リモートデュエマスペシャルトーナメント 準々決勝:NJ vs. 7010
ライター:伊藤 敦 (まつがん)
予選ラウンド6回戦を終えて、決勝ラウンドに進出したのは以下の8名となった。
NJ(ドラグ大地) 対 7010(キューブマニフェスト)
Zweilance(ドラグ大地) 対 畳(火水自然モモキング)
武蔵(ネイチャーマジボンバー) 対 ユーリ(ドラグ大地)
よしゆき(アグロマジボンバー) 対 dotto(アグロマジボンバー)
零龍とGRなしの2ブロックというリモートデュエマゆえの特殊な環境の中で、39名の参加者たちはまだ見ぬメタゲームを空想し、そしてその中で勝利しうるデッキを選択した。その結果が、このマジボンバー対ドラグ大地というトップ8の構図である。
この結果を、はたして誰が予想できただろうか。
GRのない2ブロックということは、1ブロックにかなり近い環境とも言える。その前提に立てば、殿堂環境でも結果を残しているギャラクシールドがまずはトップメタになるものと考えてしまいがちだろう。
しかし実際には、リモート2ブロックのデュエル・マスターズはそれほど浅くはなかった。
ギャラクシールドでは限りなく対処しづらい《ドラグ変怪》の登場。そしてそれと組み合わせると対戦相手の山札を強制的に削ることができる《父なる大地》が昨年のゼーロのスタートデッキでカードプールに揃っていたことにより、ループが存在しない代わりに実質的な特殊勝利が可能となっていた。その時点で、真っ当な殴り合いならば最強であるはずのギャラクシールドは、ポジションを追われることとなってしまった。
しかし、受けデッキ筆頭であるギャラクシールドがそれほど有力ではないと知られたなら、アグロデッキも息を吹き返してくる。かくしてこのリモートデュエマスペシャルトーナメントにおいては、「メタゲームがどこまで進むか」についてのハイレベルな読み合いが展開されることとなったのである。
そしてこのリモート2ブロックという環境に関して、他の参加者たちも唸るほどの最も深いやり込みを見せていたのが、NJ・ミノミー・ZweiLanceという参加者同士の調整チームだった。
昨年の北海道エリア予選で優勝した実績を持つNJがミノミー・ZweiLanceとともに持ち込んだのが、超天篇で登場したパーフェクト呪文のうち闇・自然・水の3種類を搭載した、言わば「パーフェクトドラグ大地」。惜しくもミノミーはオポ落ちしてしまったものの、2手も3手も先を行った構築によりZweiLanceとNJは危なげなく予選を突破。事前研究の量を見せつける結果となった。
対し、昨年の関東エリア予選の決勝でカードラッシュ所属プロのすめらぎを破って優勝した敬虔もある7010が駆るのは、奇しくもこちらも水闇自然というカラーリングのキューブマニフェスト。
デッキの主なコンセプトは《つぶやきブルーバード》を基軸に据えたバズレンダだが、《キング・マニフェスト》と《大樹王 ギガンディダノス》との大胆な共演により、中盤以降のゲーム制圧力に長けている。使用者によって細部は異なるものの、興奮と強さ、すなわち情と理とを兼ね備えたデッキであることから、ドラグ大地に次ぐ今回の人気アーキタイプでもある。
だが、《ドラグ変怪》という (間接的とはいえ) 踏み倒しメタカードがフル採用されている時点で、パーフェクトドラグ大地というデッキは当然それすらも織り込み済みである。NJらの分厚い研究を、7010ははたして覆すことができるのか。
Game 1
先攻のNJが《ディオーネ》《父なる大地》チャージから《フェアリー・ライフ》でブーストし、さらに続くターンには《零》チャージから《ウマキン☆プロジェクト》を送り出すぶん回りを見せるが、対する7010も《眼鏡妖精コモリ》《ミステリー・キューブ》と埋めて《つぶやきブルーバード》を召喚すると、《ミステリー・キューブ》を埋めつつの《眼鏡妖精コモリ》で手札を補充しつつ、こちらもマナを伸ばして食らいついていく。
返すNJはなおも《イグゾースト・Ⅱ・フォー》チャージから《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》をバズレンダ含みの5マナで唱えて2ブースト、落ちたマナからさらに《フェアリー・ライフ》を唱え、4ターン目にして9マナにまで到達してみせる。
だが7010は焦ることなく、《》チャージから《ウマキン☆プロジェクト》を召喚、《つぶやきブルーバード》の恩恵で少しずつアドバンテージを稼いでいく。
