全国大会2018 東海エリア予選:トップ10カード
2018年最後のエリア代表決定戦となった東海エリア。
3つのブロックに分けて行われた熱い戦いは、現在のカードプールで行われる最後の代表決定戦にふさわしいものだったと言っていいだろう。
ここでは、そんな戦いを彩った10枚のカードについて触れていこう。
トップ8デッキリストの段階では3ブロック併せて1名となってしまっていたものの、トップ16確定時点では5名と他のエリアと比べても多数のプレイヤーが戦っていた。
デッキリストとしては純粋な『赤単』のものもいたが、準決勝まで駒を進めたのは、銀刃の使用する『自然ジョーカーズ』とのハイブリッドによって、2マナ域の《ヤッタレマン》《タイク・タイソンズ》と純粋なマナ加速の《メイプル超もみ人》、4マナ域の《ドンドド・ドラ息子》《ふでがき師匠/一筆奏上!》という加速要素のデッキ内枚数を安定させ、相手の計算より早く《超Z級 ゲキシンオー》をたたきつけるタイプだろう。
このデッキは、メラビート・ゲキシンオーのコンボで相手の計算を狂わせるだけでなく、《ニルバーナー》に追加したトリガー要素である《》と《サイコロプス》という大量処理コンボでも相手の計算を狂わせることができ、初見で戦うとかなり苦労させられるであろうリストに仕上がっている。
現在の2ブロック環境のカードプールで開催されるエリア代表決定戦も9日目。かなりメタゲームも固まってきてはおり、より効率よく精度の高いプレイ技術を身に着けるために練習する対戦相手を絞っているプレイヤーも多かったとは思う。
打点の膨れ上がり方では環境随一のこのカードは、会場で多くのプレイヤーの度肝を抜いたことだろう。
5 火水ブランド
1 火単ブランド
4 光ゼロ裁キ(純粋光ゼロからタッチゼロまで含む)
1 火自然メラビート
1 火自然ジョーカーズ
1 ゼロ単ジョーカーズ
3 サソリループ
1 闇単無月
2 ツインパクトコントロール
1 ドンジャングルコントロール
2 水単ムートピア
1 シータチェンジザ
1 光単タッチ水デュオ・コマンドー
エリアによって人数差が最も極端に出やすいアーキタイプゆえに話題に上がりやすいのだが、東海エリアでトップ8入賞した24名のうち、闇単無月を使用したのは1名だった。
これまでの各エリアの入賞デッキを改めて確認したのだが、多くのエリアにおいて、『火水ブランド』・『光系裁キ』・『闇単無月』の3つの合計が占める割合はあまり変わらないものの、3つの内部的な割合はメタゲームの展開や、地域的なものが大きいのではないかと思われる。
というわけで、あえてここでは『闇単無月』の不調について強くは触れないが、それはそれとして、そんな中で今回唯一トップ8入賞した『闇単デスザーク』を使うミランダのデッキリストには、かなり珍しい魔導具が採用されていた。それが《堕魔 ドゥスン》だ。
呪文主体のデッキに対して、無月と手札破壊が機能するまでの時間を稼いでくれるこのカード。『裁キ系』だけでなく、最近権利獲得し注目されている『水単ムートピア』の足止めにもなるカードとして、メタゲームを鑑みて採用されたのだろう。
もちろん、カードの効果だけを見れば「そういうメタゲームであれば採用するでしょう」という結論に見えるかもしれないが、これまで『闇単無月』というデッキが、その内容のほぼ9割ほどまでが有効な動きのために固定パーツとなっているデッキであったことを思い出してほしい。
自分が最高の動きをするためのベストのデッキリストと、環境においてベストの選択となるデッキリスト。このカードの採用とそのリストから、そんなことを考えてみるのも面白いかもしれない。
そもそも、最初のエリア代表決定戦であった九州エリアでは、『火水ブランド』というデッキは「9割以上ベストのカードが決まっているようなものである」という話題が出ていた。増えるであろう速攻デッキ相手に《崇高なる智略 オクトーパ》を入れたいが、抜けるカードがないので、いわゆる「デッキスロットを増やす魔法」で3種4枚を、4種3枚にするか否か、といったような話だ。
だが、そこから1ヶ月半が経ち、『火水ブランド』というアーキタイプのデッキリストはかなり多様化した。新たな有効カードが発見されたり、また、メタゲーム上の都合であったりと理由は色々あるが、このエリア予選のように短期間に大量の大型大会が開催されるシリーズ時には、そういうデッキリストの移り変わりを見るのも一興ではないかと思う。
