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DMGP2024-1st Day1(アドバンス) 準決勝:dotto vs. 試験管

ライター:原田 武(たけじょー)
撮影:後長 京介

 筆者が準決勝のテーブルに赴いた時、既に試験管は席についていた。先立って行われた準々決勝を見事に制した彼は、過去3度の超CSにて予選突破を果たした実績を持つ。そして今日、ここまで勝ち残ってきた。

 遅れてもう一人のプレイヤーが姿を現す。フィーチャーマッチから勝ち上がってきたのは、dotto。全国大会2017優勝を始めとした輝かしい戦績を誇る、強豪中の強豪である。

 直前までのdottoの試合が40分に迫るロングゲームだったこともあり、進行は押している。ジャッジからすぐに試合を始める旨が言い渡され、両者はデッキの準備を始めた。

 もう片方の準決勝、みみみvsあーるん。はフィーチャーテーブルで生配信が行われている。打って変わってライブ中継のないテキストフィーチャーとなるこの試合だが、しかし漂う空気の質感は変わらない。肌を刺すような緊張を、両選手は纏っている。

 果たしてこの修羅場を乗り越え、頂上に挑む権利を手に入れるのはどちらか。

Game 1

 dottoが使うのは【水闇自然DOOM】、一方の試験管のチョイスは【闇自然アビス】。奇しくも終着点を《復活の祈祷師ザビ・ミラ》+≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫に定めた2種類のデッキが対面することとなった。

 dotto《天災 デドダム》《終止の時計 ザ・ミュート》とチャージしての《配球の超人 / 記録的剛球》呪文側、試験管《ア:エヌ:マクア》《謀遠 テレスコ=テレス》とチャージして《フェアリー・ライフ》と、両者とも順調な滑り出し。

 しかし、【水闇自然DOOM】と【闇自然アビス】では3ターン目の動きの最大値に大きな差がある。《天災 デドダム》《ハニー=マーガニー / 「こっちは甘いぞー」》の呪文側とリソースカードをプレイしてターンを終えるdottoに対し、試験管がプレイしたのは《フットレス=トレース / 「力が欲しいか?」》呪文側!

 ともすればゲームを決めかねない<アビス・メクレイド5>。慣れた手つきで山札の上から3枚を確認した試験管は再度≪「力が欲しいか?」≫を唱え……首を傾げながら《謀遠 テレスコ=テレス》を繰り出した。

 十分強力な出目と言えるが、こと【水闇自然DOOM】に対してはリスクを生む結果だ。試験管がターン終了を宣言すると、《流星のガイアッシュ・カイザー》が姿を現す! 試験管「ですよねー!」

 ≪「力が欲しいか?」≫でコストを踏み倒した都合上、なんとか《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》にアクセスして《流星のガイアッシュ・カイザー》を引っこ抜くか、最低限《ア:エヌ:マクア》dottoの墓地をリセットしておきたかったところ。

 裏目を引いてしまった試験管だが、dottoのターン開始時に《謀遠 テレスコ=テレス》で1枚手札を捨てさせることは忘れない。

 とはいえ《流星のガイアッシュ・カイザー》が場に出た以上、切札たる《超神星DOOM・ドラゲリオン》へのアクセスは一気に現実的なものとなった。そして何より、その使い手はあの「魔王」dotto。圧倒的なプレッシャーが盤上に吹き荒れる。

 果たして4ターン目を迎えたdottoのアクションは《天災 デドダム》の召喚。《スゴ腕プロジューサー / りんご娘はさんにんっ娘》をマナに、《流星のガイアッシュ・カイザー》を墓地に置く。

 そして残る3マナをタップし……《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》のクリーチャー側を召喚し、ターンエンド。試験管の祈りが通じたか、《超神星DOOM・ドラゲリオン》は無し。

 返す刀で試験管はメインエンジンたる《邪幽 ジャガイスト》の召喚に成功、巻き返しを図る。手札から《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》《復活の祈祷師ザビ・ミラ》を捨ててみたび〈アビス・メクレイド5〉、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》が呼び出され、dottoの手札を覗く。  この時のdottoの手札は《天災 デドダム》《配球の超人 / 記録的剛球》試験管は迷わず手札を補充できる《天災 デドダム》を捨てさせた。しかし、dottoは即座に≪ボン・キゴマイム≫の効果で1ドロー。

