全国大会2019 準決勝:NJ(北海道) vs. ◆ドラ焼き(京都府)
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:瀬尾 亜沙子
45名いたプレイヤーも、残すところあとわずか4名となった。それぞれがそれぞれの実力を出しきり、ギリギリの戦いを繰り広げた結果、勝ち残った者たちがいた。
◆ドラ焼き「なんか久しぶりですね」
NJ「おやつ(CS)以来だから、2018か2019?それから当たったことないですもんね……あそこの《》が決め手になった試合で……」
◆ドラ焼き「NJさん、《“乱振”舞神 G・W・D》でひたすら盤面取れるのに全然《蒼き団長 ドギラゴン剣》引けなくて……w」
これから極限の戦いが始まろうとする前のほんの一時、二人にしかわからない思い出話に花が咲く。
遠くのテーブルでは、おんそくとセキボンが反対側の準決勝を戦う準備をしている。決勝戦に進出できるのは、この4名の強豪の中でたったの2名。そしてこの準決勝に勝利した時点で、その2名は世界に3枚しか存在しない《蒼き団長 ドギラゴン剣》のプロモを、確定で手にする権利が得られる。
ゆえにこの目の前の一戦の勝敗は、実は何よりも重い。
そんな戦いに臨むNJのデッキは、5Cコントロール。4ターン目《ロスト・Re:ソウル》という能動的な必殺技を擁しつつも、主にS・トリガーであらゆるシチュエーションを受動的に解決することを主眼に構築されているこのデッキは、コントロールという一見鈍重そうな呼称とは裏腹にむしろ「肉を斬らせて骨を断つ」という言葉がむしろ相応しいような、後の先の究極形とも呼べるデッキタイプである。
それに対して◆ドラ焼きが駆るのは、どのようなデッキ相手にも圧倒的な速度と押しつけ力で先の先を取れるということで、間違いなく今大会の話題の中心となったJO退化。それも、「水闇カリヤドネ」をはじめとして近年の大型大会においてその確かな調整力を証明してきたチーム「マラかっち」謹製の形。デッキ内の残りの枚数を把握するための工夫だという、バージョン違いの3種の《未来王龍 モモキングJO》がその名刺代わりだ。
となればゲームの焦点は否応なく、「《未来王龍 モモキングJO》が次々と繰り出す刃を5CのS・トリガーが捌ききれるかどうか」にかかっている。JOの猛攻は間違いなく苛烈だが、ひとたび攻撃が止まれば今度は5Cの側が返す刀で一瞬で喉元をかき切るだろう……その様子はまさしく、剣豪同士の命のかかった斬り合いにも等しい。
だからこそ、今一度問わねばならない。
極限の戦いにおいて、勝敗を分けるものは何か。
その答えが、もうすぐ明らかになろうとしている。
日本一決定戦、準決勝。
誰しもが「たった一度でいいから、自分もそこに立ちたい」と憧れるような。そして同時に、誰しもが「たった一度であっても、自分だったら緊張で震えてしまう」と忌避するような。
そんな極限の戦いが、いまはじまった。
Game 1
予選順位の差で先攻となった◆ドラ焼きが、初手からあまり悩まずに《禁断英雄 モモキングダムX》をチャージしてターンを終えたことで、表情には出さなかったもののNJの内心は「マジかよ」一色だったことだろう。それが意味するところは一つしかないからだ。そしてその信じたくない予想のとおりに、続いて《新世界王の闘気》をチャージした◆ドラ焼きは早くも先手2ターン目にして《禁断英雄 モモキングダムX》を着地させる。《未来王龍 モモキングJO》も無事めくれ、これ以上ない立ち上がりだ。
最速の攻めが予告されたNJとしては、有効S・トリガーの枚数を少しでも増やしておきたい。だがNJのデッキに、2マナ以下でできる能動的なアクションは存在していない。だからできることは、何を手札に残すのか、だ。熟考の末にマナチャージしたNJは、あとは楯にすべてをかける。
はたして、返す◆ドラ焼きは《バッドドッグ・マニアクス》チャージからの《》で《禁断英雄 モモキングダムX》を《未来王龍 モモキングJO》へと「退化」させると、さらに2マナで《進化設計図》を唱える。ここで手札に加わったのが《禁断のモモキングダム》《アルカディアス・モモキング》《キャンベロ <レッゾ.Star>》!