NJ「手札が何枚ですか?」
7010「5枚あります」
NJ「マナが7ですか」
7010「7ですね」
リモート対戦ということもあり、NJは丁寧に盤面の状況を確認する。
そして《生命と大地と轟破の決断》チャージから《得波!ウェイブMAX》を唱え、マナから《絶望と反魂と滅殺の決断》を回収すると、そのまま唱えて7010の手札を1枚捨てさせつつ《つぶやきブルーバード》を除去。だがここで捨てられたのは《ブラキオ龍樹》で、NJが7010のフシギバースのアシストをした格好となってしまう。
さらに7010は《ロールモデルタイガー》を埋めつつ《つぶやきブルーバード》を召喚すると、5マナの《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》で計3ブースト!手札は費消したものの、一気に11マナまで伸ばすことに成功する。
さて互いにマナを伸ばしきり、ここからは中盤戦。とはいえ、バズレンダの威力はマナがあればあるほど高まる。7010が決定打を繰り出す前にゲームの趨勢を決定づけたいNJは、まずはマナから《生命と大地と轟破の決断》を唱えると、《イグゾースト・Ⅱ・フォー》2体を出して1体目で墓地の《得波!ウェイブMAX》を唱えてマナから《父なる大地》を回収、続けて2体目の効果で墓地の《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》を唱え、減ったマナを補充する。
《生命と大地と轟破の決断》《絶望と反魂と滅殺の決断》《イグゾースト・Ⅱ・フォー》《得波!ウェイブMAX》というラインナップで、マナや墓地からあらゆるカードを再利用できるのがこのパーフェクトドラグ大地の強みだ。
さらにこのターンのNJのアクションはまだこれで終わらない。
NJ「(マナに埋まっている) 《大樹王 ギガンディダノス》の元のコストっていくつですか?」
7010「12です。フシギバースが14」
NJ「悩むなー……」
7010の手札は2枚。《つぶやきブルーバード》を処理するか、それともフシギバース持ちを墓地に送ってしまうリスクを承知の上で7010の手札を枯らしきるか悩んだNJは、意を決して残ったマナから墓地の《絶望と反魂と滅殺の決断》を唱えると、7010の残る手札2枚をすべて刈り取る。捨てられたのは《ブラキオ龍樹》と《ロールモデルタイガー》で、幸い《大樹王 ギガンディダノス》はない。
一方、ようやくターンが返ってきた7010。マナは十分だが引き込んだのは《フェアリー・ライフ》で、仕方なくこれをマナに埋めると、《眼鏡妖精コモリ》をマナに送りつつのフシギバースで墓地から《ブラキオ龍樹》を召喚する。
返すNJはチャージなしからの《知識と流転と時空の決断》による2ドローで手札を補充しつつ、《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》でマナゾーンに次なる《生命と大地と轟破の決断》を送り込み、7010がリカバリーする前に決着を付けようとする。
だが、バズレンダ持ちはもちろん《キング・マニフェスト》から出す用の大型クリーチャーもたくさん入っている7010のデッキは、トップデッキの確率においては群を抜いていた。
ここで7010が引き込んだのは、《大樹王 ギガンディダノス》!
一発逆転のドロー。これによりNJが抱えていた手札はすべてマナに置かれてしまっただけでなく、7010のバトルゾーンには《ブラキオ龍樹》と《大樹王 ギガンディダノス》とがセットで並んだことになる。
すなわちNJは手札が刈り取られた状態でクリーチャーの登場時能力が封じられた上に、パワーが50000より小さいクリーチャーによるプレイヤーへの攻撃もかなわない。それは通常のデッキであればもはや抜け出すことのおよそ不可能な、限りなく完璧に近いハーフロックと言えた。
だが、それが完璧でないのならば。
NJのパーフェクトデッキは、そんな絶望的なシチュエーションに対してすらも解答を用意していたのだ。
3マナで《ドラグ変怪》を送り出したNJは、さらにマナから《生命と大地と轟破の決断》を唱える。ここで呼び出した《零》に「タップまたはアンタップしているクリーチャーを攻撃できる」を付与すると、《ブラキオ龍樹》に向けて攻撃するときに《大樹王 ギガンディダノス》のパワー50000を吸い、ハーフロックを一撃で打破することに成功する!