 ここで試験管はターン終了を宣言。dottoの5ターン目開始にもう一度《謀遠 テレスコ=テレス》で手札を削りに行く。ここで墓地に落ちたのは……先程見えた《配球の超人 / 記録的剛球》

 ≪ボン・キゴマイム≫のドローとターン開始時のドロー、計2枚のdottoの手札の内容は見えていない。小考を始めたdottoを前にして、試験管は考える。  ——もし、この2ドローで《超神星DOOM・ドラゲリオン》を引かれていたら?あるいは、《超神星DOOM・ドラゲリオン》を引きに行けるカードがあったら?dottoが考え込んでいるのは、今まさに必殺のプランを組み立てている最中だからではないのか?

 時間にしては数十秒の、しかしその何十倍もの長さにも思える沈黙。ジャッジから次のプレイを促され、ようやくdottoは動く。

 《キャディ・ビートル》召喚。〈アビスラッシュ〉で≪ハニー=マーガニー≫召喚。もう一体、〈アビスラッシュ〉≪ハニー=マーガニー≫。

 《超神星DOOM・ドラゲリオン》は、無い。試験管が小さく、しかし強く息を吐いた。

 だが、安心するにはまだ早すぎる。〈アビスラッシュ〉での≪ハニー=マーガニー≫横展開はこのターンで攻め込むという意思表示に他ならない。dotto《流星のガイアッシュ・カイザー》での攻撃を宣言、≪蒼き覚醒 ドギラゴンX≫へと〈パラレル革命チェンジ〉させる。  試験管は考える。このトリプル・ブレイクはブロックできない。残るdottoのクリーチャーは≪ハニー=マーガニー≫2体、《天災 デドダム》2体、≪ボン・キゴマイム≫の計5体。残される2枚のシールドと《謀遠 テレスコ=テレス》《邪幽 ジャガイスト》ではあと1体が止めきれない。つまり、シールドに賭けるほかない!

 この決断がdottoにとっても重いものだったことは想像に難くない。いくら【闇自然アビス】が守りの薄いデッキとはいえ、ここはグランプリの準決勝。シールドに何もない可能性を信じるには、どれほどの覚悟が必要だろうか。

 だが、dottoは選択した。そして、それを突き付けられたからには、試験管は答えなければならない。

 dottoの指差した3枚のシールドに、試験管が手を伸ばす。

 そして。  《フェアリー・Re:ライフ》が、開かれた。

 dotto「……終了で」

 ここまでと変わらない落ち着いた声で、ターンエンドが宣言された。

 そして、試験管のターンが始まる。

 まずは《邪幽 ジャガイスト》2体目を召喚し、〈アビス・メクレイド5〉で《ドミー=ゾー / 「倒したいか?」》クリーチャー側を出す。1体目の《邪幽 ジャガイスト》効果で墓地から《邪幽 ジャガイスト》3体目を出し、もう一度〈アビス・メクレイド5〉。

 これが待望の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》を呼び出し、ついに≪ボン・キゴマイム≫の破壊に成功する。

 そして2体目の《邪幽 ジャガイスト》が墓地から《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》を蘇らせ、今度は《キャディ・ビートル》を破壊。これで、試験管のウイニングロードが開かれた。

 《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》の〈ハイパーモード〉を開放し、攻撃時に墓地から《復活の祈祷師ザビ・ミラ》を蘇生。  攻撃中の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》含む味方3体を破壊し、《頂上の王龍 ヴィル・ド・テラ》《頂上の精霊 ミラクルスZ》《頂上龍素 サイクリタ》をバトルゾーンへ。即座に〈GP覚醒リンク〉、≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫ 試験管「ループ証明入ります」

 ここからはもう、今日一日で何度も繰り返してきたことだ。試験管は慣れた手つきで、しかしひとつひとつ確かめるような誠実さで、証明を開始する。

 バトルゾーンと墓地に《復活の祈祷師ザビ・ミラ》が各1枚、そしてそびえ立つ≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫。≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫で攻撃時、《復活の祈祷師ザビ・ミラ》含む任意の3体を墓地から出す。