たとえば、九州では5人中5人が使用していた《月光電人オボロカゲロウ》だが、翌週の北東北エリアでは《月光電人オボロカゲロウ》使用者は約半分となってしまう。これは、『火水ブランド』対決では主に《“乱振”舞神 G・W・D》のせいで出す事がリスクになる上に、『光ゼロ系』にもリスクになるため、単体のカードパワーや高速化にデッキリストが移行していったからだろう。
実際、その後、もっとも『火水ブランド』のドローソースが少なかった南東北エリアで1名に減ったあと、多くの『火水ブランド』のデッキリストから《月光電人オボロカゲロウ》は消えていった。その後、一部《エマージェンシー・タイフーン》がいたものの、ドローソースは十分とばかりに、代わりになったのは《ゼンメツー・スクラッパー》に代表される序中盤の差し合いに強いカードだ。
同系対策をするにしても、王者である自身を倒しに来る相手と戦うにしても、序中盤に相手と会話をできるカードを採用しなければならなくなっていったのである。これも自分の都合でデッキリストを作ることができなくなったという典型例だろう。
そんな『火水ブランド』のデッキリストの歴史の中で、東海エリアで特徴的だったのが、《堕呪 ウキドゥ》だ。
明らかに『裁キ系』への対抗策であるこのカード、これまで各エリアで1名ぐらいは入賞することはあったのだが、ついに5名中3名、過半数が採用するカードとなった。
また、余談ではあるが、『火水ブランド』のドローソースの話でいえば、これまで一部エリアで試されていた《王立アカデミー・ホウエイル》採用型がBブロック覇者のでこいによって初めて権利を獲得したエリアでもある。
《メラビート・ザ・ジョニー》でも少し語ったことだが、今回の会場では火を使った『ジョーカーズ』が多く、結果、《サイコロプス》が火を噴く場面を多く見かけたのが、予選ラウンド・決勝ラウンドを問わずに印象的だった。
そもそも、デュエル・マスターズというゲームの本質でもあるので当り前ではあるのだが、この2ブロック環境を支配しているデッキのほとんどがコストの踏み倒しギミックをデッキのメインコンセプトに据えている。
ゆえに、《異端流し オニカマス》や《ポクチンちん》に代表される踏み倒しメタが重要なのだが、先出しできないものの、後出しゆえに死角から相手の意表をつける《サイコロプス》は逆転の場面を演出していたカードだったといえるだろう。
特に、《》とのコンボは、《オリオティス・ジャッジ》として猛威を振るっていたのが印象的だ。
先日の関西エリアで権利獲得をしたのも記憶に新しいが、最近では類似コンセプトのデッキが殿堂環境でも活躍しており、ついにムートピアにも(水文明だが)光があたる日が来た。
このデッキも、トップ8入賞こそ2名ではあるが、予選最終戦からトップ16にかけては上位戦線に食い込んでいるプレイヤーも多く、個人的には東海エリアでもう一人権利者を生み出すアーキタイプなのではないかと予測していたくらいだ。
コンセプト自体は固まっていたものの、「1マナ呪文が本当に12枚も必要なのか」という議論があったようで、リストが固まり切っていなかったこのデッキ。だが、この東海エリアにおいては上位で確認できた限りではすべてのプレイヤーが《》を採用するに至っていた。
目立ちやすく対策されやすいデッキゆえに、今後は「自分勝手にデッキリストを作れない」側になっていくとは思われるが、水文明が大幅に強化されたバラギアラ以降も注目のカードだ。
「《龍装者 デュオ・コマンドー》でブロックしながら《終末の時計 ザ・クロック》を出す」
という、おそらく《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》による勝利プランを計算している相手の意表を突くであろうコンボが内蔵されているのは、少なくとも知られていないうちは効果的であると思われるし、そもそもタッチで入っている《終末の時計 ザ・クロック》はマナチャージでばれていない限りは普通にトリガーしても効果的だ。
序盤にアドバンテージを稼げるメタリカを並べたうえで、相手の予想外の《エメスレム・ルミナリエ》から出てくる《龍装者 デュオ・コマンドー》は、相手の平常心を失わせるには十分だっただろうし、それゆえ、前述の《終末の時計 ザ・クロック》とのコンボも効果的に決まったのではないだろうか。
