金沢超CSⅡ 準々決勝:ハマチ vs. 弱井
8人から4人へ。
1,200人いたプレイヤーも、いよいよトップ8まで絞られた。ここから先は2本先取となり、さらに過酷な戦いがプレイヤーたちを待ち受けている。
弱井選手は地元石川のプレイヤーで、トップ8プロフィールでは同じく石川の真瞳術チャンプ選手を尊敬している旨を強調していた。使用デッキも真瞳術チャンプ選手に勧められたという理由で、無色型のジョーカーズを選択している。
対するハマチ選手は神奈川のプレイヤー。デッキは同じくジョーカーズだが、《サイコロプス》や《》を採用して受けが強くなった最新型の赤ジョーカーズを持ち込んでいる。
ジョーカーズ対決は《ヤッタレマン》や《ガヨウ神》《ジョット・ガン・ジョラゴン》といった基本パーツは共通していても、トリガーの種類や枚数、メタクリーチャーの有無など、互いのデッキ構築やプレイング次第で様々な部分に差が付いてくる。
ここまで勝ち上がってきた以上、互いにジョーカーズというデッキを誰よりも使いこなしているという点において疑いはない。ならば勝負を決するのは、デッキ構築の違いか。
無色型と赤型、どちらが優れているのか。そして何よりトップ4進出をかけた、2人のジョーカーズ使いの対戦の幕がいま上がった。
続けて弱井選手が《パーリ騎士》チャージから《ヤッタレマン》で返すと、ハマチ選手も《アイアン・マンハッタン》をチャージして《ヤッタレマン》で鏡打ち。
ここまでは互いに予定調和の動きだが、3ターン目に弱井選手が《ゲラッチョ男爵》チャージから繰り出したのは、《波乗りザブンプル》!
ハマチ「少し考えます」
一方的に《ジョット・ガン・ジョラゴン》が封じられてしまう形となったハマチ選手は、ひとまず《ポクチンちん》チャージから《パーリ騎士》を召喚し、リソースを溜める。
するとここで弱井選手は少考の末、おもむろに《ヤッタレマン》《波乗りザブンプル》を手札に戻し、《ジョット・ガン・ジョラゴン》を召喚。さらに攻撃時に捨てたのは《アイアン・マンハッタン》! ハマチ選手のシールドにトリガーはなく、W・ブレイクと合わせてハマチ選手をシールドなしの状態にすることに成功する。
しかしその代償として、ハマチ選手に大量の手札を与えてしまう。《アイアン・マンハッタン》の効果でクリーチャーを1体しか出せないようにしたとはいえ、あまりにも大きすぎる代償だったと言える。
なぜなら大量の手札を抱えた状態でターンが返ってきたハマチ選手は、まず《ジョジョジョ・ジョーカーズ》で《》を手に入れた後、《ヤッタレマン》《パーリ騎士》を戻しながら《ジョット・ガン・ジョラゴン》を召喚し、弱井選手の《ジョット・ガン・ジョラゴン》への殴り返し時にしっかりと《ガヨウ神》をディスカード。さらにその能力で捨てたのはまたしても《ガヨウ神》。その能力でついには《サイコロプス》の能力を「ジョラゴン・ビッグ1」することで、弱井選手に一切の手札を与えることなく、一方的に《ジョット・ガン・ジョラゴン》を対処したのだ。
この一連でリソースをすべて失った弱井選手は《波乗りザブンプル》を出し直し、無事にターンが返ってくることを祈るしかない。
しかしハマチ選手は《ヤッタレマン》《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《パーリ騎士》から、《ジョット・ガン・ジョラゴン》をタップインでも構わずに召喚。そしてもう1体の《ジョット・ガン・ジョラゴン》で攻撃すると、弱井選手にとっての悪夢がスタートする。
