DMGP2025-1st Day1(アドバンス)Round 1:試験管 vs. カンダック
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:坂井 郁弥
グランプリというイベントが始まったのは、ちょうど10年前。8月に開催されたDMGP1stは単日で1114名が参加するイベントだった。それが10年後、2日間両日それぞれ4500名が参加するというモンスターイベントにまで成長するとは、一体誰が予想しただろうか。
その間に変わったこともある。かつて「殿堂フォーマット」「殿堂レギュレーション」などと呼ばれていた通常対戦のルールは、外部ゾーンのカードを使用しない「オリジナル」フォーマットの新設により、「アドバンス」と名を改められた。そして近年では事前準備の簡便さといった様々な事情から、CS開催数などを見ても「オリジナル」が主流となっていることは周知の事実である。
しかし今でも、「アドバンスこそ本当に面白いデュエル・マスターズだ」という信仰が根強いこともまた、事実なのだ。
オリジナルでは滅多に見られないカード同士の相互作用。超次元を見てのデッキとプレイ読み。ゲーム開始時から置かれる《禁断 ~封印されしX~》《FORBIDDEN STAR ~世界最後の日~》《零龍》が絡んだ理不尽。幅広い知識がなければ一瞬で飲み込まれてしまう、そんな奥深さこそを愛するプレイヤーもいる。
ちょうど1年前に同じく幕張メッセで開催されたアドバンス・フォーマットのDMGP2024-1st Day1において、「闇自然アビスロイヤル」を駆り優勝した試験管もその一人だ。実績に加え、Xのハッシュタグフィーチャーmeにおいて「今回もアドバンスの答えを持ち込みます!」と力強いコメントを発信してくれたこともあり、開幕のフィーチャーマッチに呼ばれることとなった。
まずは対戦開始前に「アドバンス」特有の超次元チェック。対戦相手のカンダックが《禁断 ~封印されしX~》あり、《13番目の計画》と《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》が1枚、残りはモルトのドラグハート系列とどこかで見たような内容なのに対し、試験管は初期配置なし、《頂上の王龍 ヴィル・ド・テラ》4枚に《次元のバジュラズ・ソウル》と、つかみどころのない内容。ややもすると「光火自然ドリームメイト」で次元は全ブラフということでもおかしくはない。
やがて互いのデッキのシャッフルが終わり、ジャッジが試合開始の合図を告げるのみとなった。

だがそれでも、いまプレイヤーたちが感じている昂ぶりは、奮い立つ感情は。確かに、この瞬間だけのものなのだ。
そして、そう、だから。今日、この瞬間だけの。
第1回戦が、始まった。
Game
ジャンケンで勝ったのは試験管。1ターン目のマナチャージは《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》に対して《流星のガイアッシュ・カイザー》と、互いにデッキを絞りきれない立ち上がりだが、2ターン目に試験管が《ネオ・ボルシャック・ドラゴン / ボルシャックゾーン》をチャージしたことで、急激にアーキタイプの解像度が上がる。まさか、アドバンスでボルシャック……?そんな試験管を尻目にカンダックは《新世代龍覇 グレングラッサ》チャージから《メンデルスゾーン》。マナに《夢双龍覇 モルトDREAM》を落としながらの2マナブーストで、最高の動きをしつつ自己紹介を終える。
だが返す試験管は構わず《ボルシャック・ドラゴン / 決闘者・チャージャー》をチャージすると、唱えたのは《魂の呼び声》!


一方、返すカンダックは《インフェル星樹》をチャージすると、《メンデルスゾーン》でさらに2マナブースト。続けてかなり悩みながらも《ボルシャック・栄光・ルピア》を送り出し、このターン9マナまで一気に伸ばしきる。《魂の呼び声》で積まれた順番がわからない以上、次に引き込む一番上が《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》であることはまず確定にしても、2番目が《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》か《地封龍 ギャイア》かはまだわからない。その状況で《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》の攻撃先を作っていいものかという逡巡だったのだろうが、いずれにせよマナは伸ばし得という判断に至ったようだ。
だが。
カンダック「ターンを終わります」
試験管「……っし!」
カンダック「……ですよねー」

ターンが返りチャージ後にはマナが10マナまで伸びているとはいえ、こうなるとカンダックにできることはかなり少ない。それでも8コストで《蒼き団長 ドギラゴン剣》を普通に召喚すると、《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》を殴り返してターンを返す。他方、試験管も《ボルシャック・ドラゴン / 決闘者・チャージャー》で0枚回収ながらもマナを伸ばしつつ《地封龍 ギャイア》で殴り返し、バトルゾーンには《地封龍 ギャイア》だけが鎮座することとなる。

返すターン、カンダックは登場時能力を持つために出す意味がない《時の法皇 ミラダンテⅫ》をチャージするのみ。これを見て試験管は超次元から《頂上の王龍 ヴィル・ド・テラ》を召喚し、詰めの準備にかかる。
現代デュエマのドラゴンデッキにおいて、登場時能力を持たないドラゴンなど採用されるはずもない。もはやカンダックに反撃手段は残されていないようにも思われた。
だが、返すターン。カンダックは、おもむろに大量のマナゾーンに手をかける。その枚数は……11枚?
カンダック「チャージなし11マナ……《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》で!」

カンダック「ギャイア貫通します」
試験管「……マジ?これで負けんのオレ?……うわー負けたんだけど。それはキツすぎるわさすがに……」
急転直下の大逆転劇。45枚デッキでおそらく1枚しか採用されていないであろう《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》を引き込んだカンダックが、《地封龍 ギャイア》を戻しただけでなく、試験管のデッキコンセプトであるドラゴンそのものを名指しで禁止したのだ。
そして試験管の側には今度こそ、これに対して抗う手段は1枚たりとも残されていないのだった。
試験管「投了で」
Winner: カンダック
--「初戦の勝利おめでとうございます。カンダックさんは、これまで大型大会への参加経験などはあるんでしょうか?」
カンダック「前回のDMGP2024-2nd(オリジナル)が初めてなんで、これで2回目ですね。そのときは1勝3敗で負けました」
--「アドバンス・フォーマットは、普段からプレイされているんでしょうか?」
カンダック「最近になってGPのチケットが当たったので、アドバンスを頑張ろうかなと始めた程度です」
--「今回の使用デッキについて、何か特徴的なポイントなどありますでしょうか?」
カンダック「去年の優勝者のデッキを丸パクリしたんで、簡単にリストはバレますね(笑)……けど、パワーで勝たせてもらおうかなと」
そう、それはDMGP2024-2nd(アドバンス)で優勝したThrasiosが、半年前に既に証明していたアドバンスの答えだった。
簡単には答えが出せない。だがだからこそ、それがアドバンス・フォーマットの面白さでもあるのだ。
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