NJ「いま手札何枚ですか?」
◆ドラ焼き「6枚です」
間違いなく、見えているリソースだけで確実に殺しきれる……間違えなければ。
すなわち、何を、どの順番で乗せるのか。JO退化で最も難しい選択を、◆ドラ焼きは比較検討する。各モモキングごとの期待値とリスク。NJのデッキのカード採用が正確にはわからないとしても、おおよその当たりはつけることができる。
そして◆ドラ焼きの脳は計算結果を弾き出す。《未来王龍 モモキングJO》攻撃時、能力で乗せたのは《アルカディアス・モモキング》。5Cコントロールの大半のトリガーを封殺しながらのT・ブレイクが、NJを襲う。
NJ「……はい、通ります」
◆ドラ焼き「終わり」
返すNJは《天災 デドダム》を召喚して墓地に《》を落としておくくらいしかできない。
再びターンが戻り、◆ドラ焼きは考える。NJの残るシールドは2枚。そして動き出す。《禁断のモモキングダム》チャージ、まずは《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚。そのまま山札21枚がすべて公開される……すなわち、《未来王龍 モモキングJO》はない。手札に1枚あったから、1枚が楯落ち。これは計算のうちだ。
そして残ったマナから《怒りの影ブラック・フェザー》を召喚。「スター進化」の《アルカディアス・モモキング》を剥がし、露わになった《未来王龍 モモキングJO》の攻撃時に《キャンベロ <レッゾ.Star>》「侵略」とJO効果で再び《アルカディアス・モモキング》を乗せる。
またしても光以外の呪文が封殺されたW・ブレイク。そして、NJが確認したシールドを表向きにする……が、これは《ロスト・Re:ソウル》の「G・ストライク」。このターンの死だけはとりあえず防いだ格好。
だが、こうなると◆ドラ焼きは上を剥がす意味がないため、ターンが返ってきてもバトルゾーンにはタップ状態の《アルカディアス・モモキング》がそのまま残っている。加えて、《キャンベロ <レッゾ.Star>》効果もある。
ドローを確認したNJは、やがて右手を山札の上に軽く乗せる仕草を見せた。
NJ「……サレンダーで」
この状況を覆せるカードは、NJのデッキには存在しなかった。
NJ 0-1 ◆ドラ焼き
超CSⅡの決勝トーナメントでジョラゴンループを駆っていた◆ドラ焼きの対戦を見たとき、さすがにここまでの結果を残すようになるとまでは思っていなかったが、それでも思えば当時からその片鱗は存在していた。
「DMロボット」……◆ドラ焼きの昔のハンドルネームにちなんだその愛称は、鉄人のごときバイタリティで様々なデッキのパターンを突き詰め、既に何度も繰り返したであろう仮説と検証のデータでもって期待値に基づいた最適解を導き出す◆ドラ焼きのプレイスタイルをよく表している。
どこまでもデジタルに相手を追い詰めるDMロボットが、決勝進出に先に王手をかける。
Game 2
《SSS級天災 デッドダムド》《覚醒連結 XXDDZ》とチャージしたNJに対し、◆ドラ焼きは《禁断のモモキングダム》《キャンベロ <レッゾ.Star>》チャージからまたも2ターン目に《禁断英雄 モモキングダムX》を着地させる。先手後手の差で今度は準備行動がとれるNJだが、3マナから唱えたのは《》で、準備といっても先ほどとあまり大差はなさそうだ。
そして《未来王龍 モモキングJO》をチャージした◆ドラ焼きが《》を唱えて《未来王龍 モモキングJO》へと「退化」させると、再びモモキング劇場の幕が開く。
すなわち、JO攻撃時に乗せられたのは《アルカディアス・モモキング》。5Cコントロールの天敵とも言えるこのクリーチャーの着地によって、このまま1ゲーム目の焼き直しになるかとも思われた。
だが。
ここでNJのデッキがこのJO退化だらけのメタゲームの中で勝ち進んできた理由が明らかとなる。
S・トリガー、《ドラゴンズ・サイン》!