《アイアン・マンハッタン》を捨て、2度の「ジョラゴン・ビッグ1」効果で再び《アイアン・マンハッタン》と《》をディスカード。《》から出てきたのは《ガヨウ神》。《》の能力で与えられるのは「スピードアタッカー」ではなく「出たターンにプレイヤーを攻撃できる」という効果のため、《波乗りザブンプル》を乗り越えてジャスキル打点が生成される。
もちろんこれだけではハマチ選手の「ジョラゴン・ビッグ1」の効果解決は終わらない。《ガヨウ神》の効果でさらなる《》を捨てたことで、スロットはまさしくジャックポット状態。《アイアン・マンハッタン》、再びの《》、《ポクチンちん》で自らの山札を修復、積み重なった《》効果で出てくるのはさらなる《アイアン・マンハッタン》、《》、《パーリ騎士》etc……。
山札中のジョーカーズを並べ尽くされ、しかもそのどれもがプレイヤーに攻撃できるという恐ろしい盤面が作られたのを見届けた弱井選手は、苦笑しながらカードを片付けた。
ハマチ 1-0 弱井
「1ゲーム目は1ターン待っておけば……」とは、マッチの終了後に弱井選手が漏らした言葉だ。
1ターン待って5マナから《ヤッタレマン》戻しの《ジョット・ガン・ジョラゴン》なら、《波乗りザブンプル》を維持したまま殴り返しのリスクをケアできた。もし与えた1ターンで《ジョット・ガン・ジョラゴン》を出されたとしてもタップインなので、こちらから殴り返す選択肢も生まれる。そのプランをとらず、4ターン目に《ジョット・ガン・ジョラゴン》で走ってしまったことが結果的に敗着となってしまった。
とはいえ、もちろん《ジョット・ガン・ジョラゴン》のドローで《ガヨウ神》を引けていればそのままハマチ選手を倒しきれていた可能性もある。ジョーカーズ対決は豪快に見えて、非常に繊細なバランス感覚が求められるゲームなのだ。
そのまま弱井選手が《ヤッタレマン》から《パーリ騎士》《波乗りザブンプル》というぶん回りを見せると、ハマチ選手はたまらず≪7777777≫。だが狙い通りに《パーリ騎士》がめくれ、3マナクリーチャー2体をまとめて対処することに成功する。
ならばと弱井選手はマナチャージなしからの《ガヨウ神》で手札を補充するが、ハマチ選手は《ヤッタレマン》を出しつつ《サイコロプス》を「J・O・E」で召喚して《ガヨウ神》を即座に排除、《ジョット・ガン・ジョラゴン》による再利用を許さない。
これを受けて弱井選手は《ヤッタレマン》《波乗りザブンプル》《波乗りザブンプル》と一気に展開。ハマチ選手も《パーリ騎士》を出しつつ2体戻しの《ジョット・ガン・ジョラゴン》をタップインで召喚するも、これにはコスト2軽減で6マナフルタップの《バイナラドア》が突き刺さる。
2枚目の《ジョット・ガン・ジョラゴン》が引けていないハマチ選手は《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《ポクチンちん》と横に並べ直すのだが、弱井選手はさらに3体目の《ヤッタレマン》を出しつつ2体目の《バイナラドア》で《ポクチンちん》を排除し、カードを補充しながらの展開で計7体ものジョーカーズを横に並べることに成功する。
お互いに決め手を欠くリソース勝負となったが、《ガヨウ神》を引けていないことが響いて後攻のハマチ選手の方がクリーチャー展開が鈍いという状況。おまけに《波乗りザブンプル》が定着しているので、ここから仮に自分だけ《ジョット・ガン・ジョラゴン》を引けたとしても、タップインで出した時点でそれならばと弱井選手に全軍攻撃の口実を与えてしまうことになる。
やむなく引き込んだ《》を力なく召喚するのみでターンを返すハマチ選手、このまま押し切られてしまうのか……?
