超CSⅣ京都 決勝戦 :すばるな vs. Lia☆
ライター:林 直幸
撮影者:堀川 優一
デッキ選択。デッキ細部の調整。そしてプレイング。
これらを適切に準備できるか否かが、目の前の一戦の勝敗を分ける。
その場で生み出されたアクロバティックなプレイングによって勝敗が決することは私の知る限りほとんどない。ただ練習によって準備された丁寧なプレイこそが、勝利へと導いてくれるものだ。
超CSⅣの最後を飾る超CSⅣ京都は、まさに各プレイヤーの準備の質が問われる大会となった。
新殿堂。新カードセットの発売。その渦中の大会の結果。
そして何より、自らが試した成果。
これらを分析し、吟味し、デッキの1枚1枚、プレイの細かいところに至るまで、勝率を上げるために淡々と準備を進めてきた。
「【ゼーロベン】を倒せるデッキであるアグロ、その中でも【火自然アポロ】に辿り着きました」
かつて最強プレイヤーの一角に名を連ねていた鮭くれーぷという男がいる。
彼の生誕の地、島根県からやってきたすばるなが準備してきたのが、デュエマの華、3ターンキルに特化した【火自然アポロ】だ。
「雑多環境を見越して、それにマッチした【4c邪王門】を持ってきました」
Lia☆は地方でもデュエマが盛んな富山県からやってきた。
彼の準備の成果は【4c邪王門】。ベスト8に4人を送り込んだ今大会最も勝ち組といえるデッキだ。
すばるな「同じ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を使う【水火アポロ】よりは、《進化設計図》の爆発力がある【火自然アポロ】の方が優れていると感じました」
Lia☆「色事故を軽減してくれる《極楽鳥》の採用、【水闇自然ハンデス】などのメタクリーチャーをリソースを減らさずに除去できる《Disノメノン》の採用…このあたりは自分で考えて作りました」
神は細部に宿るという。彼らは己のデッキ選択だけでなく細部まで突き詰めて考えてきた。
そして、4回に渡る超CSⅣ。
その最後の王者を決める席に、2人は座っている。
もう1度言う。デュエル・マスターズは準備のゲームだ。
彼らのデッキにおける準備が成功を収めたことは、もう疑う余地はない。
最後に見届けよう。彼らがここまで準備してきたプレイングを。
Game1
先攻:すばるな
【火自然アポロ】と【4c邪王門】の対決。
注目すべき点はシンプル。すばるなが高速《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》コンボを決めることができるかどうか、仮に決まったとしてLia☆がそれをいなすことができるかどうかだ。
先攻1ターン目、すばるなは幸先よく《ヘルコプ太の心絵》から《覇王る侵略 ドレッドゾーン》を回収。
これは2ターン目に火マナとなり……《進化設計図》。
これが《轟く侵略 レッドゾーン》と《オンソク童子 <ターボ.鬼>》を回収。《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》や《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》の姿はまだ見えない。
対するLia☆は《極楽鳥》チャージからの《ダンディ・ナスオ》プレイ。
数多のゲームを決着へと導いた《生命と大地と轟破の決断》をサーチする。
《轟く侵略 レッドゾーン》単体でのアタックを誘える《極楽鳥》プレイの選択肢もあったが、すばるなの見えている手札の質を考えれば3ターン《天災 デドダム》でも十分間に合う。そう判断しての丁寧なプレイングだ。
そう、見えている手札の質だけ考えれば。
返すすばるなのターン。未だ明かされぬ4枚の手札の中に、神は潜んでいた。
まずは"見えていなかったはずの"《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》。《ダンディ・ナスオ》がバトルで破壊される。
いや、ここまでならいい。ここから《轟く侵略 レッドゾーン》侵略でも十分強いのだが、受けの堅い【4c邪王門】相手にはその程度では…… 超神羅星、顕現。
さらに引き込んでいた《轟く侵略 レッドゾーン》2枚と共に、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》が5枚のシールドを奪い去る。
トリガーは《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》。その効果を解決する前に《轟く侵略 レッドゾーン》効果で破壊され、殴り返しをケア。
ここでの回収は《百鬼の邪王門》や《一王二命三眼槍》ではなく…《奇天烈 シャッフ》。マナ破壊を嫌って《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》には触らない。