◆ドラ焼き「わお」
計算していなかったわけではない。マナ置きされた《覚醒連結 XXDDZ》の時点で、伏線は既に張られていたのだ。ただそれにしても抜けているカードがわからない。一体どのようにして採用を実現したのか……そんな考えからか、思わず驚きの声が漏れる。
だが、その間にもゲームは進む。タップ状態で着地した《龍風混成 ザーディクリカ》によって再利用された《ドラゴンズ・サイン》によって、ブロッカー+スレイヤーの《覚醒連結 XXDDZ》までもが降臨する。
◆ドラ焼き「……シンカパワー」
こうなると攻撃が止まってしまった◆ドラ焼きは、攻撃後に《アルカディアス・モモキング》を剥がして《未来王龍 モモキングJO》をアンタップだけしてターンエンドするしかない。
だが、NJのマナには《SSS級天災 デッドダムド》が既に見えている。さらに《ロスト・Re:ソウル》チャージから召喚された《天災 デドダム》は、《覚醒連結 XXDDZ》によってスピードアタッカーを得ている。
慎重にプランを検討したNJは、まずは《覚醒連結 XXDDZ》で攻撃時に呪文封じ能力を使用しつつW・ブレイクすると、続けて《天災 デドダム》の攻撃時にマナから《SSS級天災 デッドダムド》を「侵略」して、《未来王龍 モモキングJO》を処理しつつこちらもW・ブレイクする。
NJ「これで終わります」
やがてドローを確認した◆ドラ焼きはこのターン中にNJを倒しきれないことを悟ると、結論だけを簡潔に一言で述べた。
◆ドラ焼き「投了します」
NJ 1-1 ◆ドラ焼き
NJの確かなビルドセンスは、リモートデュエマ スペシャルトーナメントで既に示されていた。そしてここまで見る限り、その方向性はどちらかといえば明確なメタゲームにおける状況解決に向けられている。すなわち、メタゲームの事前の解像度が比較的高い少人数制の大会であればあるほど、NJのデッキはより鋭さを増していく。
今回、NJの5Cコントロールが最も意識していたのがJO退化だった。その証拠に、「4ターン目《ロスト・Re:ソウル》を実現するための《》軸は《アルカディアス・モモキング》に弱いため、《ドラゴンズ・サイン》を《覚醒連結 XXDDZ》と合わせて採用した」といった文言がプロフィール質問への回答として書かれていた。そして実際、フィールドの40%はJO退化だった。
加えて、相性的に有利なデッキとの対戦は、回数を重ねれば重ねるほどその相性どおりの勝率に収束しやすくなる。したがってNJのデッキ構築の焦点は、トップ8以降2本先取となったこの対戦において最もそのスペックを発揮する。そのことが如実に表れた2ゲーム目だった。
ともあれ決着は、3ゲーム目に持ち越される。
◆ドラ焼き「……《》が見えないなぁ」
NJ「いや見えてますよ、さっき」
◆ドラ焼き「確かに、1枚見えてるか。いやでもズルいなぁ、(細部が)何かわかんないの」
NJ「(《ドラゴンズ・サイン》と《》の)両刀使いしてるんで」
「DMロボット」が的確なプレイング判断を下せるのは、正確な期待値計算ができればこそだ。そしてそれは、相手がテンプレートレシピに近ければ近いほど有効となる。
だが、今回の相手はNJがアドリブで枚数調整をしたオリジナルチューンの5Cコントロールであり、当然テンプレートには収まらない。その意味でNJのようなプレイヤーはDMロボットの計算を狂わせる、最大の天敵と言っていいのかもしれない。
NJ「それにしても、しっかり2ターン目《禁断英雄 モモキングダムX》しか出てこない。強い……」
それでも、ここまで勝ち上がってくるJO退化は練度も勢いもさすがにモノが違う。平均的なJO退化はメタってきたつもりだが、もし誰よりも正確なプレイングでしかも上ブレもしっかりと引いてくるJO退化があるとすれば、それはもはや有利とは呼べないかもしれない。そして今のところ◆ドラ焼きはその条件を満たしているのだ。NJにとっても、依然決して楽な戦いではない。
◆ドラ焼き「でも今の取れなかったの、嫌だなぁ。ミスは……まあまあか。まあまあやな」
やがて決着の予感を前にして名残惜しそうに増えた口数も段々と少なくなり、ついにそのときが迫ってくる。
極限の戦いにおいて、勝敗を分けるものは何か。
その答えを出すべく、NJと◆ドラ焼きが最後のゲームを開始する。
Game 3
再び先攻となった◆ドラ焼きは、またしても迷う素振りなく《怒りの影ブラック・フェザー》をチャージ。対するNJは序盤は特にできることもないので《灰燼と天門の儀式》チャージでターンエンド。だが、《バッドドッグ・マニアクス》をチャージした◆ドラ焼きはみたび2ターン目に《禁断英雄 モモキングダムX》を降臨させる!