そして7打点で攻撃可能な弱井選手のターンがやってくる。攻撃するべきか悩むも、≪7777777≫を踏んでうっかり2体以上が流れてしまうとジャスキル不能になること、返しで《ジョット・ガン・ジョラゴン》を引かれたら開き直って攻めればいいことなどから、4体目の《ヤッタレマン》と《パーリ騎士》を追加して9打点を作り、殴らずにターンを終える。すなわち、次のターンこそ全軍攻撃だという合図だ。
そうなると、いよいよこれがハマチ選手の事実上ラストターン。だが《ジョット・ガン・ジョラゴン》による切り返しは《波乗りザブンプル》によって封じられている。盤面には《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《》の3体のみ。この状況からの逆転は不可能だ。そう思われた。
いや、そう思わされていたのだ。すぐれぬドロー内容に消沈した様子を、あえてとっていたハマチ選手によって。
そう、ハマチ選手にはどこまでも細くて細い、しかし確かな逆転のルートが見えていた。そしてそのためだけに、密かに3打点をバトルゾーンに残していた。
ハマチ「J・O・Eで」
言いながら7マナを倒したハマチ選手が公開したカードは、《アイアン・マンハッタン》。《波乗りザブンプル》でタップインだが、ここで必要なのは出たときの能力だ。
すなわち、弱井選手の5枚のシールドのうち3枚を一気にブレイクすること。そして盤面には3打点、計算上はジャスキルだ。弱井選手のシールドにトリガーが1枚もなければ、だが。
そう、もはやゲームの決着は弱井選手のシールド内容、すなわち運の領域に完全に委ねられた。だが、圧倒的不利な状況からトリガー次第というところまでゲームをもつれさせたのは、間違いなくハマチ選手の実力によるものなのだ。
急転直下でトリガー勝負に持ち込まれた弱井選手は、見事にしてやられたと笑みを浮かべながら3枚のシールドを確認する。1枚でもトリガーを踏ませられれば勝てるのだ。弱井選手の表情にはまだ余裕があった。だがあにはからんや、3枚の中にトリガーはない。残るシールドは2枚。
続けてハマチ選手は《パーリ騎士》でシールドをブレイクする。カードを確認した弱井選手は、「はい」とだけ呟いて続きを促した。次で最後のシールドだ。
まさか、こんなことが起こるのか。
《ヤッタレマン》の攻撃を受け、ゆっくりと最後のシールドを確認する弱井選手。そして、その1枚は。
……そのまま弱井選手の手札へと合流し、「良し!」というハマチ選手の歓喜の声とともに行われたダイレクトアタックが、長かった勝負に決着をつけたのであった。
ハマチ 2-0 弱井
弱井「殴っとけばよかったなー……」
ハマチ「そうですね、返せるとしたら≪7777777≫くらいだったので……2枚要求は返せなかったと思います」
そう言ってハマチ選手がシールドをめくると……公開した5枚の中にトリガーは、実際1枚の《》しかないのであった。
席を立った弱井選手に、友人たちが次々と声をかける。
「あれ殴らんのプレミやろ!」「ヤッタレ4枚見えてるから、3コスから先に殴ったら仮に≪7777777≫を後から踏んでも2体一気に飛ばないようにできるやん」「練習不足やな」「確かに……」
トップ4進出をかけた大一番で、緊張しないはずもない。普段なら容易にできる判断でもここぞという場面でミスしてしまうというのは、大舞台ではよくあることだ。
だが少なくとも、ジョーカーズ対決の場数をもう少し踏んでおけば、どちらかのゲームは拾えていたかもしれない。そうして3ゲーム目に辿り着けていたら。結果は、変わっていたかもしれないのだ。
友人たちとの検討を終えた去り際に弱井選手が呟いた言葉が、どこまでも印象に残るものだった。
弱井「もっと、練習しておけばよかったな……」
Winner: ハマチ
