デュエル・マスターズ

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超CSⅣ静岡 準決勝:イクラさん vs. 黒助

ライター:清水 勇貴
撮影者:瀬尾 亜沙子

準決勝: イクラさん(埼玉県) vs. 黒助(埼玉県)

黒助「いや〜、さっきめちゃくちゃミスっちゃいまして。ヤバいっす」

イクラさん「ヤバいよね、もう」

 超CSⅣ静岡もいよいよ準決勝、ここに来て対面した2人はなんの因果か同郷対決と相なった。

 ただ同じ出身地というだけでなく、同じコミュニティにすら所属しているらしい2人。「今日使うデッキのうち30枚ぐらいはお互い知っている」ほどの間柄だ。

 この大会に向けた調整はスケジュールの都合で少ししか出来なかったものの、普段からよく一緒にデュエル・マスターズをプレイしているという。

 シャッフルの指示を出す言葉すら気安い2人だ。ゲーム開始の準備も終始和やかに進んでいく。

 大型大会の中にあっても、まるでカードショップでのフリー対戦のように。

 ゲームが始まる。

Game1

先攻:黒助

イクラさん「その魔陣、色足りてないよ」

黒助「あっ」

イクラさん「ヒューマンエラー出てるねぇ〜」

 2種類のキングセルを見間違えた黒助に対し、イクラさんがそう指摘した場面からゲームは動き出す。

 先攻黒助の3ターン目。お互い順当にマナセットを進めていき、イクラさんが2ターン目に先んじて《地龍神の魔陣》を唱えた直後のことだ。

 黒助はすぐさま正しく水/自然が揃うようにタップしなおし、マナを伸ばしてイクラさんのターンへ。ドロー、マナチャージ、《フェアリー・Re:ライフ》

黒助「その《フェアリー・Re:ライフ》も自然出てないっす」

イクラさん「マジ? ……マジじゃん」

 なんと、イクラさんが黒助に指摘した直後のターンに、立場をそっくりそのまま入れ替えてまったく同じプレイミスが発生してしまった。イクラさんも黒助も、これはもう仕方ない、といった笑いが溢れる。

イクラさん「本当に疲れてるな」

黒助「っすね……」

 気を取り直してマナをタップしなおし、黒助へとターンを渡すイクラさん。

 黒助はマナをチャージすると《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を召喚する。

 お目当てのカードは見つからなかったか、ひとしきり悩んだ末に《》を手札に加えて、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》自身をバウンス。

 ここでターンはイクラさんに渡り、彼は《ドンドン水撒くナウ》を唱えた。2マナブーストしながら《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》を回収する。

 ここまで粛々とリソースを整えていった両者。果たして、先に仕掛けるのはどちらか。緊張感が高まっていく。

 黒助の5ターン目。

 《天災 デドダム》を召喚し、そのまま《生魂転霊》で破壊。一挙に3マナをブーストして10マナ域へとランプアップする。

 次のターンには«Volzeos-Balamord»か《自然の四君子 ガイアハザード》へと繋がる絶好のマナ域だが、しかしながら、このターンはイクラさんのリソースに干渉できない。

 コンボデッキが、牙を剥く。


イクラさん「じゃあターンもらってドロー……《エンペラー・キリコ》をマナに」

黒助「うーわ」

 これから起こる惨劇を想起したか、思わず呻く黒助。しかし心配することはない、プレミアム殿堂から解き放たれた神歌の歌姫の出番は、今回はこれにておしまいだ。

 イクラさんのマナゾーンには既に《グレート・グラスパー》が2枚、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》が1枚ある。

 そして……。

イクラさん《蒼狼の王妃 イザナミテラス》召喚、《グレート・グラスパー》に進化します。じゃあループ証明入りますね」

 練習で、CSで、あるいはこの大会のこれまでのラウンドで。幾度となく「無限」を証明してきたであろうイクラさんの手つきに迷いはない。

 《グレート・グラスパー》攻撃時に《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を踏み倒し、能力で1ブーストしながら2枚目の《グレート・グラスパー》へと進化。

 新しい《グレート・グラスパー》が攻撃中の《グレート・グラスパー》をマナに送ると、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を進化元にした攻撃できる《グレート・グラスパー》がバトルゾーンに、そして《蒼狼の王妃 イザナミテラス》《グレート・グラスパー》がマナゾーンに。

