デュエル・マスターズ

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超CSV大阪 準決勝:森元琉/残響界隈 vs. そん

ライター:清水 勇貴(yk800)
撮影者:後長 京介

 超CSは年に数度とない大舞台。

 もちろんその大会自体で勝つことへの思いもひとしおだが、これだけの大型大会ともなれば「その先」を見据えている者も少なくはない。

 準決勝の席で相見えた2人が、ゲーム開始前に口を揃えて発した言葉がこれだ。

そん・森元琉/残響界隈『勝ったら全国確定』

 開催数自体は少ないものの規模が大きく参加は容易いGPや超CSとは異なり、日本一決定戦は非常に狭き門だ。

 日本一決定戦出場を目標に、常日頃から精力的にCSに出場してランキング上位を目指しているという両者。超CSで上位を入賞すれば大量のランキングポイントが入手できるのはもちろん、ただ一人の優勝者には日本一決定戦への参加権利がダイレクトに付与される。

 準決勝のもう1組はフィーチャーテーブルでの対戦。4人のうち2人がこの場にいないのだから、対戦卓に着くプレイヤーはもはや彼ら2人だけとなった。

 目の前の相手を打ち倒し、もう1回勝てば、夢の全国だ。

森元琉「いや、負けらんねぇ〜」
そん「最低でも俺らどっちかは優勝ですね」
森元琉「間違いない」

 同じ場所を目指すライバルとしてか、初対面らしい会話の中でもどこか親しみのようなものを滲ませる両選手。

森元琉「予選順位何位ですか?」
そん「10位」
森元琉「うわ初めて負けた! 14位です!」

 先手後手の確認も終わり、いよいよゲームの準備が整った瞬間、和気藹々とした両者の空気がキッパリと二分された。

 どこか楽しげな雰囲気そのままでゲームに臨もうとするそんに対し、一瞬にして神妙な空気を纏いはじめた森元。

 どちらかが勝ち、どちらかが負ける、真剣勝負が幕を開けた。

Game1

先攻:そん  ゲームは先攻そんが《》の呪文面を唱え、手札の《蒼狼の大王 イザナギテラス》を捨てるところから始まる。

 1ターン目のそんのマナチャージは《龍素記号wD サイクルペディア》

 いくつかのデッキで使われるカードだけに【サガループ】と確定するところまではいかなかったが、いよいよ間違いないと断言できるようになった。

 対する森元はこれを見届けると、《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》を設置。

 彼のマナには《堕呪 ボックドゥ》《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》が並んでいる。すなわち、彼の相棒は【水魔導具】だ。

 【水魔導具】は環境のデッキの中でも【サガループ】に強い部類だと言われているが、その秘訣は《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》の存在にある。

 まずはメタとなるフィールドを盤面に繰り出し、そんのご機嫌を伺う格好だ。

 一見すると森元が一歩リードしたような盤面だが、そんは不敵な笑みを浮かべながら《百鬼の邪王門》をマナセットして《》をプレイ、《卍 新世壊 卍》がないのを確認すると山札を掘り進める《堕呪 ゴンパドゥ》を抜き去る。

 手札を丸裸にされたうえで次のアクションも制限された森元だったが、彼の意識は自身の手札状況よりもむしろマナに唐突に追加された火文明に奪われていた。

 水・闇の2色に加えて火文明を採用した【サガループ】は一般にビートダウンへの耐性とメタカードを除去する性能に優れている。

 特に《ボルシャック・スーパーヒーロー / 超英雄タイム》はわずか2マナでメタカードをどかしてループコンボに突入できる最上級の除去カードだ。

 《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》を使える有利すら、どこまで信用できるかわかったものではない。粛々とプレイを続ける森元だったが、警戒を強めたのは間違いなかった。

 そんな森元の3ターン目だが、今失ったばかりの《堕呪 ゴンパドゥ》がデッキトップから駆けつけてきたのは幸運だ。手札を整え、次のターン以降のやりとりに備える。

 未だ《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》の影響下にある中、そんは《絶望神サガ》をプレイ。

 手札を入れ替えてから《蒼狼の大王 イザナギテラス》をバトルゾーンに出し、山札を掘り進めてから《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》を呪文として唱え、墓地から再度《絶望神サガ》をバトルゾーンに出してターンを渡す。

 熟練の【サガループ】使いとそうでない【サガループ】を使う人には様々な面でプレイングに差が出るが、特に顕著に現れるのが《絶望神サガ》のポン置きを狙うタイミングだろう。

