デュエル・マスターズ

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超CSⅥ群馬 決勝Round 3:ペシェ vs. たつどら

ライター:秋山 大空
撮影者:瀬尾 亜沙子

 自由とは何か。

 人類が永遠に追い求めるであろう哲学である。

 筆者が好きな自由の定義は、イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルが1859年に著した『自由論』だ。

 『自由論』にて定義される「自由」とは、「他者の自由を制限しない範囲で、好きにふるまうこと」である。

 もし「自由」の定義を「何をしても良い」としてしまっては、ミルが考える「自由」からはかけ離れてしまう。

 ミルにもある程度の影響を与えている、ミルより300年近く昔に生きたイングランドの哲学者、トマス・ホッブスの表現を引用するなら「万人の万人に対する闘争」と言う状態になってしまうだろう。

 強奪や暴力と言った他者からの「自由」の侵害を警戒し続けなければならず、全ての人間が他の人間全てに怯え、安全を確保するために他人に危害を加える毎日が繰り返される状態である。 まさしく「万人の万人に対する闘争」。

 そういった原始的な状態への回帰を防ぐため、人間は自らが構築した社会に沿って「自由」を定義する必要がある。

 まず「自由」を行使できる範囲を定め、その範囲内での「自由」が保証される。

 行使できる範囲を逸脱し、他者の「自由」を侵害した場合は、その侵害に見合う分だけ自身の「自由」を制限されなければならない。

 「自由」の保証及び制限を行うのは個人より大きな主体であり、主に国家が法によってその役割を担っている。

 これは「他人に迷惑をかけない」と言う道徳と似ているが、ミルの定義する「自由」はこの道徳が中心となっているわけではない。

 ミルは個人が自分の幸福について考え、実現のために自らの意思で行動することが重要だと定め、社会の声が自らの快や不快のために他人を抑圧してしまうことをよしとしていない。

 個人が萎縮してしまい、幸福について考える意思が奪われることはミルの本意ではなく、社会からの圧力から個人を保護する必要があると考えていた。

 あくまでミルが考える「自由」の中心とは個人が幸福を追求することであり、行動や意思の抑制ではないのだ。

 ミルの『自由論』は国家について論じたものではあるが、よりミクロな場所、デュエル・マスターズの大会にも「自由」は存在している。

 大会ルールは大会の中での「他人の自由を制限しない範囲」を定めており、それらや社会的常識を逸脱しない範囲で自らの幸福を追求することが出来る。  無論勝者と敗者が生まれ、勝者のみが勝利と言う幸福を享受できるが、これは競技と言う正当な理由のもとで参加者が合意し行われるため、「他者の自由の侵害」かと言われるとそうではないと言える。

 では、大会における「自由」とは何だろうか。

 例えば、試合後に何をするか。

 勝った場合はSNSで結果を報告しても良いし、一人でのんびりと過ごしても良い。負けた場合はすぐに帰宅して寝ることも出来るし、サイドイベントに参加することも可能だ。

 例えば、プレイング。

 マナを置いても良いし、置かなくても良い。カードをプレイするか、クリーチャーで攻撃するかもプレイヤー次第。

 プレイヤーは自らの意思で幸福、殆どの場合は勝利を求めて限られた選択肢の中最大限「自由」を実現しようとする。

 そして、デッキ選択。

 強いデッキ、環境的に立ち位置が良いデッキと言う「理」をとるか。それとも好きなデッキ、面白いデッキと言う「情」をとるか。  「理」に比重を置いたプレイヤー達の中でも【フィオナアカシック】を使うプレイヤーもいれば、【水火マジック】を使うプレイヤーもいる。

 ループによって安全に勝つことを幸福に感じたり、シールド・トリガー覚悟で《AQvibrato》で1点を入れることに幸福を感じたり等、「理」の中にも「情」はある。  「情」に比重を置いたプレイヤー達の中でも【ガチロボ】等のある程度環境に沿ったデッキを使うプレイヤーもいれば、完全に自身の好みにチューンした、今までに見たことのないようなデッキを使うプレイヤーもいる。

 好みと強さのを天秤にかけ、ちょうど釣り合う場所を見つけて勝利を目指すことを幸福に感じたり、好きなデッキを限界まで突き詰めて勝利することに幸福を感じたり等、「情」の中にも「理」はある。

 各々が「理」と「情」の間で一番幸福度が高いバランスを見つけ、それに見合ったデッキを求める。

 このデッキ選択の「自由」は、多くの人が想像するよりもずっと広く大きい。

 ペシェが【火自然アポロ】を選んだのも、たつどらが【フィオナアカシック】を選んだのも「自由」の範囲内で選択した結果である。

 ちなみに【火自然アポロ】対【フィオナアカシック】の相性はご存じのとおりである。

先攻:たつどら たつどら《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》で盾確認しますね」

 シールドに《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》がないことを確認したたつどらは、ペシェの1ターン目《ヘルコプ太の心絵》、2ターン目《進化設計図》、3ターン目《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を見ると静かに目を閉じた。

Winner:ペシェ
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