NJ「山札、残り何枚か教えてもらってもいいですか?」
7010「13枚です」
そしてこの《ドラグ変怪》が、終盤戦への突入を告げた。返すターンに7010は《ウマキン☆プロジェクト》をマナ送りにして再び《ブラキオ龍樹》をフシギバースするのだが、これに《ドラグ変怪》が反応し、残り少ない山札からさらに5枚が削れてしまう。
NJ「《ミステリー・キューブ》と《》って何枚見えてます?」
7010「3枚と……2枚ですね」
ここで冷静に7010のデッキに残るS・トリガーの枚数を確認したNJは、殴って勝つよりも山札切れを狙う方がリスクが少ないと判断したか、再び《生命と大地と轟破の決断》で《零》にアンタップキラーを付けると《つぶやきブルーバード》への攻撃時に《ブラキオ龍樹》のパワーを吸い、なおもエンド時に《零》の能力で7010の手札から《キング・マニフェスト》を捨てさせることで、7010の逆転の可能性を一手一手確実に潰していく。
それでも7010は11マナで《完全不明》を送り出して抵抗するのだが、どの道攻撃する気のないNJのバトルゾーンに《イグゾースト・Ⅱ・フォー》が定着している現状、NJが毎ターン呪文を唱えるだけで攻撃が封じられる状態となってしまっているため、ほとんど用をなさない。
……そして7010が打開策を引き込めないままに4ターンが経過し。
7010「……サレンダーします」
ダイレクトアタックを決める前に山札が尽きることが明白となった7010は、自ら投了を宣言するのだった。
NJ 1-0 7010
NJ「《ドラグ変怪》が見えなさすぎた……w」
7010「《ドラグ変怪》の2枚目が見えたら諦めようと思って粘ったけど、冷静に1枚目の段階でほとんど勝ち筋なかったんで早めに投了した方が良かったかも……」
10ターン以上にも及ぶロングゲームを制したのはNJだった……3種類のパーフェクト呪文のおかげで毎ターン無数の選択肢が生まれるこのデッキがいかに強力かは、このゲームを見てしまった時点で今さら語るまでもなかった。
ただそれ以上に印象的だったのは、その無数の選択肢について常に正着手を選び続けることができるNJの強さだった。
Game 2
《ロールモデルタイガー》《ミステリー・キューブ》というチャージから《つぶやきブルーバード》を送り出し、続くターンには《つぶやきブルーバード》をチャージから《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》で2ブーストを決めつつ《つぶやきブルーバード》で攻撃と、先攻の利を生かして攻め立てる7010。
対するNJも《生命と大地と轟破の決断》《生命と大地と轟破の決断》と埋めての《フェアリー・ライフ》から、3ターン目には《ディオーネ》を埋めて《ウマキン☆プロジェクト》を召喚と十分な立ち上がり。
だが7010はなおも《フェアリー・ライフ》を埋めると、6マナから《ウマキン☆プロジェクト》をバズレンダ2+1回で召喚!
NJ「マナが9枚、手札が4枚ですか?」
7010「そうです」
NJも《ディオーネ》チャージからの《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》で2ブーストして追いすがるが、《フェアリー・シャワー》3発分の手札補充を行った7010の続く動きが緩手であるはずもなかった。
《ASAPプライオリス》チャージ、《つぶやきブルーバード》召喚から《キング・マニフェスト》をバズレンダ1+2回で召喚!
リモートでは対戦相手のデッキをシャッフルすることはできないため、シャッフルする7010に対してNJが適当なタイミングで「ストップ」と声をかける。まず1回目、めくれたのは……《キング・マニフェスト》!
7010「……変わらない。残り3回ですね」
続けて2回目は……《ブラキオ龍樹》!
NJ「きびしーw」
だがまだ終わらない。3回目は……3体目の《キング・マニフェスト》!