 どうしても2枚でのループコンボに意識が向かいがちだが、出しておくだけで毎ターン1枚多く山札を掘り進められる、いわゆる「置きドロソ」としての性能も《絶望神サガ》は非常に高水準だ。

 毎ターン開始時にマナを使わずループチャンスが発生するため相手に墓地リセットなりメタ設置なりの対処を強要でき、しかも自動的に墓地が貯まっていくため置いておくだけで機能する墓地リセット対策としての側面も併せ持つ。

 山札の下への除去や、破壊されてからの墓地リセットには弱いものの、蘇生手段が豊富にあるため破壊除去単発ではあまり対策にならない。いわんやバウンスをや、である。

 基本的に軽量の除去手段がバウンスに限定される【水魔導具】にとっては、しばらくループする気配のない3マナ3000ですらかなりのプレッシャーだ。

 森元も黙って見ているわけにはいかない。4ターン目を迎えるや否や2マナで《卍 新世壊 卍》、もう2マナで≪堕呪 ブラッドゥ≫を唱え、そんの墓地を一掃する!

 《絶望神サガ》には触れていないが、墓地をリセットして次ターン開始時のコスト踏み倒しは阻止しつつ、自分の勝ち筋である《卍 新世壊 卍》のカウントも一歩進めた、

 2ターン前の手札には影も形もなかった絶好の2枚セットが飛び出し、そんも苦笑いを浮かべる。

 続くターンの開始時に手札入れ替え能力で2枚目の《絶望神サガ》を墓地に送ったそんは、4マナで《蒼狼の大王 イザナギテラス》を召喚。再度≪ウォズレックの審問≫を唱えて森元の体勢を崩しにかかる。

 公開された手札は《堕呪 エアヴォ》《堕呪 バレッドゥ》《「無月」の頂 $スザーク$》《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》《堕呪 バレッドゥ》以外に選択肢はない。
 軽量魔導具呪文を失い大きくもたつきかけた森元だが、ここで森元のトップが輝く。

 ≪堕呪 ブラッドゥ≫でそんの墓地をもう一度リセットし、さらに呪文効果・《卍 新世壊 卍》効果の2枚のドローから《堕呪 ゴンパドゥ》を引き当て山札を貪欲に掘り進める。

 残念ながら《堕呪 ゾメンザン》にまでは繋がらなかったが、これで《卍 新世壊 卍》の魔導具カウントは3を数えた。

 徐々に追い詰められてきたそん。<サイバー・K・ウォズレック≫を出してお互いの墓地から呪文を唱える……が。

そん《堕呪 ゴンパドゥ》と……≪堕呪 ブラッドゥ≫で」

森元「了解です。じゃあ、この2枚を」
そん「え、あれ? そっちじゃなくて《堕呪 ブラ……あっ!」

 《堕呪 バレッドゥ》と≪堕呪 ブラッドゥ≫を取り違えるミスが発生する。

 結局カード除去は飛んでこないまま、無事に6ターン目を迎えた森元。

 《堕呪 ゴンパドゥ》からスタートし、《卍 新世壊 卍》の2枚目、《堕呪 バレッドゥ》と動き、みるみるうちに山札を掘り進めながら、2枚目の《卍 新世壊 卍》の起動を見越して準備を開始。

森元「終了時に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》《ガル・ラガンザーク》《「無月」の頂 $スザーク$》を出してターンをもらいます」

 さらに追加ターンには《堕呪 バレッドゥ》《堕呪 ウキドゥ》《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》《堕呪 ゾメンザン》を矢継ぎ早にプレイ。

森元「終了時に《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》《「無月」の頂 $スザーク$》を出してターンをもらいます」

 森元の山札は残りわずか。あのカードがなければまだ勝負の行方はわからないが……。

森元《神の試練》。山札残り3枚をすべて手札に加えて、追加ターンもらいます」

 ついに3つ目のEXターンに手を掛けつつ、≪堕呪 ブラッドゥ≫でお掃除も完璧。万難を排しいざ攻め込まんとした森元の目の前に、そんの白旗が掲げられた。

そん 0-1 森元琉/残響界隈

そん「トップブラッドゥかぁ……」
森元「引き強いんで!」

 ゲーム中は冷徹さすら感じられる眼差しを見せていたのが嘘のように、そんのボヤきへと陽気に応える森元。

そん「いや、よくここまで【水魔導具】で勝てましたね! 【サムライ】おるし【水魔導具】おるし今日は上にはいないと思ってたのに!」
森元「決勝トーナメントは【5cザーディクリカ】と【火闇テレスコ】ばっか踏んできたんで」
そん「まあそういえば俺も【赤緑】ばっか当たってたし」
そん・森元『ほんならどっちもどっちか!』

 笑い合う2人からは、お互い「今日の勝者」たるに相応しい気概が漂ってくる。

 1ゲーム目は火文明を含んだ【サガループ】の良さを活かせず、「うまく動けなかった水闇【サガループ】」しか相手に見せられなかったそん。2ゲーム目で巻き返しなるか。

Game2

先攻:そん

 そんが2ターン目に≪ウォズレックの審問≫を唱え、《卍 新世壊 卍》を引っこ抜いてはじまった第2ゲーム。

森元「上から引くで」
そん「引くな!」
森元「ターンもらいます。……いや引かんかぁ〜」
そん「上手いこといかんってそんなに!」

 《堕呪 ゴンパドゥ》を唱えて森元がターンを返すと、そんは《絶望神サガ》をバトルゾーンに送り出す。

 登場時能力で《蒼狼の大王 イザナギテラス》を捨てて、墓地にはクリーチャーが2枚。次のターン開始時には踏み倒し効果が発動する格好だ。

森元「ちょっと考えるわ」
そん「もちろん」

 いつ爆発するともわからない特大の時限爆弾を前に、森元の手もにわかに止まる。ひとまずは≪堕呪 ブラッドゥ≫をプレイして1ターンの安全を得た。

 しかし、この返しにそんの手札から飛び出したのはとびっきりの悪魔の一手。 そん《デビル・ドレーン》でシールド全部手札に加えます」

 シールドを攻撃されていなければ3マナで確定5ドローという、《ストリーミング・シェイパー》も真っ青のリソースの暴力。水闇2色の【サガループ】では使いにくい呪文だが、《百鬼の邪王門》が守りを固める火文明入りでは定番となっている強烈な武器だ。

 泡を食ったのは相対する森元。たった1枚の呪文でまともなリソース勝負ができないほどの差を付けられてしまった。

 とにかく少しでも追い縋ろうと、《卍 新世壊 卍》《堕呪 ゴンパドゥ》で自分の動きを進めていく。

 しかし、鬼に金棒、【サガループ】に潤沢な手札。あらゆる状況に対応する【サガループ】が無限の選択肢を手に入れればどうなるかは目に見えている。

 ≪ウォズレックの審問≫で≪堕呪 ブラッドゥ≫をハンデスし、≪超英雄タイム≫で《卍 新世壊 卍》を即時に処理。森元の動きに悠々と対応していくそん。

 リソース供給源を絶たれ、墓地リセットすら失った森元にできることといえば、《神の試練》を唱えてカードを引き込むぐらいしかない。

 攻め手の途切れた森元の隙を見逃すまいとばかりに、ターン開始時に《蒼狼の大王 イザナギテラス》を蘇生。《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》の呪文面を踏み倒してなお、5枚のマナを動かす権利がそんには残されている。

 もう一度≪エマージェンシー・タイフーン≫を唱え、満を持して《絶望神サガ》を召喚しループに突入!

 次々と山札を掘り進めていきつつも、パーツの所在を確認していく。

 残り山札が2枚になるまで掘り進め、《蒼狼の大王 イザナギテラス》を蘇生。あとは《蝕王の晩餐》からお決まりのループだ。

 鮮やかな手並みで《龍素記号wD サイクルペディア》の登場時能力を無限ストックし、そこから《絶望神サガ》と≪サイバー・K・ウォズレック≫の無限ストックへと派生。さらにこの2体のストックでこれまで《蒼狼の大王 イザナギテラス》がループ中に担っていた役割を代替して《蒼狼の大王 イザナギテラス》の無限ストックを作り出す。

 ここまで来ればなんでもやりたい放題だ。無数の登場時能力ストックを自由自在に組み合わせてデッキ内のクリーチャーを一切の容赦無く全て展開した挙句に《勝熱と弾丸と自由の決断》で全て擬似スピードアタッカーに仕立てあげたそん。

 ひと通りの動きの中でそんのデッキ内容をすべて確認した森元は、攻撃フェイズを待たずして投了を宣言した。

そん 1-1 森元琉/残響界隈

Game3

先攻:森元琉/残響界隈 森元《「無月」の頂 $スザーク$》の無月の門・絶を宣言します……手札何枚?」
そん「7枚!」
森元「いや無理ぃー!」

 本来であれば手札の削り合いにおいて重要な役割を果たしてくれるはずの《「無月」の頂 $スザーク$》が、まるで機能してくれない異常事態。森元の悲痛な叫びが会場にこだまする。

 ここまでの展開を振り返っていこう。

 森元は2ターン目に《卍 新世壊 卍》、3ターン目に《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》を送り出すロケットスタート。

 しかしそんが後攻3ターン目に唱えた《デビル・ドレーン》で全ての流れが一変する。

 《堕呪 ゴンパドゥ》《堕呪 バレッドゥ》と立て続けに唱えて手札を充実させていく森元だが、その顔は晴れない。

 バトルゾーンにはフィールドが2枚、相手のマナには火文明が1枚のみ。平時であれば同時に対処されることはない状況だ。

 そう、「あのカード」さえ無ければ……。 そん《勝熱と弾丸と自由の決断》、除去除去で」
森元「ピン積み2枚とも持たれるとかある!?」

 ここまでの展開を全てご破算にする無情な回答に天を仰ぐ森元。

 墓地に魔導具呪文2枚は落とせたが、それ以外は何も残っていない。手札が減っていないことだけが唯一の救い、というのは気休めにしかならないだろう。

 たった2ターンで厳しい状況に追い込まれた森元。それでも負けじと≪堕呪 ブラッドゥ≫と《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》で妨害を継続する。

 ひとまずループには入れなくなったそん。

 しかし潤沢なリソースがあれば妨害など何するものぞ。顔色ひとつ変えず≪ウォズレックの審問≫で《堕呪 バレッドゥ》を捨てさせ、《絶望神サガ》をバトルゾーンへ送り出す。

 とにかく何か手にしなければどうにもならないと《堕呪 ウキドゥ》を唱える森元。自分のシールドを確認してそのままに残し、1ドロー……したところで引き込んだのが《「無月」の頂 $スザーク$》。森元の顔色が変わる。

 ハンデスがうまく機能すればあるいはまだリソース勝負にも持ち込めるかもしれない、はずだったのだ。そんが《デビル・ドレーン》を唱えてさえいなければ。

森元「……手札何枚?」
そん「7枚!」
森元「いや無理ぃー!」

 ここで冒頭に戻ってくる。

 《堕呪 ゾメンザン》を空撃ちして墓地の魔導具呪文を6枚にした森元は「無月の門・絶」で《「無月」の頂 $スザーク$》を召喚。ハンデスして《絶望神サガ》を破壊するも、森元の7枚の手札からたった1回のランダムハンデスで有効牌を引っこ抜かなければ勝負にならない。

 祈るように1枚を落として2ドロー。果たして……。

そん「≪超英雄タイム≫、《絶望神サガ》。ループします」
森元「そらそう!」

そん 2-1 森元琉/残響界隈

Winner:そん

そん「大型大会は絶対【アポロ】多くて絶対落としたくなかったのと、メタ除去として《ドアノッカ=ノアドッカ / 「…開けるか?」》より《ボルシャック・スーパーヒーロー / 超英雄タイム》のが強いと思ってるのと、サガメタデッキへの必殺技になる《デビル・ドレーン》。他にもいくつか理由ありますけど、クローシス(水/闇/火の3色デッキ)の【サガループ】にしたのはだいたいこの辺りです」

 水闇火の【サガループ】の強みを存分に活かし、対サガデッキとして名高い【水魔導具】を見事に下したそん。

森元「クローシス……クローシスかぁ〜〜〜。《デビル・ドレーン》《勝熱と弾丸と自由の決断》両引きさえなければ……」

そん「いや〜、流石にツイてた!」

 一方で、予選突破最大母数の【サガループ】と真っ向から戦える【水魔導具】を持ち込んだ森元も、メタ読みとしてはそう間違っていなかっただろう。

森元「デッキパワーとスキルがあれば予選はよほど運悪くない限り抜けれると思ってたんで、本戦でどう戦うかを考えてデッキを選びました。

 今回だと上手い……めっちゃ上手い人の【サガループ】が多く抜けてくるのは間違いないと思ってて、そうなった時に【サガループ】同型をトーナメントでずっと勝ち続けるのは難しいと感じたので、デッキ相性で戦える【水魔導具】です。

 【アポロヌス】は予選段階では多いんですけど、その分予選を上がってくるのは【アポロヌス】に勝てるデッキが多くなってくるんで、そこに有利に立ち回れるのも【水魔導具】の強いところだと思ってます。」

 準決勝が終わってから決勝までの時間はわずか10分足らず。勝敗の余韻に浸る間もなく次の試合へと移されてしまう。

 フィーチャーテーブルへと向かうそんの背中を見送りながら、「悔しい〜〜〜!」と声をあげる森元。

 願わくば、彼らが日本一決定戦の舞台で再び相見えんことを。

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