これを見て、さすがにのけぞるNJ。
NJ「ふぅー……めっちゃ持つやん」
◆ドラ焼き「まあまあ」
NJ「しかも退化カード2枚見えでしょ……確定かー」
それでも、まだマナ置きの最適解を追求するくらいしかできないNJは《ドンドン火噴くナウ》チャージのみでターンを返す。
そして、◆ドラ焼きの3ターン目。チャージ前の手札4枚は《進化設計図》《禁断英雄 モモキングダムX》《キャンベロ <レッゾ.Star>》《》。マナは火闇、ひとまず退化は可能……だが進化は1枚しかなく、決して完璧とは言えない。《ドラゴンズ・サイン》まで見た以上、このまま攻めきるのはあまりに楽観的が過ぎる。
そう考えたか、ここでの◆ドラ焼きの選択はチャージなしで2体目の《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚というもの。この準決勝で初めて、3ターン目に退化が行われないゲームプランをとりにいく。
一方、返すNJは《》チャージから《天災 デドダム》でマナ加速しつつ《》を墓地に送り、できる限りの備えをしておく。
そして先攻4ターン目。後攻の方が4ターン目《ロスト・Re:ソウル》率が高いため、ここで攻め逃すわけにいかない◆ドラ焼きは今度こそ《進化設計図》をチャージすると、2体目の方の《禁断英雄 モモキングダムX》を《》で退化。
さらに現れた《未来王龍 モモキングJO》での攻撃時、「侵略」《キャンベロ <レッゾ.Star>》から、JO効果……《神帝英雄 ゴッド・モモキング》!
1ターン溜めた甲斐あって、最高の進化モモキングにたどり着く。さらに脇の《禁断英雄 モモキングダムX》は追加で2枚を下に敷き、5枚が重なった状況となる。
そして、《神帝英雄 ゴッド・モモキング》によるW・ブレイク。これが通れば、◆ドラ焼きの側にはさらなる手札が補充されることになる。
だが、そんな状況でNJも黙ってやられているばかりではない。ブレイクされた2枚の中に眠っていたのは……S・トリガー、《ドラゴンズ・サイン》!
◆ドラ焼き「……マジかー。きっつ」
NJ「いやー、でも……」
そう、ここまでは◆ドラ焼きも想定内。あと1枚で爆発する《禁断英雄 モモキングダムX》が控えている以上、大展開をする意味がない。
ひとまずNJは《龍風混成 ザーディクリカ》を出すと、手札から《大地門ライフ・ゲート》を唱えて《神帝英雄 ゴッド・モモキング》をマナ送りにする。マナから出す効果の方は使用しない。
防御側プレイヤーであるNJの処理はこれで終了だが、他方でまだ◆ドラ焼きには攻撃のチャンスが残っている。攻撃後、下にあった《キャンベロ <レッゾ.Star>》をJO効果で剥がして1ドローすると、再度の《未来王龍 モモキングJO》の攻撃時に2枚目の《キャンベロ <レッゾ.Star>》へと「侵略」。これにより脇の《禁断英雄 モモキングダムX》が6枚目のカードを吸収し、NJの《龍風混成 ザーディクリカ》が「EXライフ」もろとも墓地送りとなる。NJの残りシールドは3枚。
そして、《キャンベロ <レッゾ.Star>》によるW・ブレイク。NJはカードを公開する素振りを見せ……だが、見せたのは《ロスト・Re:ソウル》。ひとまず「G・ストライク」が《キャンベロ <レッゾ.Star>》(の下にある《未来王龍 モモキングJO》)のこれ以上の攻撃だけは止める。
◆ドラ焼き「墓地見せてもらっていいですか?」
それでも、ここで◆ドラ焼きは《龍風混成 ザーディクリカ》が2枚、《ドラゴンズ・サイン》、《》、《天災 デドダム》というNJの墓地内容を慎重に確認する。
◆ドラ焼き「手札が……」
NJ「6枚」
◆ドラ焼き「……シンカパワーまず考えます」
そして《キャンベロ <レッゾ.Star>》を剥がさずに残すことを選択すると、続いて6枚になって攻撃できるようになった《禁断英雄 モモキングダムX》で、NJの最後のシールド1枚をダメ押しに割りにいく。
《キャンベロ <レッゾ.Star>》効果がかかっている以上このシールドが最後の分岐点と悟ったNJは、シールドを確認する前に祈るようにパンパンと両手を合わせる。
そして。
極限の戦いにおいて、勝敗を分けるものは何か。
たった1枚のシールドにS・トリガーが宿るかどうかは、数パーセントの誤差、いわば神の気まぐれに過ぎない。
だが、あえてそんなものがあるとするならば。
それは意志だ。
JO退化こそが最強のデッキであると悟ったNJは、それでもコントロールを手に取った。JO退化だけには簡単には負けられないと決め、《ドラゴンズ・サイン》で《アルカディアス・モモキング》を乗り越える覚悟を示した。
その意志。未来を選択する力こそが、このシチュエーションを作った。
だから。
それは必然ですらなく、ましてや偶然などでもない。
NJ「……っしーっ!」
NJが、吠えた。
《》!
