは、《憤怒スル破面ノ裁キ》。これはさきほどの《正義ノ裁キ》と別のシールドに設置し、のちにサバキZを始動しても《正義ノ裁キ》の効果が切れない仕掛けを整える。
何としてでも目論見を止めなければならないReusだが、カードを引くと首を傾げて《S・S・S》をチャージしてターンを返す。やはり手札がなかなか噛み合っていないようだ。
そして、ここからみみみの【サバキZ】の真骨頂が始まる。
《転生ノ正裁Z》で《憤怒スル破面ノ裁キ》のシールドを回収するやそれを即座に墓地に置き、まずは《煌世主ノ正裁Z》のサバキZを宣言。ここから《音奏 ハイオリーダ / 音奏曲第3番「幻惑」》のクリーチャー面を展開。 サバキZはS・トリガーのように処理が割り込まれるので、この後に《煌世主ノ正裁Z》《転生ノ正裁Z》が同じシールドに張り付き、そのあと≪音奏 ハイオリーダ≫でシールドが1枚追加されたのち、都合3回のGR召喚が発生する。
《パス・オクタン》《ヘルエグリゴリ-零式》《バツトラの父》(これはすぐに《ヘルエグリゴリ-零式》で墓地へ)とめくれたGRがめくれ、一気にみみみのバトルゾーンは賑やかになった。3マナ呪文であるところの《転生ノ正裁Z》1枚から始動したとは思えないほどのリターンだ。
なんとか返したいReusだが、チャージされた《ドンドン火噴くナウ》を見るにとにかく手札に多色カードが張り付いて動けないらしい。《天災 デドダム》で打開策を探しに行くに留まる。
そして、これがこのゲームにおけるReusの最後のカードとなった。
結論から言うと、この返しの後攻5ターン目にみみみは《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》のメガメテオバーン10による特殊勝利を決めることになるのだが……。
とりあえず、棋譜を取っていた筆者のメモ(無修正)を見てほしい。
転生埋めトライガード。こうせいしゅの盾回収。転生捨ててこうせいしゅ、ヒトノが出る。2回GR。ヒトノで重ねた盾を回収。トリガー宣言、こうせい、せいぎ、りゅうだん。こうせいしゅではいおりーだ、出して残り2回を使う。GR6回。トップを見る。大量のGRが盤面にあふれ出す。さらにはいおりーだのcipでシールド追加、GR2回。バルバルで盾回収。トリガー。正義、ギラメシア、榴弾が踏み倒され、さっヴぁーくでデドダムを戻す。バルバルでまた盾回収、トリガー。サバキZで絶十出す、終結・正義・こうせいしゅからヒトノ。ブレイク。サバキZで終結、トリガーで兼山、終結、正義、こうせいしゅ空打ち。絶十の軽減が膨れ上がる。けんざん。回収なし。残り浮きマナは1。トライガードで大量の盾を回収。終結・正義・兼山でドロー。ユニバース!
読者諸賢からは「日本語でOK」という言葉が飛んでくるだろうが、筆者だってそう思っている。プレイが速く淀みなさすぎて、メモと変換が追い付いていないのだ。もうこれ棋譜じゃなくて暗号か怪文書だろ!