1,200人いたプレイヤーも、いよいよトップ8まで絞られた。ここから先は2本先取となり、さらに過酷な戦いがプレイヤーたちを待ち受けている。
弱井選手は地元石川のプレイヤーで、トップ8プロフィールでは同じく石川の真瞳術チャンプ選手を尊敬している旨を強調していた。使用デッキも真瞳術チャンプ選手に勧められたという理由で、無色型のジョーカーズを選択している。
対するハマチ選手は神奈川のプレイヤー。デッキは同じくジョーカーズだが、《サイコロプス》や《》を採用して受けが強くなった最新型の赤ジョーカーズを持ち込んでいる。
ジョーカーズ対決は《ヤッタレマン》や《ガヨウ神》《ジョット・ガン・ジョラゴン》といった基本パーツは共通していても、トリガーの種類や枚数、メタクリーチャーの有無など、互いのデッキ構築やプレイング次第で様々な部分に差が付いてくる。
ここまで勝ち上がってきた以上、互いにジョーカーズというデッキを誰よりも使いこなしているという点において疑いはない。ならば勝負を決するのは、デッキ構築の違いか。
無色型と赤型、どちらが優れているのか。そして何よりトップ4進出をかけた、2人のジョーカーズ使いの対戦の幕がいま上がった。
Game 1
弱井選手が《ジョット・ガン・ジョラゴン》チャージでターンを返すと、ハマチ選手は《》チャージから《ジョジョジョ・ジョーカーズ》で《パーリ騎士》を手札に加え、ジョーカーズ対決であることが互いに明らかになる。続けて弱井選手が《パーリ騎士》チャージから《ヤッタレマン》で返すと、ハマチ選手も《アイアン・マンハッタン》をチャージして《ヤッタレマン》で鏡打ち。
ここまでは互いに予定調和の動きだが、3ターン目に弱井選手が《ゲラッチョ男爵》チャージから繰り出したのは、《波乗りザブンプル》!
ハマチ「少し考えます」
一方的に《ジョット・ガン・ジョラゴン》が封じられてしまう形となったハマチ選手は、ひとまず《ポクチンちん》チャージから《パーリ騎士》を召喚し、リソースを溜める。
するとここで弱井選手は少考の末、おもむろに《ヤッタレマン》《波乗りザブンプル》を手札に戻し、《ジョット・ガン・ジョラゴン》を召喚。さらに攻撃時に捨てたのは《アイアン・マンハッタン》! ハマチ選手のシールドにトリガーはなく、W・ブレイクと合わせてハマチ選手をシールドなしの状態にすることに成功する。
しかしその代償として、ハマチ選手に大量の手札を与えてしまう。《アイアン・マンハッタン》の効果でクリーチャーを1体しか出せないようにしたとはいえ、あまりにも大きすぎる代償だったと言える。
なぜなら大量の手札を抱えた状態でターンが返ってきたハマチ選手は、まず《ジョジョジョ・ジョーカーズ》で《》を手に入れた後、《ヤッタレマン》《パーリ騎士》を戻しながら《ジョット・ガン・ジョラゴン》を召喚し、弱井選手の《ジョット・ガン・ジョラゴン》への殴り返し時にしっかりと《ガヨウ神》をディスカード。さらにその能力で捨てたのはまたしても《ガヨウ神》。その能力でついには《サイコロプス》の能力を「ジョラゴン・ビッグ1」することで、弱井選手に一切の手札を与えることなく、一方的に《ジョット・ガン・ジョラゴン》を対処したのだ。
この一連でリソースをすべて失った弱井選手は《波乗りザブンプル》を出し直し、無事にターンが返ってくることを祈るしかない。
しかしハマチ選手は《ヤッタレマン》《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《パーリ騎士》から、《ジョット・ガン・ジョラゴン》をタップインでも構わずに召喚。そしてもう1体の《ジョット・ガン・ジョラゴン》で攻撃すると、弱井選手にとっての悪夢がスタートする。