 そして新たに出した《復活の祈祷師ザビ・ミラ》で元から居た《復活の祈祷師ザビ・ミラ》と≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫、任意のクリーチャー1体を破壊して超次元ゾーンから《頂上の王龍 ヴィル・ド・テラ》《頂上の精霊 ミラクルスZ》《頂上龍素 サイクリタ》を呼び戻す。これだけで、墓地の好きなクリーチャーを好きな回数出すことができる。

 こうして無限回の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》dottoのクリーチャーを刈り取り、《ア:エヌ:マクア》で墓地を空っぽにし、〈スピードアタッカー〉を得た《無双恐皇ガラムタ》まで用意して〈S・トリガー〉を無効化。

 アドバンスならではの必殺コンボを前に、dottoは静かに投了を宣言した。

dotto 0-1 試験管


 ジャッジから残り時間25分とアナウンスが入り、息つく間もなくGame 2の準備を始める両者。広げたカードを一つに纏め、シャッフルする。と、dottoの手が止まった。

 先のゲームで≪蒼き覚醒 ドギラゴンX≫と入れ替わった《流星のガイアッシュ・カイザー》が超次元ゾーンに置かれたままだったのだ。改めて束に加え、混ぜなおす。

 長丁場の肉体疲労は勿論あるだろう。だがそれ以上に、賭かったモノの大きさがプレイヤーの精神を苛む。もし勝ったら。もし負けたら。その後の運命の差はあからさまに明らかだ。

 ましてや彼らが競うのは「逆転快感カードゲーム」デュエル・マスターズ。最後の最後まで、勝負は分からない。

 自分だけに微笑む都合のいい幸運の女神など、居やしないのだ。


Game 2

 変わらず先行のdottoは2ターン目≪記録的剛球≫、3ターン目《天災 デドダム》で堅調なスタートを切る。

 それに答えるかの如く、試験管も動く。2ターン目《フェアリー・Re:ライフ》、3ターン目に≪「力が欲しいか?」≫!またしても≪「力が欲しいか?」≫2枚目を経由し、今度は《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》に辿り着く。

 開示されたdottoの手札は《天災 デドダム》《アーテル・ゴルギーニ》《アーテル・ゴルギーニ》《超神星DOOM・ドラゲリオン》というもので、ここで少し思案する様子を見せた試験管。最終的にフィニッシャーたる《超神星DOOM・ドラゲリオン》を捨てさせた。  ならばとばかりにdotto《アーテル・ゴルギーニ》を召喚。《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》を破壊しつつ《天災 デドダム》をバトルゾーンに出し、さらにリソースを伸ばす。

 《流星のガイアッシュ・カイザー》に依存しきらない、多様なゲーム運びも【水闇自然DOOM】の持ち味だ。

 しかし、《流星のガイアッシュ・カイザー》がいないということはクリーチャーの即時攻撃を許すということ。試験管《邪幽 ジャガイスト》でこの隙を咎めにかかる。手札を2枚捨て〈アビス・メクレイド5〉、選ばれたのは《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》  破壊しようとした《アーテル・ゴルギーニ》《天災 デドダム》を身代わりに踏みとどまったものの、増えた墓地5枚の中には2枚目の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》の姿がある。

 これを《邪幽 ジャガイスト》の効果で復活させ、再び《アーテル・ゴルギーニ》を選択。またしても《天災 デドダム》を破壊して耐える《アーテル・ゴルギーニ》

 次の一手を検討する試験管。公開領域を確認し相手の動きを伺うdotto。しばし無言の時間が流れ———ふ、と。dottoが笑った。つられたように試験管も笑みをこぼす。

dotto「いやー」

 この準決勝で初めて、張り詰めた緊張が緩んだ瞬間だった。Game 1を落とした時ですら崩れなかったdottoのポーカーフェイスが剥がれている。笑顔で天を仰いだ試験管から、魂の叫びが漏れた。

試験管「決勝行かせてください!ホントに頼む!全国行かせてくれ!」
 
 その想いは、きっとdottoも同じだ。いや、二人だけではない。この日この場所に集った4500人の総意。

 それに気づいたから、きっと二人は笑いあったのだ。頂点を目指す者同士の相互理解。極限の闘いの中の、一瞬の「凪」がそこにあった。

 奇妙な穏やかさも束の間、試験管《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》の〈ハイパーモード〉起動を宣言した。対戦テーブルに再び、戦いの風が吹き始める。

 《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》が攻撃、墓地から《復活の祈祷師ザビ・ミラ》が登場。攻撃中の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》含む3体を破壊して≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫を降臨させる!