◆ドラ焼き「……マジか。ネバーかぁ」
このマッチアップでJO退化にとって真に致命的なS・トリガーは、《ドラゴンズ・サイン》《》《灰燼と天門の儀式》くらいで多く見積もってもせいぜい10枚程度しかない。《アルカディアス・モモキング》を絡められなかったのは仕方ないにしても、それらが2枚埋まっている確率は27%強。期待値で言えば1.3枚かそこらだったのだ。
◆ドラ焼き「2枚踏むかー……」
だが、確率の分散はNJに味方した。である以上、もはや◆ドラ焼きにできることはNJの手札が不十分であるかもしくは何らかのミスに期待するくらいしかない。
NJ「ちょっと考えますね。どのパターンから入ればいいんだ……」
一方、NJは無数にある選択肢をしっかりと吟味し、最適解を導き出す。
すなわち、《ソーシャル・マニフェストⅡ世》を出してマナから《灰燼と天門の儀式》を唱え、《龍風混成 ザーディクリカ》を蘇生。墓地から《ドラゴンズ・サイン》を唱え、手札から《龍風混成 ザーディクリカ》。墓地から《灰燼と天門の儀式》を唱え、《龍風混成 ザーディクリカ》を蘇生。さらに手札から《灰燼と天門の儀式》で《》をクリーチャー側で呼び出し、《キャンベロ <レッゾ.Star>》とバトルしてアンタップした《未来王龍 モモキングJO》を全タップ効果で再びタップする。
◆ドラ焼き「……終わりっ」
無限の連鎖にも思える一連の処理が終了し、◆ドラ焼きが長かった先手4ターン目を終えると、もはや盤面は1ターン前の面影を感じられないほどにNJの側に傾いている。
しかもNJはなおも残された《未来王龍 モモキングJO》と《禁断英雄 モモキングダムX》すらも《SSS級天災 デッドダムド》を駆使して破壊し、一方的な状況を作り上げる。
そしてその後は、もはや消化試合だった。
やがて盤面だけでなく《ロスト・Re:ソウル》で◆ドラ焼きの手札までをも完璧にコントロールしたNJが《覚醒連結 XXDDZ》まで召喚して攻めに回ると、もはや◆ドラ焼きに抵抗する術は残されていないのだった。
NJ 2-1 ◆ドラ焼き
◆ドラ焼き「(《禁断英雄 モモキングダムX》が)殴ったのミスかなー……」
NJ「溜められてたらまだわかんなかったかも?……いやでも結局楯があれ(《》)だし……」
S・トリガー1枚での、急転直下の大逆転劇。一度は手がかかったように見えた決勝行きのチケットがスルリと抜けて手を離れていくのを見届けるのは、やはり精神的に応えるものがあるのだろう。
NJ「インタビュー、何話せばいいんだろ……」
NJが晴れやかな表情で生配信の勝利者インタビューに向かう一方で。◆ドラ焼きは沈痛な面持ちで肩を落とし、どこかでやりようがなかったかと、試合の記憶を反芻していた様子だった。
◆ドラ焼き「いやー欲張ったなー……」
極限の戦いにおいて、勝敗を分けるものは何か。
◆ドラ焼きは対戦相手もジャッジもいなくなったフィーチャーテーブルで、それをひたすらに考えていた。
自分の分岐はどこにあったのか。より良い選択はありえたのか。
だがDMロボットの類まれなるCPUによる演算をもってしても、その答えを出すことはかなわない。
やがて、すぐ後に始まるであろう反対側の準決勝でセキボンに敗れたおんそくとの3位決定戦へと、気持ちを無理矢理切り替えるのだった。
Winner:NJ
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