 初期盤面へと立ち返り、無限ループが成立した。

 イクラさんは自身の山札が残り3枚になるまでマナブーストを進め、コンボはいよいよ大詰めへ。
 《グレート・グラスパー》で攻撃して《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》から2枚目の《グレート・グラスパー》を非進化で着地、攻撃中の《グレート・グラスパー》をマナに置いてコスト6の踏み倒しを解決、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》からさらに《グレート・グラスパー》へ進化。1ブーストが入り、イクラさんの山札は2枚になる。

イクラさん《グレート・グラスパー》の攻撃時に2体分誘発、《水上第九院 シャコガイル》《流星のガイアッシュ・カイザー》を出して、先2ドローで山札0枚です」

 鮮やかにループを回し切り、イクラさんがまずは1勝を掴んだ。

イクラさん 1ー0 黒助


 ゲームとゲームの狭間、次のゲームの準備を進める最中。これまでの疲労からか、思わず「吐きそう」、「手汗やべえ」という言葉がイクラさんから漏れる。

 ——大型大会の決勝ラウンドに付き物なのは、何も緊張に限った話だけではない。

 何を隠そうこの大会は予選8ラウンド、決勝最大7ラウンドの長丁場。この準決勝を抜きにしても、ここまでお互いに13回戦を戦い抜いているのだ。

 クライマックスに差し当たって、選手の疲労も最高潮に近付いているのは言うまでもないだろう。マナタップを間違えるケアレスミスも、無理のない話と言える。

 震える手つきでお互いのシャッフルミスを笑い合いながら、勝負は2ゲーム目へ。



Game2

先攻:黒助

 1ゲーム目を落とした黒助から始まったゲーム。

 お互い淡々とマナを埋めていくが、先に動き出したのはイクラさんだ。2ターン目、《地龍神の魔陣》《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》をマナに仕込み、ターンを渡す。

 黒助も相槌を打つように3マナタップして《天災 デドダム》。山札の上3枚を確認した黒助は思わず笑みを漏らす。《自然の四君子 ガイアハザード》が、マナに1枚、墓地に1枚。

 山札の中にいてほしいカードがことごとく落ちていく。これには対面するイクラさんも同情的な笑みだ。

 続くターン、イクラさんがプレイしたのは《神秘の宝箱》

イクラさん「時間もらいます」

 シールドの内容を確認しつつ、ため息をつきながらイクラさんがマナに置いたのは《水上第九院 シャコガイル》。どうやら《エンペラー・キリコ》はシールドゾーンに隠れてしまっていたらしい。

 しかし、イクラさんはそのままアンタップしている残り2マナを支払って追撃の《ジャスミンの地版》。次のターンに7マナ用意できる状況を作り上げた。

 黒助に残された時間はそれほど多くない。《地龍神の魔陣》で1枚を手札に加え、《天災 デドダム》でマナを伸ばし、着々とリソースを整えていく。

 後攻4ターン目を迎えたイクラさん。7マナが揃ったということはここでコンボに突入……とは、流石にならなかったようだ。

 たっぷりと思考時間を費やして、6マナで《流星のガイアッシュ・カイザー》を召喚。カードを2枚ドロー。手札を3枚に増やし、ターンを終了する。

 ターン開始時のドローを確認し、こちらも状況をよく検討する黒助。

 《地龍神の魔陣》をプレイして1枚を手札に加えると、《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚する。すでに2枚が公開領域にある黒助の《自然の四君子 ガイアハザード》だったが、果たして……
イクラさん「いやあるんかーい」

黒助「まあ、なかったらしゃあないよね」

 黒助はもちろん持っていた《生魂転霊》《禁断英雄 モモキングダムX》に打ち込み、2マナブースト。《自然の四君子 ガイアハザード》が戦場に君臨する。

 《流星のガイアッシュ・カイザー》の能力でマッハファイターは使えないが、ロック能力の機能には支し障りない。

 《生魂転霊》によって増えた2マナと合わせて、黒助のマナは9枚。一方のイクラさんのマナは次のターンのセット込みで8枚。

 このままではコンボの起点となるクリーチャーを何もプレイできないイクラさんだが……。

イクラさん「9マナあればいけるんよね?」

黒助「……まあ」

 気まずそうに答える黒助をよそに、手札を1枚マナに置いて8マナへと伸ばしたイクラさんは、《ジャスミンの地版》をプレイ。

 マナ枚数が8から9へと進み、イクラさんの動きを縛る枷はあっさりとなくなった。

 《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を召喚し、能力で1マナ増やしながら《グレート・グラスパー》へと進化。登場時能力で《自然の四君子 ガイアハザード》をマナへ送還すると、いよいよお待ちかねのループが始まる。