 すかさず≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫で攻撃する試験管だが、今回は公開領域に《復活の祈祷師ザビ・ミラ》《無双恐皇ガラムタ》も無い。

 そこで《ア:エヌ:マクア》《ア:エヌ:マクア》《邪幽 ジャガイスト》と繰り出し、《ア:エヌ:マクア》のマナ加速&回収効果を2度使用。回収した2枚を《邪幽 ジャガイスト》効果で捨てる。

 そしてこの〈アビス・メクレイド5〉が更なる《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》を呼び、ついに《アーテル・ゴルギーニ》の破壊に成功。dottoをトリプルブレイクが襲う。

 が。Game 1の意趣返しのように、今度はdottoがシールドを表向きにする。 〈S・トリガー〉、≪「こっちは甘いぞー」≫&《スゴ腕プロジューサー / りんご娘はさんにんっ娘》!!

 まずは≪「こっちは甘いぞー」≫で《ハニー=マーガニー / 「こっちは甘いぞー」》を回収しつつ墓地を増やす。そして≪りんご娘はさんにんっ娘≫を解決。≪スゴ腕プロジューサー≫を出して、GR召喚。

試験管《全能ゼンノー》だけ無し!」  めくられた超GRゾーンの1枚目は、《全能ゼンノー》

試験管「おかしいやろ……!」

 唯一試験管の攻撃をシャットアウトできる《全能ゼンノー》を、この局面で引き当てる。そんな奇跡を目前にして、その表情に一切の乱れ無し。これが「魔王」、これがdotto

 そして、これ以上の攻撃を封じられた試験管はターンを終えるしかない。またしても、1ターン待つしかないのである。【水闇自然DOOM】の、dottoの1ターンを。

 手を組んで祈る試験管。しかしその目のギラつきは変わらず、dottoの一挙手一投足を追っている。

 まずは試験管のターン終了宣言。このタイミングの《流星のガイアッシュ・カイザー》は……無し。そのままdottoのターンが始まった。

 既にマナは7枚、墓地は3枚。《流星のガイアッシュ・カイザー》がなくとも、《超神星DOOM・ドラゲリオン》には十分届く。頭をかきながらプランを組むdotto。それを見守る試験管

 息の詰まるような静寂を経て、ついにdottoが動いた。マナチャージ後、≪「こっちは甘いぞー」≫で《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を回収。続けて《天災 デドダム》を召喚。山札の上3枚を見て、考え込む。

dotto「墓地見ていいですか」

 試験管の墓地を、バトルゾーンを、自身の手札を何度も確かめる。そして、《流星のガイアッシュ・カイザー》をマナに、《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》を墓地に置いて……最後に残された2マナをタップ。 ≪♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり≫、15宣言。

 《超神星DOOM・ドラゲリオン》は、ついにその姿を現すことはなかったのである。

 長い長い1ターンを凌ぎきり、アビス軍団の総攻撃をもって試験管が決勝進出を決めた。

dotto0-2試験管

Winner:試験管

 40分越えのロングゲームを終え、両プレイヤーは深く息を吐いた。お互い、何も言わない。ただ余韻だけが二人の間に流れた。

 dottoの胸中に、かのグランプリ7thの準決勝が去来したかどうかは定かではない。1枚の《隻眼ノ裁キ》、1枚の《フェアリー・Re:ライフ》

 だが、あの時も今日も、その1枚を嘆くことをdottoはしなかった。それは「魔王」から「勇者」に贈られた、最大の賛辞であったに違いない。

 ほどなくしてジャッジに促され、三位決定戦に向かうdotto。徐々に小さくなる背中を、試験管はただ見送るのだった。

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