ライター：金子 幹
撮影者：堀川 優一

　イベントも終盤。準決勝ともなれば会場内にはほぼ人は残ってはいない。

　しんと静まりかえる会場の中で、今から対戦する両者のシャッフルの音だけが響き渡る。そんな中、対戦テーブルの2人の表情がより鮮明に映るのは気のせいではないだろう。

　セキボンの表情は真剣そのもの。
　というのもフェアリーとカイザから託された【4C邪王門】のリストを共有し、先に他テーブルbest8で散ったSabakiは彼に向って対戦テーブルから去る際こう残したのだ。

「後は頼んだ」

　託された思いを背負い、彼はただひたすらに勝利を目指す。



　一方のLia☆の表情は比較的柔らかく見える。
　とはいえ彼も背負うものはあってここまで来た。
　富山を拠点に活動する彼がつむ銀ちゃんねるのメンバーと調整した結果、持ち込む決断をしたデッキ。それこそがセキボンと同じ【4C邪王門】であった。

　奇しくも同じデッキタイプ同士の対決となった本試合。果たしてどちらが鬼の時間を制するのか。

　勝っても負けてもあと2戦。今ここに栄光を目指す2人の選手による準決勝の幕が切って落とされた。

Game 1

先攻：セキボン
　最初に動いたのはLia☆から。
　《絶望と反魂と滅殺の決断》をチャージして出した《ダンディ・ナスオ》の効果により山札を確認し《鬼ヶ大王 ジャオウガ》をマナに置き、《絶望と反魂と滅殺の決断》を墓地に置く。
　後々のリソース源となる《絶望と反魂と滅殺の決断》を落とせた意味はことさら大きいと言える。

　一方のセキボンはその返しに《天災 デドダム》を出してリソースを伸ばすことに。
　手札に《蒼き団長 ドギラゴン剣》を加え、ワンショット時の最大出力を目指すようだ。

　続くターンのLia☆は盤面に《極楽鳥》を追加し更にリソースを伸ばす。 　ここでLia☆の盤面の《ダンディ・ナスオ》と《極楽鳥》と自信の手札を確認しつつ、セキボンは長考。

　【邪王門】というデッキタイプ自体が《鬼ヶ大王 ジャオウガ》による背水プランと《一王二命三眼槍》と《百鬼の邪王門》によるカウンタープランの攻防のプレイを緻密に計画する高度なデッキである。いくら考えても時間は足りないだろう。

　考えた末に、先ほど回収した《蒼き団長 ドギラゴン剣》をマナに置いてセキボンはターンエンドを選択。

　そして一方のLia☆もまた、【4C邪王門】というデッキタイプを知り尽くしてるからこそ、どのような採用カードがあるか、何をされると辛く、そして、何を通せば勝てるのかを熟知している。

　続くターンにLia☆がプレイしたカードこそがこの試合のキーを握るクリーチャーだ。

　《奇天烈 シャッフ》。宣言は「６」。 　つまるところ【4C邪王門】が自ら攻め込む際に必要なプランは《鬼ヶ大王 ジャオウガ》を引き込んだ上で、鬼エンドで実質的な踏み倒し札となる《百鬼の邪王門》をプレイしつつ、高打点で攻め込むこと。
　無論、ケアする方法はあるものの《奇天烈 シャッフ》をはじめとする呪文ロックは互いの攻め手にとって大きな枷となる。

　とはいえ、これにより次のセキボンのターンがそのまま飛んでしまうかと言われればそうではない。
　セキボンは《サイバー・ブレイン》を唱えることで一気にハンドリソースを獲得！

　これこそがフェアリー&カイザ直伝【4C邪王門】の秘蔵カード。
　基本的にショットする時にしか使えない《鬼ヶ大王 ジャオウガ》以外に大量のリソース確保手段を採用することで、【水闇自然ハンデス】や【ゼーロビッグバン】といったハンデスを多用するデッキタイプ以外にも、本試合のような同型戦において手札に防御札を多く引き込める【4C邪王門】の最高の相棒と言えるだろう。
　
　ターンが返ってきたLia☆も自身の打点数を計算しながら、《サイバー・ブレイン》によって稼がれた相手の防御札の枚数を推測。

　多少危険ははらむものの、依然《奇天烈 シャッフ》をコントロールして優位に立っているLia☆は、とうとうこのターンをラストターンと決めたようだ。

　Lia☆の手札から繰り出されるのは勿論《鬼ヶ大王 ジャオウガ》。 　一気に自身の5枚のシールドを破り、身を護るシールドこそ無くなれど準備は万端。死ぬか生きるかの不退転の攻勢に転じた。

　まずは互いの鬼エンドの条件を満たしていることから《奇天烈 シャッフ》で「6」を宣言。

　これでセキボンの《百鬼の邪王門》は使えない。そして対するLia☆自身の《百鬼の邪王門》の宣言は2枚。 　それぞれの門から飛び出たのは《一王二命三眼槍》と《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》。

　革命0によりスピード・アタッカーを得た《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》でそのまま攻撃すると、Lia☆の手札からは《蒼き団長 ドギラゴン剣》がダメ押しのように革命チェンジ。
　その効果により後続の《天災 デドダム》と《Disノメノン》が一気にバトルゾーンへ。

