全国大会2019 Round 2:イヌ科(大阪府) vs. ユウキング/わいきん(岐阜県)
ライター:清水 勇貴
撮影者:後長 京介
2回戦。至極当たり前のことではあるが、この会場には1回戦で勝った選手が半分と、負けた選手が半分いる。
緊張感に包まれた日本一の舞台で、初戦を落とすことのプレッシャーはいかばかりか。
0-1ラインのカバレージを書くにあたり、選手にどうアプローチしていくかを悩んでいた筆者に、2回戦の対戦相手であるイヌ科と雑談するユウキング/わいきんの笑い声が聞こえた。
ユウキング/わいきん「(1回戦の敗戦は)悔しいけどめちゃくちゃ楽しかったわ。負けても楽しいって、この大会すごいなぁ!」
そう、ここに集っている45名は、いずれもデュエル・マスターズの強者。そして、間違いなくデュエル・マスターズを愛する者たちなのだ。
準備を進めながらも、にこやかに談笑する両選手。
デュエル・マスターズを愛する者同士の戦いが、ここでもまた始まる。
対戦開始前、お互いの超次元ゾーンや超GRゾーンを確認しあう折り、早速イヌ科が驚きの声を上げる。
イヌ科「え、60枚デッキ?」
彼の目に入ったのは、ユウキング/わいきんの超次元ゾーンを圧迫する4枚の《13番目の計画》、そしてうず高く積まれたメインデッキ。
そう、ユウキング/わいきんのメインデッキはなんと破格の60枚だ。
超次元ゾーン、超GRゾーンもフルに活用するため、エクストラデッキも含めたデッキの枚数は実に80枚。
イヌ科「フィーチャーマッチで【キリコグラスパー】ってことだけは知ってたけど……?」
1回戦のフィーチャー分だけ、情報ビハインドを背負うユウキング/わいきん。それでもなお、彼の持ち込んだ60枚には読みきれない深淵が隠されているらしい。
先攻はユウキング/わいきんだ。
1ターン目はお互いに多色カードを消化し、2ターン目にユウキング/わいきんが《地龍神の魔陣》を、イヌ科が《メンデルスゾーン》をプレイしてマナを伸ばす展開。
【ガイアッシュ覇道】と【キリコグラスパー】。全く方向性の違う二者だが、豊富なマナを勝ち筋に繋げていくデッキタイプだ。
先攻3ターン目。ユウキング/わいきんが《神秘の宝箱》をプレイし、ゲームが動き出す。
呪文のプレイを宣言したユウキング/わいきんは大量の山札を3つに分割し、丹念にデッキを確認していく。
イヌ科「60枚の盾確認キツそうだね」
ユウキング/わいきん「いや〜しんどい!」
3山目の終盤に差し掛かってようやくお目当ての《エンペラー・キリコ》を見つけ出した後も、丹念にデッキの内容を記憶にすり込んでいくユウキング/わいきん。
物理的に時間のかかるサーチとシャッフル。対面するイヌ科はいささか退屈そうだが、ユウキング/わいきんの一挙手一投足をじっと見つめる眼差しは変わらず鋭い。
長かったターンが終わり、迎えた後攻イヌ科の3ターン目。
《メンデルスゾーン》から綺麗に繋がる5マナは、ドラゴン系デッキにとってビッグアクションが待ち受けるマナ帯。もちろん控えているのは《インフェル星樹》だ。
自分の封印を2枚マナに置き、2ドロー。環境屈指のアドバンテージメイカーがその暴威を振るう。
ユウキング/わいきんの4ターン目、ドローを確認すること暫し。ユウキング/わいきんはおもむろに《神秘の宝箱》をプレイし、《悪魔神ザビ・イプシロン》をマナゾーンへ埋める。
イヌ科「……あれ、マナセットなし?」
ユウキング/わいきん「なしですね」
そう返事をしたユウキング/わいきんの手札は残り2枚。この2枚に「埋めたくない」カードがあるだろうことは想像に難くない。
次のターンには7マナに到達するユウキング/わいきん。ここまで来れば、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》から《エンペラー・キリコ》を踏み倒し、ゲームを速やかに決着させるだろう。
一方で、万全を期すにはこのターン中に決定打を叩き込みたいイヌ科だ。
ここまで《メンデルスゾーン》、《インフェル星樹》と流れるようにプレイし、マナセットと合わせて8マナを確保している。
2枚目の《メンデルスゾーン》をプレイしてマナの枚数を10枚まで伸ばし、残るは6マナ。うち5マナをタップして、イヌ科がカードを盤面に叩きつける!