一見大ピンチに見えるが、ここからが【4c邪王門】、そしてLia☆の準備したプレイングの真骨頂だ。
まずはダイレクトアタックに合わせて《百鬼の邪王門》1枚宣言。
これが《天災 デドダム》を呼び出しマナ加速、ダイレクトアタックは《一王二命三眼槍》で受け止める。
返しのターン、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》がもたらし、《天災 デドダム》のマナ加速によってプレイが可能になった《奇天烈 シャッフ》宣言6で《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を止めることに成功する。
つまり、自分が《百鬼の邪王門》で《天災 デドダム》を捲る前提で《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》の回収を考えていたのだ。
その場しのぎをすればいいわけではないという、Lia☆の勝ち筋を見据えたプレイスキルの高さが伺えるシーンだった。
が、Lia☆はもうこの時点で負けを確信していただろう。
なぜなら自身の防御札をこれで使い果たし、トップで何も引けなかった末に……
《進化設計図》で見えていた《オンソク童子 <ターボ.鬼>》が、まだマナゾーンに置かれていないから。
そうでなくとも、すばるなはトップで引き込んだ《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》を《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》に進化させる。
《奇天烈 シャッフ》の宣言範囲外にコストが変更されたことにより攻撃が可能となった《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》。そのダイレクトアタック宣言にLia☆は「通ります」と一言告げ、第2ゲームの準備へと移った。
すばるな 1-0 Lia☆
Game2
先攻:Lia☆
そう、Lia☆のプレイスキルは非常に高かったのだ。
その場しのぎでない、常に勝ち筋を見据えたプレイは地元富山のレベルの高さを伺えるワンシーンだった。
だが、この日の主人公は彼ではなく、すばるなだった。それだけの話だった。
3ターン目まで、チャージエンド。
それで、どうやってすばるなの《進化設計図》から見えた彼らを止めることができようか。
1ターン目に設置しておいた《ストリエ雷鬼の巻》の上に《轟く侵略 レッドゾーン》まで携え、《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》が再び目の前の壁を焼き払い、襲い掛かる。
Game1のように、【4c邪王門】の防御力が本領を発揮するのはダイレクトアタックを受けてから。
しかし……Lia☆の手札には《百鬼の邪王門》1枚のみ。
超CS優勝がかかった場面、眼前のフェニックスに対してこの1枚は心許なさすぎる。
だが、Lia☆は決して勝利を諦めることはしなかった。
《百鬼の邪王門》で捲れたのは、《天災 デドダム》と《一王二命三眼槍》。
Lia☆「あそこで《天災 デドダム》を出しても手札のリソースが細すぎて勝ち筋がなくて……あそこはもうやるしかなかったです」 当然、延命するだけならデッキトップ3枚に《一王二命三眼槍》がある確率を求め、《天災 デドダム》を出す場面だ。
だがしかし、Lia☆は勝ちに行ったのだ。
《一王二命三眼槍》の鬼エンド効果で《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を捲り、打点で一気に逆転するしか道はないと。
残る《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》は3枚。確率にしておよそ8%前後。
Lia☆は僅かに残った勝ち筋を拾い上げるために、確率の崖に飛び込んでいく。
その選択の結末は―――
その《鬼ヶ大王 ジャオウガ》は、Lia☆の積み重ねてきた準備があと一歩届かなかった証だった。
その《鬼ヶ大王 ジャオウガ》は、すばるなの積み重ねてきた準備に、とんでもない勝負運という最後のピースが当てはまった瞬間だった。
すばるな「【5cジョリー】が大好きで、でもどうしても【アナカラーハンデス】に勝てなくて断念したんです」
情を捨て、勝ちを追求して準備してきた地方島根のいちプレイヤー。
彼の準備に、デッキが応えた瞬間だった。 すばるな 2-0 Lia☆
CHAMPION:すばるな!!
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