　1枚1枚と破られるシールドを確認するセキボンだったが…

　Lia☆の《ダンディ・ナスオ》が最後のシールドをブレイクした所で……Lia☆の決死の吶喊をいなすには防御札が足りない。
　
　セキボンは自身の敗北を宣言した。


　先に鬼の時間を制したのはLia☆。

セキボン 0-1 Lia☆

Game 2

先攻：セキボン 　後がないセキボンだが、その目は託してくれた仲間の思いを胸に、いまだ勝利のみを目指している。

　だが両者の熱気とは裏腹にGame 2の始まりは静かにLia☆の2ターン目の《極楽鳥》からのスタートだ。

　4ターン目にセキボンは1試合目と同じく《天災 デドダム》でマナを伸ばすが、Lia☆はこれを《Disノメノン》で丁寧に刈り取り、更にその効果で手札を増やすことに成功する。 　 　リソースを稼がれつつ、《Disノメノン》の持つジャストダイバーによって着実に攻撃の頭数を増やされたセキボンだったが、返しの対応は冷静だ。

　《奇天烈 シャッフ》で1試合目の意趣返しとばかりに「６」を宣言。
次ターンの《鬼ヶ大王 ジャオウガ》+《百鬼の邪王門》のワンショットを見事に咎める。

　その目論見は成功したようでLia☆は実際次ターン《天災 デドダム》で自身のリソースを増やすことにのみ終始。

　だがここで、セキボンの攻め手は休むことはない。
　返しのターンで《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》をプレイすると《鬼ヶ羅刹 ジャオウガ》を回収。
効果でLia☆の《極楽鳥》をバウンスしつつ、マッハファイターで《Disノメノン》に攻撃する際に《》に革命チェンジ！ 　度重なる呪文ロックにより更にもう1ターンLia☆の攻め手を縛ることに成功する。

だが、Lia☆の手札には十分にこの盤面を返す算段があるようで…？

　まずは《ダンディ・ナスオ》をプレイして山札から《生命と大地と轟破の決断》をマナに置き、《絶望と反魂と滅殺の決断》を墓地へ。
　そのままLia☆も《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を場に出すなり、セキボンの≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫に攻撃しつつ《蒼き団長 ドギラゴン剣》に革命チェンジ。

　そのファイナル革命で場に出すのは手札に戻した《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》。
Lia☆の《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》が≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫に革命チェンジをしたことにより、今度は逆にLia☆がセキボンにロックをしかける構えとなった。

　呪文ロックの応酬に返しのターンのセキボンも一歩も引かない。
　《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を場に出しながら回収したのは《蒼き団長 ドギラゴン剣》!？

　Lia☆の《蒼き団長 ドギラゴン剣》を手札に戻すと、そのまま今度はセキボンの《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》が革命チェンジし《蒼き団長 ドギラゴン剣》に。その効果により先のターンのLia☆と同じく革命チェンジ元の《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》をバトルゾーンに繰り出す。

　そしてそのままマッハファイターによりLia☆のクリーチャーに一斉攻撃を仕掛け一気にLia☆の盤面は更地と化した。

　一気に窮地に追い込まれたLia☆。
　だが、彼もまた冷静だった。続く次ターンのLia☆の行動は《天災 デドダム》と……《奇天烈 シャッフ》。

　無論宣言は《百鬼の邪王門》を閉ざす「6」の1点張り。

　この《奇天烈 シャッフ》により返しのターンを迎えたセキボンは、たまらず焦りの表情。

　……しかし、入念に手札を確認した上で、どうやらこのターン、セキボンは意を決し自ら死地に飛び込む事に決めたようだ。

　場に出したのは《鬼ヶ大王 ジャオウガ》。シールドを0枚にすることで自らに背水の陣を敷き、そして鬼の時間を迎えたセキボンの手札から繰り出されたの《鬼ヶ羅刹 ジャオウガ》。 　 　打点はギリギリ足りているものの、やはり《百鬼の邪王門》による追加打点が見込めないのが一番の懸念だろう。

　文字通り決死の突撃。祈るように攻撃を宣言するセキボン。

　《鬼ヶ大王 ジャオウガ》と《蒼き団長 ドギラゴン剣》、《鬼ヶ羅刹 ジャオウガ》それぞれがLia☆の首を狙う。

　…だが最後の最後、Lia☆の手札から2枚の《百鬼の邪王門》が開かれる。 　1枚目の《百鬼の邪王門》…………惜しくもノーヒット。

　「ギリギリの打点、この攻撃が通りさえすれば」と祈る2枚目の《百鬼の邪王門》。
　Lia☆のデッキトップから墓地に置ちたカードと、自身の手札を見るやいなやセキボンは……諦念するように言葉を漏らした。

セキボン「次のターンの打点足りちゃってるんで………負けですね」

セキボン 0-2 Lia☆
Winner：Lia☆

　試合を振り返ってみるとLia☆とセキボンの両者の細かなミラーマッチのプレイングが見て取れる。
だからこそ両者互角の洗練されたプレイングの上で、ベストなタイミングで《奇天烈 シャッフ》を引き込めていたLia☆が今宵の鬼の時間を制した結果となった。

　しかし、先に述べたように彼らの試合はどちらも終わりを迎えていない。

Lia☆は栄光の舞台、決勝戦へ

そしてセキボンは少しでも仲間のリストを共に高みへと連れて行くための3位決定へ


それぞれ本日最後のステージへと向かっていくのだった。