《アイアン・マンハッタン》を捨て、2度の「ジョラゴン・ビッグ1」効果で再び《アイアン・マンハッタン》と《》をディスカード。《》から出てきたのは《ガヨウ神》。《》の能力で与えられるのは「スピードアタッカー」ではなく「出たターンにプレイヤーを攻撃できる」という効果のため、《波乗りザブンプル》を乗り越えてジャスキル打点が生成される。
もちろんこれだけではハマチ選手の「ジョラゴン・ビッグ1」の効果解決は終わらない。《ガヨウ神》の効果でさらなる《》を捨てたことで、スロットはまさしくジャックポット状態。《アイアン・マンハッタン》、再びの《》、《ポクチンちん》で自らの山札を修復、積み重なった《》効果で出てくるのはさらなる《アイアン・マンハッタン》、《》、《パーリ騎士》etc……。
山札中のジョーカーズを並べ尽くされ、しかもそのどれもがプレイヤーに攻撃できるという恐ろしい盤面が作られたのを見届けた弱井選手は、苦笑しながらカードを片付けた。
ハマチ 1-0 弱井
「1ゲーム目は1ターン待っておけば……」とは、マッチの終了後に弱井選手が漏らした言葉だ。
1ターン待って5マナから《ヤッタレマン》戻しの《ジョット・ガン・ジョラゴン》なら、《波乗りザブンプル》を維持したまま殴り返しのリスクをケアできた。もし与えた1ターンで《ジョット・ガン・ジョラゴン》を出されたとしてもタップインなので、こちらから殴り返す選択肢も生まれる。そのプランをとらず、4ターン目に《ジョット・ガン・ジョラゴン》で走ってしまったことが結果的に敗着となってしまった。
とはいえ、もちろん《ジョット・ガン・ジョラゴン》のドローで《ガヨウ神》を引けていればそのままハマチ選手を倒しきれていた可能性もある。ジョーカーズ対決は豪快に見えて、非常に繊細なバランス感覚が求められるゲームなのだ。
Game 2
《ジョジョジョ・ジョーカーズ》を埋めて唱えた《ジョジョジョ・ジョーカーズ》で《ヤッタレマン》をゲットする弱井選手に対し、ハマチ選手も《サイコロプス》を埋めつつ《メラメラ・ジョーカーズ》で手札を整える。そのまま弱井選手が《ヤッタレマン》から《パーリ騎士》《波乗りザブンプル》というぶん回りを見せると、ハマチ選手はたまらず≪7777777≫。だが狙い通りに《パーリ騎士》がめくれ、3マナクリーチャー2体をまとめて対処することに成功する。
ならばと弱井選手はマナチャージなしからの《ガヨウ神》で手札を補充するが、ハマチ選手は《ヤッタレマン》を出しつつ《サイコロプス》を「J・O・E」で召喚して《ガヨウ神》を即座に排除、《ジョット・ガン・ジョラゴン》による再利用を許さない。
これを受けて弱井選手は《ヤッタレマン》《波乗りザブンプル》《波乗りザブンプル》と一気に展開。ハマチ選手も《パーリ騎士》を出しつつ2体戻しの《ジョット・ガン・ジョラゴン》をタップインで召喚するも、これにはコスト2軽減で6マナフルタップの《バイナラドア》が突き刺さる。
2枚目の《ジョット・ガン・ジョラゴン》が引けていないハマチ選手は《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《ポクチンちん》と横に並べ直すのだが、弱井選手はさらに3体目の《ヤッタレマン》を出しつつ2体目の《バイナラドア》で《ポクチンちん》を排除し、カードを補充しながらの展開で計7体ものジョーカーズを横に並べることに成功する。
お互いに決め手を欠くリソース勝負となったが、《ガヨウ神》を引けていないことが響いて後攻のハマチ選手の方がクリーチャー展開が鈍いという状況。おまけに《波乗りザブンプル》が定着しているので、ここから仮に自分だけ《ジョット・ガン・ジョラゴン》を引けたとしても、タップインで出した時点でそれならばと弱井選手に全軍攻撃の口実を与えてしまうことになる。
やむなく引き込んだ《》を力なく召喚するのみでターンを返すハマチ選手、このまま押し切られてしまうのか……?
そして7打点で攻撃可能な弱井選手のターンがやってくる。攻撃するべきか悩むも、≪7777777≫を踏んでうっかり2体以上が流れてしまうとジャスキル不能になること、返しで《ジョット・ガン・ジョラゴン》を引かれたら開き直って攻めればいいことなどから、4体目の《ヤッタレマン》と《パーリ騎士》を追加して9打点を作り、殴らずにターンを終える。すなわち、次のターンこそ全軍攻撃だという合図だ。
そうなると、いよいよこれがハマチ選手の事実上ラストターン。だが《ジョット・ガン・ジョラゴン》による切り返しは《波乗りザブンプル》によって封じられている。盤面には《ヤッタレマン》《パーリ騎士》《》の3体のみ。この状況からの逆転は不可能だ。そう思われた。
いや、そう思わされていたのだ。すぐれぬドロー内容に消沈した様子を、あえてとっていたハマチ選手によって。
そう、ハマチ選手にはどこまでも細くて細い、しかし確かな逆転のルートが見えていた。そしてそのためだけに、密かに3打点をバトルゾーンに残していた。
ハマチ「J・O・Eで」
言いながら7マナを倒したハマチ選手が公開したカードは、《アイアン・マンハッタン》。《波乗りザブンプル》でタップインだが、ここで必要なのは出たときの能力だ。
すなわち、弱井選手の5枚のシールドのうち3枚を一気にブレイクすること。そして盤面には3打点、計算上はジャスキルだ。弱井選手のシールドにトリガーが1枚もなければ、だが。
そう、もはやゲームの決着は弱井選手のシールド内容、すなわち運の領域に完全に委ねられた。だが、圧倒的不利な状況からトリガー次第というところまでゲームをもつれさせたのは、間違いなくハマチ選手の実力によるものなのだ。
急転直下でトリガー勝負に持ち込まれた弱井選手は、見事にしてやられたと笑みを浮かべながら3枚のシールドを確認する。1枚でもトリガーを踏ませられれば勝てるのだ。弱井選手の表情にはまだ余裕があった。だがあにはからんや、3枚の中にトリガーはない。残るシールドは2枚。
続けてハマチ選手は《パーリ騎士》でシールドをブレイクする。カードを確認した弱井選手は、「はい」とだけ呟いて続きを促した。次で最後のシールドだ。
まさか、こんなことが起こるのか。
《ヤッタレマン》の攻撃を受け、ゆっくりと最後のシールドを確認する弱井選手。そして、その1枚は。
……そのまま弱井選手の手札へと合流し、「良し!」というハマチ選手の歓喜の声とともに行われたダイレクトアタックが、長かった勝負に決着をつけたのであった。
ハマチ 2-0 弱井
弱井「殴っとけばよかったなー……」
ハマチ「そうですね、返せるとしたら≪7777777≫くらいだったので……2枚要求は返せなかったと思います」
そう言ってハマチ選手がシールドをめくると……公開した5枚の中にトリガーは、実際1枚の《》しかないのであった。
席を立った弱井選手に、友人たちが次々と声をかける。
「あれ殴らんのプレミやろ!」「ヤッタレ4枚見えてるから、3コスから先に殴ったら仮に≪7777777≫を後から踏んでも2体一気に飛ばないようにできるやん」「練習不足やな」「確かに……」
トップ4進出をかけた大一番で、緊張しないはずもない。普段なら容易にできる判断でもここぞという場面でミスしてしまうというのは、大舞台ではよくあることだ。
だが少なくとも、ジョーカーズ対決の場数をもう少し踏んでおけば、どちらかのゲームは拾えていたかもしれない。そうして3ゲーム目に辿り着けていたら。結果は、変わっていたかもしれないのだ。
友人たちとの検討を終えた去り際に弱井選手が呟いた言葉が、どこまでも印象に残るものだった。
弱井「もっと、練習しておけばよかったな……」
Winner: ハマチ
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