NJ「……なんだと……w」
バズがバズを呼ぶ事態を前に、もはや笑うことしかできないNJ。
結局4回目と5回目で《ロールモデルタイガー》と《完全不明》までもめくった7010は、さらに《ロールモデルタイガー》の能力でマナゾーンから《つぶやきブルーバード》を出し、気づけばクリーチャー数は10体0という圧倒的な大差。
返すターンにNJは一応《知識と流転と時空の決断》で《完全不明》と《ブラキオ龍樹》を手札に戻してみるものの、抵抗空しく7010の圧倒的な軍勢がNJのシールドを紙束のように一瞬で屠ると、そのままダイレクトアタックを決めたのだった。
NJ 1-1 7010
NJ「めくりがすごいw」
7010「《キング・マニフェスト》が4体並んでしまったw 《ドラグ変怪》が来ませんでしたね……」
NJ「まあ次は先攻だ。次は先攻。事故らなければ……」
先手5ターン目に《キング・マニフェスト》の能力を3回誘発。2ゲーム目は7010のバズレンダが本領を発揮した形となった。
いかにNJのデッキが盤面のコントロールに長けているとはいえ、1枚の《キング・マニフェスト》から連鎖されてしまうと手の付けられない状況となってしまう。また1ゲーム目では返されたものの、そのどこかで《大樹王 ギガンディダノス》が挟まってしまえば、返す手段がかなり限られることは事実なのだ。
NJの《ドラグ変怪》が定着するのが先か。7010が大物を着地させるのが先か。運命の3ゲーム目が幕を開ける。
Game 3
《零》《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》チャージから《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》へとつなげたNJは、続くターンに《イグゾースト・Ⅱ・フォー》を埋めつつの《得波!ウェイブMAX》で順調にマナを伸ばしていく。
対する7010は《ロールモデルタイガー》《キング・マニフェスト》《完全不明》と埋めてからの《眼鏡妖精コモリ》が初動で、後手としては少し物足りない立ち上がり。
そしてそんな7010を尻目に、NJは6マナから《ウマキン☆プロジェクト》!一気に加速する。
だが、7010にはここからでもNJの動きに追いつける必殺技があった。
《ミステリー・キューブ》。もしこれで《大樹王 ギガンディダノス》《完全不明》がめくれれば、その時点で7010は限りなく勝利に近づくことになる。
運命を決めるシャッフル。はたしてめくれたのは……《つぶやきブルーバード》。ハズレだ。
返すNJは《零》チャージから《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》を唱え、さらに5マナで《絶望と反魂と滅殺の決断》。手札破壊で攻め立てつつ出たばかりの《つぶやきブルーバード》を除去し、7010の動きの潤滑油を厳しく咎める。
だが、7010はなおも諦めない。2度目の《ミステリー・キューブ》。確率も、試行回数を重ねれば乗り越えられる。今度こそ、《大樹王 ギガンディダノス》か《完全不明》をめくりたい。
しかし、今度のめくれは《》……悪くはないが、NJを追い詰めるには至らない。
返すNJは墓地から唱えた《絶望と反魂と滅殺の決断》で7010の手札を刈り取ると、さらに《イグゾースト・Ⅱ・フォー》で墓地の《得波!ウェイブMAX》を唱え、マナの《ドラグ変怪》を回収しつつ7010の《》を手札に戻すと、ついに《ドラグ変怪》を降臨させる。
それが実質、ゲームの趨勢を決定づけた。
こうなってしまうと7010も迂闊にクリーチャーを踏み倒せない。否、それどころか《ミステリー・キューブ》の連打にかまけていたせいで7010のマナはまだ全く伸びきっていないのだ。
そしてその間にも、NJは《ウマキン☆プロジェクト》でリソースを拡充し続ける。
やがて《生命と大地と轟破の決断》でマナからさらに《ウマキン☆プロジェクト》2体を呼び出したNJが《ドラグ変怪》の2体目と3体目を着地させると、続けて《父なる大地》で7010の《つぶやきブルーバード》をマナゾーンに送り返しつつ《ロールモデルタイガー》を引っ張り出し、7010の山札を一気に15枚削りきったのだった。
NJ 2-1 7010
7010「あの盤面を作られたらもう……いやー、《ドラグ変怪》きっつー」
《ミステリー・キューブ》が当たっていれば、あるいは7010にも勝利のチャンスはあった。
しかしどこまで行っても、《知識と流転と時空の決断》や《得波!ウェイブMAX》で踏み倒したクリーチャーを手札に戻せたり、《生命と大地と轟破の決断》と《零》のコンボでどんなクリーチャーがめくれてもサイズを無視して盤面を対処したりできる上に、《ドラグ変怪》という最軽量の蓋を持つNJのデッキは、キューブマニフェストというコンセプトに対して十分すぎるほど耐性があったと言わざるをえない。
ありとあらゆるシチュエーションに対応できる万能の基盤を完璧に使いこなし、まさしくパーフェクトな受けを見せたNJは、あと2勝してミノミー・ZweiLanceとの調整の正しさを証明するべく、準決勝に臨む。
Winner:NJ
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