イヌ科「《シンカゲリュウ・柳生・ドラゴン》を召喚します」
登場時能力でマナゾーンでタップされているドラゴンを全てアンタップできるコスト5のドラゴン。軽量ながらド派手なアクションを起こしうる、覚醒編からの刺客だ。
イヌ科のマナゾーンでタップされているカードの枚数は9枚。そしてもちろん、イヌ科のマナゾーンでタップされているドラゴンの枚数も9枚。イヌ科はマナゾーンのカードすべてを引ったくってアンタップする。
ここで、ユウキング/わいきんがイヌ科へ質問を投げかける。
ユウキング/わいきん「マナの《最終龍覇 ロージア》って3枚ですよね?」
イヌ科「そうだね、3枚」
短い問答を終えたイヌ科は、当然の権利とばかりに8マナをタップ。B・A・Dでコスト軽減された《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を送り出す。
そのままの勢いでW・ブレイクを叩き込むイヌ科の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》。
シールドをチェックしたユウキング/わいきんは2枚をそのまま公開する。
《罪罰執行 ジョ喰ンマ》と《地龍神の魔陣》。
《地龍神の魔陣》のG・ストライクで《シンカゲリュウ・柳生・ドラゴン》を止めつつ、《罪罰執行 ジョ喰ンマ》が《シェイク・シャーク》を引き連れて召喚酔いの解けた《インフェル星樹》を破壊する。
無事生き残った《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》がターン終了時に破壊され、イヌ科は追加ターンを獲得した。
とはいえ、トリガーが分厚いユウキング/わいきん謹製の【キリコグラスパー】。
先程の受け札2枚同時トリガーが記憶に新しいように、続くターンの攻め手を受け切ればまだチャンスは——。そう考えた矢先。
イヌ科の虎の子が火を噴いた。
イヌ科「《ローラー雪だるま》を唱えます。マナから《最終龍覇 ロージア》回収して、1枚ブーストで」
その宣言を聞いた途端、ユウキング/わいきんの顔が歪む。対照的に満面の笑みを浮かべ、召喚した《最終龍覇 ロージア》に《銀河大剣 ガイハート》を装備させるイヌ科。
イヌ科「《最終龍覇 ロージア》でプレイヤーを攻撃、革命チェンジ《時の法皇 ミラダンテⅫ》、3点!」
イヌ科が抱えていた最終兵器、《時の法皇 ミラダンテⅫ》が戦場に降臨する。
コスト7以下のクリーチャーが召喚できなくなったことでユウキング/わいきんは返すターンに勝つ術を失い。
イヌ科の手札には《最終龍覇 ロージア》という、続くターンに勝負を決めうるスピードアタッカーがあった。
Winner:イヌ科
ユウキング/わいきん「《最終龍覇 ロージア》か《時の法皇 ミラダンテⅫ》のどっちかなければ《テック団の波壊Go!》で封印剥がして勝てると思ったのになぁ……」
決着する直前のターン、イヌ科に残された《最終龍覇 ロージア》が1枚であることは確認していたユウキング/わいきん。
イヌ科はそんな彼の言葉を予見していたかのようにこう呟いた。
イヌ科「《時の法皇 ミラダンテⅫ》と《》で確実に詰めるための《ローラー雪だるま》だからね」
対戦後、その真意をイヌ科にインタビューした。
イヌ科「最初はオリジナルで使った基盤そのまま《次元の霊峰》を入れてたんですけど、結構封印落ちするし、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》で簡単に山札1周するから、あんまり意味ないことに気付いて。
そしたら今度はマナに触りたいから回収カードを探してたら、小回りが効いて自然単色の《ローラー雪だるま》が一番良かった」
惜しくも負けてしまったユウキング/わいきんだったが、彼のデッキもまたこだわりの溢れるカードチョイスが輝いていた。
ユウキング/わいきん「【キリコグラスパー】のループで勝ち筋を何に据えるか考えた時に、《悪魔神ザビ・イプシロン》から≪サファイア・ミスティ≫を出すのが一番枠としてスマートだったんですよね。不足しがちな闇単色だから《天災 デドダム》出しやすくなりますし。
あと、実は打点としても結構優秀なんですよ。
《カンゴク入道》とかで盾が削れた【火単ブランド】を《罪罰執行 ジョ喰ンマ》で受けて、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》から《悪魔神ザビ・イプシロン》出せば《覚醒竜機ボルバルザークJr.》で返しに5点作れたりとか」
《シンカゲリュウ・柳生・ドラゴン》、《ローラー雪だるま》、《悪魔神ザビ・イプシロン》に《覚醒竜機ボルバルザークJr.》。
環境の最前線で活躍しているとはとても言えないが、確かにそれぞれのカードにしかできない仕事がある。デュエル・マスターズへの深い知識と探究心、そして愛がなければ思いつけないカードチョイスだ。
今回の試合ではイヌ科が勝利を飾った。しかし、彼らはいずれまた、戦いの舞台で相見えるのだろう。彼らがデュエル・マスターズを愛しているかぎり。
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY