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リモートデュエマスペシャルトーナメント 第1回戦 ミノミー vs. NJ

ライター:Daisuke Kawasaki



「いきなりつぶしあいだよ」

互いに「シャッフルするから、ストップって言って」と言ったようなリモートならではのやりとりをしている中で、ミノミーNJはどちらともなくこの言葉を発した。

2019年の全国大会の参加者は、DMGP8th、DMGP9th、超CS3の上位者と、各エリア予選の優勝者、そしてDMPランキング上位者によって確定した。

そのメンバーは、当然ながら、日本のトップクラスであり、全員がスターであり、すべてが注目するべき戦いであることは間違いない。

でも、そんな中でも仮に「もし、全国大会でひとつだけ自分で自由にマッチアップを作れるならどの戦いが見たいか」という質問をしたらば、確実に上位に入っただろうと思われる組み合わせがある。

それが、超CS3覇者のミノミーと、北海道エリア代表のNJのマッチアップだ。

「面白い試合であれば、なんでもみたい」それが人の性だ。だが、その対戦にバックボーンがあると知ってしまえば、よりその対戦に意味を見出してしまい、その対戦に期待してしまう、それこそ人の性である。

北海道エリアの権利者インタビューでも語られているが、この二人は兄弟である。兄弟対決、それは当人たちは飽きるほど言われているであろうが、それでも、魅力的な響きであることは間違いない。

全国大会は延期となってしまい、兄弟対決もあわや幻になるかと思われたが、全国大会出場者によるリモートデュエマスペシャルトーナメントという夢の舞台が実現し、そして、奇遇にも兄弟対決が1ラウンド目で実現したのだ。



使用するデッキは、互いにこの大会で結果的に使用数上位となった《ドラグ変怪》《父なる大地》によるコンボデッキ、ドラグ大地。《ドラグ変怪》がプレビューされた時から話題にはなっていたコンボではあるが、大きな大会で成績をこの時点ではまだ残していないデッキではある。

2ブロック、かつ、リモート公式ルールにのっとって40枚のメインデッキ以外は使用できないという今回のレギュレーション。そこで彼ら二人は、ともに同じデッキを選択した。

とはいえ、例えば前述の北海道エリア予選時にNJはミノミーと調整をしていなかったというし、それはたまたまかもしれない。冒頭の彼らのやりとりも、よりによって、最初に兄弟でつぶし合う必要はないよね、くらいのニュアンスなのかもしれない。

何はともあれ、エキシビジョンとは言え、初となる公式リモートイベントの第1回戦が始まる。

先手はミノミー。1ターン目に《零》をマナチャージ。対するNJは《フェアリー・ライフ》をチャージ。

そして、2ターン目にミノミーは《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》、NJは《フェアリー・ライフ》とマナ加速しての3ターン目。ミノミーは3マナを使用して《ドラグ変怪》をバトルゾーンに呼び出す。対するNJは、さらに《フェアリー・ライフ》を打つのみ。

ミノミーはNJの手札の枚数が3枚なのを確認すると、《絶望と反魂と滅殺の決断》で手札を2枚捨てさせる。NJは《絶望と反魂と滅殺の決断》を2枚ディスカードすると、自身のターンにマナチャージして6マナとなったところから、《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》をバズレンダ追加1でプレイ、手札は0だが、マナを8マナまで伸ばす。ミノミーも、手札をすべて使い果たしてバズレンダ1の《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》をプレイ、こちらもマナを8マナに伸ばす。



NJはさらなる《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》で、マナを11マナにする。マナしかないようには見えるが、しかし、墓地には2枚の《絶望と反魂と滅殺の決断》がある。

互いに、相手の墓地とマナの数を確認するが、実際は、そこから相手の山札の枚数を確認しているのかもしれない。ミノミーは引いてきた《イグゾースト・Ⅱ・フォー》とで《【神回】バズレンダでマナが大変なことに?!【驚愕】》を使いつつ、さらにマナから《生命と大地と轟破の決断》をプレイし、2回のマナ加速を選択すると、10マナまで伸ばす。

NJは墓地から《絶望と反魂と滅殺の決断》をプレイすると、《ドラグ変怪》《イグゾースト・Ⅱ・フォー》を破壊。《生命と大地と轟破の決断》《ウマキン☆プロジェクト》《ドラグ変怪》をマナからバトルゾーンへと呼び出す。これで、マナは9マナ、手札は2枚とリソースを大きく確保した状況でターンを終える。

相手にリソースを確保されつつ、さらに自身の盤面は壊滅させられているミノミー。とはいえ、ありとあらゆるところからリソースが生えてくるデッキなので、互いに油断はできない。マナゾーンのクリーチャーの数に至るまで確認したうえで、まずは《イグゾースト・Ⅱ・フォー》の2枚目をマナチャージし、《生命と大地と轟破の決断》でマナゾーンから《零》を出すと、さらにそれにアンタップ攻撃を付与する。