公式戦初の大型2ブロック環境イベントであるDMGP7thの時点で猛威を振るっていた《ドンジャングルS7》ではあるが、エリア予選シーズンが始まると勝負のレンジが噛み合わない『火水ブランド』の台頭によってその数を一気に減らしてしまった。
また、自然の『ビッグマナ系』のデッキの流行がツインヒーローデッキでのツインパクトコンセプトの大幅強化によってツインパクトコントロールメインになっていたのも、ツインパクトではないこのカードにとって逆風だったといえるだろう。
そんな中、rainbowが持ち込んだのは、自然タッチ光の《ドンジャングルS7》コントロールとでも言えるデッキであった。詳しくはデッキリストを確認していただきたいのだが、Jチェンジによる《ドンジャングルS7》早出しプランを《ソーナンデス》とのギミックだけに絞り、相手のクリーチャー(多くの場合は《異端流し オニカマス》がターゲットになったことだろう)を除去しつつ、盤面展開していく。
そして、ここで呼び出すクリーチャーとしてこのデッキの個性となっているのが、《気高き魂 不動》だ。
トラップ系やバウンス、シールド貼り付け、さらにジョーカーズの山札戻しのように破壊以外の除去が多く存在するこの環境において、圧倒的な除去体制を味方すべてに与えるこのカードは、『無月系』を除く多くのデッキに対して脅威となったことは間違いない。
また、地味ながらもシールド追加効果は複数の《気高き魂 不動》が存在すれば累積する。たかが1枚とはいえ、これは虎視眈々とジャスキルを狙ってくる『火水ブランド』の計算を狂わすのに十分だろう。
ジョーカーズの枚数が担保されていないにも関わらず、環境屈指のトリガーとして《》を採用していたりと、シナジーとカードパワーのバランスをうまくとっているデッキリストであり、今大会で最も特徴的なデッキだったのは間違いない。
ツインパクトをサポートするシステムにバックアップされているデッキだけあって、現状ではほぼデッキリストが固まっているこのアーキタイプ。実際の2人のデッキはたった2枚しかデッキリストの違いはなかった。
アーチーが《ハヤブサノ裁徒Z /ヒーリン・マスカラス》を入れているスロットに、ペーパールーパーが採用していたカードは《》。この2枚の差が二人の勝敗を分けた……わけではないだろうが、しかし、この対戦に限らず今回のメタゲームでいえば《》採用の方が僅かに分があったようには思える。
提出されたデッキリスト記入用紙を見ると、ペーパールーパーのデッキリストも、いったんは《ハヤブサノ裁徒Z /ヒーリン・マスカラス》を記入した上で、それを消す形で《》が記入されていた。大会開始直前までここのカードの選択に悩んでいた証左であろう。
勝利と敗北とを分ける差……それはわずかなデッキリストの差、なのかもしれない。
そして、そんな状況でも『火水ブランド』がある程度安定したデッキとして機能したのは、この《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》の高いドロー能力があったからだろう。
序盤に手札をダンプして打点として盤面に置きつつも、将来的なドローソースにできるという『火水ブランド』のメインプランに加え、破壊以外の除去を持つ一方でリソース勝負になる中長期戦にもつれ込みやすい『ビッグマナ系』や『裁キ系』のデッキ相手には手打ちの≪トリプル・ブレイン≫として機能しリソース差で戦う戦略を実現する。
だが、この東海エリアでは、《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》のドロー関係以外の能力がドラマを生み出すこととなった。
Cブロックで権利獲得者となったローラの準決勝。対戦相手は『ムカデループ』を使用するシャルティアとの勝負になった。このマッチアップは基本的にはスピード勝負となるため、ローラは序盤から一気に攻め立てるのだが、《撃髄医 スパイナー》をトリガーしてしまいシールドをゼロ枚にするものの、リソースが枯れてしまう。
かえってきたターン。スピード・アタッカーであれば何であれ勝利するローラが引き当てたのは、《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》。当然ドローする選択肢もあったものの、ローラはこれを召喚して続くターンにループが始まらない事を祈ってターンを終えた。単純に除去されるだけならばドローしたカードの中にスピード・アタッカーがあれば勝てるという二段構えの戦術だ。