これをなんとか解読し、日本語訳するとこうなる。
《転生ノ正裁Z》をチャージして《トライガード・チャージャー》を唱え、《煌世主ノ正裁Z》の張り付いたシールドを回収する際に、シールドの中の《転生ノ正裁Z》を捨てて《煌世主ノ正裁Z》のサバキZを宣言。効果で《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》を手札から出し、ここでまず2回GR召喚を行う。 その後、《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》(彼自身の効果で裁きの紋章は全てS・トリガー化している)が出たときの両者ブレイクで重なったシールドをブレイクし、《煌世主ノ正裁Z》《正義ノ裁キ》《天地ヲ別ツ龍断ノ裁キ》のS・トリガーを宣言。
《煌世主ノ正裁Z》で≪音奏 ハイオリーダ≫を展開し、残りのトリガーを使って同じシールドに重ねると、合計6回のGR召喚が行われる。ここでめくれた《予知 TE-20》で山札をチェックしてから、≪音奏 ハイオリーダ≫自身のシールド追加でさらに2回のGR召喚。
ここでめくれていた《バルバルバルチュー》で今重ねたシールドを手札に加えると、《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》でトリガー化されたうえで《正義ノ裁キ》で「唱えられない効果」が無効になっている今、問題なくそれらのシールドはトリガー宣言が行える。
トリガーで《煌世主ノ正裁Z》(《煌龍 サッヴァーク》がめくれ、《天災 デドダム》がシールドに送られた)《正義ノ裁キ》《天地ヲ別ツ龍断ノ裁キ》が再び唱えられ、同じシールドにまたもや重ねられる。
そして同じくすでにめくれていた《バルバルバルチュー》でまた重ねたシールドを手札に加えると、またもや《煌世主ノ正裁Z》《正義ノ裁キ》《天地ヲ別ツ龍断ノ裁キ》がトリガーと同時に手札の《煌メク聖戦 絶十》のサバキZが宣言される。 《煌世主ノ正裁Z》からはまたも《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》が登場し、シールドを重ね切った後にまたもやその重ねたシールドをブレイク。
サバキZで《集結ノ正裁Z》、トリガーで《剣参ノ裁キ》《集結ノ正裁Z》《正義ノ裁キ》《煌世主ノ正裁Z》を宣言し、それらすべてを空打ちすることで《煌メク聖戦 絶十》の軽減のストックが膨れ上がる。
さらに《剣参ノ裁キ》を空打ちすると、残った浮きマナは1。これと軽減を活かして《トライガード・チャージャー》で重ねた盾を回収し、《集結ノ正裁Z》《正義ノ裁キ》できっちり整えたカードを引き入れつつ《剣参ノ裁キ》等も合わせてふたたび《煌メク聖戦 絶十》のストックを再チャージ。
そして《トライガード・チャージャー》で生まれた1マナと、大量の軽減で1マナまで軽減された《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》をバトルゾーンすべての上のクリーチャーに重ねてメガメテオバーン10で特殊勝利をもぎ取ったのだった。
Reus 0-1 みみみ
驚くべきは、みみみのプレイのスムーズさ。
前述のとおり追いつくのがやっとの速度で正解ルートを見つけ出していく動きは、実力もさることながら尋常でない練習の成果なのだろう。
だが、Reusも初速がもたつく不運に見舞われたのも事実。順当にマナを伸ばして応手を打てていれば、また別のゲームとなったことだろう。
お互い表情を変えないまま、ゲームが始まる。
Game 2
先攻:Reusこのゲームも、後攻2ターン目の《正義ノ裁キ》の1ドローで幕を開ける。
だが今度のReusはすでに《ドンドン火噴くナウ》《最終龍覇 グレンモルト》をマナに送って5文明を揃えており、《フェアリー・ミラクル》を2マナブーストに変えて順調に初動を進めていく。
これにみみみも追い付かんと、《転生ノ正裁Z》で何も重なっていないシールドを回収。首尾よく裁きの紋章がめくれたことからすぐさまサバキZで《煌世主ノ正裁Z》を唱え、《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》を展開。
先ほども繰り広げられたシールドを重ねてから自己ブレイク…の流れを繰り返し、気付けばバトルゾーンには《煌龍 サッヴァーク》が追加され、シールドは残り2枚ながら《転生ノ正裁Z》2枚と《正義ノ裁キ》、《煌世主ノ正裁Z》が張り付いているという圧倒的状況を作り出してターンを返す。
一戦目と同じくパターンに入ってしまうのか……と身構えたところで、ここまでじっと耐えていたReusがついに逆襲に出る。
《ドラゴンズ・サイン》から《龍風混成 ザーディクリカ》、さらにそこから《ドラゴンズ・サイン》……と、相互に踏み倒しが連鎖し、一瞬にして3体の《龍風混成 ザーディクリカ》が並ぶ! 最後は《フェアリー・ミラクル》でリソースを伸ばすと、ターン終了時に3体分のドローとともに《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》を破壊にかかる。
前ターンのサバキZ連打の際に手札枚数を稼げるタイプの紋章があまり絡まなかった今、みみみの展開に《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》は重要だ。それをここで落とせたことで、みみみのプランにわずかなヒビが入った形となった。
それならばと《集結ノ正裁Z》で《憤怒スル破面ノ裁キ》と≪音奏 ハイオリーダ≫を回収して次のターンに備えるみみみ。
だが、これすらも「コントロールの王道」たる【5cモルト】の手の内。数度考えたのち、Reusの手から放たれた《ロスト・Re:ソウル》がみみみに突き刺さる! いかに変幻自在かつ無尽蔵の展開を行える【サバキZ】とはいえ、サバキZの始動や《煌世主ノ正裁Z》の踏み倒しが手札を要求する都合上ハンデスからの立て直しは厳しいところだ。 それでもなお《剣参ノ裁キ》で≪音奏 ハイオリーダ≫を回収して再起を図ろうとするみみみだったが、返しのターンに満を持してやってきた《聖魔連結王 ドルファディロム》が「多色でない呪文」である裁きの紋章すべてを封じると、もはや打つ手なし。
高く積み上がった紋章たちを無に帰すブレイクののち、ディスペクターの群れがみみみに襲い掛かった。
Reus 1-1 みみみ
カバレージ席で棋譜を取りながら、気付いたことがある。
Game 1にて、怒涛のチェインコンボを淀みなく叩き込んだみみみも。Game 2にて、狙いすました展開と封殺で応手を完封して勝ち切ったReusも。
熾烈な戦いにも関わらず、プレイ時の表情が変わらないのだ。
デッキの練度を高め、何が起きるかを完全に理解して冷静なプレイングを行うスタイルが、ここまでの勝ちにつながってきたのだろう。
自分のデッキを知り尽くした強者同士の最後の戦いが、始まる。
Game 3
先攻:みみみ泣いても笑っても最後となったこのゲームも、2ターン目の《正義ノ裁キ》の1ドローから始まった。
多色カードをマナに送って文明を揃えていくReusに対して、みみみは《剣参ノ裁キ》で《転生ノ正裁Z》を手札に加える順調な立ち上がり。
そして、返しのターンに《ロスト・Re:ソウル》をチャージして《天災 デドダム》を召喚したReusは……このゲームで初めて、自ら表情を表す。
小さな舌打ちと一瞬だけ歪む表情は、見えた3枚のカードではゲームの趨勢を変えられないと悟ったがゆえのものか。
それでもすぐに冷静に《ロスト・Re:ソウル》を墓地へ、《フェアリー・ミラクル》をマナに送ってターンを返す。
そして、Game 1と同じくこの《天災 デドダム》がReusの最後のカードとなった。
《転生ノ正裁Z》で《剣参ノ裁キ》のシールドを回収し、《煌世主ノ正裁Z》のサバキZからはこのゲームでも《DG 〜ヒトノ造リシモノ〜》が登場。両者ブレイクでトリガーしたのは、今貼り付けた《煌世主ノ正裁Z》と最初に貼り付けた《正義ノ裁キ》、裏向きシールドに眠っていた≪音奏 ハイオリーダ≫、そしてReusの《ドラゴンズ・サイン》。
≪音奏 ハイオリーダ≫を着地させてから《煌世主ノ正裁Z》で2体目の≪音奏 ハイオリーダ≫を送り込み、GR召喚エンジンを作成する。「一応」といった形で《ドラゴンズ・サイン》からは《最終龍覇 グレンモルト》が出てくるが、結論から言うと彼がウエポンを装備するまで生き残ることはなかった。
合計8回のGR召喚から今や万能暴発装置と化した《バルバルバルチュー》がめくれると、もはやみみみの動きが止まることはあり得ない(もちろん、ここからのムーブを筆者の棋譜取りが追い切れることもあり得ない)。 怒涛のラッシュの片手間に《煌メク聖戦 絶十》を調達しつつ《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を挟んで盤面を一掃し、連打される《剣参ノ裁キ》で(少なくとも)一周した山札から必要なものを全て手に入れたのち、みみみは一度処理を打ち切る。
使い手のいない《最終龍覇 グレンモルト》のウエポン装備効果が立ち消えたのを見届けると、《トライガード・チャージャー》で積み重なった裁きの紋章を一気に空打ちして《煌メク聖戦 絶十》の軽減をストックしたのち、《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》が空を舞ったのだった。 Winner:みみみ
みみみ「4強(【天門】【ドルマゲドン】【バイク】【マジック】)のうち、【天門】以外に有利がとれて立ち位置がいいと思って全国で使ったんですよね」
ゲーム終了後のインタビューで、みみみは答える。
みみみ「でも、全国大会では【天門】2回と事故で負けちゃって。悔しいのでリベンジに持ち込みました」
悔しさをバネにさらに鋭さを増した【サバキZ】という刃。
その選択が正しいと証明するために、みみみは準決勝に足を進めた。
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