続いて、《絶望と反魂と滅殺の決断》を墓地からプレイし、手札を1枚捨てさせつつ、《ドラグ変怪》をバトルゾーンに。そしてミノミーは《零》をNJの《ドラグ変怪》にアタックさせつつ、《ウマキン☆プロジェクト》のパワーを吸い取り、《生命と大地と轟破の決断》1枚で実質あとくされなく相手のクリーチャーを2体対処する。さらにはターンエンドに《零》の効果が発動し、NJの手札はゼロに。

マナに《生命と大地と轟破の決断》を1枚残した状態で盤面を取り返したミノミーに対して、NJがドローしたのは《知識と流転と時空の決断》 。ここで2枚ドローすると、墓地から《絶望と反魂と滅殺の決断》をプレイし、《零》へとマイナス効果を2回使い除去する。

双方ともマナが伸びているが、伸びたマナを大量リソースにできる《ウマキン☆プロジェクト》を引けないまま、ターンが進んでいく。ミノミーが《フェアリー・ライフ》だけでターンを返すのに対して、NJはまたも《知識と流転と時空の決断》。そして、手札から《絶望と反魂と滅殺の決断》を使用し、ミノミーの《ドラグ変怪》を破壊しつつ、自身は墓地から《ドラグ変怪》を呼び出す。しかし、墓地には《父なる大地》が十分な枚数ないので、ゲームを一気に決めるにはまだパーツが足りない。

ゲームを決められることはなかったものの、盤面を作られてしまったミノミー。まずは6マナでバズレンダを追加した《ウマキン☆プロジェクト》を呼び出して、十分なリソースを稼ぐと、さらに《知識と流転と時空の決断》《ドラグ変怪》を手札に戻しつつドローを進める。

だが、バウンスでは一時的な解決にしかならない。そして、NJはこのターンに最後の必要なパーツを手にいれていた。NJはこの戻された《ドラグ変怪》を召喚すると、さらに《父なる大地》をプレイし、ミノミーの《ウマキン☆プロジェクト》をマナに戻してからバトルゾーンに呼び出す。

これによって《ドラグ変怪》の能力が発動し、ミノミーは自身が望んで出したわけでもないにも関わらず、コスト踏み倒しの罰として山札を 5枚削られてしまう。



そして、《生命と大地と轟破の決断》によって2体の《イグゾースト・Ⅱ・フォー》が呼び出されると《父なる大地》が使いまわされ、ミノミーの山札はなくなってしまうのだった。

Winner:NJ

実は、試合開始前から気になっていたことがあったので、試合終了時に二人にインタビューをさせてもらった。

当日の午前中に参加者の全デッキリストが登録され、カバレージチームは事前にそれを見ることができ、結果としてドラグ大地が多数派のひとつであることは認識していた。だが、これは恥ずかしながら、僕自身がドラグ大地というアーキタイプのリストに無知であったので、あるカードが本当にこのアーキタイプの必須パーツなのかである。



それは《零》だ。

先述のように、この大会は《滅亡の起源 零無》が使えないレギュレーションだ。

しかし、ドラグ大地を選択したプレイヤーの中で《滅亡の起源 零無》がいることを能力の一部の条件とするクリーチャーである《零》を採用していたプレイヤーが4人いたのだ。

そのうちの3人、ミノミーとNJ、そして配信側でRound 1にフィーチャーされたZweiLanceは、ZweiLanceだけ数枚の違いがあったが、ミノミーとNJは全く同じものであった。そして、彼らに聞いた結果、この3人はZweiLanceの呼びかけにより、3人でこの大会に向けて調整していたという。

十王篇だけのいわゆる1ブロックに近い環境であることから、ギャラクシールド系のデッキが最強に近いという事、そして、それに対して、ドラグ大地が有力であること、そこまで彼らはたどり着いた。実際、そこまでは多くのプレイヤーもたどり着いていた。

だが、殴りあいを受けつぶすギャラクシールドに対しては殴り合いを拒否するドラグ大地は有力ではあるが、結果として、今度はマジボンバーやキリフダッシュ系の殴ってくるデッキ相手には、トリガー1発程度では処理できない不利が付くことは事実。

そこで彼らがたどり着いたのは、《生命と大地と轟破の決断》1枚で確実に面をとれるカードである《零》だったのだ。

彼らは、情報が圧倒的に少ないこの大会のメタゲームに対して、全力で研究し、そして他の誰もがたどり着いていない答えにたどり着いた。

ゆえの言葉だったのだろう。

「いきなりつぶしあいだよ」
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