対するシャルティアだが……対応に時間を使わされてしまってか、ループを開始するに十分なリソースが墓地に無い。《戒王の封》で《阿修羅サソリムカデ》をバトルゾーンに出し、墓地に落ちた2枚を見ると《阿修羅サソリムカデ》をバトルゾーンに残す形でターンを終える。《阿修羅サソリムカデ》をただのループコンボパーツとしてだけ見ていると忘れがちなのだが、《阿修羅サソリムカデ》はブロッカーを持っているのだ。
だが、≪南海の捜索者 モルガラ≫ もただのドローソースとしてだけ見ていると忘れがちな能力を持っていた。
ローラは、ターンが返ってくると、そのまま≪南海の捜索者 モルガラ≫をタップしダイレクトアタックを宣言した。
そう、≪南海の捜索者 モルガラ≫はブロックされないのだ。
それだけを見れば、今回の第1位は《“轟轟轟”ブランド》になるべきなのかもしれないが、決勝戦のマッチアップを踏まえて今回はこのカードを1位に推したい。
決勝戦で『火水ブランド』と対峙したのは、『光単デュオ』・『自然ドンジャングル』・『ツインパクトコントロール』の3つのデッキだった。まったく別の3つのデッキだが、共通点は『火水ブランド』との対戦時は中盤戦にもつれ込ませて盤面支配能力で優位になる戦略をとる点だ。
一方でこれらのデッキとの対戦練習を積んで中盤戦以降の戦い方を身に着けた『火水ブランド』使いが取る戦略は手打ちの《トリプル・ブレイン》によってリソースを稼ぐ戦略であることは前述の通りだ。
そして、稼いだリソースはチャージされたマナとともにダンプされ、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の連打による追加ターンの連続が相手の盤面支配能力以上の打点を叩きこむのが一般的なフィニッシュ手段となる。
実際に、権利を獲得した2名の戦いも中盤に盤面を支配されかけるところまでもつれ込んだものの、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の連打が突破口をこじ開ける形で決着していた。
ターンが進んでリソースが増えていれば、追加ターンで得られるリソースもその分増える。そんな単純な真実が中盤戦以降も戦うプランを『火水ブランド』に与えている。それが環境初期から仮想的であったにも関わらず、今なお権利獲得者を生み出し続けている。
その点を鑑みて、東海エリアの第1位を《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》にしたいと思う。
以上、他エリアよりは長文になってしまったが、東海エリアで印象的だったシーンを10枚のカードと共に振り返ってみた。
以降のエリア代表決定戦では『超決戦!バラギアラ!!無敵オラオラ輪廻∞』が使用できるようになる。大量のカードが追加されるのみならず、4弾にふさわしく環境を変えうる強力カードの多いセットが入ることで2ブロック環境が激変することは必至だ。
残る関東エリアとジャッジ大会では、どのようなカードが活躍するのか、今から楽しみだ。
3つのブロックに分けて行われた熱い戦いは、現在のカードプールで行われる最後の代表決定戦にふさわしいものだったと言っていいだろう。
ここでは、そんな戦いを彩った10枚のカードについて触れていこう。
第10位:《メラビート・ザ・ジョニー》
ここまでの各エリアのトップデックリストに名前はあったものの、予選ラウンドを見ても東海エリアはかなり《メラビート・ザ・ジョニー》の使用者数が多く、さらに上位戦線に食い込んでいたように思う。トップ8デッキリストの段階では3ブロック併せて1名となってしまっていたものの、トップ16確定時点では5名と他のエリアと比べても多数のプレイヤーが戦っていた。
デッキリストとしては純粋な『赤単』のものもいたが、準決勝まで駒を進めたのは、銀刃の使用する『自然ジョーカーズ』とのハイブリッドによって、2マナ域の《ヤッタレマン》《タイク・タイソンズ》と純粋なマナ加速の《メイプル超もみ人》、4マナ域の《ドンドド・ドラ息子》《ふでがき師匠/一筆奏上!》という加速要素のデッキ内枚数を安定させ、相手の計算より早く《超Z級 ゲキシンオー》をたたきつけるタイプだろう。
このデッキは、メラビート・ゲキシンオーのコンボで相手の計算を狂わせるだけでなく、《ニルバーナー》に追加したトリガー要素である《》と《サイコロプス》という大量処理コンボでも相手の計算を狂わせることができ、初見で戦うとかなり苦労させられるであろうリストに仕上がっている。
現在の2ブロック環境のカードプールで開催されるエリア代表決定戦も9日目。かなりメタゲームも固まってきてはおり、より効率よく精度の高いプレイ技術を身に着けるために練習する対戦相手を絞っているプレイヤーも多かったとは思う。
打点の膨れ上がり方では環境随一のこのカードは、会場で多くのプレイヤーの度肝を抜いたことだろう。
第9位:《堕魔 ドゥスン》
ここで、まずは東海エリアの各ブロックでトップ8入賞したデッキのブレイクダウンを見てみよう。5 火水ブランド
1 火単ブランド
4 光ゼロ裁キ(純粋光ゼロからタッチゼロまで含む)
1 火自然メラビート
1 火自然ジョーカーズ
1 ゼロ単ジョーカーズ
3 サソリループ
1 闇単無月
2 ツインパクトコントロール
1 ドンジャングルコントロール
2 水単ムートピア
1 シータチェンジザ
1 光単タッチ水デュオ・コマンドー
エリアによって人数差が最も極端に出やすいアーキタイプゆえに話題に上がりやすいのだが、東海エリアでトップ8入賞した24名のうち、闇単無月を使用したのは1名だった。
これまでの各エリアの入賞デッキを改めて確認したのだが、多くのエリアにおいて、『火水ブランド』・『光系裁キ』・『闇単無月』の3つの合計が占める割合はあまり変わらないものの、3つの内部的な割合はメタゲームの展開や、地域的なものが大きいのではないかと思われる。
というわけで、あえてここでは『闇単無月』の不調について強くは触れないが、それはそれとして、そんな中で今回唯一トップ8入賞した『闇単デスザーク』を使うミランダのデッキリストには、かなり珍しい魔導具が採用されていた。それが《堕魔 ドゥスン》だ。
呪文主体のデッキに対して、無月と手札破壊が機能するまでの時間を稼いでくれるこのカード。『裁キ系』だけでなく、最近権利獲得し注目されている『水単ムートピア』の足止めにもなるカードとして、メタゲームを鑑みて採用されたのだろう。
もちろん、カードの効果だけを見れば「そういうメタゲームであれば採用するでしょう」という結論に見えるかもしれないが、これまで『闇単無月』というデッキが、その内容のほぼ9割ほどまでが有効な動きのために固定パーツとなっているデッキであったことを思い出してほしい。
自分が最高の動きをするためのベストのデッキリストと、環境においてベストの選択となるデッキリスト。このカードの採用とそのリストから、そんなことを考えてみるのも面白いかもしれない。
第8位:《堕呪 ウキドゥ》
第9位に続いて、メタゲーム上のカードの選択として興味深かったこのカードを取り上げよう。そもそも、最初のエリア代表決定戦であった九州エリアでは、『火水ブランド』というデッキは「9割以上ベストのカードが決まっているようなものである」という話題が出ていた。増えるであろう速攻デッキ相手に《崇高なる智略 オクトーパ》を入れたいが、抜けるカードがないので、いわゆる「デッキスロットを増やす魔法」で3種4枚を、4種3枚にするか否か、といったような話だ。
だが、そこから1ヶ月半が経ち、『火水ブランド』というアーキタイプのデッキリストはかなり多様化した。新たな有効カードが発見されたり、また、メタゲーム上の都合であったりと理由は色々あるが、このエリア予選のように短期間に大量の大型大会が開催されるシリーズ時には、そういうデッキリストの移り変わりを見るのも一興ではないかと思う。
たとえば、九州では5人中5人が使用していた《月光電人オボロカゲロウ》だが、翌週の北東北エリアでは《月光電人オボロカゲロウ》使用者は約半分となってしまう。これは、『火水ブランド』対決では主に《“乱振”舞神 G・W・D》のせいで出す事がリスクになる上に、『光ゼロ系』にもリスクになるため、単体のカードパワーや高速化にデッキリストが移行していったからだろう。
実際、その後、もっとも『火水ブランド』のドローソースが少なかった南東北エリアで1名に減ったあと、多くの『火水ブランド』のデッキリストから《月光電人オボロカゲロウ》は消えていった。その後、一部《エマージェンシー・タイフーン》がいたものの、ドローソースは十分とばかりに、代わりになったのは《ゼンメツー・スクラッパー》に代表される序中盤の差し合いに強いカードだ。
同系対策をするにしても、王者である自身を倒しに来る相手と戦うにしても、序中盤に相手と会話をできるカードを採用しなければならなくなっていったのである。これも自分の都合でデッキリストを作ることができなくなったという典型例だろう。
そんな『火水ブランド』のデッキリストの歴史の中で、東海エリアで特徴的だったのが、《堕呪 ウキドゥ》だ。
明らかに『裁キ系』への対抗策であるこのカード、これまで各エリアで1名ぐらいは入賞することはあったのだが、ついに5名中3名、過半数が採用するカードとなった。
また、余談ではあるが、『火水ブランド』のドローソースの話でいえば、これまで一部エリアで試されていた《王立アカデミー・ホウエイル》採用型がBブロック覇者のでこいによって初めて権利を獲得したエリアでもある。
第7位:《サイコロプス》
あまり東海エリアそのものと関係ない話で大幅に紙幅を使ってしまったので、ここからは印象的だったカードと場面に絞って紹介していこう。《メラビート・ザ・ジョニー》でも少し語ったことだが、今回の会場では火を使った『ジョーカーズ』が多く、結果、《サイコロプス》が火を噴く場面を多く見かけたのが、予選ラウンド・決勝ラウンドを問わずに印象的だった。
そもそも、デュエル・マスターズというゲームの本質でもあるので当り前ではあるのだが、この2ブロック環境を支配しているデッキのほとんどがコストの踏み倒しギミックをデッキのメインコンセプトに据えている。
ゆえに、《異端流し オニカマス》や《ポクチンちん》に代表される踏み倒しメタが重要なのだが、先出しできないものの、後出しゆえに死角から相手の意表をつける《サイコロプス》は逆転の場面を演出していたカードだったといえるだろう。
特に、《》とのコンボは、《オリオティス・ジャッジ》として猛威を振るっていたのが印象的だ。
第6位:《》
もうひとつ、予選ラウンドでの数の多さが印象的だったデッキが、『水単ムートピア』だ。先日の関西エリアで権利獲得をしたのも記憶に新しいが、最近では類似コンセプトのデッキが殿堂環境でも活躍しており、ついにムートピアにも(水文明だが)光があたる日が来た。
このデッキも、トップ8入賞こそ2名ではあるが、予選最終戦からトップ16にかけては上位戦線に食い込んでいるプレイヤーも多く、個人的には東海エリアでもう一人権利者を生み出すアーキタイプなのではないかと予測していたくらいだ。
コンセプト自体は固まっていたものの、「1マナ呪文が本当に12枚も必要なのか」という議論があったようで、リストが固まり切っていなかったこのデッキ。だが、この東海エリアにおいては上位で確認できた限りではすべてのプレイヤーが《》を採用するに至っていた。
目立ちやすく対策されやすいデッキゆえに、今後は「自分勝手にデッキリストを作れない」側になっていくとは思われるが、水文明が大幅に強化されたバラギアラ以降も注目のカードだ。
第5位:《龍装者 デュオ・コマンドー》
他エリアに負けず劣らず意欲作といえるデッキリストが多かった東海エリアではあるが、筆者とともに予選を観戦していた「研究仙人」こと「まつがん」こと伊藤 敦がもっとも興味を惹かれていたデッキが、人神たろうが使用していた『光単タッチ水デュオ・コマンドー』だ。「《龍装者 デュオ・コマンドー》でブロックしながら《終末の時計 ザ・クロック》を出す」
という、おそらく《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》による勝利プランを計算している相手の意表を突くであろうコンボが内蔵されているのは、少なくとも知られていないうちは効果的であると思われるし、そもそもタッチで入っている《終末の時計 ザ・クロック》はマナチャージでばれていない限りは普通にトリガーしても効果的だ。
序盤にアドバンテージを稼げるメタリカを並べたうえで、相手の予想外の《エメスレム・ルミナリエ》から出てくる《龍装者 デュオ・コマンドー》は、相手の平常心を失わせるには十分だっただろうし、それゆえ、前述の《終末の時計 ザ・クロック》とのコンボも効果的に決まったのではないだろうか。
第4位:《ドンジャングルS7》
上位入賞の中で印象的だったデッキからもう1枚トップ10カードに選出したい。公式戦初の大型2ブロック環境イベントであるDMGP7thの時点で猛威を振るっていた《ドンジャングルS7》ではあるが、エリア予選シーズンが始まると勝負のレンジが噛み合わない『火水ブランド』の台頭によってその数を一気に減らしてしまった。
また、自然の『ビッグマナ系』のデッキの流行がツインヒーローデッキでのツインパクトコンセプトの大幅強化によってツインパクトコントロールメインになっていたのも、ツインパクトではないこのカードにとって逆風だったといえるだろう。
そんな中、rainbowが持ち込んだのは、自然タッチ光の《ドンジャングルS7》コントロールとでも言えるデッキであった。詳しくはデッキリストを確認していただきたいのだが、Jチェンジによる《ドンジャングルS7》早出しプランを《ソーナンデス》とのギミックだけに絞り、相手のクリーチャー(多くの場合は《異端流し オニカマス》がターゲットになったことだろう)を除去しつつ、盤面展開していく。
そして、ここで呼び出すクリーチャーとしてこのデッキの個性となっているのが、《気高き魂 不動》だ。
トラップ系やバウンス、シールド貼り付け、さらにジョーカーズの山札戻しのように破壊以外の除去が多く存在するこの環境において、圧倒的な除去体制を味方すべてに与えるこのカードは、『無月系』を除く多くのデッキに対して脅威となったことは間違いない。
また、地味ながらもシールド追加効果は複数の《気高き魂 不動》が存在すれば累積する。たかが1枚とはいえ、これは虎視眈々とジャスキルを狙ってくる『火水ブランド』の計算を狂わすのに十分だろう。
ジョーカーズの枚数が担保されていないにも関わらず、環境屈指のトリガーとして《》を採用していたりと、シナジーとカードパワーのバランスをうまくとっているデッキリストであり、今大会で最も特徴的なデッキだったのは間違いない。
第3位:《》
Aブロックで権利獲得者となったペーパールーパーがトップ8で対戦した相手は同じく『ツインパクトコントロール』を使用するアーチーだった。ツインパクトをサポートするシステムにバックアップされているデッキだけあって、現状ではほぼデッキリストが固まっているこのアーキタイプ。実際の2人のデッキはたった2枚しかデッキリストの違いはなかった。
アーチーが《ハヤブサノ裁徒Z /ヒーリン・マスカラス》を入れているスロットに、ペーパールーパーが採用していたカードは《》。この2枚の差が二人の勝敗を分けた……わけではないだろうが、しかし、この対戦に限らず今回のメタゲームでいえば《》採用の方が僅かに分があったようには思える。
提出されたデッキリスト記入用紙を見ると、ペーパールーパーのデッキリストも、いったんは《ハヤブサノ裁徒Z /ヒーリン・マスカラス》を記入した上で、それを消す形で《》が記入されていた。大会開始直前までここのカードの選択に悩んでいた証左であろう。
勝利と敗北とを分ける差……それはわずかなデッキリストの差、なのかもしれない。
第2位:《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》
『火水ブランド』のドローソースの推移については《堕呪 ウキドゥ》の項で述べたが、実際にエリア予選全体の流れを見ればドローソースは減少傾向にあった。その理由は、メタゲームの推移によってデッキを掘るパーツよりも、より中盤前後での対応力のあるパーツのためにデッキのスロットを割かなければならなくなったことにあった。そして、そんな状況でも『火水ブランド』がある程度安定したデッキとして機能したのは、この《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》の高いドロー能力があったからだろう。
序盤に手札をダンプして打点として盤面に置きつつも、将来的なドローソースにできるという『火水ブランド』のメインプランに加え、破壊以外の除去を持つ一方でリソース勝負になる中長期戦にもつれ込みやすい『ビッグマナ系』や『裁キ系』のデッキ相手には手打ちの≪トリプル・ブレイン≫として機能しリソース差で戦う戦略を実現する。
だが、この東海エリアでは、《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》のドロー関係以外の能力がドラマを生み出すこととなった。