 《グレート・グラスパー》の攻撃時に《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》を踏み倒し、その能力で《裂竜の鉄槌 ヨルムンガルド》をバトルゾーンへ。

 《裂竜の鉄槌 ヨルムンガルド》の能力で《グレート・グラスパー》と自身をマナに送り込んでアタックキャンセル、残ったコスト6の踏み倒しを《蒼狼の王妃 イザナミテラス》に振り分ければ、登場時能力で《グレート・グラスパー》が登場する。

 あとは《グレート・グラスパー》の能力で《蒼狼の王妃 イザナミテラス》ごと自身をマナゾーンに置き、《グレート・グラスパー》の登場時に誘発した《連鎖類超連鎖目 チェインレックス》の能力で《蒼狼の王妃 イザナミテラス》を、その能力で1ブーストしながら《グレート・グラスパー》をバトルゾーンへ。

 これにて無限ループが成立し、《蒼狼の王妃 イザナミテラス》の1ブーストが積み重なっていく。
 山札の下3枚が残るセットアップを示すと、イクラさんは1ゲーム目と寸分違わぬ手つきでフィニッシュコンボを決め切ったのだった。

イクラさん 2-0 黒助

Winner:イクラさん


黒助「このマッチアップだと絶対こっちが対応する側に回るんですよね……。《自然の四君子 ガイアハザード》はマナ差がないと機能しないですけど、【キリコグラスパー】もマナを伸ばすデッキなので、まずはマナブースト合戦に勝つ必要があります。なので、この対面では《自然の四君子 ガイアハザード》を早出しするよりも、ブーストを連打することを意識してました。あとは手札が減ったタイミングでしっかり《絶望と反魂と滅殺の決断》を当てること。大きくはこの2つですね」

イクラさん「こっちはもうやりたいこと通すだけですかね。まずは真っ直ぐマナを伸ばす。黒助さんも言ってたけど、マナで負けてると《自然の四君子 ガイアハザード》で止まっちゃうし……あと【キリコグラスパー】は《蒼狼の王妃 イザナミテラス》か、《ジャスミンの地版》がバトルゾーンにあるなら《グレート・グラスパー》のどっちか1枚あればコンボに入れるので、ハンデスもある程度割り切ってトップのドローでどうにかするつもりでブーストします。もちろんコンボパーツが引けてるなら抱えますけどね」

 今大会では珍しいであろう、お互いのデッキを知ったうえでのマッチアップ。ゲームの焦点はもっぱらマナと手札の2軸を巡る戦いで進んでいたようだ。

 気安い間柄だからこそだろうか、インタビューの合間にもお互いに話を向けあうイクラさんと黒助。

イクラさん「ハンデスといえば、2ゲーム目の《流星のガイアッシュ・カイザー》《絶望と反魂と滅殺の決断》ケアのために手札枚数増やせる2ドロー優先したんですけど、もしかするとブーストを優先した方が良かったかもしれないですね。……1枚もないのは流石に予想外だったんだけど、あれ見えなかったの?」

黒助「いや、《地龍神の魔陣》で結構見えてたんですけど、ことごとく別の欲しいカードと一緒にめくれてぇ……」

イクラさん「あー、ね?」

黒助「結果的にあの2ドローでコンボと解決札を揃えられちゃったんで、ハンデスでどっちか落とせればもうちょいゲーム延ばせたかもなぁ、とは思います」

イクラさん「いや、ちゃんと《自然の四君子 ガイアハザード》の負け筋見越してブースト札は抱えてたわけだから。プラン勝ちだよ」

黒助「……ブースト札『は』って、最後の《蒼狼の王妃 イザナミテラス》は?」

イクラさん「あれ? トップ!」

黒助「いやもうホントこの人!」

 さながら漫才のような掛け合いで見事にオチをつけてくれたイクラさんと黒助。近くにいた共通の友人や筆者も巻き込んで、大きな笑いの渦が巻き起こった。

 笑い声が落ち着いたのち、2人はどちらからともなく立ち上がる。

イクラさん「絶対勝てよ」

黒助「そっちこそ」

 疲労困憊といった様相の両者ではあるが、勝者であるイクラさんには決勝戦が、敗者である黒助には3位決定戦が控えている。

 自分のためにも、そしてこの場まで共に勝ち上がった友のためにも。

 彼らの負けられない戦いは、もう少しだけ続く。

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