Cブロックで権利獲得者となったローラの準決勝。対戦相手は『ムカデループ』を使用するシャルティアとの勝負になった。このマッチアップは基本的にはスピード勝負となるため、ローラは序盤から一気に攻め立てるのだが、《撃髄医 スパイナー》をトリガーしてしまいシールドをゼロ枚にするものの、リソースが枯れてしまう。
かえってきたターン。スピード・アタッカーであれば何であれ勝利するローラが引き当てたのは、《南海の捜索者 モルガラ/トリプル・ブレイン》。当然ドローする選択肢もあったものの、ローラはこれを召喚して続くターンにループが始まらない事を祈ってターンを終えた。単純に除去されるだけならばドローしたカードの中にスピード・アタッカーがあれば勝てるという二段構えの戦術だ。
対するシャルティアだが……対応に時間を使わされてしまってか、ループを開始するに十分なリソースが墓地に無い。《戒王の封》で《阿修羅サソリムカデ》をバトルゾーンに出し、墓地に落ちた2枚を見ると《阿修羅サソリムカデ》をバトルゾーンに残す形でターンを終える。《阿修羅サソリムカデ》をただのループコンボパーツとしてだけ見ていると忘れがちなのだが、《阿修羅サソリムカデ》はブロッカーを持っているのだ。
だが、≪南海の捜索者 モルガラ≫ もただのドローソースとしてだけ見ていると忘れがちな能力を持っていた。
ローラは、ターンが返ってくると、そのまま≪南海の捜索者 モルガラ≫をタップしダイレクトアタックを宣言した。
そう、≪南海の捜索者 モルガラ≫はブロックされないのだ。
第1位:《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》
3ブロックに分けて行われた東海エリアだが、決勝戦は3卓とも『火水ブランド』とそれ以外のデッキによるマッチアップとなった。そして、そのうちの2名が権利獲得をした。それだけを見れば、今回の第1位は《“轟轟轟”ブランド》になるべきなのかもしれないが、決勝戦のマッチアップを踏まえて今回はこのカードを1位に推したい。
決勝戦で『火水ブランド』と対峙したのは、『光単デュオ』・『自然ドンジャングル』・『ツインパクトコントロール』の3つのデッキだった。まったく別の3つのデッキだが、共通点は『火水ブランド』との対戦時は中盤戦にもつれ込ませて盤面支配能力で優位になる戦略をとる点だ。
一方でこれらのデッキとの対戦練習を積んで中盤戦以降の戦い方を身に着けた『火水ブランド』使いが取る戦略は手打ちの《トリプル・ブレイン》によってリソースを稼ぐ戦略であることは前述の通りだ。
そして、稼いだリソースはチャージされたマナとともにダンプされ、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の連打による追加ターンの連続が相手の盤面支配能力以上の打点を叩きこむのが一般的なフィニッシュ手段となる。
実際に、権利を獲得した2名の戦いも中盤に盤面を支配されかけるところまでもつれ込んだものの、《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》の連打が突破口をこじ開ける形で決着していた。
ターンが進んでリソースが増えていれば、追加ターンで得られるリソースもその分増える。そんな単純な真実が中盤戦以降も戦うプランを『火水ブランド』に与えている。それが環境初期から仮想的であったにも関わらず、今なお権利獲得者を生み出し続けている。
その点を鑑みて、東海エリアの第1位を《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》にしたいと思う。
以上、他エリアよりは長文になってしまったが、東海エリアで印象的だったシーンを10枚のカードと共に振り返ってみた。
以降のエリア代表決定戦では『超決戦!バラギアラ!!無敵オラオラ輪廻∞』が使用できるようになる。大量のカードが追加されるのみならず、4弾にふさわしく環境を変えうる強力カードの多いセットが入ることで2ブロック環境が激変することは必至だ。
残る関東エリアとジャッジ大会では、どのようなカードが活躍するのか、今から楽しみだ。
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY